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ホームページ「たかお・サンパウロ」の速報版

2006-11-25 土 教育基本法改正 “消化試合”では・・・

2006-11-25 05:31:24 | 「保存している記事」から

今日の毎日新聞社説

教育基本法改正 “消化試合”では立つ瀬がない

 政局がらみの駆け引きを経て、参議院に舞台を移した教育基本法改正案審議が盛り上がらない。日程に目盛りを合わせ、砂時計のごとくただ時を消費しているかのようだ。

 今国会審議に並行して表面化した「いじめ」「履修不足」「タウンミーティングのやらせ」「教育委員会の形がい化」は基本法論議の背骨の強度を問う試金石といっていい。これを具体的テーマに解決・改善策を積極的に論じ合う中で、基本法改正の当否や新たな理念にも論議は発展し得るはずだ。

 例えば、表面化した問題はこうしたことを問うている。いま学校や先生たちは子供の世界にどう向き合い、信頼関係を結んでいるか。真の学力は何で、どう身に着け、どう測るか。文部科学省は世論をどう受け止めてきたのか。そもそも政策に反映させてきたのか。文科省から全国の教育委員会に出向している官僚たちは、その形がい化の実態は百も承知だったはずではないか……。

 一方、1990年代以降、急変転する「教育改革」の方向と内容に学校現場は戸惑ってきた。東京大学の基礎学力研究開発センターが今夏、全国の公立小中学校の3分の1の校長を対象に調査したところ、66%が基本法改正に否定的で、85%は「教育改革が速すぎて現場がついていけない」という。

 文科省から「生きる力育成」「ゆとり」が称揚されたかと思えば、いま「学力向上」「競争」「学校評価」が強調される。さらに「再生」の掛け声のもと、制度改編が進もうとしている。落ち着いてじっくり取り組ませてほしいと願う先生は少なくない。

 それだけではない。前記調査によると、子供の間の学力格差、地域間格差、公立私立間の格差の拡大を8割前後が懸念している。だが、国会の基本法改正論議は「全員に学力向上と規範意識を」などと抽象論が繰り返されるばかりで、現場の危機意識にしっかり呼応するものがない。

 考えてみれば、審議に集まった議員、官僚のほぼ全員が現行基本法下で教育を受けたはずだ。よく「子供のころは」と昭和30年代あたりの懐旧めいた話も出る。そしてその時代も現行法下である。

 それを「矛盾している」と突くのではない。ただ、60年近いこの基本法が時代にそぐわず、社会の要請に応えきれないから書き換えるというのであれば、自身の教育体験も含めもっと内実を論じ、説得力のある問題提起をすべきだろう。今のままでは「占領時代という史上例外的な異様な時期に押しつけられた法だから変える」という論法ばかりが印象づけられる。

 そして、あと○時間やればいい、というような感覚で日程消化-成立の運びとなったのでは、理念の結晶とされる基本法も立つ瀬がないではないか。論じ合い、考えをもみ合い、広く納得し合う時間を惜しんでは、将来もっと惜しむ事態を招来しかねない。

 今国会で成立の公算大といえども、時の限り「言論の府」らしい中身ある論議の高揚を望みたい。

毎日新聞 2006年11月25日 0時17分

 


2006-11-24 金 今日の中日新聞から

2006-11-24 05:20:27 | 「保存している記事」から

2006年11月24日(金曜日)付 【中日春秋】

「撃ちてしやまむ」。もとは古事記に出てくる言葉で、戦時下に…

 「撃ちてしやまむ」。もとは古事記に出てくる言葉で、戦時下には将兵や国民を鼓舞する標語となった▼名古屋女子大名誉教授の青木みかさんの新刊『危ない!戦争がつくられる』(風媒社)。「一庶民の反省と不安」とうたうように、「撃ちてしやまむ」の青春時代を振り返り、戦争への道や悲劇を分かりやすく描く。女学校でも実弾射撃の訓練があり、銃の重圧感や射撃の衝撃はいつまでも残ったそうだ▼女学校を卒業後に結婚したが、船舶兵の夫は潜水艦の攻撃で船もろとも沈み、二十歳で一人に。夫は朝夕、『歎異抄』の「善人なおもて往生をとぐ、いわんや悪人をや」をつぶやき『葉隠』も身につけていた。そんな夫の戦争への諦観(ていかん)や葛藤(かっとう)を思うと、今もいたたまれなくなるという。広島で被爆した弟の手記もつらい▼<永劫にかかる凄惨の戦ひを禁じて誓ふ平和憲法>。自民党衆院議員を長く務めて、一昨年に亡くなった山中貞則氏の歌だ。太平洋の戦跡を巡って編んだ歌集の中の一首で、青木さんは本の冒頭で紹介しながら、平和憲法の意義を強く訴える▼今月で公布六十年の平和憲法。かつては多くの政治家が戦争体験も踏まえて大切にしたが、今は改憲の風が吹く。「戦争を知らない大人たち」が増え、為政者が「愛国心」を語る。その動きを見つめるうちに青木さんは戦争に突入したころの記録を残したい思いにかられたという▼時代への不安を感じる一方、平和に向かう普通の若者の底力を信じたいと。彼らもまた、このような本で一層平和の道を考えることだろう。

 


