障がいのある子どもと大人の支援 ~分かり合えると問題解決の道が見えてくる~

このブログは、障害児・者の心を大切にした対人援助技術「心のケア」を学び実践しているメンバーが集まり投稿しています。

相手の事情とこちらの事情

2022-06-02 20:44:01 | 日記

こんばんは

まきこっこです。

 

私は現在成人のデイサービスで働いているのですが、六年前は放課後等デイサービスで勤務していました。

そのころ、小学5年生で利用していた自閉傾向の大変強い男の子が、高校2年生になり、卒業後のための現場実習ということで

うちの事業所に一週間くることになりました。

久しぶりの対面に私はドキドキわくわく。

おおきくなっただろうな。どんなふうに成長したかな。

あの時パニックに何度も付き合い、傷だらけになりながら少しずつ信頼関係をつくっていって。

落ち着いていられるときには、かわいい笑顔をみせて私の膝の上に座りに来たりして。

そんな思い出を思い出しながら彼のいる部屋へと向かいました。

引率で来ている担任の先生が「今日は調子悪いようなので」と言いながら、部屋の隅でお気に入りのスプーンを持ち、床を叩く行動を繰り返している彼を、距離をとって見守っていました。

身長は倍になったのではないかと思われれるほど大きくなってましたが

昔の面影はそのままで、私は嬉しくなってしまいました。

彼に近づき、

「おはようございます。お久しぶりですね。私のことわかりますか?」

と声をかけると、昔と変わらず片手をあげてタッチしてくれました。

感激して、私は舞い上がってしまったのかも知れません。

その後、体温が高かったということで、2度目の検温をお願いすると

嫌がりながらも応じてくれ、待つことができたのですが、動いたためエラー表示が出てしまいました。

「ごめんよ。もう一回だけ計らせて」

と脇に体温計を差し込もうとすると

突然手を伸ばして私の顔をひっかきました。

マスクを引きちぎるとそれでも収まらずつかみかかってきました。

先生が彼を抑え、私に距離を取るように合図し、しばらく落ち着くまで格闘していました。

体が大きくなった彼のパニックは、私が加勢することをためらわれるものでした。

彼の不調を招く行動をしてしまい、結果なんの役にも立てず、私自身も軽いパニック状態だったのかもしれません。

顔の傷を洗い、薬をもらって塗りながら、猛列に反省しました。

先生は今日は調子悪いと言っていた。彼は昔から検温は嫌いだった。

いつもと違う場所で緊張していないわけはないのに。

私のうれしい気持ちばかり優先して、彼の心情をすこしも察しようとしなかった自分がとても情けなくて。。。。

申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。

過去に彼と面識があるということで、いい気になっていた自分を反省し

明日は今の彼と、その時の彼の気持ちや動きをきちんと見て、付き合おうと思いました。


泣ければ、らくちん!

2022-06-01 16:42:56 | 自閉症児の子育て

 

 ハンガウトです。もう15年以上前の体験なのですが、多くに共通すると思うので、披露させて戴きます。

                       
 自閉症のAくん、特別支援学校に通う中学1年生、話し言葉はありません。就学前にご両親が離婚し、週のうち4日は施設で、3日はお父さんと自宅で過ごすという生活をしています。パニックが頻繁で、お父さんは何とか暴れる彼を抑えられるそうですが、体格が大きいため、学校でも施設でも手こずっているとのこと。

 ちなみに、お父さんもスラリと背が高いので、それを受け継いだのか、当時身長が180センチくらいありました。とはいえまだ大人の体型ではないので、お父さんよりも肉付きがよく、とにかくデッカイ子という印象です。

 初めて心のケアの相談に訪れた日、Aくんは緊張しているようでしたが、身体のつき合いに誘うと、とりあえず応じてくれました。

 パニックというのは、ガマンが足りないために起こすと思われがちですが、実は本人にしてみると、それまで解って欲しい想いが伝えきれずガマンを重ねてきた結果、もうどうにもならなくなって爆発するのです。このブログ記事「心のケアとの出会い」にも、我が子がそうだったと書かれていますね。幼児期なら、その想いを体で受け止めてやって、言いたい放題言わせてやる(=言葉で言えないので、体で表現させる)と、暴れる代わりに泣くという形でそのつらさを出すようになり、やがて落ち着きます。ところが、年齢があがると、ガマンのフタも泣くことへのフタも両方が強固になっているので、たとえ言い分を解って貰えたとしても、幼児のようには泣けません。また大きな子が暴れると周囲への被害も大きく、その結果、「また、やらかした」と、本人の自己否定感はますま強くなってしまいます。そこで、年長になればなるほど、いっぺんに表現させず、なるべく小出しにするように心がけます。

 

 そこで、Aくんとも慎重に体のやりとりをしていきました。お父さんは「小さい頃に母親との接触が無くなったので、愛情不足だと思います」と話されますが、話を聴いていると、お父さんの子育ての腕はなかなかのもの。そんな話を聞きながらなんとか体のやりとりに応じていたAくんでしたが、そろそろ終わりにしようかという頃、とうとう爆発しました。お父さんと2人がかりとはいえ、大人はたちまち息があがってしまいます。こちらの体力がいつまで持つかなと不安を感じながら、私も初対面で事情がよく解らないまま、とにかく「淋しい想いを一杯したのでしょうに、よくお父さんと2人でがんばってきたね」と、それだけ伝えるのが精一杯。ところが予想に反して、Aくんはしばらくすると、おいおい泣き出したのです。気がつくと、お父さんも目を潤ませていました。

 以来、「ときどき、おっ来るかなという時があるんですが、こちらが強く止めると泣くようになりました。泣いてくれれば、こんなにラクなことはありませんね。外だとちょっとみっともないですが、暴れるよりマシ。学校でも泣いたらしいです」とのこと。

 周りの大人もさることながら、何よりもAくん自身がラクになったのでしょう。半年後には、めったにパニックを起こさなくなりました。Aくんはたまたま泣きやすくなりましたが、ふつうは年長になると泣けません。けれども、私の経験でいうと、できるだけ年齢に相応しいやり方で気持ちを出せるように、日頃から身近なおとながつきあって表現方法を覚えてもらうと、パニックはほとんど起こさなくなります。

 

                 過ぎてみれば、こんな時期なら、まだラクチンだったけど…