良ちゃんと先生
「先生」「良ちゃん」――。2000年8月に室内装飾会社社長の栗山裕さん(当時67歳。阿見町廻戸)を殺害したとされる「ウオツカ事件」の主犯格と県警がみる三上静男容疑者(57)と、実行役の1人、後藤良次容疑者(48)(ともに殺人容疑で逮捕)は、かつては互いをこう呼び合うほど親密な間柄だった。
しかし、やがて亀裂が入り、後藤容疑者の上申書提出へとつながっていく。
関係者の証言などによると、三上容疑者は20代のころは住宅設備関係の会社に勤めていた。「トップセールスマン」と呼ばれるほどだった。その後独立し、1982年、日立市内に「三上商事」を設立した。最初は経営も順調で、「仕事熱心な社長」と評判だった。
だが、順風は続かなかった。設立から10年したころには経営も立ちゆかなくなった。代わりに土地取引で稼ごうと考えた。ただ、扱ったのは普通の土地ばかりではない。一つの例を県警幹部が説明する。
「まず暴力団から借金の取り立てにあって泣いている人物に取り付き、その土地を現金化する。お金は返済金として暴力団に渡すが、同時に一部をその人物に返してやる。実際は三上容疑者が土地を取り上げているのだが、『おかげで怖い取り立てが無くなった』と感謝すらされていた」
99年秋ごろ、三上容疑者は知人に「この男の面倒をみてやってくれないか」と頼まれ、暴力団幹部を紹介される。それが後藤容疑者だった。
2人は意気投合。後藤容疑者は三上容疑者の土地取引に首を突っこみ始め、周囲に倣って、三上容疑者を「先生」と呼ぶようになった。
しかし、後藤容疑者は2000年8月30日、宇都宮の男女4人監禁・死傷事件を首謀した疑いで逮捕される。さらに水戸市内で元暴力団組員を殺害した容疑でも逮捕され、裁判では1、2審とも死刑を宣告された。
判決を不服に上告した後藤容疑者が一昨年10月、拘置所から県警あてに書いたのが上申書だ。後藤容疑者はその中で「ウオツカ事件」など3件の殺人・死体遺棄事件の首謀者を、いずれも「三上容疑者」と名指しした。
なぜ、県警が知らなかった殺人・死体遺棄を告白する気になったのか、三上容疑者との蜜月(みつげつ)関係はどこに行ったのか。
後藤容疑者は関係者に「栗山さんら被害者に償いたい」と話す一方、「三上(容疑者)の裏切りが許せない」と怨念(おんねん)をあらわにする。「拘置所にいるおれの代わりに『君の弟分を世話する』と約束したはずなのに、世話どころか、自殺に追い込んだ」
もっとも、県警は「後藤容疑者の言葉は額面通りには受け取れない」と懐疑的なのだが。
◇
栗山さんは近所では「まじめな内装業者」と知られていた。30年ほど前に阿見町に店を構え、一時は従業員を5、6人雇っていた。
ところが、バブル崩壊後は仕事は減り続け、反対に借金が増えていった。栗山さん自身も酒好きがたたり、重い肝硬変や糖尿病で入院もした。
そんな栗山家も、三上、後藤両容疑者とは縁がないはずだった。ウオツカ事件も起こるはずはなかった。
間を取り持った人間。県警は石岡市内で工務店を経営する男性をキーマンとにらんだ。
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