2006-11-21 火 今日の朝刊 【天声人語】 戦争体験の風化

2006-11-21 14:57:36 | 「保存している記事」から

2006年11月21日(火曜日)付 【天声人語】

 沖縄が日本の他の地域と最も異なるのは、米軍基地という「外国」を飛び抜けて多く抱えていることだ。その「外国」を通じて、世界の戦場とつながっている。独特の緊迫感が、沖縄にはある。

 沖縄県知事選で、自民と公明が擁立した仲井真弘多氏が、民主や共産、社民などが推した糸数慶子氏を破った。「経済の活性化」を優先して投票した人が、「米軍基地問題」を優先した人を大きく上回り、仲井真氏への追い風になったようだ。

 焦点の米軍普天間飛行場の移転問題で、仲井真氏は、名護市にV字形滑走路を造る政府案に「現行のままでは賛成できない」としつつ、県内移設は容認する構えを示した。この「賛成できない」というところに、経済面だけでなく、基地問題にも取り組む姿勢を感じ取ったり、そう期待したりした人もいたのだろう。

 糸数氏は「若い人に、基地の訴えが届きにくくなったのは事実」と述べた。基地問題をどう訴えるかを巡って、陣営内で論争が起きたという。世界の戦場とつながっているという緊迫感にも変化が生じているのだろうか。

 大田昌秀・前知事が1972年の本土復帰の数年前、雑誌「世界」に書いた。「海岸線一帯に累積している無数の死骸(しがい)を前にしてわたしが考えたことは、この惨状を正当化しうる名分は、何にもありえない、ありえようはずがないということであった」。45年、学業半ばで沖縄戦に動員された。

 実体験の戦場の記憶は薄れようもないが、若い層への継承はどうなのか。戦後61年の時の流れをも考えさせる結果となった。

 


2006-11-18 土 なぜそんなに急ぐのか 教育基本法改正

2006-11-18 02:16:26 | 「保存している記事」から

今日の東京新聞社説

なぜそんなに急ぐのか 教育基本法改正

 教育基本法改正案の審議が参院で野党欠席のまま始まった。政府・与党はなぜ、今国会での成立を強引に図るのか。国民の関心がようやく高まりつつある段階で、事を性急に進めるべきではない。

 安倍晋三首相は答弁で「教育再生の第一歩として教育基本法改正案の早期成立に取り組む」と、あらためて成立への決意を強調した。

 与党は「審議拒否は議会制民主主義に反する」と野党を批判し、参院に直ちに設置した特別委で審議を進める構えだ。

 民主党は参院に対案を出し直したが、他の野党と結束して「与党の数の横暴だ」と抗議し、街頭で国民に訴える手段に出ている。

 教育の憲法といわれる基本法の六十年ぶりの改正ながら、国民の関心は高くなかった。皮肉なことに与野党の全面対決と与党単独採決の異常事態で、やっと国民の目が基本法に向いてきた。救いといえば救いか。

 首相が言うように「五十年先、百年先の国造り」にかかわる法案だ。与党単独で事を進めていい道理はない。野党もまた、審議拒否の大義はない。

 政府の教育改革タウンミーティングでのやらせ質問で、教育基本法改正案に国民の理解が得られたとする政府説明への根拠は崩れている。参院での審議を深め、国民の理解を得るチャンスにする必要がある。

 衆院では、いじめや必修漏れなどの深刻な問題に追われた。改正案そのものの審議は十分とは言い難い。

 政府案の「我が国と郷土を愛する態度を養う」という愛国心条項について、安倍首相はこの日「子どもの内面を調べ、国を愛する心情を持っているかどうかで評価するものではない」と述べた。衆院では「歴史や伝統を調べたりする態度を評価する」と答えている。通知表による愛国心の評価について「必要ない」と答えた小泉純一郎前首相の答弁と同じか、違うのか。内心にかかわることを強制されたり評価されたりしないか心配する親や教師も多数いる。

 また、現行法は「教育は不当な支配に屈することなく」と教育の政治や行政からの独立を掲げる。改正案は「この法律、その他の法律の定めるところにより行われるべき」との表現を加え、法律や政令によって国の介入に正当性を持たせている。

 教育現場に根強い強制や不当介入への懸念は払拭(ふっしょく)してもらわねばならない。子どもと日本の未来にかかわることだ。安倍首相の「広く深く議論する」との言葉通り、時間を惜しんではならず、今国会にこだわる必要はない。

 


2006-11-17 金 中国新聞 社説

2006-11-17 13:08:53 | 「保存している記事」から

2006年11月17日付 中国新聞 社説

ミサイル防衛研究 「戦争できる国」に進むな

 国防の基本である「専守防衛」を逸脱する方向に進む恐れはないのだろうか。安倍晋三首相が米紙のインタビューで、米国を標的としている可能性のあるミサイルを、日本が迎撃することの可否について研究する考えを表明した。

 安倍首相は日米同盟の強化へ向け、集団的自衛権の行使を禁じているとされる憲法の拡大解釈を、もっと進めるつもりのようだ。しかし自衛隊のイラク派遣まで至った解釈をさらに広げるのはもう限界だろう。「戦争できる国」へ、危険な一歩を踏み出しかねない。

