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きんえんSwitter

医者の心の目で日々を綴ります

イワシのアタマ

2018年08月22日 | 禁煙治療
ニコチンパッチを御守りのようにしている人もいれば、まったくそうでない人もいます。



「イワシのアタマと同じだね!」


禁煙治療半ば、使っているパッチのことをこんな風に言い飛ばした人がいました。

焼いた鰯の頭と柊の枝で作った節分の魔除け飾りがすぐ思い浮かびました。


もちろん、「禁煙したい」という気持ちを持つことは大切ですが、いくら強い意思を持っていても、なかなかやめられないのがタバコ。
だからこそ、禁煙補助薬の使用をお勧めして、実際に使ってもらったわけなのですが・・・


「そもそも禁煙なんてのは、結局は自分の強い意思があればできるものなのさ!」


自信満々に話す患者さんを前にして、私は心の中で「禁煙補助薬の適切な使用と経験豊富な専門医によるカウンセリングのおかげだと思うなあ・・・」とつぶやいていました。

でも患者さんには「禁煙できて、ほんとによかったですわ!」と笑顔で返しました。



医者ってのは人から感謝される仕事だと思われがちですが、実際はそうでもありません。

特に私のように慢性病を担当している内科医たちは、病気を治すというより、病気予防のために正しい生活習慣を指導したり、病状が今より悪くならないように、血圧や血糖をコントロールしたりといったことが主な仕事になります。

ですから、たいてい患者さんはその治療効果をあまり実感できません。

とうぜん、治らない病気を相手にしているわけですから、最期を看取るのも私たちの大事な役割なわけで・・・


そんなことでずっとやってきましたから、感謝されないのには慣れてるんです(笑)


それにここで大事なのは、「タバコを吸わないこと」ですから。
究極的には、どんな方法ででも、タバコを吸わない日々をすごしていただけていればいいんです。



でも、「魔除け」も結局は「御守り」ですね。



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御守り

2018年08月20日 | 禁煙治療
子どもの頃は毎年、祖母が神社で御守りを買ってきては、持たせてくれました。
小学生の時は交通安全。
中学生以降からは、学業成就も。

私が初めて針と糸で作ったものは、御守りでした。
白い布切れ二枚を縫い合わせ、マジックで「お守り」と書きました。
たぶん、祖母が繕いものをしているそばで、教わりながら縫ったのだと思います。


禁煙治療でニコチンパッチを使っている人にとって、パッチは大切な御守りみたいなものです。

だって、貼ってるとぜんぜん吸いたくならないんですよ。
神様以上に御利益を感じて当然かもしれません。



6週間パッチを使ってきた50代のA氏。

「もう(タバコを吸うことは)あきらめましたから(笑)。あれからぜんぜん吸ってません」


最初の頃は、(パッチを貼り忘れたふりをして)ためし吸いしたり、オトナゲない行動が見られましたが、今はうまく断煙できているようです。


「あと二週間で終わりですか?その後は、頼るものがなくなりますね。大丈夫でしょうか?」


通常、ニコチンパッチは8週間使用します。
それ以上使う必要はありません。
ニコチンを入れなくても大丈夫な、元の正常なからだの状態に戻るからです。



「うちのやつが、替わりにガムテープ貼ってあげるわよなんて言うんですよ」



そんなふうに言って明るく励ましてくださるなんて、素晴らしい奥様です。

いっそのこと、ガムテープに奥様の似顔絵を書いてもらったらどうでしょう?と申し上げました。


「それは、怖すぎます(笑)」



今後は、周りの人からの暖かい支援が、何よりの禁煙の御守りになります。








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禁煙カクテルバー

2018年08月08日 | 禁煙治療
大学の同窓生の集まりがあり、その二次会で久しぶりに、あるBARに行きました。

そこは、オトナのための正統派BAR「S」。

大切な友人を誘って、楽しく、じっくり話をしながらBARでお酒を飲みたいときはココと決めています。

普段はお酒を飲まないし、そういう「オトナ飲み」の機会もそれほど頻繁にあるわけではないので、そのBARを知ってから10年以上たちますが、まだ数えるほどしか行っていません。

