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きんえんSwitter

医者の心の目で日々を綴ります

金氏への禁煙のすすめかた

2018年06月11日 | 禁煙治療
このところ、世界中のニュースによく顔を出している北朝鮮の金正恩委員長。
実は彼はタバコを吸います。

今年4月、北朝鮮と韓国特使団との会食の場で、金委員長に「タバコは健康に悪いから、やめたほうがいいですよ」と禁煙を勧めた勇気ある人がいたのをご存知ですか?
鄭義溶(チョンウィヨン)大統領府国家安保室長という方です。

そのとき、同席していた北朝鮮の高官たちはいっせいに凍りついたそうですが(笑)、金夫人は「そうだ、そうだ。私もいつも言っている」と手をたたきながら喜んだそうです。


鄭氏の無謀とも言える勇気は心から称えたいと思います。
でもそんなふうに言われて、タバコをやめようと実際に行動を起こす人が、果たしてどれくらいの割合でいるでしょうか?

「からだに悪いから・・・」という「禁煙の勧めかた」は超初級者レベル、と言うか、実はこれ、ほとんど「言っちゃいけない声かけのしかた」の例なんです。



たしかに、病院で医者から「検診で見つかった肺の影はがんですよ、タバコを今すぐやめてください」とキッパリと(これ重要!)言われただけでタバコをやめる人は時々います。
「タバコ=肺がん」がいまや常識となっているため、いわゆるこの「ショック療法」は、呼吸器科では通用します。

もちろん肺がんに限らず、病院に勤務する医療のプロフェッショナルからの一言というのは、説得力があるのも事実ですから、皆さんには、目の前の喫煙者にはきちんと「やめなさい」とまずは一言、声をかけることを心がけていただきたいと思います。



さて、話は戻りますが、宴会で韓国のお役人から、「からだに悪いから」と禁煙を勧められた金委員長。
彼は(当然ながら)ただ笑っているだけで、とりあわなかったそうです。


なぜなら、使い古された、予想範囲内の「あるある言葉」では、人は動かないからです。

人を動かすには、心の奥底(大脳辺縁系)に働きかけなければなりません。

では、心の奥底に働きかける「魔法の言葉」なんてあるんでしょうか?


つづきはまたあとで。

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チャンピックスについて

2018年06月08日 | 禁煙治療
ニコチン依存症を治すには飲み薬もあります。
それがチャンピックスです。


依存症の薬としては、アルコール依存症の薬「アンタビュース」が有名です。

はるか昔、大学の講義で教わっただけなのに、ちゃんと薬の名前が思い出せたのは、試験前に「あんたブス」と語呂あわせで覚えたからかもしれません(笑)。

ちょっとでもお酒を飲むと、アセトアルデヒドを体内に蓄積させ、二日酔いの状態にさせる薬ですが、ただ、アルコール依存症患者は、たいていその薬を飲まなくなってしまうので、治療効果はいまいちである、とも教わった記憶があります。


さて、チャンピックスはというと、一言でいえば「タバコが美味しく感じなくなる薬」です。


「吸ったことのない人にはわからないだろうけれど、ほんとにウマイんだよ。これがまずけりゃ、やめられるのにな・・・」


喫煙者とのおしゃべりで、こんな言葉が引き出せたら、大、大、大チャンスです。


「ふえっふえっふえっ(笑)だったら旦那、いい薬ありまっせ。1回1粒。朝晩2回飲むだけで、タバコがまずくなるってんでさあ。スゴイでがんしょ!ただし、どこにでも売ってるって薬じゃあ、ありまへんのや。禁煙外来に行かないといけないんっすよ。でも安心してくだせい。いい処知ってますんでぃ。これからあっしが旦那をご案内いたしやしょう。」


なぜか怪しい時代劇風になってしまいましたが、こんな感じの誘い方、いいと思います。



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なから、いい。

2018年06月07日 | 禁煙治療
(初回投稿を一部改変しています)



「なから、いいね。案外だいじょうぶだわ」

病棟ですれ違った患者さんに声をかけられました。


「なから」とは、「とても」とか、「想像以上に」といった意味ですね。


声をかけてくださったのは、禁煙外来にいらした患者さんです。


「A先生がさ、頼むから禁煙してくれって頭下げるもんだからさ(笑)」

えっ?! A先生が頭を下げて患者さんに禁煙を懇願した?

ちょっと想像できませんでした。

でも、当の患者さんは、なんだかとても嬉しそうです。
そんな彼女の様子を見ていたら、私もつられて嬉しくなりました。

「あらまっ! そうでしたかー。来てくださって嬉しいですう(笑)」


ニコチンのシールを貼って、禁煙治療はうまくいっています。
今度はいよいよ、がんの手術のために入院されたのでした。
でも、とても晴々としたお顔をしていらっしゃっいます。

実は、タバコを吸っている患者さんたちというのは、目の前のお医者さんや看護師さんたちが、禁煙を勧めてくれるのを待っています。
常々、「キッカケさえあれば禁煙したい」と思っている人は多く、誰かが背中を押してくれたらなあと思っているのです。

ただ、家族の場合はたいてい、奈落のそこに突き落とすかのような押し方になってしまうので、それがちょっと難しいところです(笑)

ですが、医療のプロである私達は、背中を押す最たる適任者でしょう!

この患者さんにとって、A先生の「意外な言動」が、心を動かしたのだと思います。
実は、この「意外な」というところに、今回の魔法が効いた理由が隠されています。
このことについては、また別の機会に・・・・













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