よろず戯言

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スズキコージ民謡画展

2022-08-30 19:08:49 | アート・文化

田川市美術館

 

久しぶりに最寄りの美術館、田川市美術館へ企画展を観に行った。

絵本作家のスズキコージ氏の個展、スズキコージ民謡画展だ。

 

近場にある美術館。

田川市の田川市美術館,嘉麻市の織田廣喜美術館,直方市の直方谷尾美術館。

この三つの美術館をたまにチェックする。

それぞれ小さな美術館なので、そんな大きな企画展は開催されないけれど、

たまにチェックすれば、なんだか面白そうなことをやっていることがある。

なにより近いので、気軽に行けるところが大きい。

 

 

今回の企画展も、そんな感じで何気なくチェックして開催を知った。

スズキコージ?

知らないアーティストだ。

だが、この絵のタッチは見たことがあるぞ!?

絵本作家・・・もしかしたら・・・?

ビンゴだった。

昔読んだ、宮沢賢治のセロ弾きのゴーシュの絵本、あの絵を描いたひとだった。

 

 

展覧概要に掲載されている作品を見ていると、極彩色で描かれた緻密な世界。

それぞれがカラフルで雑多で情報量が多く、描かれているどれもが生き生きとしている。

これは・・・自分の大好きなジャンルのイラストじゃないか!

さっそく直近の休みに観覧に行った。

 

受付でチケットを購入。

「展示作品、すべて撮影自由となっております。」

受付のおねいさんさに、半券を切られたチケットを手渡されながら、そう告げられる。

撮影自由って展覧会は初めてかもしれない。

さっそくデジカメを手に展示室へ。

 

“歌が湧いた”

田川市の中心駅、“田川伊田(たがわいた)駅”にかけて、タイトルが付けられたらしい。

炭坑節が流れてきそうな作品だ。

 

展示室前に、大きなイラスト画が一枚。

板打ちされていない、布だけのキャンバスに力強く描かれたイラストだ。

スズキコージ氏が、この田川市美術館での個展のために描きあげた作品らしい。

タイトルは“歌が湧いた”。

 

美しい花々に囲まれた、大きな黒い山の中で、

ヤギだかシカだか、なんだかよくわからない動物たちが掘削作業をしているのが判る。

遠くには、伊田にある田川を象徴する炭坑遺構の二本煙突らしきものも見える。

この地で開催する企画展のために、わざわざ描き下ろしてくださったありがたい作品。

地元民としてなんだか誇らしく感じてしまう。

 

万国旗のように垂れ下がった切り絵作品も、スズキコージ氏作なのかな?

 

 

なぜか便座にイラストが描かれた作品も。

遊び心満載だ。

 

そんな愉快なイラストをじっくり眺め、いざ展示室へ―。

入口にには、アニメ映画のリメンバーミーとかに登場しそうな、

愉快なガイコツの紙細工がひらひらとぶら下がっている。

ああ、子どもを連れてきても楽しめる展覧会かもしれない。

 

絵本、“おばけドライブ”の原画。

現代の子どもには少し怖いかもしれないタッチ。

 

“おばけドライブ”

 

絵本、“やまのディスコ”の原画。

 

“やまのディスコ”

 

中に入ると、極彩色。

天井には万国旗を張り巡らせたように、

切り絵?みたいなレースのハンカチみたいなのが、たくさん張り巡らされている。

大きなキャンバスの一枚イラストの作品に出迎えられたかと思えば、

壁にはずらりと並ぶ、絵本の原画。

代表作の、“エンソくんきしゃにのる”の原画や、

“ポチャッ ポチョッ イソップ カエルのくににつたわるおはなし”などの原画が並ぶ。

 

 

幻想的なものからコミカルなものまで多種多彩。

 

宗教的っぽいものもあれば、宇宙的なものもある。

バラエティに富んだ作品群。

 

残念ながら、すべての絵本の活字が添えられているわけではないので、

物語の流れは解らないが、それでも想像で楽しむことができる。

とくにカエルたちの愛らしいイラストは、カエル好きにはたまらない。

雑多としているのに関わらず、物語が解りやすいのは さすが絵本作家だ。

 

 

 

お面とかドールハウスみたいなのや、よくわからない紙の作品も多数。

 

こういう暖簾というかタペストリーというか、

これらもスズキコージ氏の作品だったのかな?

