生活保護利用者怒り
「最高裁判決と原告愚弄するな」
参院選(20日投票)で、最高裁が「違法」と断じた生活保護費の大幅な減額に対する自公政権の責任が問われています。しかし両党には全く反省が見られません。利用者は、排外主義など差別政策を掲げる参政党とともに自公政権がさらに社会保障を改悪する危機感を募らせています。(日隈広志)
![]() (写真)厚労省前で行動に取り組む高橋さん(左)ら=7日、東京都千代田区 |
「当事者の声を聞け」―。7日の厚生労働省前行動で、生活保護基準引き下げ処分取消訴訟(いのちのとりで裁判)の原告団と弁護団らが声を上げました。「人間として扱ってほしい。国は1秒でも早く減額した保護費を元に戻してほしい」。参加した神奈川訴訟原告の高橋史帆さん(42)はこう述べました。
最高裁判決(6月27日)を受け、原告団らは、国に対して全利用者への真摯(しんし)な謝罪や、さかのぼった保護費の支給、最低賃金など生活保護基準に連動する制度への影響の調査と被害の回復などを要請しています。
いまだ謝罪せず
しかし国は判決後、半月たっても原告に謝罪すらしていません。今後の対応などを審議するためだとして新たに専門家会合を設ける方針を示しました。尾藤廣喜・同裁判全国アクション共同代表は「原告と判決を愚弄(ぐろう)」するものだと批判します。
国が強行した2013年からの保護基準引き下げは、12年末に政権を奪還した安倍自民党の総選挙公約「生活保護費10%削減」を実施したもの。同種裁判の津地裁判決(24年2月)は厚労省が同党の「選挙公約に忖度(そんたく)」したと認めました。
自民党は、参院選政策で「生活保護が、真に必要な人に行き渡るよう取り組みを強化する」としました。現在でも保護が必要な低所得者などに利用をためらわせる記述を続けています。
参政党は、「外国人への生活保護の停止」と明記。同党の初鹿野裕樹・神奈川選挙区候補は「外国人は生活保護で優遇されている」(11日の街頭演説)と語りました。
厚労省によると、23年度の全利用者世帯165万467件のうち、外国籍世帯は4万7317件でわずか2・9%。「外国人が生活保護で優遇」はデマです。
差別助長させる
神奈川訴訟原告の高橋さんは、参政党のデマ・差別発言は「国籍を問わず利用者全体をおとしめている」として「自民党と同じ姿勢」だと指摘します。「最高裁判決を無視する国の保護利用者への差別を助長させてしまう。参院選で、自公政権にも参政党にも審判を下して、国の姿勢を改めさせたい」と強調しました。
尾藤さんは7日の東京都内での会見で、「厚労省が選挙中に謝罪すれば、自民党の責任が問われる。そのことを避けようと同省は引き延ばしているのではないか」と指摘。大阪弁護団の小久保哲郎事務局長は「生活保護バッシングや偏見が根強いことに、政治家が腰を引いてはいけない。判決を踏まえ、『生活保護は普遍的な権利だ』『生活保護への偏見を払拭する国にしていく』と候補者がメッセージを出してほしい」と訴えました。
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