ポルトガルのえんとつブログ

画家の夫と1990年からポルトガルに住み続け、見たり聞いたり感じたことや旅などのエッセイです。

158. オリーブオイル

2019-11-01 | エッセイ

露店市で量り売りされている摘みたてのオリーヴの実

 

 我が家から2時間も走ると、バイショアレンテージョ地方の中心にたどり着く。そこは赤土に被われた乾燥した大地が広がっている。乾燥に強いコルク樫やオリーブの木などが植えられて、その下には羊や牛や黒豚などが昼寝をしている。黒豚は樫の実を食べて美味しい肉になるそう。道路脇に植えてあるコルク樫の大木の下で、バケツを持って何か拾い集めている人を時々見かけたけれど、あれは黒豚に食べさせるコルク樫の実を拾っていたようだ。

 今年は雨季になってもまったく雨が降らない。去年もそうだったが、アレンテージョ地方のダムはいよいよ底が見え始めている。

 久しぶりにアレンテージョ地方を走っていると、オリーブの木は畑の中にポツンポツンと前後左右に空間を取って一本ずつ植えてあり、実がなると、人々は木の下に布を敷いて、長い棒で実をたたき落としていた。それから落ちた実をトラクターの荷台に積み込み、収穫した。この方法は人数がいるし、時間がかかる。別の場所で見かけたのは、ブルドーザーのアームで幹をつかんで振動を与える。するとばらばらと実が落ちる。これは棒で叩き落すのに比べて格段に効率が良い。しかしオリーブの木が傷むのではないだろうか。

 アレンテージョからの帰り道、前を走るトラックの荷台には緑色の実が満載されて、山積みだ。それは収穫されたオリーブの実だ。

 オリーブ畑は、見慣れない風景が広がっていた。画期的だ。畑での植樹風景がまったく違う。オリーブの木は今までは横に広がっていたが、今は縦長に伸びている。木の前後はびっしりと植えてある。まるで茶畑のようにまっすぐ一列に奥の方まで続いている。その代わり隣の木との間隔が広く、その間を機械が通りながら刈り取って行く。収穫した実はそのままトラックに乗せて、加工工場まで運んでいく。この方法だと人手はほとんどいらない。なにしろ今までは収穫時期に短期間に多くの人を集めなくてはならない仕事だから、コストもかかる。それがほとんどかからないのだから結果的に消費者の手に渡る時も値段がぐんと安くなる。

 この頃、オリーブ油の値段がどんどん安くなっているのは、こういう訳だったのだ。

 私たちが約30年前にポルトガルに来た時は、オリーブオイルの値段はびっくりするほど高かったし、メーカー品しか目につかなかったのを覚えている。ところがこの数年の間に知らないメーカーの製品がどんどん増えて、売値もずいぶん安くなった。しかも味は悪くない。

 我が家では天ぷら油はオリーブ油を使う。最初の頃はヒマワリ油や揚げ物専用の油を使っていたが、ある日、近くのレストランで食事をした時、添え物のバタータフリット(フライドポテト)がすごく美味しかった。尋ねてみると、オリーブ油であげているのだという。それ以来、天ぷらや揚げ物はオリーブ油を使っている。油の値段がどんどん安くなっているのは嬉しいことだ。

 オリーブのヴァージンオイルに炒めたニンニクのスライスを加え、そこにどっしりパンをちぎって浸しても美味しい。レストランで注文を済ませると、まず出てくるのがどっしりパンとオリーブの実の塩漬け。そこにガーリックオイルが掛けてある場合は、料理が出てくる間、パンをちぎって浸すと美味しい前菜になる。美味しさに釣られてパンを食べ過ぎるとメイン料理が入らなくなるから、ご注意!

MUZ

 

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