 米紙ワシントン・ポストに対して安倍首相は、ミサイル防衛(MD)システムに言及。続けて「米国に向かうかもしれないミサイルを、撃ち落とすことができないのかどうか研究しなければならない」と表明した。

 九月の所信表明演説では、いかなる場合が集団的自衛権の行使に該当するのかを「個別具体的な例に即し研究する」と述べていた。その具体的なテーマがミサイル迎撃だったことになる。

 米国の協力でMDシステムの構築が加速している。背景には北朝鮮に対する警戒感もある。ただそれは、導入を決定した当時に福田康夫官房長官が述べた「第三国の防衛のために用いられることはない」のが最低条件である。

 情報の高度な集積と瞬時の判断が求められるMDシステムは、日米の指揮権の境界があいまいになりやすい。在日米軍の再編で日米の軍事一体化が懸念されるなか、迎撃可否の研究が、なし崩し的に運用を探る方向に変わり、自衛の範囲を超えた武力行使につながるようなことがあってはならない。

 核保有議論の必要性を繰り返していた自民党の中川昭一政調会長が、発言自粛の意向を示したばかりである。その直後の安倍首相の表明は、まるで示し合わせているかのようでさえある。与党の公明党からさえ「時期尚早」の声が出たのも当然のことだ。

 安倍首相は十月末、英紙フィナンシャル・タイムズとのインタビューで、「六年以内に憲法改正を目指す」と表明した。国の根幹にかかわる問題が、外国メディアにより少しずつ具体的になるのも気になる。まさか国内の反発を避けているのではあるまい。

 安全保障政策は国民の議論の積み重ねに基づくべきなのはいうまでもない。将来を見据えたうえで、国会などにきちんと説明することが肝要である。

 


2006-11-17 金 「社説--比べて読めば面白い」 教育基本法改正

2006-11-17 11:19:04 | 「保存している記事」から

朝日 毎日 読売 産経 東京 北海道 中国 沖縄タイムス 琉球新報 西日本

2006年11月16日付 西日本新聞

改正の機は熟していない 教育基本法

 政府も与党も「改正の機は熟した」「審議は尽くした」と力説するが、本当にそうなのか。

 安倍政権が今国会の最重要法案と位置付ける教育基本法の改正案が衆院本会議で可決された。「徹底審議」を求める野党が欠席したまま、与党が単独で採決に踏み切った。

 明らかに異常な事態である。戦後教育を支えてきた「教育の憲法」の改正は、国民的な合意が大前提ではないのか。その国民を代表する国会議員の野党側が本会議場に姿を見せず、反対の討論もないまま、衆院を通過してしまった。

 国家100年の大計といわれる教育だ。しかも、その根本理念を定めた教育基本法を見直すかどうかという瀬戸際である。

 この重大な局面で、言論の府がいわば機能不全に陥ったのは深刻な問題だ。

 改正案には「我(わ)が国と郷土を愛する態度を養う」といった表現で、現行法にはない「愛国心」が教育の目標に盛り込まれた。前文には「個人の尊厳」を残す一方で、「公共の精神」が明記された。

 「戦後レジーム(体制)からの脱却」を政治理念に掲げる安倍晋三首相は「必要な新しい価値や目標をバランスよく加えた」と改正案を自賛するが、国民の賛否はなお分かれている。

 「愛国心」や「公共の精神」が法律で明記されると、規範意識として強要される懸念はないのか。こうした条文を根拠に政府や文部科学省の権限が強まり、地方の教育行政や教育の現場へ過度に介入してくることはないのか。

 私たちは、「愛国心」を教育基本法に条文として書き込むことには疑問を呈するとともに、「なぜ今、基本法を改正するのか」「改正を急ぐ理由が分からない」と繰り返し主張してきた。

 残念ながら、そうした一連の疑義が解消されたとは到底言い難い。

 政府・与党は、先の通常国会からの通算で審議時間が100時間を超えたことを主な根拠に「野党の要望も聞き入れ、審議は十分に尽くした」という。

 しかし、今国会では法案の審議中に、いじめによる痛ましい自殺が相次ぎ、必修科目の未履修問題も噴出した。教育改革タウンミーティングで「やらせ質問」が横行していた問題も発覚し、こうした緊急課題に質疑が集中してきた。

 結果的に、審議に時間をかけた割には教育基本法のあり方をめぐる本質的な議論は深まらなかった‐というのが実態ではないか。

 そもそも、憲法に並ぶ教育基本法という重みを考えれば、国会の先例に照らした審議時間の多寡は、一つの目安ではあるにしても、決定的な意味を持つとは思えない。

 論戦の舞台は参院へ移る。国会日程や審議時間に縛られることなく、徹底した論議で国民の期待と関心に真正面からこたえてもらいたい。

=2006/11/17付 西日本新聞朝刊=

2006年11月17日00時14分

2006-11-16 木 「社説--比べて読めば面白い」 教育基本法改正

2006-11-16 06:39:41 | 「保存している記事」から

朝日 毎日 読売 産経 東京 北海道 中国 沖縄タイムス 琉球新報

2006年11月16日付 琉球新報

教育基本法可決・数頼り単独採決でいいのか

 安倍晋三首相が最重要法案と位置付ける教育基本法改正案が15日、衆院教育基本法特別委員会で野党が欠席する中、自民、公明の与党単独で採決され、可決された。与党は今国会での成立に全力を挙げる方針を示している。

