10月24日の敗戦をもって、プロ野球楽天球団の2009年のシーズンは終わった。 野村さんは、現時点で他の球団からのオファーがないことや高齢であることからして、プロ野球界での監督人生は今シーズン限りで終えるものと思われる。
はたして、野村監督は一流の監督だったのだろうか?統計的手法で評価してみたい。
プロ野球の監督に求められる役割は、大別すると以下の3点である。
①チームの指揮官として、ゲームの采配をふるうこと
②選手の発掘、育成
③集客力
この3つの要素のうち、ここでは、①の「チームの指揮官として、ゲームの采配をふるうこと」に絞って考えてみた。
監督能力を計る指標としては、拙ブログ内で度々、引用している、大竹文雄の監督効果式(※『経済学思考のセンス』より)を利用する。
監督効果式について、おさらいの意味で説明すると以下の通り
------------------------------------
1)一般に、野球の勝敗に監督の采配が影響する部分を推定することは難しい。
なぜなら、よい成績を納めたチームといえども、その原因が、選手が良かったからなのか、監督が良かったからなのか、もしくはその他の要因(例えばファンの声援等)なのかを特定することは困難であるからだ。
2)監督効果式では、とりあえず、勝利というものについては、選手の能力により決まるものと仮説を立てた。
3)選手の能力を「打率」「ホームラン」「防御率」の3要素に絞り、過去の勝率データと照らしあわせたところ、以下の式が導かれた。
ln(チーム勝率)=-0.853+1.305ln(打率)+0.108ln(本塁打)-0.737ln(防御率)+(監督効果)
4)これによると、各チームの上記の3要素が判れば、この式で概ねの順位が推定できる。大竹氏の論文によると精度は高いとのこと。 5)決定式で推定される残差を監督の能力とした。たとえば、決定式で5位と推定されるチームが3位になったとするとこの差(2位分)が監督効果とした。
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今回、私は野村監督が楽天を率いるようになってからの2006年~2009年までの実績を調べてみた。 まず、躍進を遂げた今シーズンをみてみる。予測式から導かれる推定順位と実際の順位は以下の通り。
推定順位 実際順位
1位 日ハム 日ハム
2位 ソフトバンク 楽天
3位 西武 ソフトバンク
4位 楽天 西武
5位 オリックス ロッテ
6位 ロッテ オリックス
推定順位が4位なのに対し、実際の順位は2位と監督効果による順位引き上げ効果はあるように見える。(※この順位予測式と実際の順位との差が2以上あるのは珍しい。)
ちなみに、セリーグの推定式の結果は以下の通りである。(順位予測式が実順位とかなり近いことがみてとれる)
推定順位 実際順位
1位 巨人 巨人
2位 中日 中日
3位 阪神 ヤクルト
4位 ヤクルト 阪神
5位 広島 広島
6位 横浜 横浜
こうした結果をみれば、なるほど野村監督の手腕を評価することができる。
NHKの番組(10月17日放送『追跡!AtoZ』)でも、今シーズンの昨年より選手の成績が悪いにも関わらず、今シーズンの順位がジャンプアップしたことを評価するような論調で取り上げられていた。
昨シーズンと今シーズンの楽天選手の成績を比較すると、確かに今シーズンのほうが悪い。
・08本塁打 94 (リーグ5位) → 09本塁打 108(リーグ6位)
・08打率 0.274(リーグ1位) → 09打率 0.267(リーグ3位)
・08防御率 3.89(リーグ3位) → 09防御率 4.01(リーグ3位)
しかし、逆の見方はできないだろうか?実は、昨年の4位という順位が不本意であるという見方だ。
そこで、2006~2008年の監督効果を調べてみたところ、以下の通りであった。
推定順位 実際順位 引き上げ効果
2008年 2位 4位 -2位
2007年 6位 4位 +2位
2006年 6位 6位 0位
やはり、2008年はの成績は不本意と言わざるをえない。もちろん、2009年は上出来だし、こうなると野村監督の采配の手腕の実力はどうもはっきりとしない。
楽天監督以前の過去のデータは調べきれなかったので、『経済学的思考のセンス』の論文のランキングをみても、ベスト20には入っていない。もしかすると勝率を引き下げるぐらいの監督なのかもしれない。(著者の大竹氏は、勝率を下げる監督のランキングは載せていない)
ただ、冒頭にあげた名監督の条件のうち、③の「集客力」という面では、紛れもなく名監督だったと思う。試合後の毒舌を交えたインタビューはいつも傑作だった。このあたりは、いくら結果を出しても日の目をみない現役時代の苦い経験が影響しているのだろうか、現役時代に花形プレーヤーだった原監督や王前監督のつまらない優等生発言とは対象的だった。(一方、球団は企業の広告塔でもあるので、そういった毒舌キャラクターが自らが追われる一因になったのだろう。)
ところで、野村監督の退任を惜しむ声は多いが、はたして「引き際」としてはどうだったのだろうか?
