JINX 猫強

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24 (32) ~眠る鳥~ より

2008-08-18 21:26:49 | ノンジャンル
「なんのマネだ」
 氷河はベッドの際までワゴンを押してきた一輝に、不振気に眉を寄せた。
「食事だ」
 一輝は食事を覆っている銀の蓋を開いた。
 コンソメスープとベーコン・エッグに、焼きたてのロールパン、サラダとフルーツ、そして、絞りたてのミックス・ジュースに、氷河は喉を鳴らした。
 考えて見れば、1昼夜以上、スポーツ・ドリンク以外、口にしていたい。
「さあ、食え…今日は特別に、ベッドで食事をすることを許してやる」
 一輝はスプーンを差し出した。
「なんだ、気味の悪い…」
 氷河は上半身を起こし、ベッドの端に腰を下ろし、スプーンを受け取りながら声を漏らした。
 一輝から受け取り握ろうとしたスプーンを、氷河は取り落としていた。
「あッ…ごめん」
  スプーンを拾おうとした氷河の身体が傾き、そのまま氷河はベッドに倒れこんでいた。
「いい」
 一輝は氷河を制し、スプーンを拾った。
「ほら、起きろ…今日はオレが食わせてやる」
 一輝は力の入らない氷河を引き起こし、その横に腰を下ろし、氷河の身体を凭れさせた。
「いい、自分で…」
「また、スプーンを落とすつもりか」
 諭され、氷河は一輝から顔を背けた。
「お前は疲れておるのだ、無理はするな」
 一輝は布巾を氷河の首にかけ、予備のスプーンに掬ったスープを、氷河の口許に運んだ。
――くッ!
 一輝の機嫌のよさに、氷河は唇を噛み締めた。
 一輝は昨日の行為の余韻と疲労で身動きのままならない氷河の姿に満足し、愉しんでいる。
 たかが「ジジイ」の一言で剥きになるのは、一輝自身が寄る年波を気にしている証なのだ。
 だが、そのジジイの行為に氷河は前後不覚に追い込まれ、翌日も身動きがままならないでいる。
 その事実が、氷河には腹立たしいことこの上ない。
「どうした氷河、食べられないなら口移し――」
 皆まで言わせず、唇につけられたスプーンのスープを氷河は口にした。温かなスープが喉許を通り過ぎ、身体に染み渡ってゆく。
「そう…上手だ、氷河」
 一輝は氷河の唇を拭い、スープを掬う。
「もう、スープはいい」
 氷河は艶やかなロールパンに手を伸ばした。
 一輝はバターを塗ったパンを口に運ぶ氷河の姿に目を細めた。

「続く」

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