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きんえんSwitter

医者の心の目で日々を綴ります

コントレオナルド

2018年08月14日 | 喫煙防止教育
これまで専門医として多くの方の禁煙をお手伝いしてきましたが、その中には中高生も何人かいます。

そう言うとたいてい、「えっ?中学生や高校生が禁煙外来に?!」と驚かれます。


今の時代、20歳をすぎてからタバコを吸い始める人というのはいないのではないでしょうか?
喫煙開始年齢はどんどん低年齢化し、いまや小学校高学年ともいわれています。


昔、コント・レオナルドというコンビがいました。
レオナルド熊さんはすでに亡くなっていますが、テレビニュースで彼の訃報とともに紹介されたコントがとても印象的でした。


それは、生徒が学校でタバコを吸っていたため、父親が学校に呼び出されて注意を受けているという設定でのコントです。

父親役はバカボンのパパみたいな格好のレオナルド熊さん、教師役は石倉三郎さん。


生徒の喫煙に教師がえらく憤慨しています。

それに対して父親はとても不思議そう。


父親「うちの子どもがどうして悪いんですか?」

教師「どうしてって、だって未成年はタバコを吸ってはいけないでしょ!私だって二十歳になってから吸い始めたんですから(怒)」

父親「えっ?二十歳になってから吸い始めた? あんた、相当な馬鹿だね」

教師「私が馬鹿? それはいったいどういう意味ですかっ(怒)」

父親「だってタバコは子どもが吸うものでしょ。二十歳のオトナにもなって、タバコがからだに悪いってことも知らないなんて、相当な馬鹿ですよ」


いやあ、頭をガツンとやられた感じでした。



それ以来、学校の先生方には、「教育こそがタバコから子どもたちを守る手段なのであり、タバコを吸ってしまった子どもを前にして私たち大人がまずすべきことは、子どもを叱ることではなく、充分な教育を施せなかった自分たちのことを反省することです」とお話するようになりました。
ちょっと偉そうに聞こえちゃいますでしょうか・・・

でも、タバコを吸っている子どもたちに必要なのは罰ではなく治療であることは、ぜひご理解いただきたいと思っています。


タバコを吸っている人に、子どもも大人もありません。
みな「タバコをやめたいけどやめられない」と日々悩んでいるのは同じです。



すべての子どもたちにとって、心身ともに健やかな成長をはぐくむ夏休みとなっていますように。

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七夕の願いごと

2018年07月07日 | 喫煙防止教育
小さな学校では、2~3学年まとめて喫煙防止の授業をすることもあります。


毎年訪れているK小学校では、3年生と4年生のあわせて7人に授業をしました。
4年生は昨年に引き続き2回目です。

授業前のアンケートでは、4年生全員が「将来タバコは絶対吸わない」と書いていました。
昨年授業を受けた効果が表れています。

ところが、3年生のふたりは、「祖父や父が吸っているから、自分もぜったい吸う」と断言していました。



さて、授業を終えたあとの教室でのひととき。

教室の七夕飾りを見せてもらいながら、子どもたちに「七夕様にどんなお願いをする?」と聞いてみました。


すると3年生の一人の子が、少しはにかみながら答えてくれました。

「お父さんがタバコ吸わないように」


4年生の女の子は、「日本からタバコが無くなりますようにって」




新聞に、ある識者がこんなことを書いていました。

「大人と子どもの違いはどこにあるか? そのひとつに、子どもはあれが欲しいだのこれが欲しいだのと、自分のことを中心に考えるものであるが、大人ならば、世の中が平穏であるように、とか、自分以外の人の幸せを願いたいものだ。」


いえいえ、10歳以下の子どもだって、自分本位の願い事ではなく、世界平和や他人の幸せを願うことができるのです。

自分勝手なのは、むしろ大人のほうではないでしょうか?