二人で飲むならぜったいカウンター、なのですが、このときは6人だったので、奥のテーブル席に陣取りました。

皆でメニューを見ていたら、カウンターの中から「先生♪」と声がします。
6人のセンセイがたが一斉に振り向きました(笑)

みれば、顔見知りのバーテンダー氏がこちらに向かって笑顔で手を振っています。

「あれからずっと続いてまぁす♪」



かつて私の禁煙外来には、数名、夜のお仕事をしている方が治療にいらっしゃったことがあります。


彼が外来にやってきたときは、ポマードできっちり固めたバーテンダーヘアでなく、洗ったままのふんわりヘアでしたし、白いスーツ姿ではなく、ジーンズにポロシャツ姿でしたが、すぐに、かのBARのバーテンダー氏だと気づきました。

バーテンダーが禁煙?!

「ついに世の中もここまできたか」と喜んだ反面、「はたしてうまくいくかなあ」と不安に思ったのも事実でした。

なぜなら、禁煙補助薬は当然使いますが、タバコを吸うお客さん相手の酒場で働きながらの治療は誘惑が強く、禁煙するのはかなり難しいんじゃないかなと思ったからです。


予想通り、禁煙はストレートにすんなり・・・というわけにはいきませんでした。
それでもA氏も私もあきらめず、最終的には禁煙継続状態で治療を終了することができました。

けれど禁煙で大切なのは「続ける」ことです。




「もう(禁煙してから)5年になります。店も完全禁煙にしました」


きけば市内には他にも数軒、店内禁煙にしているBARがあるそうです。


「ワインバーは昔から禁煙という店が多いんです。うちのようにカクテルバーはワインバーよりも格式が下と思われがちなんですが、負けたくないって気持ちがあって、ソムリエの資格もとりましたし、店も思いきって禁煙にしました」


こういう話をきくと、我ながらいい仕事したなあと、自分を褒めたくなります。





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メンソール、めんそーれ。

2018年08月03日 | 禁煙治療
何年か前の禁煙外来でのことです。

ニコチンパッチ(*)を使って治療をすることになった30代の男性。


「自分はメンソールタバコを吸ってるんですが、パッチを貼るところにはトクホンチールを塗ったほうがいいですかね?」


これには大笑いしました。

ところがなんと彼は大真面目だったんです。



メンソールタバコは若者や女性に人気があります。


メンソール(Menthol)とは、薄荷(ハッカ)やミントに含まれるスーッとする成分で、風邪をひいたときになめる飴にも使われていることからもわかるように、のどの麻酔作用があります。

メンソールタバコは製造過程でこの成分が加えられており、吸いやすいというのが特徴です。
ですから初心者でもはじめからムセずに上手に吸えてしまうため依存におちいりやすく、スパスパと吸い続けてしまうというわけです。


昔からタバコを吸う若者の間で、「メンソールタバコはヤバイ」という都市伝説が語り継がれてきました。
つまり、メンソールタバコを吸っていると男性機能不全(ED)になるというのです。


「メンソールタバコがヤバイんなら、のど飴もヤバイですか?」

禁煙講話をした警察学校で、こんな質問をされたこともあります。
男性にとっては、ホントに重要なことなんですねえ。

それだけに誤解が多いのですが、メンソールという成分が危ないのではありません。

「喫煙そのものがEDの原因になる」のです。

これは知っておいて損はない事実です。
ですから、ぜひ早めに禁煙することをおすすめします。


あっ、それから、メンソールタバコを吸っていたからといって、ニコチンパッチにトクホンチールやアンメルツを併用する必要はありません。念のため。



*****************************************************
禁煙補助薬のひとつニコチンパッチ。

タバコをキッパリやめて、1日1枚。
皮膚からニコチンが吸収されるので、タバコ吸いたさが抑えられます。

2ヶ月間かけてシールを徐々に小さくしていき、ニコチン依存から抜け出すという仕組みです。

薬局・薬店でも市販されていますが、禁煙外来受診をお勧めします。

その理由は3つ。

①条件があえば、保険適応されて治療費が安価
②医療機関で処方されるパッチは高用量なため、「吸いたくならない」という効果が実感しやすい
③専門医のアドバイスも得られ、成功率が高い


