時のつれづれ(北多摩の爺さん)

下り坂を歩き始めたら
上り坂では見えなかったものが見えてきた。
焦らず、慌てず、少し我儘に人生は後半戦が面白い。

ブラックスワン

2020年07月07日 | 時のつれづれ・文月 

多摩爺の「時のつれづれ(文月の5)」
ブラックスワン(警戒レベル5の恐怖)

滅多に起こることはないが、起こったときに破滅的な被害をもたらす事象を、
ブラックスワン現象と云うらしい。
50年に一度、100年に一度、突如として起こる、
想像をはるかに超えた自然災害も・・・ まさに、ブラックスワンだろう。

けっして台風をなめてるわけじゃないが、
もはや梅雨時にやってくる大雨の方が侮れないかもしれない。

台風なら、数時間だけ我慢して通り過ぎてくれれば、台風一過の青空が広がるが、
梅雨前線が運んできた大雨に、南方から吹いてきた湿った風が加わり、高い山々にぶつかると、
線状降水帯というブラックスワンに姿形を変え、
長時間に渡って特定地域に居座り、破滅的な被害をもたらす。

私事だが・・・ 約40年前になる昭和58年7月23日、土曜日のお昼前の出来事が忘れられない。
活発な梅雨前線の影響で、山陰地方の西部を中心に降った豪雨が、
風光明媚で、美味しい鮎が特産の清流を決壊させ、母の実家を飲み込んでしまった。

ヘリコプターから送られてくる映像がテレビに映っていた。
祖父母や、年が近い従弟たちとの思い出が数多くあった、山陰の静かな町が濁流にのまれ、
屋根しか見えなくなった映像は・・・ 恐怖であり、やるせない怒りでもあった。

7月4日の未明から、九州南部を襲った線状降水帯は、日本三大急流として名高い球磨川を氾濫させ
山あいの静かな町を濁流が襲い、分かっているだけで60名超の死者・不明者が出てしまった。

気の毒なのは、特別養護老人ホームが水没し、
多くのお年寄りが逃げ遅れて、犠牲になってしまったことだろう。
突然のことだったにも拘わらず、ホームの職員はできる限りのことを尽くしており、
誰が悪いというわけではないものの、
戦後、この国の復興に汗を搔き、発展した現在の基礎作りに尽力していただいた多くの先輩方が、
人生の最後で苦しい思いをしながら、逝ってしまったことは、本当に胸が痛み、悲しくて堪らない。

いまさらだが・・・ 悔やまれるのは水害対策の遅れだろう。
国は1966年、球磨川の支流・川辺川に、洪水防止のダムを建設する計画を発表したが、
その後、流域の住民が賛成派と反対派に分かれて対立したこともあり、
2008年になって・・・ 現在4期目を務める知事が、建設断念を表明した経緯があった。

それから12年、水害対策は纏まることなく、
ダムに頼らない治水対策が進展することはなかったらしい。

ダムがあったら、どうだったのだろうか・・・ いま、それを問うのは愚問の極みになってしまうが、
当時は、85%の県民が、知事の表明を支持していたというから・・・ 気持ちは複雑だろう。

週が明けると、今度は九州北部に警戒レベル5が出され、
九州では所を変えながら、4日連続での大雨特別警報となった。
50年に一度、100年に一度のブラックスワンが、毎年のように現れるようになって久しい。
もはや、この国の自然災害に、ブラックスワンと云う比喩は、適切ではないのかもしれない。

間違いなく地球温暖化が影響しているのだろうが、地球規模での協力がないと克服できないし、
仮に協力を得たとしても、その成果が表れてくるのは、来年や再来年ではなく、
10年も、20年も先のことになると思うと・・・ なんらかの応急措置は欠かせない。

自然を守ることと、人の命を守ることは、
ともに莫大なコストが必要だが・・・ 向いてる方向は対局にあり、
そこに様々な権利と思惑が絡むと、綺麗ごとでは収まりがつかず、
妥協点を見つけるのはけっこう難しい。

平穏な時は、必ずと云っていいほど前者の声が大きく、
災禍が起こると後者が・・・ 発言力を増すのが世の常である。
とはいえ、結論を出すのに時間が限られていることも事実で、悲しんでるだけでは済まされない。

何年もの時間をかけて、様々な角度から議論を積み重ね、いまがあることを踏まえれば、
第三者が軽々に口出しできることではないが、
この次、ブラックスワンを見るのは、動物園であってほしいと願ってやまない。

ガンバレ! 九州
七夕の夜・・・ 娘が持ってきた短冊に、願いを込めてそう記し、飾り付けることにした。
併せて、遠く離れた故郷に住む年老いた両親や、西日本に多く住む親族の無事を祈念するとともに、
私の拙いブログを読んでいただいている皆様が、
どうぞご無事であるようにと・・・ 願わずにはいられなかった。

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