炭素の科学

宇宙で水素、ヘリウムに次いで3番目に出来た安定な元素で、生命体に必須の有機化合物の基本の元素である炭素について知ろう

18 炭素原子と星間分子

2018年09月20日 | 科学
今日、多数の星間分子の存在が報告されている。そのうちで2原子分子や3原子分子には炭素を含まない分子も多く存在する。ところが4原子以上の原子で出来た分子には殆どの分子に炭素が含まれている。それらの分子を構成している炭素以外の元素としては、水素、酸素、窒素が殆どである。これは宇宙の歴史で早い時期に炭素が作られたことと、酸素や窒素が炭素から直接導かれていること、および、炭化水素系の分子の結合解離エネルギーが関係している可能性が大である。 . . . 本文を読む
コメント

17. 炭素化合物の多様性

2017年05月08日 | 科学
炭素を含んだ化合物は原理的には無数にあるといってよい。その主な理由は炭素原子の持つ電子の軌道による。一般の炭素化合物は、炭素原子が他の原子と共有結合によって結ばれてできた分子によってを構成されている。共有結合は原子の外郭軌道にある電子のうちの不対電子を共有することによて作られるが、元素によって結合に利用できる外郭電子の数に制限がある。炭素は外郭電子の全てを結合に使うことができ、かつ分子を形成するときに使用される原子の混成軌道が複数存在することで、形成される分子の構造の種類が増大する。さらに、炭素の電気陰性度も形成される炭素化合物を安定なものにしている。 . . . 本文を読む
コメント

16.複素環式化合物

2016年12月09日 | 科学
宇宙における第二世代の星形成の多くの場では、炭素や酸素の存在によって窒素が作られるが、大きい星ではその他に様々な元素が作られる。有機化学の分野では、水素と炭素以外の原子をヘテロ原子と呼ぶ。環状の炭化水素の一部の炭素原子がヘテロ原子に置き換わった分子を複素環式化合物とよび、環が一つの分子を複素単環化合物、環が二つ以上の分子を縮合複素環化合物と呼ぶ。複素環化合物には、小さな分子でも異なった構造を持つ分子が多種存在し、それらを統一した方法で命名するには、炭化水素分子の場合に比べて、はるかに複雑な規則が必要となる。ここでは、複素環化合物の代表的なものについて紹介する。 . . . 本文を読む
コメント

15.複雑な構造の炭化水素

2016年12月04日 | 科学
有機化合物の構造の基本を形成する炭化水素分子は、第一世代の星形成の時点から作られた可能性がある。炭素どうしは共有結合を介して無数につながることが可能である。共有結合には、単結合、二重結合、三重結合がある。これらの結合を介して作られる炭化水素分子の構造には、鎖状炭化水素、単環炭化水素、縮合環炭化水素、橋かけ環炭化水素、スピロ炭化水素等がある。したがって、少数の炭素でも複雑な構造の炭化水素分子が多種類形成される。少し炭素数が増加すると形成される分子の種類は膨大な数になる。それらの分子を確実に同定するためには世界的に統一された命名法が必要であり、そのためにIUPACの命名法が提唱されている。ここでは、典型的な炭化水素分子の構造と命名法を紹介する。 . . . 本文を読む
コメント

14. 炭化水素分子内の炭素ー炭素結合と電子

2016年11月15日 | 科学
宇宙で原子が形成された後の早い時点から炭化水素分子は存在したと考えられる。メタン以外の炭化水素分子は炭素と炭素の結合によって骨格が形成されている。炭素原子と炭素原子を結ぶのは電子である。分子を形成する炭素-炭素の結合の仕方には単結合、二重結合、三重結合が存在し、それらの結合の分子内での存在状態によって電子の軌道が変化し、分子の構造や反応性が大きく左右される。 . . . 本文を読む
コメント (11)

