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バジュランギおじさんと、小さな迷子

2021-01-13 15:45:00 | 映画

 

一昨年の夏に観た映画。

サルマン・カーン主演のドラマ、“バジュランギおじさんと小さな迷子”。

原題は“Bajrangi”。

キャッチコピーは、“ふたりなら、どんな壁でも越えられる”。

初めてきちんと鑑賞したインド映画。

 

 

インド映画。

日本では1998年に公開されたコメディ、“ムトゥ 踊るマハラジャ”が大ヒット。

その後、インド映画が日本で上映される機会も増え、

全編にダンスと歌がふんだんに取り入れられた、コメディタッチのミュージカル映画として広く認識され、

インド映画のファンも増え、その後も多くのヒット作が公開された。

 

自分もインド映画に興味はあったものの、スクリーンで観るまでに至らず。

レンタルでDVDを借りるまでも至らず。

地上波で放映されることもないため、これまで観る機会もなかった。

しかし、映画館でこのバジュランギおじさん~の予告編を観て、

これは今までのインド映画の、ミュージカルコメディとは一線を隔すものだと感じ、

公開前から観に行こうと決めた。

 

 

 

パキスタンの山奥の小さな村で父母と暮らす少女、シャヒーダー(シャルハーリー・マルホートラ)。

彼女は生まれつき口が利けないという、障がいを持つ子だった。

シャヒーダーのことを哀れんだ村の長老が、口が利けるようになるよう、

両親にシャヒーダーを連れて、インドの有名な寺院へ参拝に行くよう薦める。

 

しかしパキスタンとインドは隣国ながら、これまで歴史や宗教で対立し続け、

近年も領土問題を含め様々な問題を抱えている現状だった。

列車で国境を行き来できるものの、兵役経歴のある父親がインド行くのは難しい。

そこで、母親がシャヒーダーを連れてインドへと向かう。

寺院でお参りし、その帰りの列車。

 

疲れ眠っていた母親。

好奇心旺盛なシャヒーダーは席を立って、客席を冒険する。

途中停車した列車。

ふと外を見ると、一頭のヤギが目に映った。

実家でもたくさん飼っているヤギ。

シャヒーダーは列車を降りて、ヤギのところへ―。

しかし、その間に列車は動き出してしまう。

 

 

パキスタンに到着する列車。

シャヒーダーが居ないことに気付いた母親は泣き叫ぶ。

しかし国境を越えてしまい、捜索することもできない。

娘を失った母親は失意のまま村へ戻る。

シャヒーダーが無事、戻ってくることを祈るばかりだった。

 

 

インドのとある街。

ハヌマーン神を信仰する祭りが盛大に行われていた。

そこへやってきた真面目でお人良しな青年、パワン(サルマン・カーン)。

祭りを楽しんでいるところへ、少女がつきまとう。

母親とはぐれてしまったシャヒーダーだった。

飲み物を与えると一気飲み。

お腹が空いているのだと察して食べ物をおごってやる。

しかし、その後も自分の後ろを着いて来る。

迷子のシャヒーダーを警察に保護してもらおうとするが、管轄外だと門前払いされてしまう。

ハヌマーン神のおぼし召しだと思い、パワンは仕方なくシャヒーダーを連れ帰る。

 

 

パワンはデリーにある父の友人の家に居候していた。

居候が突然連れ帰った幼い少女に、家人たちは困惑する。

そうでなくてもパワンは家長であるダヤーナンド(シャーラト・サクセーナ)から快く思われていない。

ダヤーナンドにはひとり娘、ラスィカー(カリーナ・カプール)が居て、

ラスィカーには親同士が決めたれっきとした許嫁が居た。

しかし、ラスィカーはパワンと恋に落ちてしまい、許嫁との縁談は破談していた。

 

 

ダヤーナンドはラスィカーとの結婚に対し、パワンに条件を突きつけていた。

「自力で半年のうちにマイホーム購入資金を貯めろ!」

そんな無茶な条件を課していたにも関わらず、

今度はまた、どこの子とも知らない少女を連れて来て住まわせだしたパワン。

シャヒーダーを哀れだと思いつつも、ダヤーナンドが難色を示すのは当然だった。

 

だが、根っからのお人良しのパワンは、シャヒーダーを放っておけない。

この日からシャヒーダーを親元へ帰す奮闘がはじまる。

口が利けないため、彼女の名前も住所も聞くことができない。

 

 

だが、テレビのクリケットの観戦中に、シャヒーダーはあろうことか、

敵であるパキスタンのチームを応援していた。

シャヒーダーはダヤーナンドの家で出される豆料理に難色を示し、

こっそり行った料理店で鶏肉料理を美味しそうにかぶり付いていた。

さらに、パワンとはぐれた際には、街にあったモスクへ行って礼拝しており、

彼女がパキスタン人でイスラム教徒だと判明する。

 

 

パキスタン人と異教徒を激しく嫌悪するダヤーナンドは激怒。

すぐにシャヒーダーをパキスタンへ追い返すようパワンに告げる。

シャヒーダーを連れて、パキスタン大使館へ向かうが、

反パキスタンのデモが激しくなり、大使館は閉鎖されてしまう。

 

 

「シャヒーダーを返すまで戻って来るな!」と言われていたパワンは途方に暮れる。

ダヤーナンド知り合いの旅行代理店の男が、パキスタンにツテがあり、

シャヒーダーをパキスタンに連れていってくれるという。

藁にもすがる思いで、パワンはシャヒーダーをこの男に託すことに。

パワンと別れるのを嫌がるシャヒーダー。

後ろ髪を引かれる思いで旅行代理店を後にするパワン。

 

 

だが、シャヒーダーを預けた旅行代理店のよくない噂を耳にして、

胸騒ぎを覚えたパワンは急ぎ旅行代理店へ戻る。

そこには、売春宿へシャヒーダーを売り飛ばし、大金を得たさっきの男の姿!

