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夢とうつつと存在と時間

theatregoerの日常と非日常

劇団四季 春のめざめ 2009 6 7

2009-06-15 02:38:45 | 演劇
劇団四季の新作「春のめざめ」を見てきました。
初自由劇場です。
ロビー狭いわ。

ドイツの劇作家フランク・ヴェデキントの戯曲をミュージカル化して、
2007年のトニー賞ミュージカル作品賞を受賞したこの作品。
日本人が、そして劇団四季のあの発声でやるのかと思うと
正直期待してなかったですが、すごくおもしろかった。
2幕目後半、登場人物がかわいそうで見ててつらかったのですが、
見終わった後また見に行きたいって思えました。トニー賞受賞納得の作品です。

照明とセットがスタイリッシュで、
ロック調でハンドマイクを取り出して歌い出したり、
スタンドマイクのスタンドを傾けながら歌ったりと、
新しい感じのミュージカル。
テーマが思春期の性で、妊娠、自殺、DV、同性愛などかなり赤裸々なのに、
ミュージカルという形式をとっているためか、
このジャンルをテーマにしたストレートプレイのような重さはなかったです。
ある意味子供らしい軽率さは感じられました。
メルヒオールみたいに自分の可能性に過信気味になったり、
モリッツみたいに、他人から見ればちょっとした失敗なのに絶望したり、
思春期に誰でもありがちなことだなーって懐かしく感じるとともに
私の思春期はもう遠くになってしまったなと、
ちょっと寂しかったりしました。(←自分の年を考えれば当たり前w)

昔「春のめざめ」をtptが舞台で上演してたのに、見逃したのかなり後悔してます。
元となった戯曲どんなのだろう。文庫で戯曲出版してほしい。

思春期の男女の学生がメインで、ちゃんと子供に見えるかなって思ったけれど、
そこは大丈夫でした。
学生の親だったり、先生だったりする大人役は男女の俳優さん2人が
何役も兼ねて、演じ分け上手ー。

オケというかバンドがステージ後ろ側にいるんですが、
その方々も一緒にカーテンコールに出ていました。
俳優さん達とオケのメンバーが一緒に並んでカーテンコール出てくるのって
はじめて見た気がします。
正直ちょっと恥ずかしそうだけど、なごむ。




台本・歌詞:Steven Sater
音楽:Duncan Sheik
装置:Chiristin Jones
照明:Kevin Adams
原作:Franc Wedekind
振付:Bill T. Jones
演出:Michael Mayer

ベンドラ:林香純
マルタ:勝間千明
テーア:岸本美香
アンナ:玉石まどか
イルゼ:金平真弥
大人の女性:中野今日子

メルヒオール:柿澤勇人
モリッツ:厂原時也
ハンシェン:南晶人
エルンスト:竹内一樹
ゲオルグ:白瀬英典
オットー:加藤迪
大人の男性:志村要

ミュージカル シラノ 2009 5 17

2009-05-23 11:02:43 | 演劇
シラノ見に行きました。
原作のシラノ・ド・ベルジュラックは
鼻が大きいのがコンプレックスで、
自分も好きな女性への他の男からの恋文を代筆してあげたという話として
なんとなく知っているくらいで、
ストーリー全体は初めて知りました。


最近フランク・ワイルドホーンづいてるなと思ったけど、
見たのルドルフくらいだった。
ドラキュラとルドルフのCDを買ったので、
そのせいでそんな気がしただけだったみたい。

浦井君がイケメンな貴族で、朝海さん演じるロクサーヌと
恋に落ちるんですが、イケメン貴族は文才ゼロで、
詩人でもあるシラノが恋文を書いてあげるのです。
シラノと意気投合した時の歌の浦井君パートの歌詞が
ひたすら「♪この美貌~」もしくは「♪この笑顔~」のみ。
おバカっぽくってかわいいです。
ガスコン隊のアンサンブルの歌は迫力があってすごかったです。

