氷河は鈴木と共に宿題と予習に勤しんでいた。
聖闘士になるとき、教養として様々な学問を、氷河はカミュから学んだ。
言語も、ロシア語・ラテン語・日本語・英語・フランス語などを学んでいたが、氷河の予期していない学問が、日本にはあった。
古文。
馴染みのない学問に、氷河は注意を払わなかった。
以前の学校は、授業は選択制だった。
氷河は「古文」なるものを選択から除外してしまった。
この学園で、初めて古文なるものの授業を受け、氷河は愕然とした。
同じ日本語だとは思えなかったからだ。
このわけの分からぬ言語に、氷河は頭を痛めていた。
かといって、解らない、などと口にすれば、一輝に何を言われるか解ったものではない。
瞬や紫龍に相談すれば、一輝の耳に確実に入る。
氷河はこの難解な学問に、独学で挑むことに決めた。
幸い、鈴木といれば学園の見回りなどの雑務からは開放され、他の生徒たちの干渉を受けることはない。
傍目から見れば、氷河が鈴木に勉強を教えているように見える。
実際、古文以外の教科では聖闘士たちは優秀であった。
「お兄様は、大学はどちらへ?」
問われ、氷河は瞼を見開いた。
これまでの生活で「大学」など、考えたことがなかったからだ。
「さあ、これから考えないとな」
氷河は力なく呟いた。
城戸沙織はギリシャの女神アテナの化身――。
一企業にいつまでも携わっているわけにはいかない。
沙織は大恩のある城戸光政の実子たちにグラード財団を引き渡したいと考えている。
そのための学生生活であろうとは氷河は思う。
だが、氷河は聖闘士だ。
会社勤めなど、果たして自分にできるのかと思う。
「ボク、お兄様と同じ大学に行きたい」
鈴木が氷河の制服を握りしめた。
「そうだな、一緒に勉強をしていこう」
まだ先の話だと、氷河は鈴木に微笑みかけた。
不意に背に悪寒が駆け抜け、氷河は周囲を見回した。
「どうかなさいましたか?」
不安げに問われ、氷河は鈴木の頭を撫でた。
鈴木は中学で不登校になっている、ある日、登校を拒むにはそれなりの理由があるはずであった。
実際、氷河は素行の悪い生徒が、鈴木にわざとぶつかり言いがかりをつけているところに何度か出くわした事があった。
「いいや、なんでもない、それよりもう時間だ」
氷河は参考書をまとめはじめながら口を開いた。
「今から行けば、食堂は空いているからゆっくり食事ができる」
「なら、お風呂もゆっくり入れますね」
「ああ、そうだな」
そうは言っても、氷河はシャワー組だった。
「お兄様、今日は一緒にお風呂にはりましょうよ?」
図書館で借りた本と、自身の本とを分けながら鈴木が口を開い。
「あぁ、たまにはな」
氷河は嘆息を噛み殺した。
ロシア人の母の血が混ざる氷河の裸身は目立つ。
風呂場では視線を集めてします自分の容姿に、氷河は辟易ごしていた。
だが、鈴木が入浴をしたいというのなら仕方がなかった。
なんといっても、氷河は鈴木の兄なのだ。
■ 続く ■
聖闘士になるとき、教養として様々な学問を、氷河はカミュから学んだ。
言語も、ロシア語・ラテン語・日本語・英語・フランス語などを学んでいたが、氷河の予期していない学問が、日本にはあった。
古文。
馴染みのない学問に、氷河は注意を払わなかった。
以前の学校は、授業は選択制だった。
氷河は「古文」なるものを選択から除外してしまった。
この学園で、初めて古文なるものの授業を受け、氷河は愕然とした。
同じ日本語だとは思えなかったからだ。
このわけの分からぬ言語に、氷河は頭を痛めていた。
かといって、解らない、などと口にすれば、一輝に何を言われるか解ったものではない。
瞬や紫龍に相談すれば、一輝の耳に確実に入る。
氷河はこの難解な学問に、独学で挑むことに決めた。
幸い、鈴木といれば学園の見回りなどの雑務からは開放され、他の生徒たちの干渉を受けることはない。
傍目から見れば、氷河が鈴木に勉強を教えているように見える。
実際、古文以外の教科では聖闘士たちは優秀であった。
「お兄様は、大学はどちらへ?」
問われ、氷河は瞼を見開いた。
これまでの生活で「大学」など、考えたことがなかったからだ。
「さあ、これから考えないとな」
氷河は力なく呟いた。
城戸沙織はギリシャの女神アテナの化身――。
一企業にいつまでも携わっているわけにはいかない。
沙織は大恩のある城戸光政の実子たちにグラード財団を引き渡したいと考えている。
そのための学生生活であろうとは氷河は思う。
だが、氷河は聖闘士だ。
会社勤めなど、果たして自分にできるのかと思う。
「ボク、お兄様と同じ大学に行きたい」
鈴木が氷河の制服を握りしめた。
「そうだな、一緒に勉強をしていこう」
まだ先の話だと、氷河は鈴木に微笑みかけた。
不意に背に悪寒が駆け抜け、氷河は周囲を見回した。
「どうかなさいましたか?」
不安げに問われ、氷河は鈴木の頭を撫でた。
鈴木は中学で不登校になっている、ある日、登校を拒むにはそれなりの理由があるはずであった。
実際、氷河は素行の悪い生徒が、鈴木にわざとぶつかり言いがかりをつけているところに何度か出くわした事があった。
「いいや、なんでもない、それよりもう時間だ」
氷河は参考書をまとめはじめながら口を開いた。
「今から行けば、食堂は空いているからゆっくり食事ができる」
「なら、お風呂もゆっくり入れますね」
「ああ、そうだな」
そうは言っても、氷河はシャワー組だった。
「お兄様、今日は一緒にお風呂にはりましょうよ?」
図書館で借りた本と、自身の本とを分けながら鈴木が口を開い。
「あぁ、たまにはな」
氷河は嘆息を噛み殺した。
ロシア人の母の血が混ざる氷河の裸身は目立つ。
風呂場では視線を集めてします自分の容姿に、氷河は辟易ごしていた。
だが、鈴木が入浴をしたいというのなら仕方がなかった。
なんといっても、氷河は鈴木の兄なのだ。
■ 続く ■
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