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上條陽子とパレスチナの子どもたち展

2017-07-24 17:47:30 | アート・文化

田川市美術館,田川市立図書館が併設されている敷地にある謎のタワーオブジェ。

いちおうこれが美術館のシンボルになっている。

 

休みを利用して、田川市美術館で開催されていた企画展、

光は見えるか 上條陽子とパレスチナの子どもたち展”を観てきた。

上條陽子氏は、現代美術家。

20年ほど前に開催された企画展でパレスチナへ行ったことがきっかけで、

以来、レバノンにあるパレスチナ難民キャンプの子どもたちへ絵画や工作の指導にあたっている。

そこで制作された、パレスチナの子どもたちの作品の数々と、

上條氏がパレスチナ情勢をテーマに作り上げた、

現代美術の作品が一緒に展示されるという企画展。

ずいぶん前にチラシでこの企画展を知り、観に行こうと思っていたものの、

休日の予定、あれこれ他に優先していたら、最終日に慌てて観に行く格好になった。

 

 

昨年観たパレスチナ映画、“歌声にのった少年”。

突如パレスチナにユダヤ人たちが押し寄せて占領し、

アメリカなどが後押してイスラエルが建国されたのは70年ほど前。

元から住んでいたパレスチナ人達は、周辺国へ難民として流出した。

パレスチナに残って抵抗を続ける者も居れば、

わずかに残された自治区で、イスラエル軍の空爆におびえながら細々と生活する者も居る。

 

上條陽子氏のプロフィール・略歴のパネル

 

そんな理不尽極まりないパレスチナ。

故郷を追われ、難民となった子どもたち。

そんな子どもたちは受入国で最低限の生活はできるものの、

いくら学習しても、いくら技能を身に付けても、

その国で将来就くことができる職業は厳しく制限されてしまっているという。

夢も希望も閉ざされてしまっている、何の罪もない子どもたち。

そんな不憫な子どもたちへ、上條氏は絵画指導をはじめた。

皆、熱心に絵画を学び、そして制作を楽しんでいるという。

紛争地帯に暮らす、子どもたちの絵画と、そこを見てきた上條氏の作品群。

なお、撮影OKの展覧会だったので、いくつかの展示物を写真に収めた。

 

 

 

展示スペースに入って、最初に飛び込んでくるのは、

床に不規則に並べられた、よく解らない作品群と、

壁に貼り付けられた、これまたよく解らない作品。

不規則な形の紙切れが無数に貼り合わされたり、並べられたりしている。

自分にゃ現代美術は難しいわ・・・。 

その作品のなかのひとつは、近づいてよく見てみると、

ひとつひとつが、モノクロの写真だった。

がれきや兵士など、おそらくパレスチナで撮ったのであろう写真が使われていた。

 

 

作品のアップ。

現地で撮られたと思しき写真が素材となっていた。

 

上條氏のふだんの作品を知らないので、なんともいえないのだが、

ここに展示されてある作品は、多くが黒色で暗い雰囲気なものが多い。

また、無機質なものが多く作品の素材として使用されていて、冷たさも感じる。

パレスチナでの衝撃が、そのまま作品に反映されているのだろう。

 

 

 

上條氏の大型の作品群を過ぎると、パレスチナの子どもたちの作品スペースに。

まずは漫画が登場。

日本人が指導したからか?

それともアラブでも漫画はブームなのか?

たくさんの4コマ漫画作品が並ぶ。

だが、漫画といっても、その内容を見れば笑えやしない。

漫画の吹き出しに書かれた文章は、アラブ文字なので読めない。

だが、その日本語訳された作品タイトルと絵の雰囲気で、内容は容易に想像できる。

多くは、“漫画”とはいえない、抗議や訴えといったものになっている。

印象に残ったいくつかを紹介。

 

 

パレスチナの子どもたちが描いた、4コマ漫画。

右は、子どもですら容赦なく連行するイスラエル兵を非難する作品。

 

 

左:電気がストップして困っているひとたちを描いた作品。

右:お金がなくて病院へ行けず、路上で分娩する妊婦さんを描いた作品。

 

イスラム教の戒律か?