朝海さんは、歌は好きだけど、セリフの時の声が低くて、
可憐なヒロインぽくなかった。
でも綺麗な人なので好きです。


それにしても、キャストで、鹿賀さん、鈴木さん、光枝さんって。
劇団四季OB大活躍。



ロクサーヌは、自分ではなく、手紙の差出人に恋をしていると言うクリスチャンと
そんなはずはないというシラノのやり取りが切ないです。
シラノが、実は自分が手紙を書いていたのだとロクサーヌに伝えようとした時に
クリスチャンが戦死してしまい、思いを伝えられなかったり、
何年もたって、シラノの死に際に誰が手紙を書いていたのかわかるところもつらい。
コメディタッチな場面もあるけれど、ストーリーの軸は悲劇だと思う。

それにしても自分に手紙を書いてくれていた人がクリスチャンじゃなくて
シラノだって知らされるのが何年も経った後で、
かつそのシラノの死に際だなんて、ロクサーヌ的にどうよと思った。

情緒なくてすみませんw。

騎士道精神を描いた作品なんだろうけれど、
シラノが死に際に正義などについて語っているところが
説教くさく感じました。
シラノの清廉潔白であるがゆえの偏屈ものという性格が
あまり伝わってこなかったからかな。


原作:エドモン・ロスタン
台本・作詞:レスリー・ブリカッス
音楽:フランク・ワイルドホーン

演出:山田和也


シラノ・ド・ベルジュラック:鹿賀丈史
ロクサーヌ:朝海ひかる
クリスチャン・ド・ヌーヴィレット:浦井健治
ル・ブレ:戸井勝海
ラグノオ:光枝明彦
伯爵ド・ギッシュ:鈴木綜馬

日生劇場

マルグリット 2009 3 22

2009-03-29 07:42:07 | 演劇
ミュージカル「マルグリット」見てきました。
フライヤーとかで上演するって知っていたんだけど、
寺脇さんがミュージカル向け声ではないだろうと判断し、
スルーする予定でしたが、O嬢に行く?と聞かれ、
なんとなく行く気になってしまいましたw

椿姫を第二次世界大戦のフランスに置き換えたミュージカルで、
スタッフにレミゼラブルを作ったアラン・ブーブリルとクロード=ミッシェル・シェーンベルクがいて、
作曲家ミシェル・ルグランが曲を書いた作品を
ジョナサン・ケント(昔アルメイダ劇場来日公演見に来ました。)が演出するということで
気にはなっていたんですけどね。

ストーリーは椿姫のとおり。
オットーの愛人だったフランス人マルグリットが、
アルマンというピアニストと恋に落ちる。
オットーはそれに嫉妬して、アルマンとレジスタンスの彼の姉の命と引き換えに
二人を別れさせる。
レジスタンスに入り、オットーを殺したアルマンは、戦争が終わってようやくマルグリットが自分の元を去った理由と彼女がオットー殺害の手引きをしてくれたことを知る。
しかしその頃にはマルグリットはドイツ人に手を貸した女として迫害され、死に掛けていた。

というお話。
椿姫のお父さん役はオットーやアルマンの姉アネットと恋人ルシアンに
分散されている感じ。
セットや衣装、照明もスタイリッシュでかっこよかった。

ドイツ人将軍オットー役の寺脇さんは、かっこよくて舞台栄えしていましたが、
演技や歌が上手じゃなかった。
特にマルグリットをなじった後ですまなかったと謝る、まさにDV男wな場面があるんですが、その間の取り方が微妙で、正直これはナイと思ったシーンも。
でも雰囲気ベースで見ると「まあ、いっかな」って思わせるものがありました。

役柄としてアルマンよりオットーの方がかっこいいって思います。
愛人だけど本気になった女性が、他の若い男と恋に落ちてるのに
それでも好きという屈折した役です。
殺されるシーンがあっけないのと、歌も1、2曲くらい(?)だし、
見せ場少ないのがもったいない。

アルマン役の田代万里生さんは芸大出身でピアノも弾けて
歌も上手い。
これからミュージカルいっぱいでてほしいです。

春野寿美礼さんは、高い声がまだ弱いというか不安定な気がしました。
とてもきれいで衣装を着こなしてかっこよかった。

そしてジョルジュの横内さん、声がいい。
世の中を上手く乗り切る嫌な男役でしたが、演技上手くて、
作品を引き締めていました。

それとアンサンブルのレベルも高かったと思います。



日生劇場

作曲:ミシェル・ルグラン
脚本:アラン・ブーブリル/クロード=ミッシェル・シェーンベルク
   ジョナサン・ケント
作詞:ハーバート・クレッツマー 
オリジナルフランス語歌詞:アラン・ブーブリル
翻訳/訳詞:竜真知子

