忘れないうちに演劇評をひとつ。三坂知絵子(http://www.studio-2-neo.com/)が久々に月蝕歌劇団の公演に出るというので、22日(日)に会場の「ザムザ阿佐ヶ谷」まで行ってきた。劇団創立20周年記念と銘打たれた今回の公演のお題は『金色夜叉の逆襲』。
それにしても、月蝕歌劇団(http://www.gessyoku.com/)という劇団について聞かれた場合、私はいったいなんと説明したらいいのか。三坂から誘われるまま公演を観に来るようになってかれこれ5年になるが、未だにわからないのだ。「宝塚が凶暴化した集団」とか「ステージ上でセーラー服姿の三坂が口から火炎放射をしたりする教団(もとい、劇団)」などと書けばわかりやすいだろうか。いや、わかりやす過ぎて誤解を受けるか。
演劇オンチの私が無理に説明するのもなんだが、あの寺山修司にゆかりを持つアングラ劇団で、幻想文学やコミックの名作を題材に、女性が主体の俳優陣がハチャメチャな中にも耽美的な美しさのあるお芝居を毎回演じている(なんて説明でいいのかな?)。主宰者として台本や演出を担当するのは劇作家の高取英さんで、毎回客席の片隅に、その独特の風貌と巨体が見える。
で、今回の『「金色夜叉」の逆襲-私は月蝕を自ら操作するのだ-』(これが正式な作品タイトル)だが、これは尾崎紅葉の名作「金色夜叉」を原作にしたとか、その続編を描いたというものではない。劇中の説明によると、「金色夜叉」の主人公・間寛一には(ほんとかどうか知らんが)モデルとなった実在の人物(巌谷小波という児童文学者だそうだ)がいて、その彼の遺した児童文学作品の登場人物たちが、自分を生んでくれた作者を悲惨な末路(薬で自殺)から救うべく、「夜叉」の題材となった彼の過去の悲恋(「お宮」にあたる女性との)を成就させようと過去にタイムスリップする--というものなのであった。
こういう史実とフィクション、時空間を思いっきりワープしまくる展開は月蝕歌劇団のお手のもので、私も毎回あまりストーリー的なツジツマはあまり深く考えないようにしながら楽しく観ている。何しろこの人たちの場合セーラー服やら軍服やらSM嬢やら鉄腕アトムやらの格好をした女優たちが次から次へとステージ上で踊りだしたり火を噴いたりプロレス技をかけたり、あげくのはてには客席に向かって水しぶきをぶっかけたり(だから毎回客席最前列には防水用のビニールシートが用意されている)という具合なので、客にもそんなことを考えている余裕はないのだ。まあその意味で今回の「金色夜叉の逆襲」は大人しかったほうだけど、しかし前から3列目に座っていた私は水しぶきの顔面シャワーを浴びた。
とはいえそんな慌しい芝居の中にも何というのかな、人間の、特に家族や男女の間に横たわる愛情と表裏一体の暗い情念みたいなものについての掘り下げが毎回きちんとなされていて、劇全体を散漫なものにせず、最後までテンションを持続したままクライマックスになだれ込んでいく展開はさすがである。また、公演ごとにさまざまなゲストが起用されたりするのも楽しみで、今回は「黒色すみれ」という女性2人のユニット(ボーカル&キーボード、バイオリン)が独特の味わいを出していた。2人は公演の前に行われた詩読ライブにも出演していたが、その歌と演奏はなかなかのもので、いずれまたどこかでライブを見てみたいとも思った。
常連の役者では、私がほとんど「追っかけ」と化している三坂知絵子は相変わらず上手いし、ほかの役者にない存在感を見せている。正式な劇団メンバーではないためか以前は登場シーンもあまり多くなかったのだが、今回はより重要な役を演じていたようで何より。主演の一ノ瀬めぐみは、以前からいい女優さんだなと思っていたが、今回はいつもの学生服姿ではなく、清楚な着物姿がとても似合っていた。
ただ、月蝕も最初に私が観にいった5年前から比べると、だいぶ役者の世代交代が進んだようだ。いかにも正統派の美少女といった印象の長崎萌が今回は出演していなかった一方で、たぶん20代前半という感じの若手の女優が今回はけっこう大勢がんばっていて、一ノ瀬や三坂がなんだか風格のある中堅クラスという感じにも見えるようになってきた。今後いつまで三坂たちの芝居をここで観ることができるのかな--とも、ふと思った次第だ。