テレビゲームもボール遊びも自転車遊びも、男の子の遊びだと禁止され、

男の子に生まれたかったと悲しむ女の子の作品。

 

漫画を過ぎると、絵具やクレヨン、色鉛筆など、様々な画材で描かれたポスターや絵画が並ぶ。

日本でいうところの、人権ポスターとか、歩きタバコや、ポイ捨て,運転スマフォ禁止とか、

そういうのを子どもが描いたような作品群。

だが、テーマは日本の社会問題より遥かに重く、戦争の悲惨さを訴えるもの、

平和を願うもの、イスラエルを非難するもの、パレスチナの理不尽さを嘆くもの、

タイトルもなければ、その文章も読めやしないが、これも漫画同様、

そのタッチで描いた子どもたちが訴えんとすることが、否応なく伝わってくる。

 

 

なかには、凄惨な様子が描かれているものもあった。

倒れている市民へ容赦なく発砲するイスラエル兵。

路上で血を流し倒れている無数の死体。

戦車の砲撃で火を吹いて崩壊するビル。

救急車に担ぎ込まれる負傷者。

そのほとんどが、小学生低学年あたりが描いたであろうタッチなので、

そこまでリアルには描かれてはいない。

だけど、そんな幼い子のタッチで、このような凄惨な現場が描かれているという事実。

年端の行かない子どもたちが、そんな現場に遭遇しているという現実を知らされる。

 

ピカソのゲルニカを模倣した作品も。

ドイツ軍による空爆の凄惨さを描いたピカソの作品。

それに感銘を受け、イスラエル軍の攻撃を同じように表現したのだろう。

 

平和ボケした日本人にとっては、あまりに非日常的な衝撃的な絵画が並ぶ。

そこを過ぎると、狭い通路を通って次の展示室へと移動する。

その通路の両側にも、展示物がたくさんあった。

レバノンで撮られた難民たちや、エルサレムの街中の風景の写真。

パレスチナをめぐる、簡単な歴史年表のようなものなど資料も展示されていた。

その向かいには、パレスチナ難民の子どもたちの色んな工作が飾られていた。

カラフルな毛糸やモール,鳥の羽,ビニールなど、

色んな素材を使って、よく解らないけれど、やたらサイケデリックな小物を作っていた。

色彩感覚が日本の子どもとは異なるようだ。

 

 

通路を過ぎると、また上條氏の作品が目に入る。

木枠の箱へ、いろんなものを封じ込めたような作品。

たくさんの木箱が重ねられており、それぞれ封じられているものが異なる。

人形だったり、虫だったり、釘だったり、銃だったり・・・。

ただ、それが組み合わさって、ひとつの大きなメッセージを構成しているように思えた。

作品タイトルは、「記憶の塔」。

パレスチナ難民たちと触れ合い、これまで思ったこと感じたことの積み重ねなのだろうか。

 

上條氏の大作、「記憶の塔」。

木箱のひとつひとつに、それぞれ違ったものが封印されて、積み上げられている作品。

 

 

木箱のひとつには、パレスチナの英雄、故アラファト議長の姿も。

 

 

上條氏の作品としては最後に展示されたいた、「歪」。

不規則にカットされた無数の紙を張り合わせ塗装された手の込んだ作品だ。

 

ラストに飾られていた上條氏の作品、「歪」。

これまで黒い作品が多かったのに対し、白い部分が多くなったこの作品。

タイトルから、パレスチナの理不尽さや不平等さなどを表現しているのかもしれないが、

全体の色合いから、明るい兆しやわずかな希望の光を見出しているかのようにも取れる。 

この展覧会のサブタイトルというか、キャッチコピーが、“光は見えるか”になっている。

作者の意図や作品に込められたメッセージの本当の意味とは別に、

鑑賞する者がそれを自由に想像できるのが現代美術の楽しいところでもある。

 

 

ラストはやっぱり、パレスチナの子どもたちの明るい絵。

前半にあった、暗い漫画やポスターとは異なり、

自画像や家族の肖像画,果物や花などの静物画に、

動物や風景を描いたものなど、バラエティに富んだ絵画が無造作に並べられていた。

思い思いに描かれた子どもたちの作品をひとつひとつ眺めていると、

ピカチュウ!?

ポッチャマ!?

パレスチナでもポケモン人気なんだな!