私は、まずまずのタイミングではないかと考えます。なぜなら
①留任するなら、今年以上(1位)の成績が求められる。
②だが、前出のとおり、今シーズンの成績はやや"出来過ぎ"のところがあり、これ以上を望むことは難しい。
③人の印象は、「最後の印象」で決まることが多い。(※行動経済学でも「ピークエンド効果」として知られている)惜しまれる今がピークではないかと思うのです。
一球の心理学―勝敗を分ける微妙なアヤを読み解く
はたして、野村監督は一流の監督だったのだろうか?統計的手法で評価してみたい。
プロ野球の監督に求められる役割は、大別すると以下の3点である。
①チームの指揮官として、ゲームの采配をふるうこと
②選手の発掘、育成
③集客力
この3つの要素のうち、ここでは、①の「チームの指揮官として、ゲームの采配をふるうこと」に絞って考えてみた。
監督能力を計る指標としては、拙ブログ内で度々、引用している、大竹文雄の監督効果式(※『経済学思考のセンス』より)を利用する。
監督効果式について、おさらいの意味で説明すると以下の通り
------------------------------------
1)一般に、野球の勝敗に監督の采配が影響する部分を推定することは難しい。
なぜなら、よい成績を納めたチームといえども、その原因が、選手が良かったからなのか、監督が良かったからなのか、もしくはその他の要因(例えばファンの声援等)なのかを特定することは困難であるからだ。
2)監督効果式では、とりあえず、勝利というものについては、選手の能力により決まるものと仮説を立てた。
3)選手の能力を「打率」「ホームラン」「防御率」の3要素に絞り、過去の勝率データと照らしあわせたところ、以下の式が導かれた。
ln(チーム勝率)=-0.853+1.305ln(打率)+0.108ln(本塁打)-0.737ln(防御率)+(監督効果)
4)これによると、各チームの上記の3要素が判れば、この式で概ねの順位が推定できる。大竹氏の論文によると精度は高いとのこと。 5)決定式で推定される残差を監督の能力とした。たとえば、決定式で5位と推定されるチームが3位になったとするとこの差(2位分)が監督効果とした。
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今回、私は野村監督が楽天を率いるようになってからの2006年~2009年までの実績を調べてみた。 まず、躍進を遂げた今シーズンをみてみる。予測式から導かれる推定順位と実際の順位は以下の通り。
推定順位 実際順位
1位 日ハム 日ハム
2位 ソフトバンク 楽天
3位 西武 ソフトバンク
4位 楽天 西武
5位 オリックス ロッテ
6位 ロッテ オリックス
推定順位が4位なのに対し、実際の順位は2位と監督効果による順位引き上げ効果はあるように見える。(※この順位予測式と実際の順位との差が2以上あるのは珍しい。)
ちなみに、セリーグの推定式の結果は以下の通りである。(順位予測式が実順位とかなり近いことがみてとれる)
推定順位 実際順位
1位 巨人 巨人
2位 中日 中日
3位 阪神 ヤクルト
4位 ヤクルト 阪神
5位 広島 広島
6位 横浜 横浜
こうした結果をみれば、なるほど野村監督の手腕を評価することができる。
NHKの番組(10月17日放送『追跡!AtoZ』)でも、今シーズンの昨年より選手の成績が悪いにも関わらず、今シーズンの順位がジャンプアップしたことを評価するような論調で取り上げられていた。
昨シーズンと今シーズンの楽天選手の成績を比較すると、確かに今シーズンのほうが悪い。
・08本塁打 94 (リーグ5位) → 09本塁打 108(リーグ6位)
・08打率 0.274(リーグ1位) → 09打率 0.267(リーグ3位)
・08防御率 3.89(リーグ3位) → 09防御率 4.01(リーグ3位)
