時のつれづれ(北多摩の爺さん)

下り坂を歩き始めたら
上り坂では見えなかったものが見えてきた。
焦らず、慌てず、少し我儘に人生は後半戦が面白い。

源氏巻

2019年04月28日 | 大人のおやつ

多摩爺の「大人のおやつ(その2)」
源氏巻 竹風軒(島根県津和野町)

山陰の小京都・津和野のお土産といえば、なんてたって「源氏巻(げんじまき)270円」だろう。
こし餡を、きつね色に焼いたカステラのような薄い生地で巻いた長方形の和菓子で、
渋めのお茶に良く合う逸品である。

この町で「源氏巻」を作り、売ってる店は10軒程度あったと記憶してるが、
私のイチオシは・・・ ここ「竹風軒(ちくふうけん)」、正確には「山田竹風軒」というらしい。
古い町並みに良く似合う、石畳で覆われた本町通りの真ん中辺りにあって、
イートインスペースがあるのも有りがたい。

創業は明治18年(1885年)、太政官制度が廃止され内閣制度が創設されたのがこの年で、
初代総理大臣に伊藤博文が就いていることから、
かなりこじつけだが・・・ 隣の山口県と、縁がない訳でもない。

老舗の和菓子屋さんらしく入り口が広く、
左右の引き戸は大きく開かれ、左右どちらからでも入店が可能
左手入り口横には傘立て用の甕が配置され、軒先下には季節の草花がさり気なく活けられている。

「売らんかな。」のガツガツした感じの商売っ気はなく、
格の高さ=品の良さみたいな雰囲気が伝わって来る。

女房がお土産を買い物をしてる間に、イートインスペースでお茶をいただき、
試食用の「源氏巻」を二つほど摘まむと、
何気に目に入ったのが「源氏巻アイス(260円)」と書かれた貼り紙
これは食わなきゃ・・・ なるまい。

冷たい小豆バーを、カステラ生地で包んだアイスだが、
カステラ生地が良いクッションになって実に美味
老舗和菓子屋さんが作った創作アイス・・・ このアイデアは素晴らしい。
アイスというよりナイスだと思う。

それにしても、山陰・津和野なのに・・・ なぜ、源氏なのだろうか?
その由来は、幕末に藩の御用菓子司が藩主にこの菓子を献上したところ、
藩主の妻が紫色をした餡に感銘し、「源氏物語」の「若紫」に出てくる和歌の
「手に摘みていつしかも見ん紫の根に通ひける野辺の若草」にあやかり、
「源氏巻」と名付けられたとされる。

一方で・・・ こんな逸話もある。
江戸の元禄期、津和野藩3代目藩主であった亀井茲親が勅使の接待役を任せられると、
茲親は指南役であった高家の吉良義央(吉良上野介)に教えを請うが、
吉良は接待の方法を教えず逆に愚弄する始末

このことに腹を立てた茲親は、吉良を斬る決意を固めたところ、
お家の一大事を知った家老の多胡真蔭が、小判をカステラの様な平たい生地に包み吉良に進上すると
吉良から勅使の接待方法が伝授されたという。

いわゆる・・・ 袖の下というか、賄賂のお手本のようなお話である。
嘘か、本当かは、その場にいなかったので知る由もないが、
もしこの時・・・ 刃傷沙汰になっていたら、津和野藩はどうなっていたのだろう?

赤穂の浪士が決起する前に、津和野の浪士によって、吉良が討たれていた可能性も否定できず、
間違いなく歴史が変わっていた。
そう思うと、悪い意味で捉えがちの袖の下も、
津和野藩からみたら家老の機転に助けられたと言っても良いだろう。

山陰の小京都で、ちょっとお茶でも・・・ そう思ったら、
喫茶店も良いが、竹風軒のイートインをお薦めしたい。
甘い源氏巻を摘みながら、渋いお茶で喉を潤したあと、〆のアイスで喉チンコを冷やす。(癒す。)
これっ、サイコーの贅沢


源氏巻
 菓子器に入った味見用の源氏巻

源氏巻アイス
 いかにも手作り感が・・・ 和風かな?

源氏巻アイス
 小豆バーを包んだカステラ生地、しっとり感が絶妙のバランス

山田竹風軒本家 島根県鹿足郡津和野町後田口240
 店の前の雨に濡れた石畳が、老舗の老舗たる落ち着きに一役買っていた。

山田竹風軒本家
 店先に置かれた源氏巻、いったい誰が食べるんだろうか?

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