薬局で直接パッチを買う場合は保険が適応されませんが、それでもパッチ1枚はタバコ1箱程度の値段です。

仕事等で病院には足を運べないという方のために、近隣の薬局で禁煙指導がしっかりできる薬剤師さんたちがいてくれると心強いですね。














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Money, Money, Money

2018年07月31日 | 禁煙治療
突然ですが、問題です。

2217円。

さて、何の値段だと思いますか?


これは、オーストラリアで売られているマルボロ20本入り1箱の値段です(*)。
1日1箱吸う人の1ヶ月のタバコ代はなんと、6万8727円!

同じタバコでも日本の場合は、1箱470円です。
それでも、月あたり1万4570円かかります。

「自分の安い小遣いでは、可愛い息子におもちゃも買ってあげられない」という理由で、禁煙治療に踏みきった方がいらっしゃいました。


「10月からまた値上げされるらしいね」

最近、禁煙外来の患者さんがよくおっしゃっています。

喫煙者のみなさんは、タバコの値上げには敏感です。
値上げを禁煙のチャンスととらえているのだと思います。
うれしいことです。


一方で、「禁煙って、お金かかるんでしょ?」という声が聞かれることもしばしば。

禁煙補助薬が世の中に出た頃はまだ保険が適応されておらず、禁煙治療は自由診療でしたので、高額のイメージを持っている方が多いようです。


けれども現在では保険で禁煙治療が受けられる医療機関が増えています。
⇒ http://www.nosmoke55.jp/nicotine/clinic.html


保険で治療を受けた場合、8週間から12週間の治療期間中にかかる費用の「総額」は、お薬によってかわりますが、3割負担の方で1万3千円から2万円程度ですみます。

タバコ代よりも、禁煙治療代のほうがずっとお得なんです。



(*)https://www.numbeo.com/cost-of-living/country_price_rankings?itemId=17&displayCurrency=JPY

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冷たい七面鳥

2018年07月09日 | 禁煙治療
禁煙のコツは、「キッパリとやめること」です。

徐々に本数を減らすとか、(いわゆる)軽いタバコに変えるのは良くありません。
むしろ、一本一本を大事に、深く長く吸うようになるので、かえって有害物質を多く取り込むことになってしまいます。
リバウンドを起こしてしまう場合も少なくありません。

せっかくの努力も水の泡・・・なんとも皮肉なことですね。


ですから、喫煙者のみなさんには「いきなり断ち」をお薦めしています。


「いきなり断ちする」「キッパリやめる」ことを、英語では「Cold Turkey」といいます。

禁煙治療について勉強を始めた頃、海外の論文を読んでいて、この言葉に出会いました。

冷たい七面鳥・・・奇妙な言葉ですね。

もともと、ヘロインなどの依存症患者の治療において、薬物を突然やめさせたときに、禁断症状で鳥肌が立つ様子から由来しているようです。



以前、ある人に禁煙をお薦めしたら、「いやあ、タバコをやめたりしたら、ボク死んじゃうよ~(笑)」と冗談交じりに返されたことがありました。

わからなくもありません。
依存症って、そういう病気なんです。

喫煙者はいつも手元にあるタバコの本数を確認することを怠りません。
タバコが無くなれば、嵐の夜でも、コンビニに買いに出かけます。
喫煙者はいつも不安に追いかけられています。


ヘロインや覚醒剤などの禁断症状に比べると、ニコチンの場合のそれは一見地味で、派手さはありません。
が、多くの人が禁煙できていない現状をみれば、それがいかにつらいか、タバコを吸ったことのない方にもご理解いただけるのではないでしょうか。


