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ギュスターヴ・モロー展 サロメと宿命の女たち

2022-01-21 19:13:04 | アート・文化

福岡市美術館 

 

中学高校と美術部に所属していたくせに、恥ずかしながら知らなかった画家。

19世紀のフランスで活躍していた画家、ギュスターヴ・モロー。

モネを代表する印象派に対し、象徴派なるものを確立した始祖らしい。

絵画に限定して分かりやすく言うと、風景や静物,人物など、見たものをそのまま描くのが印象派。

神話や聖書など、創作物における風景や人物を描くのが象徴派。

 

 

写実主義とか抽象画とか、他にもいろいろあるが、

まあ18~19世紀の西洋の絵画で説明するのなら、

印象派と象徴派に二分させてもいいのかもしれない。

自分はそこまで細かく知ろうと思わないので、

以下のように自分なりに解釈している。

 

・写実主義=目の前の物や風景を、とことんリアル描写。

・印象派=目の前の物や風景を、おおむね忠実に描写したうえで、

 風景にはエフェクトを加えたり、人物に多少デフォルメを入れたりの誇張はOK。

・象徴派=神々や精霊,妖精,幻獣,悪魔・・・存在せず目に見えないものを伝承・想像のみで描く。

・抽象画=基本的に形あるもの目に見えるものを描かない。

 あるいは目に見えるものであっても、見えたままには描かず、

 それを頭の中で形や色を変換させてカンバスに映し出す。

 心理描写に近く、書き手以外は何を描いているのか皆目解らない。

 サイケデリックだったり、モノトーン一色だったり、

 幾何学模様だったり、絵具をぶちまけているだけだったり。

 一応「**を表現している」「XXを訴えている」と説明はあるのだが、

 それを聞いても「ふーん・・・。」「なるほどねえ・・・。」という感想しか出ない。

 元妻の画風が典型的な抽象画で、まったく理解できなくて申し訳なかった・・・。

 

たぶん美大に通っていたひと、日曜美術館を欠かさず観るひと、

美術に造詣あるひとからツッ込まれてしまうだろうが、

まあ、こんなとこで合ってるんじゃなかろうかと。

素人はこれくらいの認識で向き合う程度じゃないと、

美術鑑賞はとことん敷居が高くなってしまう。

 

前置きが長くなってしまったが、

とにかく知らなったフランスの画家、ギュスターブ・モロー。

象徴派の始祖ということで、まあファンタジーな絵が多い。

多くは聖書の逸話や神話の逸話に基づいて、彼なりの解釈で美しく描いている。

 

「出現」バージョンのチラシ。

 

「一角獣」バージョンのチラシ。

 

子どもの頃からゲームに慣れ親しんだ自分。

高校時代はファイナルファンタジーの天野喜孝氏のイラストに魅了された。

ミュシャのステンドグラスっぽいファンタジー絵画も好きだし、

グイン・サーガの末弥純氏、ロマンシング・サガの小林智美氏らも好き。

古くは魔導物語や、甲竜伝説ヴィルガストなどのアニメ調のものから、

プレイしたことはないが、ファイアーエムブレムも好き。

根っからファンタジーの絵は大好きなのだ。

 

 

「デリラ」

中学の英語の教科書だったかな?

それに載ってた、“サムソンとデリラ”のデリラ。

 

テレビCMで知ったんだっかな?

実は、もう3年も前の展覧会のことなのできっかけをよく覚えていない。

展覧会紹介のなか、映し出される美しいファンタジー世界の絵に魅了された。

富野由悠季の世界展以来の福岡市美術館。

 

会場は東京、大阪ときてラストが福岡だったよう。

知らない画家だったので、とにかくじっくりと解説を読む。

観客はそこまで多くなかったので、ゆっくりと鑑賞することができた。

こういうのはゆっくりと観ないとね。

 

「一角獣」

 

19世紀のフランス。

当時、飛躍的な科学の進歩で、神話や宗教,言い伝えが軽視されはじめた時代。

その時代にあって、従来のものを重んじる主義者たちが登場。

それが、象徴主義。

言論,文学など、絵画にとどまらず起こった運動だが、

絵画の世界において、象徴主義を唱え活動した始祖が、ギュスターブ・モローだという。 

 

展示物の初期の作品は、まだ象徴主義にとらわれる前の作品。

ふつうの人物画に風景画、なるほどふつうのデッサン絵が多い。

まあ初期は誰もが習作期間で、簡素なデッサンから始まる。

最初から全盛期・晩年の手法でぶっ飛ばす画家も居ないだろうが・・・。

 

「サロメ」

 