演出:ジョナサン・ケント


キャスト:
マルグリット 春野寿美礼
アルマン   田代万里生
オットー   寺脇康文
ジョルジュ  横内正
ピエロ    山崎裕太
ルシアン   tekkan
アネット   飯野めぐみ

ストーン夫人のローマの春 2009 03 01

2009-03-16 11:36:07 | 演劇
テネシー・ウィリアムズの小説を戯曲化した
「ストーン夫人のローマの春」を見に行きました。
パルコ劇場久しぶりです。
劇場は嫌いじゃないけど、渋谷の街あんまり好きじゃないかも。

ストーリーは、美貌の衰えを感じ引退したアメリカの女優カレン・ストーンが夫に先立たれてしまう。彼女が滞在したローマで若い男性を紹介されて、若い男性との情事に溺れていくものです。

夫を愛していて、若い男性がお金目当てだとわかっているのに、
パオロという自称伯爵の男に出会って、カレンが見苦しく若作りをしていく姿が
痛々しい。
パオロにスーツを新調してあげたのに、それを見るためにパオロがカレンを
鏡の前から強く押しのけるシーンも。
かつては友人に囲まれて、敬意をはらわれる立場だったのに
そのギャップが哀れです。
かわいそうというより、むなしさを感じさせます。

友人の作家がカムバック公演を用意してくれ、
救いの手を差し伸べているのに、それを断り中毒生活を続けてしまう。
せっかく社会的な成功というか安全地帯へ戻れるのに、
自ら破滅しようとしてしまっている。
見ていてその部分にどうしても納得がいかなかったのですが、
傍からみれば愚かであっても、中毒ってそういうものなのでしょう。
「どうしてもそうしなければ!」って衝動に駆られてしまうのは
自分ではどうしようもないものです。

麻実れいさんはあいかわらずお美しいです。
高貴な美女系ははまり役です。
でも相手役のパクさんって、私にはイタリア人には見えないのです。
それも血統のいいイケメンには…。
歩き方とか体つきとか。趣味の問題ですが。

今井さん演技目当てだったのに、
重要な役とはいえ、出番が少なくて残念。




演出家と脚本家が劇場に来ていました。
カーテンコールのとき、呼ばれ、客席から舞台に上がっていました。

後日、実は初日が延期されて、3月1日のこの公演が初日だと知りました。
だから演出家と脚本家が客席で見ていたんだ。

パルコ劇場
演出:ロバート・アラン・アッカーマン
脚本:マーティン・シャーマン
出演:麻実れい 江波杏子 
団時朗 今井朋彦 パク・ソヒ 鈴木信二


http://www.parco-play.com/web/play/stone/index/html

エリザベート 2008 12 20

2009-01-07 20:39:46 | 演劇
エリザベート二回目観にいきました。
これが2008年最後の観劇になります。

前回は朝海さん&武田さんだったので、
今回は涼風さん&山口さんバージョン。
上手く二回でそれぞれのキャストが観られました。

涼風さんのエリザベートは生き生きとしていて力強い女性です。
生と死の危ういバランスの綱渡りというより、
“生きたい”という力に溢れているようでした。
結婚式翌朝ゾフィーとの対決で♪私をねたんでる~
のフレーズも力強くて新しいエリザベート像でした。
天真爛漫な感じなので、後半の苦悩とかエキセントリックな感じとかが
感じられなかったかなとは思います。


レベッカのトラウマで、山口さんかぁって思いながら観にいったけれど、
観終わった後、「トートはやっぱり山口さんの役」って思いました。
それほど歌は素晴しかったです。
いつもより動いてたしw
でも闇が広がるでの階段降りは健在。


セゾンカード貸切公演だったので、
上演後、キャストの方々がステージに残って、
メインキャストから挨拶がありました。
そこで山口さんが「クリスマスソングを歌います」って言ったんですけど、
客席は拍手喝采だったけど
一方キャストの人は「え??」って感じでざわついでて、
「また何か言ってるよ(苦笑)」な感じの人もいました。
結局歌ってくれなくて残念だったけど、
「メリークリスマスーーー」って言ってくれたのでよかったかな。


