放課後、氷河は周囲の様子を窺いながら校門の裏手に回っていた。
正門脇では一輝が氷河を確保せんと、てぐすね引いて待ち構えているに違いなかった。
一輝は口にしたこともしなかったことも、心に抱けば必ず実行に移す厄介な男であった。
氷河は今まで、カラオケというものを体験したことがなかった。
氷河の通う有名私立校には、名門といわれる家の子弟が多い。
登下校を車で、という生徒も珍しくない。
その生徒たちにしてもカラオケやクラブなどには出入りしているのだ。
――1回ぐらい…。
クラスメイトの口にするカラオケに、一度は行ってみたかった。
「なにをしている」
不意に声をかけられ、氷河は文字通り飛び上がった。
「学業が終わったら帰るよう、一輝様に言われているのではなかったか」
聞き知る声に、氷河は周囲を見回した。
「姿ぐらい見せたらどうだ、暗黒スワン」
声以外の気配を立っている暗黒スワンに、氷河は言葉を叩きつけた。
「このぐらいの気配も感じ取れんとは――」
言葉と共に頭上から降り立ったスワンの表情に浮かぶ嘲りに、氷河は柳眉を吊り上げた。
「ずっと、そこでそ見張っていたのか」
氷河はスワンと、スワンの降り立った木とを見比べた。
「キサマの考えなど、一輝様はお見通しだ」
スワンが唇の端を吊り上げた。
「それで木の上で烏(からす)のように見張っていたのか? 暗黒とはいえ、スワンの名が泣くぞ、それとも黒繋がりか?」
氷河は大げさに肩を竦めてみせた。
正門脇では一輝が氷河を確保せんと、てぐすね引いて待ち構えているに違いなかった。
一輝は口にしたこともしなかったことも、心に抱けば必ず実行に移す厄介な男であった。
氷河は今まで、カラオケというものを体験したことがなかった。
氷河の通う有名私立校には、名門といわれる家の子弟が多い。
登下校を車で、という生徒も珍しくない。
その生徒たちにしてもカラオケやクラブなどには出入りしているのだ。
――1回ぐらい…。
クラスメイトの口にするカラオケに、一度は行ってみたかった。
「なにをしている」
不意に声をかけられ、氷河は文字通り飛び上がった。
「学業が終わったら帰るよう、一輝様に言われているのではなかったか」
聞き知る声に、氷河は周囲を見回した。
「姿ぐらい見せたらどうだ、暗黒スワン」
声以外の気配を立っている暗黒スワンに、氷河は言葉を叩きつけた。
「このぐらいの気配も感じ取れんとは――」
言葉と共に頭上から降り立ったスワンの表情に浮かぶ嘲りに、氷河は柳眉を吊り上げた。
「ずっと、そこでそ見張っていたのか」
氷河はスワンと、スワンの降り立った木とを見比べた。
「キサマの考えなど、一輝様はお見通しだ」
スワンが唇の端を吊り上げた。
「それで木の上で烏(からす)のように見張っていたのか? 暗黒とはいえ、スワンの名が泣くぞ、それとも黒繋がりか?」
氷河は大げさに肩を竦めてみせた。
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