JINX 猫強

 オリジナルとかパロ小説とかをやっている猫好きパワーストーン好きのブログです。
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24 (21) ~眠る鳥より ~

2008-04-12 22:11:57 | ノンジャンル
「やめろと言っている」
 両の脇を撫でられ、氷河は身悶えた。
「いい様だな、氷河…」
 一輝が笑顔で続けた。
「お前に嵌められ、駅員に取り調べられながら、オレはお前をどう仕置きしてやろうかと、そればかり考えていたのだ」
「それが、これか…」
 氷河は自身を戒めるロープと一輝を見比べた。
「そうだ、これからオレの力を思い知らせてやる」
 一輝は氷河に跨り、その頬を両の掌で包み込み、屈辱に歪む表情を覗き込んだ。
「オレの動きを封じてか、この卑怯者」
 氷河は一輝の視線を跳ね返した。
「誤解するなよ、氷河…」
 一輝は氷河の額に唇を付け、優しく吸い上げ言葉を続ける。
「オレがお前を縛ったのは、怪我をさせないためだ」
 頬から首筋を唇で辿られ、氷河の背が怖気だった。
 確かに全身で暴れ、一輝に押さえ付けられれば、氷河は怪我をしかねない。
「うるさいッ、この変態ジジイッ!」
 氷河は一輝の躯を退かそうと身を捻る。
 説教なら、口ですればよいのだ。
「まずは、この口だな…」
 一輝は氷河の唇に口付けた。
 歯列を割り、押し入ってきた舌で口腔を舐め回され、氷河は背を仰け反らせた。
 氷河は歯の裏側を舐める一輝の舌を押し出そうし、その舌を絡め取られ、息苦しさに身を捩る。
 一輝は氷河の顎を固定し、強引な口付けを続けている。
 吸われ続けた舌の感覚が麻痺している。
 酸欠に身を捩り、一輝のものと混ざり合った唾液を嚥下したのを見計らったように一輝は唇を解放し、どこか虚ろな視線を天井に向けている氷河の唇を撫でた。
「氷河…」
 一輝は手にした氷河の髪に唇を付けた。
「お前はオレのものだ…今も、昔もな…」
 一輝は氷河の頬に唇を移動させ、啄ばむようにキスをする。
「…危険で、有毒な物の溢れている場所へなど行くな」
 全ての聖戦を闘い抜いた白鳥星座の聖闘士の命を奪ったのは、悪性腫瘍であった。
 今の氷河の年齢で、氷河は命をおとした。
 これから氷河は、年に数回の精密検査を受ける。最悪、再度氷河の身体に悪性腫瘍が発見されたとしても、もう手遅れなどということにはさせない。
 グラード財団の全総力を挙げ、早期発見・治療で氷河の命を守り抜く。
 だが、腫瘍を発生させないためには、氷河自身も節制せねばならない。
 アルコールやタバコ、さらには危険に巻き込まれかねない場所へ足を向けることは、厳に慎まねばならない。
 でなければ、氷河は――。
「カラオケ店は危険でもなければ、オレはその場の雰囲気でアルコールを飲んだり喫煙したりはしない」
 一輝に体調まで気遣われているのだと思うと、氷河は自分が情けなかった。

「続く」

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