 与党側は、審議は十分尽くしたとするが、果たしてそうだろうか。なぜ改正が必要かなど、国民の理解を得られたといえるだろうか。説明は不十分だったと言わざるを得ない。

 野党側の審議継続要求を押し切り、数を頼りの単独採決でいいのだろうか。

 教育改革タウンミーティングで改正に賛成する発言をするよう参加者に依頼したことに象徴されるように、改正を急ぎ過ぎた感は否めない。

 与党側はこの間、改正理由として「モラル低下に伴う少年犯罪の増加など教育の危機的状況」や「個人の重視で低下した公の意識の修正」などを挙げてきた。

 いじめによる相次ぐ子どもたちの自殺など、悲痛な出来事が続発している。少年犯罪も相変わらずである。

 その原因が現行の教育基本法にあると言い切るには無理がある。

 社会のありようを改善することでしか、事態は解決しないことは明らかである。

 教育基本法改正案は「個人」より「国家」に重きを置いていることが大きな特徴である。

 改正案は前文に「公共の精神」などを盛り込み「公」を重視している。「個人」よりも「国家・社会」が優先することを打ち出している。

 教育現場は今、多くの問題を抱え、難しい局面に立っている。それが「個人」の重視に起因するものとは言い切れないだろう。かえって「個人」を十分に尊重できていないことが、子どもたちを苦しめているのではないか。

 子どもたち一人一人を大切にすることを基本にし、それぞれの個性に合った教育こそが今、求められているのである。その状況を改めることに力を尽くすべきだ。

 教育基本法を「個人」より「国家・社会」を重視するという改正案は、子どもたちにとってマイナスに作用する懸念がある。

 改正案は焦点だった「愛国心」の表現が「国と郷土を愛する態度」に改められている。

 しかし、言葉を換えても、心の問題を法律で規定することに変わりはない。

 特定の価値観を押し付け、内心の自由を侵害しかねない危険性は何ら解決されてはいない。
 自民党文教族は教育基本法改正を「憲法改正の一里塚」と位置付けている。改憲への動きが加速することを危惧(きぐ)する。

(11/16 9:52)


2006-11-16 木 「社説--比べて読めば面白い」 教育基本法改正

2006-11-16 06:31:01 | 「保存している記事」から

朝日 毎日 読売 産経 東京 北海道 中国 沖縄タイムス 琉球新報

2006年11月16日付 沖縄タイムス

教基法改正案採決 与党単独は数の暴力だ

 教育の憲法ともいえる教育基本法の改正案が、衆院教育基本法特別委員会で野党が欠席する中、自民、公明両党の賛成多数で採決された。

 与党は十六日の衆院本会議でも可決し参院へ送付する構えだ。が、教育の根幹をなす法律が与党単独で採決されていいものだろうか。

 改正案は、「愛国心」をめぐる表現について「我が国と郷土を愛する態度を養う」とし、「公共の精神」などの新しい理念を盛り込んでいる。

 だが、教育改革の本来の理念はこれらの点にあるのではあるまい。

 教育は子どもたちの自立と人格の完成を目指すものであるはずだ。何よりも多くの国民には、改正が本当に必要かどうかもはっきりしない。

 改正すべきであれば、まず改正する理由とどこを変えるかを明らかにすべきだろう。教育現場の声を聞き反映させることも当然必要だ。

 しかし実態はそうなっていない。与党がこだわったのは今国会での成立だ。そのためには特別委での採決が不可欠であり、参院採決から逆算して審議を進めてきたといっていい。

 これでは慎重さを欠き、国会として将来に禍根を残すのではないか。

 これまでも触れてきたが、教育は国家百年の大計である。その根本法はこの国の将来像も映し出す。軸足を国家、社会に置く改正案には戦前回帰との批判があることを忘れてはなるまい。

 全国の公立小中学校長に対する調査では66%が反対し、改正に疑問を呈している。この事実を無視した国会審議に加えて、与党単独の強行採決に私たちは不安を覚える。

 少しでも法案に疑問があり、なおかつ審議が足りないとの声があるのであれば、徹底的に論議すべきであり、採決にこだわるべきではない。

 二階俊博自民党国対委員長は「審議は百時間を超えた。(採決の)機は熟したと思う」と述べているが、当を得た発言とは思えない。

 この問題では、二〇〇三年十二月の岐阜県岐阜市に始まったタウンミーティングなど今年九月の青森県八戸会場を含む五回のミーティングで内閣府による「やらせ質問」が明らかになったばかりではないか。

 内閣府が改正に賛成する質問を地域の教育委員会などに依頼し、しかも質問案まで与えている。発言者への謝礼問題も発覚した。

 このままでは教育改革の名が泣く。本会議では数を頼んで与党単独で強行採決してはならない。子どもたちの未来のためにも、審議を差し戻して時間をかけて論議することが肝要だ。

 


2006-11-16 木 「社説--比べて読めば面白い」 教育基本法改正

2006-11-16 06:25:31 | 「保存している記事」から

朝日 毎日 読売 産経 東京 北海道 中国 沖縄タイムス 琉球新報

2006年11月16日付 中国新聞

単独採決 なぜ変える教育の理念

 自民、公明の与党が、きのうの衆院教育基本法特別委員会で、野党欠席のまま採決を強行し、政府案を原案通り可決した。

 教育の「憲法」といわれる法律の改正論議である。数を頼んだ拙速審議が、なじむはずもあるまい。幾世代にもわたり、子どもや国民の将来を規定する基本法規が、論議の一致を見ないで改正される事態は容認できない。

