時のつれづれ(北多摩の爺さん)

下り坂を歩き始めたら
上り坂では見えなかったものが見えてきた。
焦らず、慌てず、少し我儘に人生は後半戦が面白い。

情けは無用

2021年05月22日 | スポーツ観戦

多摩爺の「スポーツ観戦(その12)」
情けは無用 (令和三年・大相撲五月場所)

東西に二人いた横綱だったが、鶴竜が引退を表明し、
白鵬は右膝の手術により休場という事態に加えて、
場所の直前に、東京都に発令された緊急事態宣言によって、
無観客(場所中に観客制限が緩和)で始まった大相撲五月場所だったが、
本来なら、一番盛り上がるはずの後半戦に入って・・・ 
ちょっと気になる出来事が二つあった。

それは、横綱不在の場所で・・・ 最高位にあたる二人の大関の、
心情を感じ取ることができる出来事だった。

その一人は、西の張り出し大関「照ノ富士」、度重なる怪我と病気を克服し、
序二段から大関に返り咲き、勢いのまま、綱取りに向けて連勝街道を突っ走っていた11日目、
よもやよもやの結末が待ち構えていた。

「妙義龍」との一番は、もろ差しを許したものの、
素早く左の上手を奪い、豪快な小手投げで圧倒したが、
勝ち名乗りを上げようとした場面で物言いがつき・・・ 審判団がビデオで確認し、協議した結果、
「照ノ富士」が「妙義龍」のまげを掴んだとして、反則負けとなってしまった。
「相撲に勝って、勝負に負けた。」といえば、その通りなんだが・・・ なんとも、やるせない。

どちらかと言えば・・・ 貰い事故みたいなものである。
だれも反則(まげを掴む)なんてしたいと思って、するバカはいない。
たまたま、流れの中で・・・ そうなっただけである。

本来なら、愚痴の一つも溢したかったんだろうと推察するが、
翌日に発した「照ノ富士」のコメントが、あまりに素晴らしくて、私の琴線は思わず共鳴していた。

「そういう相撲を取った・・・ 自分が悪い。」と言うと、
「昨日のことは昨日で、今日は今日の取組に集中していった。」と付け加えた。

怪我と病気が原因とはいえ、序二段まで落ちて辛酸をなめ、地獄を見た力士は
さすがに腹が座っている。

一言でいうなら・・・ 「潔い。」ではなく、「情けは無用」だろう。
大関「照ノ富士」を、応援せずにはいられなくなってしまった。

そしてもう一人は、東の大関だから横綱不在の今場所では、
幕内で最高位を務める大関「朝乃山」である。

昨年、日本相撲協会が、新型コロナウイルス感染対策として定めたガイドラインに違反して、
場所前に不要不急の外出(接待をともなう店での飲食)をしていたことが、
「週刊文春」にすっぱ抜かれたのだ。

20日発売の「週刊文春」に、そのことが載るとの情報を得た協会が、
前日の取り組み前に協会が聴取したところ、本人は一貫して否定していたが、
記事と聴取内容との違いについて、取り組み後に再聴取すると、渋々認めたというから、
もう・・・ 「なにをやってんだ!」である。

とりあえずは親方の判断で謹慎(休場)し、
協会からの処分を待つという方向らしいが・・・ それはないだろう。

休んで謹慎すれば、それで良いってものじゃない。
優勝がかかった終盤戦に入って、大関という地位にある力士が、
負傷じゃなく不祥事で休場したことによって、
大事な取り組みに穴を空けたことは、極めて重たく・・・ 厳罰がくだっても致し方ないだろう。

昨年の七月場所が行われていた最中だった。
平幕の「阿炎(あび)」が、「朝乃山」と同様の接待をともなう店での飲食をしてしまい、
協会が定めたガイドラインに違反し、厳しい処分がくだったことは記憶に新しい。

「阿炎」は弁解することなく、進退伺(廃業願)を協会に出したものの、協会はそれを預かりとし、
減給に加えて、三場所の出場停止処分を下しており、
やっとのことで復帰した今年の三月場所の番付は
、前頭5枚目から、幕下56枚目まで落ちての再スタートとなっている。

さて・・・ 「朝乃山」の処分は、どうなるのだろうか?
平幕の「阿炎」は違反を素直に認め、進退伺を提出したが、
大関の「朝乃山」は素直に認めず・・・ 進退伺すら出していない。

進退伺については、状況次第で直ぐにでもだす用意はしているのだろうが、
大関という地位と、聞き取りで噓を言ったという事実は・・・ 如何ともし難く、
「阿炎」以上の厳しい処分は免れないだろう。

そういった背景があるだけに・・・ 下手に進退伺をだしてしまうと、
預かりではなく、受理されることも想定され、
本来なら、潔く「情けは無用」と腹をくくって、協会に進退伺いを出したいところなんだろうが、
「阿炎」の状況と比較すると、怖くて・・・ 腹を括ることすら、できないのかもしれない。

私は相撲ファンだが、処分のさじ加減がわからないので、いい加減なことはいえないが、
地位が大関だけに、減給に加えて1年間の謹慎(六場所の出場停止)あたりが、
落としどころなのではなかろうか?

もう少し厳しめなら、年寄株の取得不可(引退後、親方ににれない)ぐらいの
条件が付く可能性もあるだろう。
協会の聴取に嘘をついた力士が、親方になって指導していては筋が通らないし、
十分にあり得る処分だと思われる。

片や、出会い頭の貰い事故だったものの、踏みとどまって優勝戦線をリードし、
来場所の綱取りに期待を膨らませた大関
片や、自らの自覚のなさが招いた自損事故で、応援するファンの熱を一気に冷ましてしまい、
八方塞がりになった大関

さて、こらから・・・ どうなるのだろうか?
はっきりと、くっきりと、明暗が分かれてしまったが、
両大関に共通する落とし所が「情け無用」というのが・・・ あまりにも切なすぎる。

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