ポルトガルのえんとつブログ

画家の夫と1990年からポルトガルに住み続け、見たり聞いたり感じたことや旅などのエッセイです。

K.081. 青絵付け大皿

2018-12-27 | 飾り棚

 

直径 33cm San Pedro do Corval

この大皿はとても思い出が深い。

ポルトガルに住み始めて間もないころに、エヴォラからローカルバスを乗り継いで小さな村を見て回り、夕方暗くなってレゲンゴスに着いた。
まだ7時前だからとあまり気にしていなかったのだが、町には宿が2軒しかなく、そのどちらもすでに満室。
カフェで店の人にどこか宿を知らないかと相談したら、店のお客たちも一緒になってあれこれと話し合った結果、モンサラシュには民宿が何軒かあるから、行ってみたらどうか…という。
ちょうどそこに居合わせたタクシーの運転手が10キロほど離れた山の上にあるモンサラシュ村に案内してくれて、ようやく一部屋だけ空いていた民宿に泊ることができた。それがモンサラシュ村との初めての出会いだった。

そして翌日、モウラオン行きのバスを待っていたら、同じ民宿に泊っていた若いカップルに声をかけられて、彼らの車に同乗させてもらった。
彼らは北部のポルトから新婚旅行でアレンテージョに来てあちこちを回っていて、モウラオンに行く前に、モンサラシュの麓にある陶器の村に寄って、記念の品を買うという。
それがサン・ペドロ・ド・コルヴァル村だ。

今では道路の両側に立派な店がどうどうと並んでいるが、そのころは道端に数軒の店しかなく、暗い土間でひっそりとロクロをまわし、絵付けをし、軒先に焼きあがった壷や皿を並べて売っていた。
新婚カップルはいくつかお土産の絵皿を買い、私たちは彼らにお祝いの絵皿を贈り、それと同じものを自分たち用にも買った。
そしてリュックに入れて大事に持ち帰ったのが、この大皿である。

レゲンゴスで宿が見つからずに心細い思いをした時に、みんなが心配してくれたことや、暗闇の中、タクシーで山道を上って行くと、霧に包まれた砦の村モンサラシュの大きな石門が突然現れた驚き、タクシーの運転手が民宿に掛け合ってくれて、やっと泊る部屋が見つかった時の嬉しさ…など、この大皿を見ると、鮮やかによみがえる。
MUZ 2007/10/15

 

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