 平和憲法と並び、戦後社会に溶け込んできた法律の改正を、なぜそれほどまでに急ぐ必要があるのか。現行憲法を「戦勝国の押しつけ」として、新憲法制定を最大の政治課題と位置づける安倍晋三首相の思いが強く反映されていることは間違いあるまい。自民党の文教族も「教育基本法の改正は憲法改正への一里塚」とみている。

 「国家の誤った意思で、二度と悲惨な戦争に迷い込むことがないように」。現行の基本法の前文には、戦争放棄を誓った憲法と同じ精神が、色濃く流れている。普遍の真理ともいえる基本法の理念は、約六十年の時を経た今でも輝きを失ってはいないはずだ。

 確かに、連日のように続くいじめに伴う児童、生徒たちの自殺や高校の必修科目の履修漏れ問題は、課題が山積する教育現場の苦境を端的に示しているといえる。抜本的な対策を講じることは急務である。

 だが、そうした教育を取り巻く難問解決への糸口が、基本法を変えれば本当に見えてくるのか。

 安倍首相は改正の目的について「志ある国民を育て、品格ある国家をつくっていくため」と力説している。政権構想の「美しい国」と同様、理念だけが先行し、真の目的が見えてこない。

 これまでの審議を見る限り、国の指示や関与が一段と強まることは予測できるが、首相の言う「教育再生」への手掛かりが得られるのかどうか。国民の納得がいく説明は果たされないままだ。

 今国会に対案として出されている民主党案も、「愛国心」の醸成などを強調している点で、与党案とそれほどの違いはない。

 与党側は、きょうにも衆院本会議での与党単独採決を経て、法案を参院に送付する。来月半ばの今国会会期末までの成立を図る方針とされる。

 参院での審議を含め、与野党とも疑問点を解消する努力を怠るべきではない。国民の暮らしが一変しかねない法案である。厳しい監視の目を注ぎ続けたい。

 


2006-11-16 木 「社説--比べて読めば面白い」 教育基本法改正

2006-11-16 06:15:59 | 「保存している記事」から

朝日 毎日 読売 産経 東京 北海道 中国 沖縄タイムス 琉球新報

2006年11月16日付 北海道新聞

教育基本法案*禍根を残した単独採決

 国民の多様な意見には、もはや耳を傾けないということなのだろう。
 教育基本法改正案を審議していた衆院特別委員会は、与党側が単独で改正案の採決を強行し可決した。

 一九四七年に制定された教育基本法は、憲法の理念の実現を教育に託すことを定め、憲法とともに戦後日本の民主主義の骨格を形作ってきた。

 これだけ重みのある法を根本から変えようという改正案が、十分な国民の合意がないまま、あまりにもあっけなく委員会での採決に持ち込まれた。

 与野党は、教育の根本法を政争の具にした。不毛ともいえる国会論争の果ての単独採決は、国民の思いに応えていないだけでなく、教育の未来に禍根を残すといわざるをえない。

 法案の審議時間は、前国会を含めて百時間を超えた。政府・与党側は「採決できない理由は見いだせない」(塩崎恭久官房長官)とごり押しした。

 今国会の会期末までに法改正を実現するためには、与党側は委員会での早期採決を図る必要があった。政治日程だけを優先した結果だ。

 野党側は衆院での全審議を拒否して反発している。

 しかし、委員会での攻防では、民主党が地方公聴会の開催場所を増やすことを要求するなど、対決姿勢を演出するので精いっぱいだった。

 政治的な駆け引きに終始した審議では、法案に対する国民の疑問や懸念が十分に解消したとは到底いえない。

 焦点の「愛国心」や、教育への国家介入の問題をめぐっては、国民の間で賛否が鋭く対立したままだ。慎重審議を求める声も依然として根強い。

 教育現場では、いじめや自殺の根絶、高校の必修漏れ、教育委員会改革などの課題が山積している。
 子どもや現場の教師の悩みをすくいあげ、課題の対処法や問題解決の方向性を探り出すような議論が聞かれなかったことも極めて残念だ。

 教育基本法をめぐるタウンミーティングでは、文部科学省の「やらせ質問」で国民の「合意」形成が操作されていたことも明らかになった。

 改正案を採決できる状況になかったことは明白だ。

 それでも自民党が法改正を急ぐのは、「現行法は占領軍に押し付けられたもので、全面的に改めたい」という結党以来の悲願があったからだろう。

 法案が衆院本会議を通過すれば、論戦は参院に移る。

 参院では、会期に縛られず、教育現場の問題への具体的な対処法を含め、法案そのものの本質論議を深める必要がある。

 与野党の不毛な政治的かけ引きが繰り返されるのでは、安倍晋三首相が言う「教育の再生」への道はますます遠のくだけだろう。

 


