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ヴィンセントが教えてくれたこと

2015-09-30 13:43:20 | 映画

先日の休みに映画を観に行った。

ビル・マーレイ主演のドラマ、"ヴィンセントが教えてくれたこと"だ。

原題は"St.Vincent"。

キャッチコピーは、"さあ、人生のホームワークを始めよう。"。

 

 

主演のビル・マーレイは、あの不朽の名作、"ゴーストバスターズ”で、

主人公の博士を演じたコメディアン出身の大俳優。

その大俳優が、無名の新人監督の低予算映画に主演した。

セオドア・メルフィ監督、無名と言っても、CMの監督としてその界隈で活躍していたひとらしく、

その監督が映画に初挑戦したのが本作。

なんでも自身が子どもの頃に経験したことを元に、自ら脚本を書き、映画にしたという。

 

大物俳優を主演に起用したにも関わらず、配給先を獲得できず、

当初 全米でたった4スクリーンでのみ公開だったという。

だが鑑賞した人々から素晴らしい映画だと絶賛され、

公開劇場がじわじわと拡大し、そこここで高評価を受け、

ひと月経った頃には、全米2,500スクリーンにまで拡大していたという。

その大ヒット映画が、満を持して日本での公開となった。

 

予告編の映像や、映画館に置いてある情報冊子で大まかな内容を読んでいて、

ぜったい観たい!ってほどではなかったが、

機会あれば観たいなって程度でチェックしていた。

 

 

ニューヨーク州ブルックリン区。

古くからの街並が残る住宅街の一軒家に、ひとりの老人が住んでいた。

気難しく、人当たりが悪く、素行もすこぶる悪い。

老人の名前はヴィンセント(ビル・マーレイ)。

飼い猫と、売春のために家に来るストリッパーにしか心を開かない。

 

 

ある日、ヴィンセントの隣に母子が越してきた。

母親のマギー(メリッサ・マッカーシー)は越してきた挨拶をしようとしたが、

引越業者のトラックがヴィンセントの庭木の枝を折ってしまい、

さらにその大きな枝が、彼のオンボロ愛車のうえに落下してしまい大騒ぎ。

酒とギャンブルに浸り、さらにはストリッパーで女遊び・・・。

家計が破綻状態のヴィンセントは、これ見よがしに引っ越してきたばかりのマギーに弁償金を要求。

新天地の隣人がロクでもないジジイであることに不安を抱くマギー。

その脇には、ひ弱な息子、オリヴァー(ジェイデン・リーベラー)が、

やはり眉をひそめ不安そうに立っていたのだった。

 

転校初日からいじめに遭ってしまうオリヴァー。

制服も携帯電話も財布も家の鍵も、いじめっ子に隠されてしまう。

体操着のまま、とぼとぼと歩いて帰宅する。

母親のマギーは病院で技師として働いているため、遅くまで帰らない。

携帯電話もないし財布もないため、マギーに連絡することもできない。

鍵もないため家に入ることもできず、玄関前で途方に暮れていると、

隣のロクでもないジジイが帰ってきた。

 

 

「電話を貸して下さい。」

おそるおそる、声をかけるオリヴァー。

嫌々ながら家に入れるヴィンセント。

独り暮らしの老人の散らかった部屋。

電話を借りて、マギーに連絡する。

マギーは帰宅が遅くなるため、ヴィンセントに戻るまでオリヴァーを預かって欲しいと頼む。

ヴィンセントはここぞとばかりに、「1時間12ドルだ!」と告げ、それを引き受けることに。

 

この日から、気難しくロクでもない不良ジジイのヴィンセントと、

ひ弱ないじめられっ子、オリヴァーが午後を共に過ごすようになる。

ヴィンセントは、オリヴァーに対し、対いじめっ子用にケンカのしかたを教える。

そのとおりにしたら、いじめっ子は鼻血を吹きながらのびた!

興奮するオリヴァー!報告を聞いて喜ぶヴィンセント!

ふたりはだんだんと、本当の祖父と孫のようになってくる。

 

だが、そこはロクでもないヴィンセント、

オリヴァーを連れたまま、平気で競馬場にも行くし、バーにだって行く。

競馬で賭け方を教えたり、バーで注文のしかたを教えたり。

オリヴァーもまた、見たこともない経験したこともない、

母親や学校からは教えてもらえないことに夢中になる。

しまいには、ストリップ劇場で働いている、ストリッパーを紹介するヴィンセント。

妊娠したため劇場を解雇され、ヴィンセントのところへやってきていた、

ロシア出身の奔放なストリッパー、ダカ(ナオミ・ワッツ)だ。

 

 

そんなロクでもない嫌われ者のヴィンセントだが、毎週、施設に通っていた。

認知症になった妻が入所している施設だ。

もはや夫である自分のことすら解らなくなっている妻に対し、

医者を装い優しく、愛おしく接するヴィンセント。

そして汚れた洗濯物を回収し、新しい着替えを届ける。

ふだんの彼とは別人のような、心やさしい老人の姿を垣間見るオリヴァー。

 

ある日のこと。

オリヴァーは学校が終わって門に出たが、

いつもそこで待っているヴィンセントの車が止まっていない。

仕方なくバスで帰る。

ヴィンセントの家に入って見ると・・・苦悶の表情で倒れたヴィンセントの姿が!