そして以降の大半の展示作品は象徴派の絵になる。

聖書の一幕を描いた絵が多い。

そのなかでもっとも名作と謳われるのが、「出現」と題された一枚。

半裸のあでやかな女性の前に浮かぶ生首。

なんともいえない構図の絵。

半裸の女性は聖書に登場する、サロメという踊り子。

対して生首は、洗礼者ヨハネのもの。

 

聖書の物語はよく知らない。

王の前で踊り、王を魅了し、その褒美にねだったのがヨハネの首。

でも、それをけしかけたのはヨハネ謀殺を謀った王妃だった。

何も知らない少女サロメは、褒美の首を母親に渡す。

 

一連の絵はたくさんある。

裸に宝石だけをまとい、踊りの番を待つサロメ。

まさに斬首される前のヨハネの姿。

斬首されたのち、首を失い横たわるヨハネの亡骸。

手にした首を掲げるサロメ。

 

ラフ状態、下書きのままのものや未完のものまで、

このサロメの一連の出来事だけで、多数の作品が展示されていた。

「出現」がモローの代表作になり、展覧会のタイトルにも名を冠しているあたり、

この時期に書き込んだ、サロメ関連の絵がもっとも人気があるのだろう。

 

かくいう自分は残酷なので、あまり好きになれないかな。

確かに描かれたサロメは艶めかしくて美しい。

息をのんで目を見張るものがある。

だが、その前には生首。

その構図、エロとグロの対図が芸術性が高いと言われているのかもしれない。

エロはいいがグロはどうしても受け付けん・・・。

 

 

「出現」は実は未完成の作品らしい。

絵にエッチングで柱や壁のようなものと、その装飾を施したような跡がある。

これは下書きで、のちに着色され完成させる予定だったのではないかと言われている。

 

その後も女性主体の絵画が続く。

イブ(エヴァ),デリラ,エウロパ,スフィンクス,

セイレーン,メッサリナ,クレオパトラ,etc・・・。

聖書や神話、実在した人物も含め、数々の美女が艶めかしく描かれる。

それらほとんどが、男を魅了し男を惑わし、

相手がゼウスだったり、ヘラクレスだったり、サムソンだったり、シリウスだったり、

あまり神話や聖書に詳しくなくても、なんとなく知っているような逸話も。

 

「エヴァ」

アダムとイヴのイヴのこと。

エヴァンゲリオンってこっから来てる?

 

「セイレーンと詩人」

 

「エウロペの誘拐」

 

サロメはじめ、妖艶で悪女的な魅力を秘めた女性を描くのが好きだったのかもしれない。

同時に描かれるのが天使や一角獣など、空想上の生き物。

どれも物語のひと幕を描いているのだろうが、

自分は明るくないので、ただただ美しさに魅了され、ため息をつくばかり。

 

ひととおり見終えて、物販購入。

図録はもちろん、好きな絵のポストカード、

そしてTシャツと眼鏡ケースを購入。

眼鏡ケース、もったいなくて使えない。

Tシャツは一角獣とともに全裸の処女が描かれているので、

着て街中を歩くのは正直勇気が要る。

 

図録の表紙はもちろん、「出現」。

 

「一角獣」が描かれた眼鏡ケース。

クロス付き。

使えやしない。

そういや、ガンダムワールドで購入した、マ・クベのメガネ拭きも未だ未使用。

  

購入したTシャツ。

「一角獣」が描かれたもの。

これを着て街中を歩くのはなかなか勇気が要る。

 

なかなか見応えのあった展覧会だった。

ファンタジーっぽい絵はやっぱり好きだ。

聖書や神話を“ファンタジー”なんて称したら怒られそうだけど。

これが日本書記の神話や仏教の物語になると、

“ファンタジー”にはならないんだよな。

いや、広義にはしっかり“ファンタジー”なんだろう。

空想・フィクションの物語であれば、現代モノだろうが近未来モノだろうが、ファンタジー。

でもやっぱり中世以前の西洋モノをファンタジーって呼びたいよなあ。

  

自分がもっとも魅了されたのが、このデリラ。

ポストカードはもちろん購入。

 

すんごいそそられるエクゾチック美人。

「出現」とか「サロメ」なんかのリトグラフっぽいものが12万円くらいで販売されていが、

そのラインナップにこのデリラがあったなら、間違いなく買っていたと思う。

それくらい惚れた。

 

撮影禁止だが、記念撮影コーナーがあった。

立派なポップをバックに写真が撮れる。

おひとり様はどうしようもないが。

 

購入したポストカード、「セイレーン」に付着物が!

製造段階で付着したようで、取り除いても圧着された跡が残ってしまった・・・。

こんなん検品で見つけられんよな・・・。 

 



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