TEX & SUN FLOWER SEEDのVocal、てつ

TEX & SUN FLOWER SEEDのVocal、てつのブログ

世田谷フィッシングセンター

2007-02-22 23:09:39 | Weblog
 一人一時間500円のその場所に入る。「おじさん、こんにちは」「はいよ、一人500万円ね」「あ、いま1万円札しかないや」「なんだ、こんなにくれるのか」「あげないよ!おつりくださいよ」「じゃあ、おつり9億円用意しなきゃならないな」こうして世田谷フィッシングセンターの世界に肩までつかることになる。
 世田谷の住宅街のなかに、昔ながらの建物で、通る人々を不思議に引きつけ続ける場所がある。創業30年以上になる釣り堀「世田谷フィッシングセンター」である。私もこれまで何度となく足を運んだ。少しべらんめえ調の根岸米蔵さんと奥さんで、朝10時から夜の12時まで、元日(1月1日)のみの定休日で営まれている。以前まで毎年2回、夫婦で国内バスツアーに参加するため2~3日の休業日はあったが、それもここ何年かは行っていない。今は年にたった1日しか休みがない。たいしたものだ。コンビニ並だ。根岸さんは言う。「いやー、朝起きるとね、どうしても店あけたくなっちゃうんだよねー」。しかも、朝から晩までの営業時間のため、家族で食事をとることはまずないらしい。本当に働き者である。いや、あまりにも多いファンのために営業せざるを得ないのかもしれない。

 終戦当時、根岸さんは親から引き継いだ世田谷の土地に、昔大工だった腕前を生かし、卓球場を建物からまるまる自分一人で作りあげた。学校にも卓球台などなかった。娯楽施設なんかまるでなかった時代だった。そうして卓球という娯楽で20年間人々を楽しませた後に、現在のつりぼりに姿を変える。昭和46年だった。おじさんはとにかく、人を楽しませる事が好きなのだ。今でもその姿勢は変わらない。
 釣り堀というと、そこの池の中にどんな魚がいるのかが、釣り情報誌などではポイントになるらしい。これまで鯉・金魚・うなぎ・なまず(この時点で、もうすごい!私は一度だけここでうなぎを釣ったことがあるが、うなぎがいるなんて知らなかったから本当にびっくりした。鯉の突然変異かと思った)を入れていたが、去年の暮れあたりから亀を入れるようになった。おじさんに、亀なんて釣れるのかと聞いてみたら、「いいんだよ、釣れなくても。亀が入ってるってだけでもビックリするだろ」といわれた。ビックリさせたかったのである。たいした釣り堀だ。
 さて、ここのシステムであるが、ここでは釣った魚を持ち帰ることはできない(もっともここは大物の鯉が大半なので持って帰って飼える人も少ないと思うが)。釣った魚の大きさ、数に応じておじさんが点数をつけてくれる。この点数をためて、ある一定の点数になると、この釣り堀で使える竿や浮きなどがもらえる。この「My 竿」を手に入れてはじめてここの常連となる。ちなみに私は「My 竿」を3本と、竿よりも点数の高い幻の浮きを1つ持っている。このシステムもまたここにどっぷりと頭までつからせる要因の一つでもある。「My 竿」を持っていない者は「俺もいつかは・・」とやっきになり、持っている者は余裕の優越感に浸りながらのフィッシングとなる。
 ここでは池が室内にあり、4メートル×8メートルの広さである。しかしこの4メートル×8メートルの中にも様々なドラマが待ち受けている。私は絶対、その時その時によって、魚の気持ちと一体になった人が勝つと思っている。たまに、何かに憑かれたように釣りまくる人がいる。そこにいる客達全員の注目を集め、それでもなお釣りまくる。王者の貫禄すら漂わす。そんな時、その人は魚の気持ちと一体になっている。私もかつて、一度だけ魚の気持ちと1つになり、釣りまくった事があるので確かな情報だと思う。たぶん。
 私の福岡の友人は、東京に遊びに来ると、必ず一度はここに来る。自分の住んでいる所が川に面しており、ベランダからいつでも釣りが出来るのに、それはあまりやらず、東京の室内にある4メートル×8メートルの池に吸い寄せられる。前に10日間程遊びに来たときも、9回くらい行った。それも一度に4時間くらい釣る。そして「やっぱり若林は奥が深い」と言い残して帰っていった(私達の間では世田谷フィッシングセンターのことを地名から取って若林と呼んでいる)。まさに「魔性の釣り堀」だ。
 最後になるが「世田谷フィッシングセンター」の魅力は、おじさんのキャラクターなしには語ることは出来ないだろう。冒頭の会話を違和感なくすんなりこなすその姿は、日本広しといえどもおじさんがナンバーワンである。会話の随所随所に、渋みの効いたギャグを散りばめてくる。決して「おやじギャグ」ではない。渋みがかった男のギャグである。私は何度となく笑わせていただいた。私はいつか「はいよ、一人500万円ね」と言われて、本当に500万円、100万円の束を5つ、おじさんに払うことを将来の夢のひとつとしている。だからおじさん、その時まで元気で店を続けてくださいね。

世田谷フィッシングセンター
東京都世田谷区若林5-23-1
03-3410-7990
年中無休
AM10:00~24:00

最新の画像もっと見る

コメントを投稿