旅行代理店の男も、売春宿のスタッフたちも投げ飛ばし、シャヒーダーを取り戻すパワン。

パワンに抱かれ、しっかりとしがみ付くシャヒーダー。

ここからパワンは誰にも頼らず、自身の力でシャヒーダーをパキスタンに返す決意をする。

 

 

しかし、数多くの問題を抱えて関係の悪化しているインドとパキスタン。

今となっては国境を超えるのは容易ではなく、密入国するしかない。

密入国者の協力を得て、パキスタンに入るもあえなく捕まる。

だが、パワンの馬鹿正直さに呆れた、パキスタン側の国境警備隊もついに折れ、

シャヒーダーの家探しを認めてくれる。

 

 

だが、パワンはスパイ容疑をかけられ、パキスタンの警察に逮捕されてしまう。

その留置されていた警察署にあったカレンダー。

そこに雄大な景色が映っていた。

シャヒーダーは指をさして訴える。

そこが自分の故郷だと。

 

 

どさくさに紛れて警察署から脱走できたパワンとシャヒーダー。

二人を追う警察。

そして、特ダネスクープだと、二人を追いかけるフリージャーナリストの、

ナワーブ(ナワーズッディーン・シッディーキー)にも付きまとわれる。

しかし事情を知ったナワーブは、途中から二人に協力する。

 

 

ナワーブまでもスパイ容疑がかけられ、三人ともが追われる羽目に。

道中、さまざまな人の手を借りながら、突破してゆく三人。 

だが、パキスタン警察の面目をかけて、必ず三人を捕えよと命じる警察幹部。

追手の規模はどんどん大きくなり、検問も厳しくなる。

果たしてパワンは無事にシャヒーダーを故郷の村へ帰すことができるのか?

 

 

おもしろかった。

同時に色々と考えさせられる映画でもあった。

自分の抱いていたインド映画のイメージとまったく異なっていた。

ミュージカル調でコメディタッチだったのは序盤のみ。

いや、この映画だけ、他のインド映画と毛色が異なっていたのかもしれない。

ふつうの人間ドラマだけども、

インドとパキスタン、実際に問題を抱える二国間の関係を、世界に提議したような作品だった。

 

 

国家レベルでは対立していても、国民レベルでは対立を望んではいない。

そんなふうに捉えたけれど、実際はそんなに生半可なものでもないのかもしれない。

それは、日本が抱える、韓国や中国,ロシア等との関係でも判る。

国民レベルでは自由に往来し、文化を共有しているようには見えるけれど、

国家レベルになると、領土問題や歴史問題で火花バチバチだ。

地続きでないだけ、日本は他国の抱えるそういった問題が、そこまで深刻ではないのかもしれない。

 

 

聾唖の少女、シャヒーダーを演じる、ハルシャーリーちゃんが可愛くて健気で・・・。

インドでは有名な子役らしい。

日本でいうところの芦田愛菜に相当するのかな?

現在、ちょっとだけ大人になって、やはり女優として活躍しているようだ。

喋れない難しい役を一所懸命に演じていた。

 

 

主演のサルマン・カーン氏。

インドの俳優さんを知らないため、有名なのかどうなのかも判らないが、

インドではかなり人気のある俳優さんらしい。

日本にも彼のファンが多数居るとか。

俳優業のみならず、自身がプロデューサーとして、映画制作に関わることもあるようだ。

序盤の楽しげなミュージカルシーンのダンスや、コメディ。

はたまた激しいアクションと、涙をさそうシーン。

どんなシーンにも完璧に対応できる、確かに間違いなく名優だと感じた。

 

 

国際問題を考えさせられつつも、人々の温かさに思わずほっこりしてしまう作品。

韓国や中国を嫌悪し、最近の関係悪化にやきもきしている人にこそ観てもらいたい作品。

現実はそんな甘くないと解れど、理想としても観る価値はあると思う。

 

あと、驚いたのが、インドの田舎でもパキスタンの山間部でも、

スマフォにインターネット、SNS,ユーチューブなんかが普通に普及していること。

いや、二国を発展途上国なんて思っているわけじゃないけれど、

イメージ的に都市部のみが発展し、

それ以外はまだまだインフラも充分に整っていないものだと思っていた。

そういや20年ほど前の日本のIT革命のときは、

インドから多数の技術者が来て日本人技術者を指導・育成したんだったなあ。

こういった誤った認識を是正できるのも外国映画の魅力だ。

 



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