帝国劇場
キャスト
涼風真世
山口祐一郎
石川禅
伊礼彼方
寿ひずる

ラ・カージュ・オ・フォール 2008 12 14

2009-01-06 23:21:03 | 演劇
日生劇場で上演していたラ・カージュ・オ・フォールを
何となく観にいきました。
何となくって書きましたが、本当に何となくなんですw
O嬢がチケットまだあるみたいだよって言うので、
じゃあ行ってみる?的なノリだったので、
それほど乗り気ではなかったんです。

特にエリザベートを観にいった後は、そっちのチケット増やせばよかったって
後悔したくらい。
でも観にいってよかった~。

鹿賀さんと市村さんのコンビの作品を観るのは3回目くらいかな。
ゲイの夫婦役です。
確かに似合うかも。

一幕ラスト、血のつながらない息子が
自分の存在をフィアンセの家族から隠そうしているというのザザが
知ったシーンは迫力ありました。

ゲイたちの真島さんとか踊りきれいだし、
ドタバタで面白かった~。

コメディでありながら家族愛にホロっとさせられる素敵な舞台でした。

キャスト
鹿賀丈史 市村正規
島谷ひとみ
山崎育三郎
香寿たつき
真島茂樹
新納慎也
今井清隆 森久美子

エリザベート 2008 11 22

2008-12-23 14:02:40 | 演劇
帝国劇場で上演中のミュージカル「エリザベート」を観てきました。
リピートしているわりに、1階席であまり見たことない私。
だって、席の質より回数重視なんだもん。

当たり前ですがやっぱり1階はいい!
細かいところまで見えるよ。
エリザベートって照明暗いシーンが多いから、
その時の俳優さんの動きなどは2階から見えないけど、
1階だと見えるので何度も観てるはずなのに、
こんなことしてるんだーっていう発見がありました。
2階は全体のバランスとか照明とかが良くわかっていいけれど、
やっぱり俳優さんたちから遠いんだっていうのを実感しました。
(今さら)

今回の見所は今年からエリザベート役になった朝海ひかるさん。
彼女の舞台を見るのも初めてだったので、どうかなと思いましたが
役にぴったりな女優さんだと思いました。
少女時代のシーンで声がちょっと不安定かなと思ったけれど、
きれいな人だし、後半部分はかなり好きかも。

あとトートは俳優にとって気持ちいい役だろうなと
ノリノリの武田真治を見ながらそう思いましたw。

武田さんのトートは声量は物足りないけれど、歌い方が役に合ってて、
特に最後のダンスはロックっぽくっていい。
中世的なビジュアルもいいし、やっぱり1階で見るなら武田トートです。
カフェのシーンの赤いジャケットは女の子みたいでお気に入りです。
振り向いてキメポーズするところなんてかなりカワイイ。
(これも前に書いた記憶がある)
全体的に上手くなって、安定してきた感じがしました。

鈴木綜馬さんのフランツが近くで見られたのも嬉しかった。
ノーブルな歌声はさすがです。


帝国劇場
エリザベート:朝海ひかる
トート:武田真治
ルキーニ:高嶋政宏
フランツ:鈴木綜馬
ルドルフ:浦井健治
ゾフィー:寿ひずる

私生活 2008 10 18

2008-10-23 10:39:41 | 演劇
シアタークリエで上演された私生活を観にいきました。
観劇が月1ペースになりつつあって、
ちょっと寂しい限りです。

本作はノエル・カワード作の2組の新婚カップルが繰り広げるコメディ。
かつての夫婦が、新しい再婚相手とのハネムーンのホテルで隣になって
盛り上がっちゃってかけおちしちゃうって話です。

そういえば、2組の夫婦の不倫シチュエーションに
TVドラマ「恋人よ」ってのがあったなーって思い出しました。

新婚でラブラブだけど、なんだか重たい相手の態度にイラっときてるところとか、
久しぶりに再会したかつての伴侶に昔の気持ちを思い出して盛り上がっちゃうところとか、
やっぱりけんかしちゃうところとか、
絶え間なくセリフが続く劇なので、俳優さんの力量がしっかり出ちゃう舞台だなって思いました。