脳卒中で倒れていたヴィンセント。

一命を取りとめたものの、体も言葉も不自由になってしまう。

 

そして、マギーとオリヴァーにもまた災難が訪れていた。

夫がオリヴァーの親権を要求してきて、それをめぐる裁判が始まる。

マギーはきちんとした職に就いており、自立できるそれなりの収入がある。

なによりも別居の原因は夫のたび重なる浮気。

夫は弁護士で専門知識も豊富だが、親権はとられることはない・・・と思っていたものの、

法廷で夫側の弁護士から、オリヴァーが競馬場やバーを出入りしていたことを指摘され・・・。

 

 

気難しいろくでなしの老人と、ひ弱だった少年の絆の物語。

二人の絆は、やがて周りの人々にも関わってゆく。

心を閉ざしていた気難しい老人は、次第に心を開き、

自己主張できなかった気弱な少年は、たくましくなってゆく―。

 

よかった。

ラストにはじんわと泣けてくる。

ろくでなしでも、好き勝手に生きている人も、気丈でたくましい人も、

どんな人にも、人には理解してもらえないことがある。

本人がひた隠す、辛い経験や苦しい悩みがある。

ヴィンセントと、オリヴァーはじめ、それを取り囲む人々のストーリーが、それを教えてくれる。

鑑賞したひとからの高評価で公開スクリーンが拡大したというのが解る。

 

ヴィンセントを演じた、主演のビル・マーレイ氏。

粗暴なろくでなしだが、実は面倒見がよく愛嬌のあるジジイを、ひょうひょうと演じていた。

かつてゴーストバスターズで主演の博士を演じ、名前も知っている俳優さんではあったが、

ゴーストバスターズを見たのが小学校低学年くらいだったため、ほとんど覚えておらず、

うーん、こんな顔だったけ・・・三人組の真ん中だったんだろうけれど。

一度きりしか観た覚えがないので、記憶がほとんどないや。

ひょろ長い臆病なのが居たのは覚えているんだけどな。

 

 

オリヴァー役のジェイデン君。

今、アメリカで天才子役として注目されているらしい。

10歳だったか11歳だったか、ちょっと難しい年頃の子どもを好演していた。

色白でほんとにガリガリだったので、オリヴァー役にぴったりだ。

母子家庭でひ弱でいじめられっ子、だからといって泣き虫でもなく、

いじめっ子に果敢に立ち向かうし、ヴィンセントにだって意見する。

この映画の、健気なもうひとりの主役。

 

 

妊婦のストリッパー、ダカ役のナオミ・ワッツさんもよかった。

名前は知っていたけれど、映画に出ているのは初めて見た。

スタイルもよくて美人だけど、ガサツで奔放なストリッパーを演じていた。

劇中、妊娠していて、大きく膨らんだお腹を露わにした状態で、

ダンスやセックスをするシーンがあるのだけど、

着衣だと詰め物で妊婦を表現できるけれど、裸体ではどうやってんだ?

CGっぽくもなかったし、これ特殊メイクだよね? すごいな。

 

 

気になったので、この後調べて見たら、

実年齢、よ・・・47歳!?

ええー!!

全然そう見えないわ・・・女優さんて凄いな。

それにしても、この日本人っぽい名前が気になったんだけど、

まだ女優になる前、若い頃に日本に数カ月滞在したことがあったようだが、

直美さんでも尚美さんでも奈緒美さんでもなく、日本は関係ないようだ。

同じく"ナオミ"な、外国人の有名人、ナオミ・キャンベルさんで調べたら、納得した。

音がたまたま、直美さんらと同じだけで、やっぱり日本は関係がなかった。

"ネェオミ"って発音するのが正しいのかな?

イギリスにはそこそこ存在するようだ。

ナオミ・キャンベルで思い出したが、久保田利伸のLA・LA・LA LOVE SONGは名曲。

 

 

マギー役の女優、メリッサ・マッカーシーさんもよかった。

凄い恰幅のいい女性で、仕事に育児にがんばりつつ、

息子の学校でのトラブル、親権を狙うひどい夫や、粗暴な隣人のことに頭悩ませ、

色んなことを一人で抱えて踏ん張るたくましい女性を演じていた。

コメディ俳優としての顔が濃いひとらしく、今回マギーのようなシリアスな役は珍しいらしい。

この恰幅でコメディ色の女優さん・・・日本だと渡辺えりさんか?

いや、もうちょっと若いから、山村紅葉ちゃんだ!

 

9月も下旬になって、上映回数だいぶも減ってきた。

10月上旬には公開終了の劇場も多いようなので、チェックしていたひとは早めに観に行くべし。

観て損はない、感動するけれど、決してお涙ちょうだいなストーリーでもない。

"心が温まる"っていうか、そういう感じの作品だ。

ふだんから他人に本音を話せない、本意で行動できない日本人は、

とくに観ておくべき作品かもしれない。

 

  



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