しかし、逆の見方はできないだろうか?実は、昨年の4位という順位が不本意であるという見方だ。
そこで、2006~2008年の監督効果を調べてみたところ、以下の通りであった。
推定順位 実際順位 引き上げ効果
2008年 2位 4位 -2位
2007年 6位 4位 +2位
2006年 6位 6位 0位
やはり、2008年はの成績は不本意と言わざるをえない。もちろん、2009年は上出来だし、こうなると野村監督の采配の手腕の実力はどうもはっきりとしない。
楽天監督以前の過去のデータは調べきれなかったので、『経済学的思考のセンス』の論文のランキングをみても、ベスト20には入っていない。もしかすると勝率を引き下げるぐらいの監督なのかもしれない。(著者の大竹氏は、勝率を下げる監督のランキングは載せていない)
ただ、冒頭にあげた名監督の条件のうち、③の「集客力」という面では、紛れもなく名監督だったと思う。試合後の毒舌を交えたインタビューはいつも傑作だった。このあたりは、いくら結果を出しても日の目をみない現役時代の苦い経験が影響しているのだろうか、現役時代に花形プレーヤーだった原監督や王前監督のつまらない優等生発言とは対象的だった。(一方、球団は企業の広告塔でもあるので、そういった毒舌キャラクターが自らが追われる一因になったのだろう。)
ところで、野村監督の退任を惜しむ声は多いが、はたして「引き際」としてはどうだったのだろうか?
私は、まずまずのタイミングではないかと考えます。なぜなら
①留任するなら、今年以上(1位)の成績が求められる。
②だが、前出のとおり、今シーズンの成績はやや"出来過ぎ"のところがあり、これ以上を望むことは難しい。
③人の印象は、「最後の印象」で決まることが多い。(※行動経済学でも「ピークエンド効果」として知られている)惜しまれる今がピークではないかと思うのです。
一球の心理学―勝敗を分ける微妙なアヤを読み解く
これについて『週刊ベースボール(9月7日号)』は「バッティング10の謎」の特集で09型ファ
イターズ打線の好調の理由を以下のように分析しています。
①糸井をレギュラーに据えるなどオーダの思い切った改革
②二岡加入によるチーム内競争の激化
③「つなごう、つなごうという気持ちで全員がひとつになっている」と分析する総合力
ということです。(私自身はどうも腑に落ちませんが)
页面
しかし、イタいコメントですね(笑)
ご質問の日ハムの優勝についてですが、結論からいえば、「日ハムが優勝したことは必然である」と私は(後解釈ですが)考えます。
大竹教授の順位予測式そのものの精度は、(本文中にもあるように楽天を除いては)まずまずか
と思います。
問題となるのは、この式に代入する各チームの戦力予想です。
私は、日ハムについては以下のように予想しました。※カッコ内は実際の成績
打率 本塁打 防御率
日ハム 0.259 (0.278) 96 (112) 3.71(3.65)
予想に狂いが出た一番の理由は、日ハム打線の躍進(特にチーム打率の向上)です。
順位予測式の各項をみると、「チーム打率」の項が一番の重みを持っており、ここに狂いが出る
と順位予想の誤差が大きくなってしまうのです。
私は、前年度(2008年)をベースに日ハムのチーム打率を0.259 (昨年は0.256)と予想したので
すが、一挙に2分近くもジャンプアップ(昨年はリーグ最下位から今年度はリーグ首位)してい
るのです。
その理由については、・・・・私には不明です。
これについて『週刊ベースボール(9月7日号)』は「バッティング10の謎」の特集で09型ファ
イターズ打線の好調の理由を以下のように分析しています。
①糸井をレギュラーに据えるなどオーダの思い切った改革
②二岡加入によるチーム内競争の激化
③「つなごう、つなごうという気持ちで全員がひとつになっている」と分析する総合力
ということです。(私自身はどうも腑に落ちませんが)
検証お願いします。