映画の話である。「ゲオ」に行ったら新作レンタルしていたので観てみた。
観ていない人は「ネタバレ」するので読まないほうがいいかも知れない。
武器商人の現実を描いている。ただ陰惨さはない。いや陰惨さはあるのだが、ないように描いている。主演はニコラスケイジで、実に洗練された紳士風の武器商人である。
最後に彼は正義漢の当局者(インターポール)につかまる。終身刑だと言われる。しかし彼は言う。今に君の上司が来て、君をほめ、昇進させ、そして僕を釈放する。
なぜなら、君のボス(アメリカ大統領)の代わりに僕が手を汚しているからだ。非合法の武器は僕が売る。アメリカの敵の敵に。
合法的な武器は君のボス(アメリカ大統領)が売る。僕が一年で売るより多くの武器を一日で売っている。とも主人公は言う。その言葉通り彼は釈放される。
反戦映画ではない。「これが現実だ。あきらめろ。良心と戦うな。」というセリフが何度かでてくる。
最後にナレーターが入る。世界の武器生産、輸出のほとんどはアメリカ、ロシア、中国、フランス、イギリスが担っている。この国々は国連の安全保障理事国である、と。
反戦映画でもなく、アメリカ軍需産業批判の映画でもなく、つまりは「諦めろ、世界に平和などこない」と訴えているような映画であった。シニカルでもなく、感情的でもなく、淡々と訴えているような映画であった。
主人公が主に武器を売る相手はアフリカ諸国やアフリカの軍閥。主人公の売った武器によって、難民が虐殺されるシーンも、淡々と描いていた。
つまり言いたいこと、(がこの映画にあるとすれば)、こうだ。
安全保障理事国は同時に強大な武器輸出国である。しかし、彼らは中東や南アジアや東アジアでは殺し合いにまで至る紛争はおきてほしくない。ただ武器が売れる程度の軍事的緊張はあったほうがいい。アフリカでは派手に殺し合いをしてもらいたい。いくらでも武器は輸出する。
この映画はそう言ってるように僕には思えた。アフリカの地獄的という形容では足りない現実(らしきもの)を、淡々と描いている点が興味深かった。ひどいすぎる状況だ。正直僕は興味を持って調べたことがなく、反省した。
武器産業の件。まあ、事実に近いだろうな。こんな戦争プロのような常任理事国相手に日本が勝負できるはずもない。ただし、日本が間接的に関わっている武器生産の実態はどうなっているのだろうか、とふと考えた。部品として輸出して武器の一部になっている製品はかなり多いのだろう。すると日本もまるっきりの素人ではなく、戦争プロの下請けのような存在ということになる。
別に僕は「はいそうですか」と諦めたりはしないし、絶望もしない。つまりこの程度の映画に影響はされない。(アフリカの現実には興味を持った)
しかし若い子には毒にも薬にもなる映画だろう。「これが現実さ」となるか「こんな現実許せない」となるか。僕には予想がつきにくい。
できれば「ガンジー」とか「プラトーン」とかも一緒に見ることを若い人には薦めたい。
おもしろくはないが、興味深い映画であった。