・・・と思っていたら、日本の子どもたちとの合作コーナーがあって、

そのポケモンの絵はやっぱり日本の子どもの作品だった。

 

最後のあいさつのパネル。

「光は見えましたか?」

末文にそんなメッセージが書かれていた。

一時期は毎日のようにパレスチナ情勢のニュース映像が飛び込んで来ていたが、

最近は北朝鮮のミサイル問題や、中国の日本の排他的経済水域での活発化する違法行動。

直接日本に害することなので、仕方ないとして、

それらばかりがピックアップされて、どうしても中東情勢に関心が薄れがち。

現状は、まだまだ決して光は見えないのだろうが、

子どもたちの作品のなかには、まばゆいばかりの光を感じた。

 

 

一番奥にあるギャラリーにも、パレスチナの子どもたちの作品がたくさん展示されていた。

 

展示室を出ると、出口やミュージアムショップへと出る。

有料はここまでだが、実は続きがあって、一番奥の無料ギャラリーにも、

無数のパレスチナの子どもたちの絵が展示されていた。

いっしょに、地元の小学生たちのパレスチナの子どもらへのメッセージも貼られていた。

寄り道しないでさっさと出ちゃった人は、見逃してしまっているかもしれない。

ここでも絵を鑑賞していく。

そして地元の小学生たちが書いたメッセージを読もうかと思ったら、

なんだこの掲示の仕方は?

何を現しているのか判らないが、なんだか変な形に貼られている。

しかも、メッセージの紙切れを重ねて貼っちゃってるものだから、重なってしまった下のものは読めやしない。

この貼り方、もしや上條氏が何かを意図して自ら貼った!?

  

  

何の形を意図しているのか判らないが、何か意味があって、こういう貼り方をしていたのだと思う・・・。

 

こんな重ねて貼られちゃ、下の方の読めねえよ。

 

すっごい短いメッセージ書いちゃった子は、書いた部分が丸ごと隠されてしまって、もう白紙状態に。

それよりも、左下の「ブルゾンちえみと・・」って、何書いてたんだろう?

ちくしょう・・・こんな面白いこと書いてあるのなら、ちゃんと読んでおくんだった・・・。

パレスチナの子どもにブルゾンちえみを紹介したかった? 

 

美術館を出たら、その道路沿いのちょっとしたスペースで、

ワゴン車というかキャンピングカーの荷台のような露店があった。

美術館・図書館と併設されてある喫茶店が、夏休み期間限定で、ここで出張露店しているようだ。

うだる暑さでのども乾いていた、“アイスコーヒー80円”とあったので迷わず買いに行く。

喫茶店のアイスコーヒーが80円はええわ~。

店に行くと、サンドイッチやハンバーガーもメニューにあった。

ちょうど昼過ぎで小腹も減っていたし、ハンバーガーも購入。

 

サンドイッチと一緒にクーラーに入れられていて、

それをそのまま出され、冷たいものを食べるはめに・・・。

ハンバーグとテリヤキチキンだけでも、温めてから渡しなさいよと。

しかしこの中身を見せたパックの仕方は斬新だと思った。

 

そこらへんのベンチで座って遅めのランチでも・・・と思ったら、

真っ昼間から人目もはばからず、すんげえイチャついてるカップルが!

ちょ・・・!

中学生か高校生くらいの若いカップルだ。

女の子はホットパンツで、白くてすらっとした美味しそうな太ももしてやがる。

女の子の髪をかきあげてディープキスしてる男の方を見ると・・・

ブッさ!!

すんごいブサイク!

なんであんなブサメンが、こんな脚の美味そうなおネエちゃんと・・・。

このカップルのすぐ後ろは市立図書館。

夏休みなんで子どもたちがたくさん居て、ガラス越しにその光景も見える。

お前ら大勢の小学生から見られてるなか、そげんベッタベタするなよと。

ただでさえ暑いのに、余計に暑くなってくらぁ!

もう外で食うのはやめて、車で食おうと駐車場まで進む。

その際、チラッと女の子の顔も見る。

ホッ・・・。

男とつり合い取れているからいいや。

 

中盤に展示されていた上條氏の作品、「ボタ山'16」、「香春岳」、「ボタ山'17」。

これって田川に来てインスピレーション受けて制作したのかしら?

 



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