カボスクラブ

消化器・小児外科勉強会Case and Evidence Based Surgery(通称:カボスクラブ)の活動報告

ICG-Kの意味するもの

2015年08月13日 | 論文紹介
Indocyanine green (ICG)は、Bookerによって合成され、Foxらによって1956年に紹介されたtricarbocyanene系色素である。
薬価はジアグノグリーン(25mg) 1V 605円 (2015年8月現在)

ICGを経静脈的に投与すると、ICGは血中のリポ蛋白に結合して肝に輸送され、類洞を通過する間に肝細胞に摂取され、抱合を受けることなく胆汁に排泄される。さらに、この胆汁中に排泄されたICGは小腸からの再吸収(腸肝循環)はされない。
血清総ビリルビン値が2-3mg/dLを超えると、肝細胞内輸送過程でビリルビンと共通のキャリアーと結合して輸送されるため、両者の競合が生じる。このため、黄疸がある状況でのICG試験結果は、実際の肝機能よりも不良となる。

ICG R15値: ICG停滞率ともいう。正常値10%以下。
体重1kgあたりの循環血漿量を50mlとすると、体重50kgの人では約2500mlの循環血漿量を有する事になる。25mgのICGを静注すると、注射直後のICG濃度は理論的に1mg/dlとなる。従って注射15分後のICG濃度を測定すれば、ICG R15値が求められる。

ICG K値:ICG消失率ともいう。正常値0.168-0.206。浮腫、脱水、肥満、腹水などサードスペースの水分貯留がある場合、体重1kgあたりの循環血漿量は50mlとは限らない。このような場合には、5分、10分、15分後のICG濃度を片対数グラフにプロットした時の傾きより肝機能が求められる。これがICG消失率Kである。つまり、言い換えると正常な肝臓の場合、ICGの混じた血漿は1分間の間に肝でICGを胆汁中に約16.8-20.6%排泄する働きを持つ。



ここで、肝臓外科の大先輩、中島公洋先生の書かれた随筆を紹介します。
題名は<ICG-Kの意味するもの>です。

 大分医大1外科研修医の朝はICGで始まる。肝循環の評価という名のもとに、Hepatoma, varicesはもとより、その他の患者さんにも、主治医の「ちょっとICGやっとって。」という気軽な依頼により、研修医の起床時刻は確実に30分早くなるのである。
ICG 1V=25mgであり、通常の0.5mg/kg負荷テストでは、体重50kgの患者さんにはちょうど1V=25mgが必要である。この0.5mg/kgというのには理由があって、体重50kgの患者さんの循環血漿量は約2500ml=25dLであるところから、この人に25mg ivすると、iv直後の血漿ICG濃度はちょうど1mg/dLになる。ivしてから15分後の血漿ICG濃度がもし0.22mg/dLなら、ICGR15=22%となる。(以下、省略)

ここから先の文章は、式やグラフが使われていてここには書きにくいのですが、記念会誌「第10号」平成4年に掲載されています。皆さんも是非一度読んでみて下さい。本当に感動しますよ!