13.星(恒星)と炭素

2016年08月26日 | 科学
炭素は星(恒星)の中でヘリウムからで作られる。ただし、炭素を作れる星の質量は、太陽の50%以上である必要がある。炭素は、十分大きな星の中では、炭素どうしが融合する炭素燃焼過程、酸素どうしが融合する酸素燃焼過程、ケイ素が1個のヘリウムと融合し、その生成物がさらに1個のヘリウムとの融合を繰り返すケイ素燃焼過程を経て、宇宙に存在する主要な元素に変換され、最終的には鉄に変換される。炭素や酸素は作れるが、炭素燃焼過程がおこるほどの大きさがない星の場合には、赤色巨星となる。赤色巨星の中の漸近巨星分枝星に分類される星の中には炭素に富んだ炭素星と呼ばれる星がある。炭素星の外層では炭素を含んだ様々な分子が形成される。 . . . 本文を読む
コメント

12.窒素を含んだ有機化合物と無機化合物

2016年07月27日 | 科学
窒素は宇宙の元素合成で水素、ヘリウム、リチウム、炭素、酸素に続いて作られる安定元素で、宇宙における物質形成の初期から存在した。水素、炭素、酸素、窒素は有機化合物を構成する主要元素で、それらの元素の組み合わせで様々な化合物が作られる。したがって、条件さえ整えば宇宙における物質形成の早い時点から有機化合物が存在した可能性があり、星間分子にも窒素を含んだ化合部tが多く存在する。 . . . 本文を読む
コメント

11.窒素の形成と水素と炭素と酸素

2016年05月14日 | 科学
有機化合物を形成する主要元素には水素、炭素、酸素のほかに窒素がある。星内部で窒素原子が合成されるためには、水素から陽子-陽子連鎖反応を経たヘリウムの合成、ヘリウムからトリプルアルファ反応を経た炭素の合成とそれに付随した酸素の合成、炭素と酸素の存在を前提にしたCNOサイクルを経る必要がある。これらの過程では有機化合物を構成する主要な安定元素の同位体も形成される。 . . . 本文を読む
コメント

10.分子内での炭素と酸素の共有結合

2016年04月15日 | 科学
酸素は宇宙で水素、ヘリウム、炭素に次いで4番目に蓄積された安定元素である。有機分子においては、酸素原子は2本の共有結合を作ることができて、その結合の仕方で、分子に様々な性質を付加する。この性質を決定づける酸素を含んだ原子又は原子団を特性基又は官能基と呼び、分子を名命名する時に使われる。有機分子の命名法には置換命名法と官能種類命名法があり国際基準が示されている。炭素と酸素で形成された無機化合物としては、一酸化炭素と二酸化炭素が代表的な存在であるが、一酸化炭素の分子軌道は、共有結合のみでは表現できず、共有結合とイオン結合の共鳴混成体で表現される。 . . . 本文を読む
コメント

9.炭化水素分子内での炭素の結合

2016年03月24日 | 科学
炭素は宇宙で水素とヘリウムに次いで3番目に蓄積された安定元素である。従って、宇宙における物質形成の早い時点から炭素と水素の結合した分子が存在したと考えられる。炭素と水素で作られた分子を炭化水素と呼ぶ。炭素が分子を形成する場合には、炭素の 2s 軌道と 2p 軌道が混合して混成軌道と呼ばれるものに変化する。炭素ー炭素の結合には、単結合、二重結合、三重結合があり、それらの結合形成には、炭素原子の 2s 軌道と 2p 軌道にある電子軌道の混合によって形成されたそれぞれ sp3 sp2 sp と呼ばれる異なった混成軌道が使われる。炭素ー炭素結合の中心的役割を果たすのはσ 結合と呼ばれる結合でこの結合が分子の骨格を形成する。炭素の原子軌道のうち混成軌道の形成に関与しなかった p 軌道に存在する電子は、2本目、3本目の結合を形成し、この結合は π 結合と呼ばれる。 . . . 本文を読む
コメント (1)