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原高史 / takafumi hara / signs of memory / ブログ / Blog

現代美術家  原高史

絵画/窓プロジェクト/アートプロジェクト/企画/サイン制作等の活動を
世界各地で展開

金木犀に来てくれた鳩

2025-04-13 | 
アトリエの外階段の小さな隙間に金木犀の木が生えている。
金木犀の独特な香りは忘れかけているいろんな記憶を引き出してくれる。
秋の短い時期に外階段が魔法の香りに包まれる。

アトリエの2階まで伸びた金木犀。
その金木犀に鳩が巣を作った。
親鳩がずっと小鳩のことを静かに守っている。
こんな狭い隙間に生える金木犀に巣を作ってくれて`嬉しいな`と思った時に昔のことを思い出した。

私が小学校の頃、母が家の前で怪我をした鳩を見つけて家に連れて帰ってきた。
傷に薬を塗り、ベランダで看病をした。
そして数日後、鳩は空に向かって飛んでいった。
それから数週間後、家の門の横に祖母が植えた木に鳩が巣を作った。
鳩の巣を作るには少し無理がある小さな木に鳩が巣を作った。
風が木を揺らし、その鳩の巣も不安定に揺れている。
母は家の中から「きっと助けた鳩が来たのね。この家の人は安心だからと思って、ここに大切な巣を作ったのよ」と言った。

母の言葉を思い出し、この鳩の親子をそっと見守っていきたいと思った。
何か思うところがあってきっとここに巣を作ったのだろう。
きっと何かを伝えに来てくれたのかもしれない。
なるべく近くに近づかないように怯えないように
生まれた小鳩が飛び立つ日まで知らん顔してそっと見守っていきたい。

秋ではない春に金木犀が昔を思い出させてくれた。













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