2006-11-16 木 「社説--比べて読めば面白い」 教育基本法改正

2006-11-16 05:38:50 | 「保存している記事」から

朝日 毎日 読売 産経 東京 北海道 中国 沖縄タイムス 琉球新報

2006年11月16日付 東京新聞

教育基本法採決 国民の理解が必要だ

 教育基本法改正案が衆議院特別委員会で与党単独で可決された。教育をめぐる深刻な問題に直面しながら論議を尽くしたとはいえず、改正を急ぐことに国民の理解が得られるのか極めて疑問だ。

 安倍晋三首相は十五日の特別委員会総括質疑で「深い議論を行った」と振り返った。首相は内閣の最重要課題を教育改革とし、今国会での教育基本法改正を最優先している。

 これを受けて与党は今国会で成立させるため、参議院の審議を約一カ月と見込んで採決を急いだという。教育の基本理念と原則にかかわる基本法なのに、まず日程ありきで進んだ形だ。

 教育基本法は日本の未来を担う子どもたちをいかに育てるかの理念が込められ、その重要性は憲法に準じる。改正案は、学校教育だけでなく家庭や地域社会にも責任を求める内容だ。

 一九四七年の現行法施行以来、六十年ぶりの改正となる。まさに国家百年の大計だからこそ、大多数の国民の理解を得ることが何より欠かせない。

 政府が改正案に国民の理解が得られた根拠としていた教育改革タウンミーティングでのやらせ質問が発覚し、その根拠が崩れたことは伊吹文明文部科学相も認めている。

 安倍首相の言うような重要法案であるから、政治日程を優先したような野党欠席での採決は、国民に受け入れられるとは思えない。

 法改正を前に、いじめ自殺や高校必修漏れ問題など、教育の本質にかかわる問題が次々と噴き出してきた。国民が教育に求めているのは、こうした現実問題への対応だった。このため、基本法についての論議は十分ではなかったきらいがある。

 しかも、いじめ問題などで浮かび上がったのは、文科省の無責任さや、教育委員会の責任逃れと隠ぺい体質である。

 文科省幹部の上意下達による“世論偽造”に等しいやらせ質問や、四年前に知りながら放置していた必修漏れなどが次々と露呈し、国民の信頼を失ってしまっている。自らの姿勢を正さずして、教育基本法改正を語る資格があるのか疑問だ。

 改正案そのものの問題点も残ったままだ。「郷土と我が国の伝統と文化を愛する態度を養う」など、愛国心や徳目は大切だが、法律で強制するものではない。国家による教育への管理・統制が強まることも心配される。

 子どもたちの悲鳴に耳を傾けて、国民の理解を得るために、国会ではなお論議を尽くすべきだ。

 


2006-11-16 木 「社説--比べて読めば面白い」 教育基本法改正

2006-11-16 05:28:37 | 「保存している記事」から

朝日 毎日 読売 産経 東京 北海道 中国 沖縄タイムス 琉球新報

2006年11月16日付 産経新聞

教育基本法改正 やむをえぬ与党単独可決

 自民、公明両党は今国会の焦点である教育基本法改正案を野党欠席のまま、衆院教育基本法特別委員会で可決した。16日に衆院を通過させ、参院に送付する予定だ。

 民主党など野党は「採決が前提にある限り、委員会の質疑には応じられない」と欠席した。与党の採決を受け、野党はすべての審議を拒否することにした。

 この改正案は戦後教育の歪(ゆが)みを正し、教育の主導権を国民の手に取り戻す意味合いがある。与党単独の採決になったが、やむを得ない。

 民主党は政府の改正案に対抗して独自の「日本国教育基本法案」を提出していた。愛国心について政府案は「我が国と郷土を愛する態度を養う」とし、民主党案は「日本を愛する心を涵養(かんよう)する」としていた。民主党案はまた、政府案にない「宗教的感性の涵養」を盛り込んでいた。

 与党と民主党が協議し、より良き案にすべきだったが、民主党の小沢一郎代表は来夏の参院選に向け、社民党などとの共闘を優先した。教育基本法改正そのものに反対してきた社民党などと違い、対案を示していただけに民主党の対応はきわめて残念である。

 現行の教育基本法は昭和22年3月、GHQ(連合国軍総司令部)の圧力や干渉を受けながら成立した。とくに現行法の「教育は、不当な支配に服することなく」の規定は、文部科学省や教育委員会の教育内容への関与を排除する根拠とされ、問題となっていた。

 これに対し、政府案は「不当な支配に服することなく」との文言を残しているが、「この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきもの」とするくだりが加わった。このため、国旗国歌法や学習指導要領などを無視した一部の過激な教師らによる“不当な支配”は許されなくなる。

 また、政府案は家庭教育について「父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有する」と規定している。いじめや学級崩壊、不登校などの問題で、家庭の責任を問う内容になっている。

 伊吹文明文科相は「ある程度の変更」に言及している。参院での与野党共同修正を模索する動きも出ている。民主党は抵抗政党ではなく、責任野党としての存在感を示すべきだ。

 