 

絵本原画に混ざって、コロナ禍にあって創作意欲が爆発して書き上げた作品も並ぶ。

200色以上もの色鉛筆やサインペンを使用し、

うねる線で着色も兼ねて描いたような力作が並ぶ。

あの世とこの世を結ぶような世界観を描いているらしく、

メキシコの死生観を参考にしているのだそう。

アニメ映画、リメンバーミーっぽく感じたのはそのためだったか!

 

 

 

 

最後の部屋にも絵本原画と巨大な作品が混在して並ぶ。

広島の原爆ドームを擬人化した作品、“ドームがたり”や、

チェルノブイリ原発事故をきっかけに、原発反対を訴えるコラージュ作品も展示されていた。

平和や原発に対して、人一倍 訴えが強いアーティストなのかもしれない。

世界同時多発テロや福島の原発事故、ロシアのウクライナ侵攻に対しては、

新たな作品は生み出さなかったのかな?

なんて思ったりも。

 

広島の原爆ドームを擬人化した絵本作品、“ドームがたり”の原画。

 

チェルノブイリ原発事故を受けて制作したコラージュ作品。

反原発を訴える作品群。

コラージュに使用した写真は、写真家の本橋成一氏の写真を使用している。

 

展示を見終えてもオマケ展示がある。

受付後ろのガラスケースには、スズキコージ氏の幼少時の作品が数点。

小学校一年生時の絵画や、夏休みの宿題なんかが展示されていた。

やはり当時から、色使いがカラフルというかサイケデリック。

ちょうど夏休みの時期なんで、現代の小学生向けには刺激になるかもしれない。

それにしても、富野由悠季展のときも思ったが、よくもまあ取ってあるもんだなあ・・・と感心する。

 

グッズを求めて、奥にあるギャラリーショップへ。

その途中にある休憩室?で、モニターで映像が流れていた。

ヒッピーだか仙人のような風貌の小汚いつなぎ姿のジイさんが、

大きな布キャンパスに、手の平で直接ペンキを塗りたくっていた。

・・・これ、もしかしてスズキコージ氏か!?

立ち止まってそれを観る。

 

黒,青,赤・・・真っ白なキャンバスに無造作にペンキを塗りたくる。

ホースでキャンバスに水をぶっかけ、ペンキを垂らし、さらに筆やハケで描いていく。

この絵の構想が頭に入っているのだろうが、

傍から見ると、どんな作品に仕上がるのか想像できない。

手のひらを真っ黒にして、顔もペンキだか絵具で汚し、

ひょうひょうとトボけた感じのジイさんが、絵を描き続ける。

 

スズキコージ氏。

 

熱心に描いているかと思えば、

途中、よくわからない打楽器?をジャンジャン鳴らして遊んでみたり、

撮影スタッフやカメラにちょっかい出してみたり、

しまいにゃ、キャンパスの真ん前で仰向けになって眠ったり・・・。

「いいけん、早う描きんさいや!」と観ながらツッコむ。

 

自由奔放な彼の制作記録。

3日かけて出来上がった大作は、最初に展示されていた、“歌が湧いた”だった。

え?

てことは、この制作現場どこ?

田川で撮った映像?

 

この時点で知らなかったが、

美術館の敷地内で、公開制作イベントが開催されたらしい。

そのときの制作過程の映像がダイジェスト編集されて、ここで流されていた。

そして、そのときに出来上がったのが、冒頭で観た、“歌が湧いた”だった。

この企画展のため、事前に描いていただいたものだと思っていたら、

開催に合わせて、ここでこの場で即興で描いたものだったんだ。

映像では、やたら遊んでるような光景も流れていたが、

逆に、たった3日であんな大作をさらっと仕上げてしまう方が驚きだ。

 

グッズを見たけれど、あまりパッとしなかったので何も買わず。

画集とか展示目録とかが欲しかったけれど、なくて残念。

一筆箋とクリアファイルはデザインが微妙だったし、

ポストカードはサイズがヘンで、コレクションケースに収められないのでスルー。

タオルやTシャツでもあれば・・・と思ったがそれらはなかった。

絵本がたくさんあったけれど、もう甥っ子たちも大きくなったし、絵本はちょっとねえ・・・。

 

自分が観て楽しかったので、ぜひ子どもたちにも見せたいと思い、

甥っ子たちを誘ったものの、あまり興味を示さず・・・。

唯一「いきたーい!」と言ってくれた、姪っ子3号を連れて再度観覧した。

この姪っ子3号を連れて行ったことが、その直後、大きな問題になろうとは・・・。

このとき思いもしなかった・・・。

 

中央に展示されていた、謎だったオブジェ作品。

タイトル失念。

“**さん”だった。

自画像・・というか自身かな?と思ったが違うっぽい。

 



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