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若竹七海の女探偵・葉村晶シリーズ『不穏な眠り』あらすじ・ネタバレ感想

若竹七海さんの葉村晶シリーズ『不穏な眠り』のあらすじ・ネタバレ感想。
『不穏な眠り』はシリーズ6冊目。
短編集だけど恒例の『富山店長のミステリ紹介』もちゃんとあるよ。
そして短編でありながら内容は濃いわ~。


『不穏な眠り』

著者:若竹七海
発行:株式会社文藝春秋
(文春文庫)
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『不穏な眠り』あらすじ・ネタバレ感想


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『不穏な眠り』あらすじ 

【水沫隠れの日々】
ミステリ専門書店[MURDER BEAR BOOKSHOP]のアルバイト店員にして、本屋のオーナー店長・富山泰之が冗談で始めた[白熊探偵社]の唯一の調査員・葉村晶は、ある日蔵書処分依頼の電話を受ける。
藤本サツキと名乗る女性は余命宣告を受けており、本の処分以外に探偵に何やら頼み事があると言う。
サツキは訪ねて来た葉村に、親友の娘・遙香を迎えに行き、間違いなく自分の元に連れて来るように頼む。

遙香は親の死後、サツキに引き取られたものの悪さばかり働いており、何度も覚醒剤の所持、使用で逮捕されていた。
そして武井総二郎という47歳の男性と不倫のあげく相手を焼死させて服役した。
遙香の満期出所の日に刑務所へ迎えに行きサツキの元へ連れて行くだけの簡単な仕事であったが、サービスエリアで遙香が何者かに拉致されそうになる。

葉村に問い詰められた遙香は、武井が死んだ日のことを詳しく話す。
遙香は武井が手に入れた「すげえの」を試したかったが聞き入れてもらえず火をつけたと言い、そこから推測するにどうやら追っ手も「すげえの」を探しているようだ。
その「すげえの」の為に、何人かが左手の指をうっかりミキサーに挟んでいて……。


【新春のラビリンス】
アルバイト収入が激減した葉村晶は、いつものように[東都総合リサーチ]の桜井肇から「楽で美味しい」仕事を引き受ける。
急に警備員がトンズラした為、[柊警備SS]の警備員として大晦日に「出る」と評判のビルの警備に入る、という仕事だ。
凍えながら一晩耐えきって営業所に報告に戻り帰ろうとしたところを事務員の公原楓に腕を掴まれる。
楓はトンズラした警備員・工藤強志の恋人で安否を知りたい、ついては警察の知り合いに調べてもらえないかと言い出し……。


【逃げだした時刻表】
葉村晶に奇声を発しながらパンチを浴びせているのはミステリ専門書店[MURDER BEAR BOOKSHOP]の看板猫であった。
何者かにスタンガンで気絶させられた葉村は店から『THE ABC RAILWAY GUIDE』が無くなっている事に気づく。
『THE ABC RAILWAY GUIDE』は、オーナーの1人・富山泰之が思いついた《鉄道ミステリ・フェア》の目玉として、富山が箕輪重光に貸してもらったものである。
気絶させられてから猫に起こされるまでわずか数分の間に盗まれた『THE ABC RAILWAY GUIDE』を取り返そうと葉村は動く。


【不穏な眠り】
ミステリ専門店[MURDER BEAR BOOKSHOP]のご近所さん・鈴木品子からの依頼で、原田宏香という亡くなった女性と親しかった人を探すことになった葉村晶。
最初は鈴木家が貸していた家の隣に住む岩尾家を訪ねることにする。
ところが岩尾家でうっかり首を絞められる。
その後も原田宏香を知っていそうな人間を訪ね歩くが、包丁を持ち出されたりと散々な目にあう。
一体原田宏香とはどういう人間なのか。

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『不穏な眠り』ネタバレ感想 

【水沫隠れの日々】
富山が『吉祥寺ミステリアリーナ』と言う本を出版し、取材や執筆、大学の公開講座の講師依頼などで忙しくなり、ミステリ専門書店[MURDER BEAR BOOKSHOP]の営業日を週末限定にしてしまった為、葉村のアルバイト収入は激減する。
不足は[白熊探偵社]の調査料で稼ぐしかないという困窮ぶりの葉村だったが、探偵業の方も簡単には稼げない。
週5日でフルタイムのアルバイトをした方がマシではないだろうか(笑´∀`)

依頼人・藤本サツキは自分の病気のことを11ページでこう表現する。
「ボリス・ヴィアン風に表現すると、肺に睡蓮の花が咲いて、あと半年の余命宣告をされちゃいましたの」
お洒落な言い方だが気が重くなる。

サツキは最後に親友の娘を自分の元に連れてくることを葉村に頼むが、悪さばかりしている他人の子にそんなに会いたいか?
そういう疑問が浮かんだ途端に、サツキの左手は手袋で隠されていたと思い出した葉村は、真の目的に気づいてしまう。
「すげえの」を探している連中と関わった何人かの人達の左手はうっかりミキサーに挟まれていた。

サツキは遙香が憎くてたまらなかったのだ。
もう死ぬというところまできて、絶対に遙香に復讐せずにはいられなかったのだ。
散々迷惑をかけられ、恐怖を味わった上、躯を不自由にされたのは全て遙香のせい。
だとしても、死を覚悟したら穏やかに逝きたいとは思わないのだろうか?
思わないのが人間というものなんだろう。


【新春のラビリンス】
図々しい人間はどこにでもいる。
最初はおとなしめに依頼してきた公原楓だが葉村が引き受けた仕事を確実にこなすうちに要求がエスカレートしていく。
最後には殺人犯を捕まえろときた。
結局、葉村は儲かったのだろうか?
あれだけ振り回されたら儲かったとは言えまい、疲れはハンパないだろうが。

この話では『M資金詐欺』が扱われている。
コロワイド会長が30億円も騙されたっちゅうアレのことだ。
実は『M資金』やもどきの詐欺は有名な手法なので、ニュースを聞きながら未だに騙される人がいるのかと驚いた(゜◇゜)
『M資金』はウィキペディアにも書き込まれているし小説のネタにも使われている。
『徳川埋蔵金』と同じくらい胡散臭い。

以前感想を書いた『仁義なきギャル組長』も『M資金』をネタにしたものだ。
私のような貧乏人のところには絶対舞込まない詐欺だ。


【逃げだした時刻表】
[MURDER BEAR BOOKSHOP]の看板猫は、NHKのドラマ『ハムラアキラ』では白黒猫だったが、小説ではオレンジのトラ猫だ。
そう言えば、若竹七海さんの小説にはトラ猫が出てくるイメージがあるなぁ。

それはそうと、【逃げだした時刻表】は随分と図々しいお金持ちが出てくる。
葉村はこのお金持ち同士の意地の張り合いに巻き込まれたようなものだ。
解決してもやっぱり儲からない葉村だった。


【不穏な眠り】
既に死んだ人間の知り合いを探すというのはいかに探偵と言えども面倒で難しい。
それでも葉村晶はご近所の品子の依頼をまっとうしようとする。
葉村って義理堅いよね。
そこはもう投げ出してもいいんじゃないか。
1軒目でうっかり首を絞められた時点で、「無理!」でいいじゃんと思うのだが、葉村晶は諦めない。
この諦めの悪さと義理堅さで掘り返しちゃいけないものを掘り返しちゃうんだけど。
探偵としては優秀でも不器用な葉村が、私は好きだなぁ。


以上、『不穏な眠り (文春文庫)』感想でした。

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ご訪問ありがとうございました(人´∀`*)

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