もちろん、「Cold Turkey」だけで頑張る必要はありません。
ヘロインや覚醒剤と違って、ニコチン依存症には効くお薬があります。


禁煙して自由の身になって眺める世界は、それこそ鳥肌ものですよ。














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レッドカードのまえに

2018年06月22日 | 禁煙治療
朝の申し送りの時間帯のことでした。
ナースステーションがいつになくざわついていました。


タバコ臭い患者さんがいる・・・
入院中、時々抜け出してタバコを吸っているようだ・・・
病室で吸殻を見つけた・・・


さて、こんな患者さんと出会ってしまったら、どんなふうに声をかけましょうか?


「タバコ、吸ってませんか?!」


たぶんこれが普通、ですね。

では、そう言われた患者さんはどう答えるか?


「吸ってませんっ」


”反射的に”即答します(笑)。
後ろめたさを感じているときほど、心とは裏腹な言葉を発してしまう・・・人間の悲しいサガです。


こうなると、もう会話は続けられません。



「ウソばっかり!」

「素直に認めればいいのに(怒)」

「治療する気があるのかしら?」


裏切られた、ウソをつかれた、信頼関係ゼロ!という気持ちになります。
患者さんにより良い治療をと、毎日一生懸命働いているスタッフがそう思うのは当然です。
ウソが重なれば、「ルールを守れないなら即刻退院!」と患者さんにレッドカードを突きつけたくなるかもしれません。



でも、タバコを吸っていることは疑いのない事実であることは、患者さんも、私たちも、知っているのです。

だからいまさら、「吸ってるの?」なんて白々しく訊かなくていいんです。



白衣の天使の心で優しく声をかけてみてください。


「タバコがまんするの、大変でしょう?」




すると、喫煙していることを全否定していた患者さんも素直に「ハイ」って答えてくださいます。

ここで大切なのは、「定期的に襲いかかってくる喫煙欲求のつらさを私は理解していますよ」というメッセージを伝えることです。


そうすると患者さんは、過去に禁煙を試みて挫折した経験があったことや、現在もミントガムを噛んだりしてがんばっているがどうしても吸いたくなってしまう、といった打ち明け話をしてくださいます。

ひとしきり話を聴いてあげたら、ミントガムよりもっと効果のあるお薬がありますよと教えてさしあげるのです。



実はタバコをやめたいと思っている喫煙者にとって一番つらいのは、「タバコが吸えないこと」ではなく、「タバコが吸いたくなること」なのです。

ですから、吸いたいのをガマンすることに疲れ果ててしまっている患者さんなら、「その薬、使ってみたいです」とおっしゃいます。



今日も読んでいただいて、ありがとうございました。


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レッドカード

2018年06月20日 | 禁煙治療
昨日の日本VSコロンビア戦、見ました。

勝ち点3が見えてきた試合終盤、コロンビアの選手の激しいファウルで、日本の選手が倒れました。
そのときアナウンサーが、「思うようにならない焦りで、ファウルしてきましたね」みたいなことを言ったのです。

なるほどと思いました。

もちろん故意に行われた悪質なファウルには、ペナルティーが科せられますが、追い詰められてついやってしまう・・・ということもあるのですね。


ペナルティといえば・・・


かつて、中高生がタバコを吸った場合、学校側は生徒に反省文を書かせて3日間の自宅謹慎、あるいは、学校によっては退学などの厳しいペナルティを与えるというのが、
あたりまえだった時代がありました。

喫煙防止授業のために学校を訪れるたびに、校長先生や生徒指導担当の先生方にお願いしてきたことがあります。

それは、喫煙している子どもに、ペナルティーを与えないで欲しいということです。


喫煙はニコチンによる依存症です。
子どもがタバコを吸ってしまったことの責任の所在は、そのことを教育してこなかった私たち大人側にあります。

被害者である子どもたちには罰を与えるのではなく、治療を受けさせてあげなければなりません。


数年来、地道にお話をしてきた甲斐あって、いまでは学校の先生方のご理解がかなり得られており、大変うれしく思っています。

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やる気スイッチ

2018年06月13日 | 禁煙治療
「きっかけさえあれば、禁煙するのになあ・・・」


タバコを吸っている人の心の声ランキングというのがあったら、これはかなり高くランクインするのではないでしょうか?