2006-11-16 木 「社説--比べて読めば面白い」 教育基本法改正

2006-11-16 05:21:40 | 「保存している記事」から

朝日 毎日 読売 産経 東京 北海道 中国 沖縄タイムス 琉球新報

2006年11月16日付 読売新聞  

「教育」衆院採決 野党の反対理由はこじつけだ

 「やらせ質問」も「いじめ自殺」も、それを採決反対の理由に挙げるのは、こじつけが過ぎるのではないか。

 教育基本法改正案は、衆院特別委員会で採決が行われ、賛成多数で可決した。きょう衆院を通過し、参院に送付される運びだ。

 野党は採決に反対し、委員会を欠席した。ボイコットの理由について、教育改革タウンミーティングでのやらせ質問の実態解明が先決だと主張している。

 政府は「タウンミーティングなどで、各般の意見を踏まえた上で法案を提出した」と繰り返してきた。これを根拠に、改正案はやらせ質問を前提に作られた欠陥法案だ、という論法である。

 やらせ質問は議論の活性化が目的だったと政府は釈明するが、これはやはり行き過ぎがあったと言わざるを得ない。

 だが、だから改正案にも問題があると言うのは論理の飛躍だ。政府も「各般の意見」として教育改革国民会議や中央教育審議会などの議論も挙げている。タウンミーティングだけに依拠して法案を作ったと決めつけるのは無理がある。

 民主党は、頻発するいじめ自殺や高校の未履修問題も「教育基本法改正案の中身にかかわる問題だ」として、その徹底審議が採決より先決だとも主張する。

 民主党が国会に提出している対案は、愛国心や公共心の育成を掲げ、家庭教育の条文を設けている。政府案と本質的な差はない。むしろ愛国心の表現は「民主党案が優れている」と評価する声が自民党内にさえあったほどだ。

 法案の中身が似通うのは、子どもの規範意識を高め、家庭の役割を重視することが、いじめなど学校現場が抱える課題の改善にも資する、との思いを共有するからだろう。民主党が、いじめ自殺などを「改正案の中身にかかわる」と本気で思うなら、与党に法案修正の協議を持ちかけるのが筋だ。

 それなのに、民主党は、改正絶対反対の共産、社民両党と一緒に「採決阻止」を叫んでいる。これでは、多くの国民が心を痛めるいじめ自殺まで、採決先延ばしの材料にしていると言われないか。

 衆院特別委の審議はすでに100時間を超える。それでも審議が不十分と思うなら、速やかに参院で審議のテーブルにつけばよい。だが、野党は参院特別委の設置に反対し、委員の推薦を拒む形で審議入りを阻止する構えだ。

 審議は尽くされていないと言いながら審議の邪魔をする。こんな相矛盾した態度こそ、「今まで言ってきたことは採決阻止の方便でした」と自ら認めているようなものである。

2006年11月16日1時48分  読売新聞)
 

2006-11-16 木 「社説--比べて読めば面白い」 教育基本法改正

2006-11-16 05:02:21 | 「保存している記事」から

朝日 毎日 読売 産経 東京 北海道 中国 沖縄タイムス 琉球新報

2006年11月16日付 毎日新聞

基本法単独可決 教育の「百年の大計」が泣く

 自民、公明両党が15日夕、教育基本法改正案の委員会可決に踏み切った。これまで私たちは再三、「何のた゜に改正するのか、原点が見えない」と指摘してきた。そんな疑問は解消されたと与党は言うのだろうか。急ぐ理由がまったく見当たらないのに、衆院特別委員会を野党が欠席する中、単独採決したことは将来に禍根を残すことになるだろう。

 改正案採決は一時、与党内でも週内に強行採決すれば、19日の沖縄県知事選に悪影響が出ると見て、来週に先送りする意見が出ていた。それが一転、単独採決に至ったのはなぜか。まだ明らかでない点も多いが、安倍晋三首相自身が腹をくくったことだけは間違いないだろう。

 改正案が提出されたのは先の通常国会だ。元々、小泉純一郎前首相はさしたる関心がなく、安倍首相(当時は官房長官)が熱意を示す法案だと言われてきた。教育目標に「我が国と郷土を愛する態度を養う」とうたった改正案は、当初から「占領軍に押しつけられた現行法を全面的に改正したい」との動機ばかりが優先しているのではないかとも指摘されてきた。

 実際、前国会以来、審議時間こそ費やされてきたが、改正すれば教育はどうよくなるのか、安倍首相らの説明を何回聞いても、結局、明確にはならなかった。

 加えて、今国会では、いじめ自殺や履修不足、タウンミーティングのやらせ質問と新たな問題が次々と発覚した。いじめや履修不足は今の教育のあり方の根幹にかかわる緊急課題だ。ところが、首相らは「基本法を改正すれば改善されるのか」という問いに答えることができず、「基本法とは別問題」とかわすだけだった。かえって基本法改正には緊急性がないことを認めたようなものである。

 採決を来週に先送りした場合、国会会期を延長しないと改正案の成立が難しくなるのは確かだ。首相就任直後の日中、日韓首脳会談再開を除けば、目に見える成果をあげていない安倍首相は、実績作りを急いだのかもしれない。しかし、それは首相の都合というものである。

 「与党の横暴」をアピールする民主党も決してほめられたものではない。民主党も独自の対案を提出していながら、それを成立させようという姿勢は感じられず、「時間をかけて審議を」と主張するのみだった。対案を出すということは「今の基本法は改正の必要がある」と党として判断したはずだ。ところが、改正の是非に関しては実は党内の意見は依然、まちまちだ。亀裂を回避するためには、与党が強引に採決してくれた方がありがたい。そんな計算があるのは既に国民も承知に違いない。