それにしても、月蝕歌劇団(http://www.gessyoku.com/)という劇団について聞かれた場合、私はいったいなんと説明したらいいのか。三坂から誘われるまま公演を観に来るようになってかれこれ5年になるが、未だにわからないのだ。「宝塚が凶暴化した集団」とか「ステージ上でセーラー服姿の三坂が口から火炎放射をしたりする教団(もとい、劇団)」などと書けばわかりやすいだろうか。いや、わかりやす過ぎて誤解を受けるか。
演劇オンチの私が無理に説明するのもなんだが、あの寺山修司にゆかりを持つアングラ劇団で、幻想文学やコミックの名作を題材に、女性が主体の俳優陣がハチャメチャな中にも耽美的な美しさのあるお芝居を毎回演じている(なんて説明でいいのかな?)。主宰者として台本や演出を担当するのは劇作家の高取英さんで、毎回客席の片隅に、その独特の風貌と巨体が見える。
で、今回の『「金色夜叉」の逆襲-私は月蝕を自ら操作するのだ-』(これが正式な作品タイトル)だが、これは尾崎紅葉の名作「金色夜叉」を原作にしたとか、その続編を描いたというものではない。劇中の説明によると、「金色夜叉」の主人公・間寛一には(ほんとかどうか知らんが)モデルとなった実在の人物(巌谷小波という児童文学者だそうだ)がいて、その彼の遺した児童文学作品の登場人物たちが、自分を生んでくれた作者を悲惨な末路(薬で自殺)から救うべく、「夜叉」の題材となった彼の過去の悲恋(「お宮」にあたる女性との)を成就させようと過去にタイムスリップする--というものなのであった。
こういう史実とフィクション、時空間を思いっきりワープしまくる展開は月蝕歌劇団のお手のもので、私も毎回あまりストーリー的なツジツマはあまり深く考えないようにしながら楽しく観ている。何しろこの人たちの場合セーラー服やら軍服やらSM嬢やら鉄腕アトムやらの格好をした女優たちが次から次へとステージ上で踊りだしたり火を噴いたりプロレス技をかけたり、あげくのはてには客席に向かって水しぶきをぶっかけたり(だから毎回客席最前列には防水用のビニールシートが用意されている)という具合なので、客にもそんなことを考えている余裕はないのだ。まあその意味で今回の「金色夜叉の逆襲」は大人しかったほうだけど、しかし前から3列目に座っていた私は水しぶきの顔面シャワーを浴びた。
とはいえそんな慌しい芝居の中にも何というのかな、人間の、特に家族や男女の間に横たわる愛情と表裏一体の暗い情念みたいなものについての掘り下げが毎回きちんとなされていて、劇全体を散漫なものにせず、最後までテンションを持続したままクライマックスになだれ込んでいく展開はさすがである。また、公演ごとにさまざまなゲストが起用されたりするのも楽しみで、今回は「黒色すみれ」という女性2人のユニット(ボーカル&キーボード、バイオリン)が独特の味わいを出していた。2人は公演の前に行われた詩読ライブにも出演していたが、その歌と演奏はなかなかのもので、いずれまたどこかでライブを見てみたいとも思った。
常連の役者では、私がほとんど「追っかけ」と化している三坂知絵子は相変わらず上手いし、ほかの役者にない存在感を見せている。正式な劇団メンバーではないためか以前は登場シーンもあまり多くなかったのだが、今回はより重要な役を演じていたようで何より。主演の一ノ瀬めぐみは、以前からいい女優さんだなと思っていたが、今回はいつもの学生服姿ではなく、清楚な着物姿がとても似合っていた。
ただ、月蝕も最初に私が観にいった5年前から比べると、だいぶ役者の世代交代が進んだようだ。いかにも正統派の美少女といった印象の長崎萌が今回は出演していなかった一方で、たぶん20代前半という感じの若手の女優が今回はけっこう大勢がんばっていて、一ノ瀬や三坂がなんだか風格のある中堅クラスという感じにも見えるようになってきた。今後いつまで三坂たちの芝居をここで観ることができるのかな--とも、ふと思った次第だ。