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タバコとほうれん草

2018年07月04日 | 喫煙防止教育
「どうしてタバコの葉には毒があるんですか?」


喫煙防止教室では、こんな質問をされることがめずらしくありません。

自称タバコ博士としては、子どもたちの疑問にちゃんと答えてあげたいのですが、この質問には、どう答えたらよいのか悩みます。

どうしてって言われてもねえ・・・・


「どうしてほうれん草には栄養があるんですか?」ってきいてるのと同じじゃーんと、頭の固いオトナは思ってしまうわけで・・・



子どもはなにかにつけて、「なぜ?」「どうして?」と聞きたがります。


私の両親は子どもの「なぜ・なに」に答えるのをめんどうに思ったのか、子ども部屋の本棚には百科事典やら、子どもなぜなに辞典みたいなシリーズ本がずらりと揃えてあって、「本に書いてあるから読みなさい」と言われて育ちました。

いまの親御さんなら、「ネットでググりなさい」とか「YouTubeを見てみなさい」でしょうか。


けれど、子どもがボールを投げてよこしたら、やっぱりキャッチボールを楽しみたいです。

答えが無限にありそうな疑問を子どもと一緒に考えてみると、思わぬ楽しい発見があるかもしれません。



そういえば先日のクラスで、「タバコは種類が色々あるようにみえても、中身はみんな同じなんですよ」と、タバコの葉の写真をどーんと見せたら、ある男の子が「えっ?野菜?!」ってつぶやきました。

ひょっとして子どもは、野菜には毒があると思っているんでしょうか?!











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桂歌丸師匠

2018年07月02日 | 喫煙防止教育
喫煙防止教室では、当然ながら喫煙による健康被害について、子どもたちに教えています。

数ある喫煙関連疾患のなかでも、本物の肺の写真を見せながら、病名をきちんと伝えるようにしているのが「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」です。


その理由は三つあります。

1)タバコを吸わなければ、ほぼ予防できる病気であること
2)いまだに多くの患者が診断されず、未治療のままでいること
3)日常的社会生活を脅かす病気であること



タバコを吸っている人の肺が真っ黒に汚れていることは、誰でも知っていますし、禁煙講話などでは必ずといっていいほど、「禁煙したら綺麗な肺に戻りますか?」と質問されます。

残念ながら、肺の奥にこびりついた汚れは、禁煙しても取り除くことはできません。

けれども、肺が壊れる前にタバコをやめれば、機能は回復し、死ぬまで自分の肺で呼吸ができます。


壊れた肺、すなわち、それがCOPDです。

一言でCOPDといっても、その機能障害の程度はタバコを吸っている年月と個人の感受性の違いによって非常に幅が広く、また肺はゆっくりと年月をかけて壊されていくため、本人は重症になるまで自覚しづらいというのも、この病気のやっかいなところです。


私は約20年前、ヒマラヤ登山隊に医師として同行したことがあります。
そのとき、標高5000mのベースキャンプに二ヶ月間滞在したのですが、そのときの私の動脈血の酸素飽和度は常に82%前後でした。
医療現場では、緊急を要する低酸素状態と判断される数字です。

登山では4000mから10日間かけてゆっくりと高度順応していきましたから、二ヶ月間酸素なしですごすことができましたが、食欲低下、倦怠感、気力低下が、下山するまでずっと続いていましたし、ちょっとした指先の切り傷なども治りが悪く、酸素のありがたさを実感できた貴重な体験でした。
また、COPDの患者さんの日常を実感できたことで、医師としてより適切なアドバイスが患者さんにできるようになったと思っています。


本日、桂歌丸師匠がお亡くなりになりました。

歌丸師匠はCOPDと診断され、数年前からCOPDの啓蒙広報活動に賛同・協力してくださっていました。
そのこともあって、子どもたちにもCOPDという病気をより具体的に理解できるよう、師匠の名前を挙げて説明していました。

師匠のご冥福をお祈りしつつ、これからも、子どもたちの将来のために、ご協力いただこうと思っています。










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やめられない、とまらない

2018年06月27日 | 喫煙防止教育
今日は、先日の小学校での喫煙防止教室でのお話を。

小学4年生からの質問です。

「タバコを吸ってなる病気で、一番怖いのはがんですか?」


小学校の5年生と6年生の保健体育のなかで「がん教育」を行うことになりましたが、4年生くらいですと、がんという病気をどんなふうにイメージしているのでしょうか?