 政府・与党からすれば教育基本法改正は「百年の大計」だったはずだ。それが、国民の理解が深まらぬまま、こんな状況で衆院を通過しようとしている。今の基本法が「占領軍の押し付け」と過程を問題にするのなら、これもまた将来、「成立の仕方に疑義があった」とならないのか。

毎日新聞 2006年11月16日 0時31分


2006年11月17日付 毎日新聞

余録:教育基本法

 「こんな説法をしなければ日本人が教育について分からぬということならば、それはあまりに日本人を侮辱している」。現行の教育基本法にこう食ってかかった議員がいる。時は1947年3月、同法案を審議中の帝国議会、貴族院本会議での沢田牛麿の反対演説だ▲これは法案ではなく「説法」だという彼は「倫理の講義や国民の心得などを法律で規定する必要はない」と喝破した。義務教育年限など学校教育法で定めればいいともいう。もともと戦前の教育勅語の代わりに作られた基本法への根本的批判だ▲教育勅語によって国の独立を守るよう教えられた世代は国を滅ぼした。個の尊厳や自他の敬愛と協力をうたった教育基本法下では、いじめの陰湿化や受験競争過熱が進む。勅語や法律に徳目を列挙しても、その通り子が育つわけではない。大人ならば誰もが知っていることである▲それどころか「いじめはあってはならない」という建前がいじめを見て見ぬふりをする教育現場を作り出す。大学入試の実情とカリキュラムのミスマッチはカエサルもアレキサンダーも知らぬ「エリート」を世界に送り出す。建前と現実の分裂の間で犠牲になるのは教育本来の使命だ▲いじめ、履修不足など、それこそ教育の「基本」にかかわる惨状が次々に露呈するおりもおりである。教育基本法改正案が野党4党欠席のまま衆院を通過した。現行法に「国や郷土を愛する」などの新たな徳目や家庭への説法を上乗せした法案である▲建前が増えれば、現実との食い違いも増すだけだと冷笑したくはない。だが徳目の説法への政府与党の度を越したこだわりが、目の前の深刻な現実を受け止める力や、具体的問題を解決する力の根本的欠陥を示してはいないかが心配だ。

毎日新聞 2006年11月17日 0時55分

 


2006-11-16 木 「社説--比べて読めば面白い」 教育基本法改正

2006-11-16 04:56:38 | 「保存している記事」から

朝日 毎日 読売 産経 東京 北海道 中国 沖縄タイムス 琉球新報

2006年11月16日付 朝日新聞

教育基本法 この採決は禍根を残す

 教育基本法の改正案が衆院特別委員会で、与党の単独採決により可決された。野党は採決に反対して欠席した。

 教育基本法は、未来を担う子どもたちを育てる理念や原則を定めたものだ。政権が代わるたびに、内容を変えていいものではない。

 国会は多数決が原則とはいえ、与党だけで決めるのは、こうした大切な法律の改正にはふさわしくない。単独採決はまことに残念だ。

 私たちは社説で、政府の改正案には疑問があることを何度も主張してきた。

 いまの学校や教育に問題が多いことは間違いない。しかし、その問題は基本法のせいで起きたのか、改正すれば、どう良くなるのか。教育の問題を法律の問題にすり替えているのではないか。教育基本法を変えなければできない改革や施策があるなら、示して欲しい。

 「愛国心」を法案に盛り込むことについては、自民、公明両党の論議で、「他国を尊重する」という文言が加えられた。愛国心の暴走を防ぐうえで、この文言は重要な意味がある。しかし、それでもなお、法律で定めれば、このように国を愛せと画一的に教室で教えることにならないか。そうした疑問だ。

 改正案の審議は、先の通常国会に提出されてから、延べ100時間を超えた。臨時国会では、必修科目の履修漏れや、いじめ自殺、さらにはタウンミーティングのやらせ質問が焦点になった。

 必修漏れやいじめは、教育の深刻な問題がにじみ出たものだ。しかし、そんな問題が基本法の改正とどうからむのか。論議を深める良い機会だったが、実のある論議は聞けなかった。

 「愛国心」の教え方についても、安倍首相の答弁を聞いて、心配が増した。

 愛国心が身についたかどうかを成績として評価するのか。先の国会で小泉首相は「そんな評価は必要ない」と答弁した。ところが、安倍首相は日本の伝統・文化を学ぶ姿勢や態度を評価対象とする考えを述べた。これでは愛国心を子どもたちに競わせることにならないか。

 教育基本法が制定されて、来年で60年になる。人間なら還暦にあたる歳月だ。社会の変化を反映させる必要を感じている人は少なくない。愛国心を教えるよう法律で定めることに疑問を抱く人の中にも、公共の精神や伝統を盛り込むべきだと考える人がいるだろう。

 そうした議論が深まらなかった責任は民主党にもある。民主党は対案を出したが、愛国心については政府案と大きな差はない。教育委員会ではなく首長が教育行政に責任を持つことが目を引くくらいで、政府案との違いは分かりにくい。

 現行の教育基本法では、前文は「われらは」で始まる。戦前の天皇の教育勅語に代わって、国民が教育のあり方について意思を示す宣言でもあるからだ。

 成立を急ぐあまり、肝心の国民が置き去りにされるようでは、将来に禍根を残すことになる。