きんえんSwitter

医者の心の目で日々を綴ります

先の見えない不安には

2020年09月30日 | Petit santé
「コロナはいつ終わるのでしょう···先が見えなくて不安です。」

さいきん、周りの人と雑談していると、天気の話題と同じくらいよく聞かれる言葉です。



25年前、登山隊に同行して、パキスタンのヒマラヤ山脈をトレッキングしました。

ゴロゴロした大きな岩と砂の下は青い氷。

標高4000mを越えると、とっくに緑はまったく存在せず、空の青と、山の万年雪の白が眩しすぎる、静かで美しい世界でした。


最終目的地であるベースキャンプは標高5050m。
高山病にならないように標高差1000mを10日間かけて、ゆっくりゆっくり登りますが、それでもすぐに息がきれます。

その日の最終目的地を訊くと、「あの山を越えたあたり」と教えられ、「よーしがんばるぞ!」と歩きだすのですが、半日歩き続けても、まったく景色が変わりません。
これにはほんとうに精神的に参りました。

そしてある日、やっと気づいたんです。
日本とヒマラヤとでは、距離のスケールがまったく違うんだ!


たとえば国内でも「車で10分の距離」と言っても、都心と田舎ではまったく感覚が違いますでしょう?


日本国内の距離感で歩いていると、とんでもなく期待を裏切られることに気づいた私は、目的地を訊くのをやめました。

そして、周りの景色など気にせず(どうせ変わり映えしないのですから!)、ひたすら一歩一歩、しっかりと地面を踏みしめ、前へ進むことだけを考えるようにしたのです。


先が見えない、変わってほしいけど何も変わらない、この先どうなるのかわからない···

そんな不安に駈られている人は(自分も含めて)、いまとても多いと思います。

どうすればいいんでしょう?


無理に見えない先を見ようとはせず、今日1日を、この半日を、この1時間を、なるべく気持ちよく過そう。

私はそんなふうに思いながら、どうにかすごしています。



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