時代は19世紀なので衣装もすてきで
特に寺島しのぶさんは衣装もかっこよかったし、
演技もスマートで
情熱的なアマンダという役がとても似合っていました。
内野さんはもっとライトな感じの演技にしてくれたら
作品の雰囲気的によかったかなと思います。



駆け落ちしたフランスのフラットで、エリオットがピアノを弾きながら歌うシーンがあるのですが、ピアノ上手だったので、まさか違うだろうとは思いつつ
内野さんが弾いているのか見ようとして鍵盤のあたり集中してしまいました。
それでそのあたりのやり取り全然覚えてませんw

ラストはそうなるべきというか、駆け落ちされちゃった片割れ通しがくっついて
おしまいって感じです。

舞台って演じる人の能力はもちろんだけれど、
観る側の理解力とか知識とか体調ってのも大切だと思うんです。
これはどの芸術にもいえることですが、
どんなにすごい作品でも観る側にそれを見抜く力がなければ価値が半減しちゃうわけです。


だからいつも、せめて(唯一ひとなみレベルなw)体調だけは、
万全で行きたいと思っているわけですが、
残念ながら風邪をひいていたので、もったいないことしたなーって思いました。
なんでピンポイントで風邪ひいちゃうかな。
でもコメディだったので、気楽に観ることができてよかった。
これがエリザベス朝演劇の悲劇だったら耐えられなかったかも。


作:ノエル・カワード
演出:ジョン・ケアード

キャスト:
内野聖陽
寺島しのぶ
中嶋朋子
橋本さとし
中澤聖子

人形の家 2008 9 7

2008-09-11 23:43:05 | 演劇
Bunkamuraシアターコクーンでデヴィッド・ルヴォー演出の
人形の家を見て来ました。

ルヴォーはもうベニサンピットでは演出してくれないのかなぁ。
あのキャパでルヴォー演出を観るという贅沢が好きだったのに。
パンフレットに書かれていた堤真一のインタビューで、
ルヴォー演出は8年ぶりってあって、
もうそんなに経つの!ってすごくびっくりしました。

舞台を囲むように客席が作られていて、
私の席は通常舞台がある場所だったので、
客席に行くまでにちょっとだけ舞台裏通れちょっと嬉しかったw


「人形の家」って作品は見る人によってラストの意味が全然違ってくる
作品じゃないかなって思います。

『自立すべきだ!ノラの家出は正しい』って人や
『何もできないのに社会に出るなんて無謀』って人、
『そのまま家にいた方が楽じゃない』とか
『子供達はどうするの??』など。

初演は女性が意志を持って出て行くということ自体センセーショナルな筋書きだったのでしょうが、
まあ今の時代に生きる私は、自立できてよかったね~とは思えないわけです。
裁縫くらいしか働いたことのないお嬢さんが、いきなり家出して
社会に出るというのは無謀すぎるっていうのは明らかなことで、
結局家に戻るか身を落とすしかないわけです。
それはどの時代でも自立とは呼ばないでしょう。
意気込みは別として
やってることはシブヤにたむろしている家出少女と変わらん!って感じですか。


大河ドラマ「篤姫」は『自分の役割』ってテーマになってるみたいなんですが、
このイプセンの「人形の家」はその役割がネガティブな意味で使われています。
自己を殺して周囲の期待にあわせるみたいな意味ですね。
ノラは娘として妻として母として周囲から期待されていたものを
無意識に感じて、それ沿った自己形成してしまってました。
そして、パニックになったトラヴァルの姿を見て、それを自覚しました。
でも、トラヴァルだって、周囲から“こうあるべき”というのに
とらわれている人のひとりじゃないかな。
それはクリスティーネ・リンデ夫人も同じ。
ノラとリンデ夫人の対照も面白いかな。
自分の生き方を探そとするノラと人のために生きようとするリンデ夫人。