誕生日や元旦から禁煙に挑戦する人、値上げを機会にがんばってみようとする人・・・
あるいは、結婚や子どもが生まれるのをきっかけに、という人もきっと多いですね。

「タバコをやめなければ、孫を抱かせない」と娘から言われたから禁煙外来を受診したという方もいらっしゃいました。



さて、ある日の禁煙外来で・・・・


人は見かけで判断しちゃいけないと思いますが、その日、診察室に入ってきた男性は、長く伸ばした白髪を後ろでまとめ、仙人みたいな風体で、とても頑固そうでもあり、一見とっつきにくい感じのする人でした。


けれど実際に話してみれば、コミュニケーションはすこぶる良好(笑)
こちらが口にした軽い冗談にも笑ってくださり、和やかに禁煙治療の相談がすすみました。



「どうして禁煙しようと思ったのですか?」

帰りがけに、サラリと訊いてみました。


「飼っている犬のためです」


「はっ?! 犬のため??」


「13歳の犬がいて、毎日一緒に寝てるんですが、そいつよりも先には死ねないと思ったんです。だから、酒もタバコもやめて、健康的な生活をして病気にならないようにしようと、一大決心しました! 家族より犬のためです(笑)」


「それはそれは! お犬様もきっと嬉しいでしょうねえ」


「外で吸ったって、タバコの臭いは服とかにつきますよね。今まで(犬に)申し訳なかったなって思います」


「ですね。」



やる気スイッチを押してくれたお犬様に感謝・・・の巻でした。

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拒否の理由

2018年06月12日 | 禁煙治療
以前、ある精神科病院に招かれて禁煙講話をしたことがあります。

病院を敷地内完全禁煙化することにしたので、まずは職員に講話をしてほしいということで私に依頼がありました。

単科の精神科病院を敷地内完全禁煙化!
とても素晴らしい取り組みです。
もちろん喜んで引き受けました。


そして当日、楽しく和やかに講話を終え、さて帰ろうというとき、ひとりの看護師さんが私のところに駆け寄ってきました。


「(私は)タバコを吸わないのに、なんで仕事終わったあとに話聞かなきゃいけないんだろう(怒)って思って嫌々出席したんですけど、聴けてよかったです!」


少し興奮した様子で握手まで求められました。
彼女の話はまだ続きます。


「わたし、バツイチなんですけど、別れたダンナがすごくタバコ吸ってて、そのせいで咳喘息になっちゃったんです。私が肺がんになったらどーするの!タバコやめてよ!って頼んだのに、絶対やめないって言われて…(泣)」


泣かれました。



たしかに離婚は大変です。
当事者でも一言で説明するのは難しいくらい複雑な人生の出来事です。

けれども、この時の彼女の涙は、離婚のゴタゴタを思い出したから、ではないと思いました。


この日彼女は私の講話を聴いて、やっと理解したのです。
どんなに彼女がダンナさんに頼んでも、彼が「タバコはやめない」と断固拒否した理由が。


自分がこんなに苦しい思いをして、タバコをやめてほしいと頼んでいるのに、ダンナがその気持ちを受け取ってくれないのは、自分が愛されていないからなのか?
拒否されるのは自分に落ち度があるからなのか?

彼女はきっとそんなふうに、かなり悩んだり、悲しんだりしたのだろうと思います。

でも彼がタバコをやめないのは、自分が愛されていなかったからではなく、彼が依存症という大きな力に、はがいじめにされていたからなのだと、彼女はそのとき初めて理解し、そして心が開放されたのです。

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