時のつれづれ(北多摩の爺さん)

下り坂を歩き始めたら
上り坂では見えなかったものが見えてきた。
焦らず、慌てず、少し我儘に人生は後半戦が面白い。

バーバリーのコート

2020年10月05日 | 時のつれづれ・神無月

多摩爺の「時のつれづれ(神無月の6)」
バーバリーのコート

ここんとこ、朝晩の冷え込みを感じる日が続いたもんだから、
先週末には、女房がタンスとクローゼット間を忙しく行き来し、衣替えを始めていた。
もちろん・・・ お手伝いしてたんだが、
クローゼットの中に、ちょっと気になる逸品を見つけてしまった。

50代後半から上の男性に、ちょっと聞いてみたい。
季節的には1~2か月先になるんだろうが、最近の通勤風景で何か変わったことはないだろうか。
駅に向かうサラリーマン、電車の中のサラリーマン、会社へと急ぐサラリーマンを見て
何か気がついたことはないだろうか。

冬場のサラリーマンには欠かせなかった、ある物が・・・ 姿を消しているのだ。
極まれに見かけることはあるが、そういったサラリーマンは、1割にも満たないと思う。
勿体ぶってしまったが、ある物とは・・・ バーバリーのコートである。

もしかしたら、自分の思い込みかもしれないが、
かつてあった昭和という時代、サラリーマンの半数以上はバーバリーのコートを着ていた。

私だってコートを持ってなかったわけじゃない。
でも・・・ 東京勤務となり、満員電車で通勤するようになった昭和60年の暮れ、
どうしても今までのコートじゃなくて、バーバリーのコートが欲しくなり女房におねだりをした。

シュークリームにミルクを少し落としたような色で、英国紳士が好みそうな上品さがあり
羽織るときに、さり気なく見えるチェック模様の裏地
先輩や上司が来ているのを見る度に、欲望が抑えられなくなり女房に頭を下げていた。

ネックになったのは・・・ 10万円を超えるお値段
それは既製品の良いスーツが2着はらくに買える価格だった。

頭ごなしに「ダメ!」と言われると思っていたが・・・ 結果は以外や以外
女房は「仕事着だからね。」と、いとも簡単にOKしてくれ、
なんと週末に買い物に行こうと誘ってくれたのだ。

今にしてみれば・・・ おそらく、この日を境にして、
我が家での二人の立場は、音もなく静かに入れ替わり始め、
気がつけば今の力関係が出来上がっていた。

正直言って、スーツや靴、さらにはカバンなど、拘りがあるタイプではない。
しかし、気がつけば・・・ 女房が買ってくれた物をいつも着て、いつも履いて、いつも持っていた。
自分で選んでたのはネクタイぐらいだったと思う。

最近、そのバーバリーのコートを見かけることが・・・ めっきりと少なくなった。
平成の世になって間もなくだったと思う。
バーバリーのコートに、思わぬ強敵・黒の革ジャンが若者の間で流行り始めた。
私も気にはなってたが、バーバリーのコートの時のように、
どうしても欲しいって感じにはならなかった。

バブルがはじけたのは・・・ その直後だったと思う。
10万円を超える高級コートは、音を立てるがごとく安価なダウンコートに取って代わられ、
今じゃ、それが当たり前になっている。

かく言う私も・・・ その一人
それでも、バーバリーのコートは10シーズンぐらいは着たと思うが、
今では半額以下のダウンコートを3着持っていて、
還暦を過ぎた爺が、生意気なことに、仕事着(かつての通勤用)、普段着、お出掛け着に区分し、
目的に応じて着まわしをしているんだから・・・ 時代の変化は早すぎる。

長い不況の中で、安かろう悪かろうは影を潜め、安いものでも良いものは随分と増えている。
良いものは高いと、思い込んでいた人の意識も大きく変わり、
ちょっとだけ時間をかけて探してみれば、安くても良いものが見つかるようになった。

昔は「安物買いの銭失い」なんて言ってたが、
いまじゃそれが当たり前で、生活の知恵(努力かな?)に置き換わっている。
一つだけ、あまり共感を感じない生活の知恵があるとすれば、
ある通信会社が、かつて垂れ流していた「タダ。タダ。タダ。」と連呼するCMじゃなかろうか。

公共の電波を商品(生業かな?)として扱う会社が、
公共の電波で「タダ。タダ。タダ。」と垂れ流すのは・・・ いかがなものかと思うので、
やっぱり、菅総理が云うとおり、料金は下げてもらわなくちゃならない。

閑話休題、バーバリーのコートが、時代についていけなかったのか?
それとも、バーバリーというブランドのプライドが、この国のサラリーマンを見捨てたのか、
それは分からないが、シュークリーム色のバーバリーのコートを、
街中で見かけなくなったことだけは間違いない。

昭和が終わるころ、やっとの思いで買って貰ったバーバリーのコートは、
今なお、我が家のクローゼットの中にあり、いつも同じ位置で、同じハンガーに吊るされてる。
勿論、何年か前にクリーニングには出しているが、袖を通した記憶はない。
たぶんクローゼットの中では一番の高級品であることは間違いない。

分かり易く言えば・・・ いわゆる、タンスの肥やしである。
勿体ないんだけど、これから先もバーバリーのコートを着る機会はまずもってないだろう。
だからと言って、バーバリーのコートを処分することも出来ないと思う。

時は確実に刻まれ、令和になって2度目の冬を迎えようとしている。
我が家のクローゼットの中で、これから先何年、昭和が眠り続けることになるのだろうか?


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