最後の幕のいきなりのノラの人格豹変ぶりは本で読んでいた時と同じように
ヲイって思えたんですが、
ノラの借金を責めたトラヴァルが助かったことを知って、
以前のようにノラに助けてあげる、教育してあげると言うシーンでは
本とは違った感じを受けました。
あれは、実はダメ男トラヴァルがノラに言ってるんじゃなくて、
自分に言い聞かせているのではないかと思えました。
だから最後のきっと自分は生まれ変わってノラとやりなおせると言うシーンも
そんな奇跡が起きないと思いつつも、それを認めたくないから言ってるんじゃないかとも思えました。
そして残酷にも“奇跡は起きません”と言わんばかりの最後の扉の音。
それはノラやトラヴァルにとってだけではなくて、
人間関係に甘い幻想を抱いている人、
奇跡を待っている人に対しての扉の音なんでしょうね。
うーんシビア。

作:ヘンリック・イプセン
演出:デヴィッド・ルヴォー

キャスト:
ノラ・ヘルメル 宮沢りえ
トラヴァル・ヘルメル 堤真一
ニルス・クロスタ 山崎一
ドクター・ランク 千葉哲也
クリスティーネ・リンデ夫人 神野三鈴
アンネ・マリーエ 松浦佐知子
ヘレーネ 明星真由美

ルドルフ The Last Kiss  2008 5 31

2008-06-04 09:52:58 | 演劇
マチネに行ってきました。久しぶりの帝国劇場。
千秋楽まで、この回をふくめて3回なので、
俳優さんたちに熱のこもった部分ともう力で押しちゃえーってところが
あって、特に主役2人には勢いがありました。
相変わらず悩める王子キャラの井上くんと
けなげな女の子キャラの笹本さんのコンビいいね。

他のキャストさんもすばらしかったですが、
使い方がもったいない。
人形師の浦井くんあれだけ?もったいない。
ターフェ役の岡さんの歌ももっと聞きたかった。


演出面では照明の使い方がすばらしかったです。
光の動きで馬車が移動していることを表現したり、光で道を作ったり。
広い舞台だからできる表現を堪能させてもらいました。
舞台セットのコンセプトは絵画なのでしょうか?
西洋絵画に描かれた女性の顔の一部が部屋の壁面になっていたり、
ラストの額縁の中に入る主役2人など、絵画にまつわるモチーフですね。
芸術の都ウィーンが舞台だからかな。
それとも、もうルドルフが生きた時代は
絵画で描かれたような伝説や神話のようなお話の世界ということを
表しているのでしょうか。
でも、それにしてはルドルフの苦悩が生生しくてかわいそうだった。
途中希望を見出してがんばってみるけど、
(あの演説シーン、全体からみると少し浮いてたかも)
やっぱりアンハッピーエンドで重い作品。
演出で、きれいではかない雰囲気が出ていて
美しい作品でした。

それからポスター&フライヤーの写真いい!
コレ自体アート作品って感じ。
いつもこれくらいなら…。

ストーリーはブルク劇場の杮落としの場面から始まるわけですが、
行ったことがあったので身近な感じがしました。
ブルク劇場見学エントリーはこちら


オーストリア大公妃シュテファニーを
普通なら夫とすれちがってしまうかわいそうな女性として
演技したいと思うんだけど、
夫を理解せず、妻という立場に固執する嫌な女にきっちりなってました。
セリフがちょっと上手じゃない気がしたけれど、
嫌な女っぷりは完璧でした。
ソロの”私が妻よ~”な歌は、メロディーが歌謡曲ぽかった。

好きな曲は仕立て屋で「♪パラソルこれはまるでサーベルね」という曲。
ダンスも面白くて楽しめました。



スタッフ
演出:宮本亜門
音楽:フランク・ワイルドホーン
歌詞:ジャック・マーフィ/ナン・ナイトン
装置:松井るみ
照明:高見和義


キャスト
オーストリア皇太子ルドルフ:井上芳雄
マリー・ヴェッツェラ:笹本玲奈
オーストリア大公妃:知念里奈
ラリッシュ:香寿たつき
オーストリア皇帝:壌晴彦
人形師:浦井健治
プロイセン皇太子:岸祐二
英国皇太子:新納慎也
ブラットフィッシュ(御者):三谷六九
オーストリア首相ターフェ:岡幸二郎