乱暴に開かれた扉に、氷河は視線を向けた。
ここは学園の生徒たちが入浴する場だから、不意に扉が開かれることはある。だが、今の扉の開き方は乱暴すぎた。
氷河は乱暴なことが好きではなかった。
聖戦が終わった今は、静かに、目立たぬよう生活を送りたかった。
まるで肚立たしいことでもあるように扉を開いた生徒に非難の視線を向け、しかし、氷河は瞼を見開いた。
「瞬…」
もう入浴は終えたはずの瞬の姿に、氷河は瞼を見開いたまま、動きを止めていた。
「“瞬”じゃあないでしょう、なにをしているの?」
瞬は一輝と二人、仲良く湯に浸っている氷河に声をかけた。
「なにって、風呂に…」
今はまだ、真冬であった。いくらシベリア育ちの氷河といえども、湯にぐらいは入る。
「なんで、兄さんなんかと入っているの」
「お前が入浴し終えたって言うから――聖矢も紫龍も入浴を終えていたし…しかたがなかったんだ」
氷河は瞬から視線を逸らせた。
「しかたがないとは、ご挨拶だな」
一輝が背後から氷河の頭を叩いた。
「止めろ、一輝」
氷河は一輝に叩かれた頭部を手で押さえた。
「二人共、仲良がよさそうだね?」
瞬がかけ湯をし、氷河と一輝の間に割り込んだ。その様子を、数人の生徒が伺っている。
「仲なんてよいものか」
氷河がそっぽを向き、言葉を続けた。
「――お前がまた風呂にはいるなら、言ってくれれば良かったのに」
氷河が湯から上がろうと、身体を伸ばした。
「ご挨拶だな、氷河――。お前がそういう態度なら、オレにも考えがあるぞ」
一輝が氷河を見据え、その視線に圧されるように、氷河は項垂れ、湯船に戻った。
「悪かった、謝る…」
氷河の謝罪に一輝は満足そうに眸を細め、瞬が瞼を見開いた。
――謝った…。
氷河が…一輝(バカ兄貴)に…。
「氷河、どうしたの…何かされたの?」
氷河が一輝に謝罪するなど、あるはずのないことであった。
そう思いながらも、瞬には思い当たる事があった。
「続く」
ここは学園の生徒たちが入浴する場だから、不意に扉が開かれることはある。だが、今の扉の開き方は乱暴すぎた。
氷河は乱暴なことが好きではなかった。
聖戦が終わった今は、静かに、目立たぬよう生活を送りたかった。
まるで肚立たしいことでもあるように扉を開いた生徒に非難の視線を向け、しかし、氷河は瞼を見開いた。
「瞬…」
もう入浴は終えたはずの瞬の姿に、氷河は瞼を見開いたまま、動きを止めていた。
「“瞬”じゃあないでしょう、なにをしているの?」
瞬は一輝と二人、仲良く湯に浸っている氷河に声をかけた。
「なにって、風呂に…」
今はまだ、真冬であった。いくらシベリア育ちの氷河といえども、湯にぐらいは入る。
「なんで、兄さんなんかと入っているの」
「お前が入浴し終えたって言うから――聖矢も紫龍も入浴を終えていたし…しかたがなかったんだ」
氷河は瞬から視線を逸らせた。
「しかたがないとは、ご挨拶だな」
一輝が背後から氷河の頭を叩いた。
「止めろ、一輝」
氷河は一輝に叩かれた頭部を手で押さえた。
「二人共、仲良がよさそうだね?」
瞬がかけ湯をし、氷河と一輝の間に割り込んだ。その様子を、数人の生徒が伺っている。
「仲なんてよいものか」
氷河がそっぽを向き、言葉を続けた。
「――お前がまた風呂にはいるなら、言ってくれれば良かったのに」
氷河が湯から上がろうと、身体を伸ばした。
「ご挨拶だな、氷河――。お前がそういう態度なら、オレにも考えがあるぞ」
一輝が氷河を見据え、その視線に圧されるように、氷河は項垂れ、湯船に戻った。
「悪かった、謝る…」
氷河の謝罪に一輝は満足そうに眸を細め、瞬が瞼を見開いた。
――謝った…。
氷河が…一輝(バカ兄貴)に…。
「氷河、どうしたの…何かされたの?」
氷河が一輝に謝罪するなど、あるはずのないことであった。
そう思いながらも、瞬には思い当たる事があった。
「続く」