「がんも確かに怖いですけど、健康診断を受けて早く見つければ治るがんもありますし、お薬を使いながら、仕事を続けている人もいます。」


すると、がんサバイバーという言葉が子どもの口から飛び出したので、びっくりしました。
いまどきの子どもの情報収集力は、大人の予想をはるかに越えているかもしれません。


「がんや血管の病気は何年も吸い続けないとかかりませんが、タバコを吸ってなる病気のなかで一番怖い病気は、一番早くかかります。それが依存症です。ご飯を食べていても、楽しい映画を見ていても、何をしていてもタバコのことが頭から離れず、吸うのをがまんすると具合が悪くなってしまって、また吸うということを毎日毎日、何年も繰り返すことになるのです」


別の女の子から質問がありました。

「タバコがやめられないのとゲームがやめられないのは同じですか?」


タバコがやめられないのはニコチンという薬物による依存症ですが、ゲームは・・・


WHOによる国際疾病分類というのがあるのですが、これが約30年ぶりに改訂され、ゲーム依存(Gaming)が疾病として正式に追加されました。



「俺、ご飯食べててもゲームしたい!」

「ウンコしながらゲームするぜ」



ニコチン依存症よりもゲーム依存症のほうが深刻になる時代が、もうすぐそこに来ているのかもしれません。




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涙の理由

2018年06月05日 | 喫煙防止教育
先日、喫煙防止教室で小学校4年生の女の子たちに泣かれちゃったっていう話を書きましたが、その後、それを読んだ皆様からの反響の大きさに、正直驚いております。

「子どもはそんなにも親のことを心配しているんだね」、「子どもってすごいね」というのが、おおかたのご感想です。


訪れた学校の先生方とは常日頃そういう話をしていますが、とにかく今の親御さんたちは、子どもたちが親のことをどんなに想っているか、ということをご存じなさすぎです。
まずはそのことだけでも、知っていただければ・・・と思っています。




こういう世の中ですから、タバコはからだによくないなんてことは、うすうす子どもだって知っていますし、そもそも本能でもって「タバコは毒だ」と認識できています。
(タバコが臭いのは、腐った食べ物は変な味がするっていうのと同じです)


ですから、普段、その毒ガスを美味しそうに吸っているお父さんやお母さんを見て、子どもたちは不思議に思ったり、ほんとうは良くないことなんじゃないかと疑問に思ったりしているのですが、多くの子どもはそれを口に出せないでいます。


そこへある日、学校へやってきたお医者さんから、タバコの本当の話を聴かされます。

すると、ああ、やっぱりそうだったんだ、自分たちがうすうす感じていたことは本当だったんだと、心に何かストンと落ちるものがあり、その瞬間、感受性の高い子は泣いてしまったりするんだと思います。



なかにはすでに、喫煙している家族に「タバコをやめてほしい」と頼んだことのある子もいます。

でも、たとえ可愛い子どもや孫に懇願されても、簡単にはやめられないのがタバコです。



「どう言ったらタバコをやめてもらえますか?」

「言ってもむだなので、もうあきらめています」


こんな子どもたちの声も、教室で聞かれる今日この頃です。

ではまた。






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Tobacco breaks Hearts

2018年06月02日 | 喫煙防止教育
喫煙防止教室は、小学校低学年からが望ましいと思い、取り組んでいます。

ある日、こんなことがありました。

小学4年生のクラス。

女の子の双子ちゃんがいたのですが、授業の途中からその双子ちゃんたちが泣き出してしまうというハプニングに見舞われました。


「こわいよー!おかあさんが死んじゃうよー(泣)」
「どうしてタバコなんか吸うの~?!」
「ニコチンのせいなの~?!」
「いまやめれば、じゅみょうはもどる?」


子どもたちは授業を通して「タバコの本当の話」を知ります。
すると、吸っているお父さんやお母さんたちのこと、あるいは受動喫煙してしまっている自分たちの健康のことが心配になって、授業中に泣きだしてしまう子がたまにいます。

今回はしかも双子ちゃん。
いきなりダブルで泣かれ、更にそれにつられて泣き出す女の子も。
かたや男の子たちはといえば、半ば呆れ顔で「授業中に泣くなよー」と。

教室は騒然となり、大変なことになりました。


さて、どうにか授業を終えた後、子どもたちのフォローをするために、しばらく教室に残っていたところ、「お父さんは小さいときに死んじゃったから」「お母さんだけなんだよね」と、クラスメートたちが双子ちゃんたちの家庭の事情を教えてくれました。


以前にも授業中、やけに熱心に質問をしてくる子がいるなあと思ったら、後になってその子の家庭もシングルペアレントで、しかもタバコを吸っているのだということを養護の先生から教えてもらい、なるほどと思ったことがありました。


子どもにしてみれば、親の健康はまさに死活問題です。



WHOが掲げた2018年の世界禁煙週間スローガンは「Tobacco breaks hearts」。

これはもちろん「タバコは心血管系疾患のリスクを高める」という意味ですが、子どもたちの「心」も同時に傷つけてしまっているのだということを、ぜひ知っていただきたいです。


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