
歩く速さは人それぞれ。
都会に住んでいる人たちのほうが速い気がします。
歩く速さは、その時の気分にも影響されるでしょう。
下肢の筋力が低下すると、速度が落ちます。
からだを動かすと、ハーハー、ゼーゼー、苦しくなることを、医学用語では「労作時息切れ」と言います。
心不全や呼吸不全の状態を疑う症状のひとつです。
特発性間質性肺炎という病気は、酸素を取り込む機能が著明に低下するので、じっとしていればそれほど苦しくないのですが、歩いたりすると、とたんに低酸素の状態となって、ものすごく息が苦しくなります。
残念ながら特効薬はないので、病気が進行すると、酸素を吸いながら生活しなければならなくなります。
酸素を吸っている人に限って、なぜか、せっかちな方が多く、「もっとゆっくり歩きましょう」と言っても、「どうせ苦しくなるなら、速く済ませちゃいたいから」などとおっしゃって、額に汗かきながら、苦しそうにしています。
「自分にとっての通常の歩行速度」というのは、案外からだに染みついてしまっているのものなのかもしれません。
きょうも、在宅酸素療法を使用しながら通院している患者さんを見かけました。
駐車場から休み休み歩いてきたということでしたが、むしろ苦しくて休まずにはいられないといったところでしょう。
苦しくならないようにするには、ご本人が思っている以上に、もっともっとゆっくりと歩く必要があります。
採血を終えて診察室に向かう彼にむかって「天皇陛下みたいに、ゆったり歩きましょうね」と声をかけました。
周りにいた検査技師さんたちに「そんなアドバイスの仕方、初めて聞きました!」と驚かれました。
患者さんたちは、今のご自分の状況をとても残念に思っています。
「もっとゆっくり歩かなくちゃだめじゃないですか」などといった言い方をされると、よけいにつらい気持ちになると思うのです。
患者さんがイメージしやすく、かつ、受け入れやすいアドバイスのしかたはないものだろうか?
呼吸器内科医として長年、慢性呼吸不全の患者さんと向き合ってきて、おもいついたアドバイスです。