時のつれづれ(北多摩の爺さん)

下り坂を歩き始めたら
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NTT法ってなんだ?

2023年10月25日 | 時のつれづれ・神無月

多摩爺の「時のつれづれ(神無月の45)」
NTT法ってなんだ?

最近ちょっと気になったニュースについて、思いの丈を述べてみたい。
いみじくも、電信電話記念日(10月23日)直前の先週末、
NTTを除く大手の通信各社と、通信事業者や地方自治体などが「NTT法」の廃止について、
慎重な議論を求めるとして・・・ 総務大臣、自民党政調会長などに向けて要望書を提出していた。

その背景になにがあるかのというと・・・ 防衛費の拡大に必要な原資の一部を捻出するために、
政府が1/3の株を保有することが明記されている「NTT法」を廃止して、
NTT株を売却するという案が、具体的に議論されていることから、
その方向性に「待った。」をかける意味合いがあるらしい。

要望書には、国民生活の向上や、経済の活性化、国際競争力の強化にむけて、
見直しすることには賛成するものの、
廃止については、慎重に検討することを要望するとされている。

慎重な検討を要望するということは、遠回しに「そりゃダメだ。」と云ってるに等しい。
本音を探るとすれば・・・ 一番強いライバル会社に手枷足枷があって、儲けが出ているのに、
規制がなくなって、ライバル会社が強くなっては困るということが、
なんとなく透けて見えてくるので、天下国家の視点が欠けているように見えてしまった。

せめて・・・ 見直しの具体策でも提案があれば、説得力があるんだが、
情報が収拾できてないのかもしれないが、そこに触れた情報が見当たらないことから、
大変申し訳ないが、単なるイチャモンにしか見えてこない。

「NTT法」って・・・ いったいなんなんだろうか?
約40年前の昭和60年4月、電電公社が民営化されるに際して施行された法律であって、
政府が1/3以上の株式を保有し、取締役や監査役の選任や解任などから始まり、
事業年度ごとの事業計画、定款変更、剰余金の処分などにおいて、総務大臣の認可が必要とされ、
民間企業になったにも拘らず、まるで国有企業のような、厳しい制約が記されている。

さらには、全国一律(均一かな?)の固定電話サービスや、公衆電話、緊急通報などの提供に加えて、
電気通信技術の普及のために、同社が研究開発した成果についても、
公開することが義務づけられているのである。

早い話が、NTT以外の通信会社は、巨大な企業だったNTTと競合するビジネスにおいて、
儲からない地域では、無理にサービスを提供する必要はないうえに、
事業に必要な新技術については、自社で開発しなくても、全てNTTが公開してくれるのである。

その後、時代は固定電話からケータイ電話に、通話から通信へと、
猛スピードで、通信環境が変化しているにも拘わらず、「NTT法」は改正されてないんだから、
これって「公平で正しい競争なんだろうか?」との、疑問がないわけでもない。

分かり易く例えるなら、データ通信サービスの料金において、
NTT系の企業が定額制の提供で遅れてしまい、
同業他社に先行を許して、シェアが低下したのが・・・ まさにそれだと捉えれば分かり易い。

一方で競合する大手の通信事業者は、民営化前の公社時代に得た資産(通信ネットワークなど)は、
当時購入することが義務づけられていた「電信電話債券」が深く関わっており、
公社時代の資産は国民の財産であり、NTTから完全に分離した別会社とすべきだと主張している。

尤もな主張ではあるが、民営化後の約40年の歳月をどう捉えればいいのだろうか?
そこには固定電話からケータイ電話に、猛スピードで変化した歴史があり、
直近では、固定電話サービスを活用した通信ネットワークから、
IP(インターネットプロトコル)ネットワークへの切り替えが進んでいる。

早い話・・・ 公社時代の資産(通信ネットワーク)は、
ほとんど民営化後に投資され、完成したネットワーク(光からIP)に移り変っているのであって、
この期に及んで「電信電話債券」を持ち出す必要はないだろう。

民営化から約40年、防衛費の話しが出てこなければ、議論にすらならなかったかもしれないが、
この国は「NTT法」によって・・・ 通信分野での事業者間の競争が活発化し、
生活に直結する、利用料金の値下げを手に入れることはできたが、
一方で、技術の公開に着目すれば、国際的な競争からは大きく遅れをとり、
少なくとも現時点では・・・ グローバルな市場で戦えなくなっているようである。

法律に縛られて、技術の進化にブレーキがかかっていたといえば、日本学術会議を思い出すが。
学術会議では、軍事につながる可能性のある研究を、恣意的に避けてきた経緯があったが、
NTT法では、研究開発成果を公開すると義務づけられているのだから、丸裸だったことになり、
特許に関わるような技術情報もダダ漏れで・・・ これじゃ国益が守れないだろう。

「NTT法」の改正について、慎重に議論せねばならないことは、当然だと思うものの、
その論点は、同業他社が要望書によって求めているような、内向きの議論ではなく、
株式売却によって、外国人投資家が介入してくることへの対策であったり、
新たに開発に着手しようとしている技術を、如何にして守り切るかではなかろうか?

軍事との関係性が深い、インフラ企業の株式が売却されると、
防衛問題等において、影響がでないかと心配になるが、
外為法により、外国人投資家の株式取得に制限が掛けられることから、
そこんところは、なんとかなりそうだが・・・ 問題なのは新技術の公開義務である。

ちょっと前に発表があって、来年度中には仕様が確定するとも云われている、
NTTが主体で開発する、光通信技術を使った次世代の通信技術基盤「IOWN(アイオン)」は、
軍事転用が可能な、通信インフラになることも想定されることから、
経済安全保障対策の視点から捉えれば・・・ 早急に公開義務から排除しなければ、
それこそ、マヌケ極まりない国際競争になってしまうだろう。

個人的な思いとしては・・・ NTTが民営化されて約40年が経ち、
通信インフラのあり方が、大きく変化していることを踏まえれば、
かなり時代遅れとなった「NTT法」を大幅に改正するなり、廃止しないと、
周回遅れどころか、2周も3周も遅れることが目に見えてると思うが、どんなものだろうか?

私はNTTの回し者でもなんでもないが、

新たな技術が、今後の経済の活性化に繋がるのは必然であり、
「NTT法」が、ブレーキを踏むようなことがあってはならないと思っており、
防衛費予算の原資になるとか、ならないとかは別の話しであって、
「NTT法」のあり方については、早急に方向性を示すべきだと思うが・・・ 如何なものだろうか?

生活者のレベルの視点では、競争によってサービス品質が向上し、
料金が下がるに越したことはないが・・・ 技術的にも、経済的にも、近い将来のことを考えれば、
打つべき手を打つタイミングを逸することがないように、
先見の明を持ちつつ、細心の注意を払っていただきたいと願ってやまない。

最後にひと言・・・ ぐだぐだと能書きを垂れてしまったが、
ここで述べたことは、あくまでも個人的な思いであって、
コメントを頂戴しても、議論するつもりはないので、ご理解をいただければありがたい。


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