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服部恭太被告への被告人質問

2023年07月19日 | 社会
【ジョーカー事件被告人質問】

《令和3年に東京都調布市を走行中の京王線車内で発生した無差別刺傷事件で、乗客を刃物で刺して車内に火をつけたとして殺人未遂や現住建造物等放火などの罪に問われた服部恭太被告(26)の裁判員裁判の公判が18日、東京地裁立川支部(竹下雄裁判長)で始まった》


《この日は被告人質問が予定されている。事件は、衆院選の投開票日でハロウィン当日だった3年10月31日夜に発生。被告は事件当時、米人気コミック「バットマン」の悪役「ジョーカー」に仮装していた。被告自身が、事件を起こした経緯や当時の状況をどのように語るか注目される》


《服部被告は短髪で黒っぽいスーツに白いシャツ、青いネクタイ姿。午前10時半の開廷に先立ち、裁判長が傍聴人に対し、改めて注意事項を説明した》


裁判長「本日は被告人質問が行われます。裁判員も注意深く聞こうとしています。途中で居眠りをされたり、バタバタと(音を立てて)出入りをされたりすると、集中力もそがれますので、よろしくお願いします」


《最初に質問に立ったのは、弁護人の男性だ。早速、事件当日の行動について確認していく》


弁護人「当日の夕方、八王子のホテルを出たのは何時ごろですか?」


被告「夕方5時ごろです」


弁護人「目的地は?」


被告「渋谷です」


《被告はリュックにサバイバルナイフ、ジッポーライター、たばこなどを入れ、ハロウィンでにぎわう渋谷を目指したという》


弁護人「渋谷駅に着いてからはどうしましたか?」


被告「渋谷を歩いていました。30分ぐらいだったと思います」


弁護人「どんなことを考えていましたか?」


被告「ハロウィン当日の街並みを見ていました。思った以上に人が多いなと思いました」


弁護人「その後はどうしましたか?」


被告「調布駅へ向かいました」


《京王線調布駅は、被告が事件現場となった新宿行き特急に乗り込んだ場所だ》


弁護人「調布駅に着いてどうしましたか?」


被告「トイレへ行き、持ち物の確認、犯行計画の最終確認をしました」


《被告はここで、犯行に使うものと使わないものを整理したという》


弁護人「犯行に使うものというのは?」


被告「サバイバルナイフ、ライターオイルの入ったペットボトル、殺虫スプレー、ジッポーライターです」


弁護人「トイレを出た後はどうしましたか?」


被告「駅のホームでいすに座り、特急電車が来るのを待っていました。20分ぐらいだったと思います」


《被告は当時の心境を問われると、こう答えた》


被告「正直、かなり緊張していました」


弁護人「緊張というのは?」


被告「殺人事件を起こすという行為に対しての緊張です」


《被告は、京王線調布駅のホームで20分ほど特急が来るのを待ち、乗り込んだという》


弁護人「どのあたりから乗りましたか?」


被告「真ん中より後ろの車両です」


《被告は、この乗車位置にした理由を「最終的に先頭車両まで乗客を追い込む予定だったので。より多くの乗客を追い込むためです」と答えた》


《実際に被告が乗車したのは3号車。被告はすぐに犯行に向けた準備を整えたという》


被告「座席の真ん中あたりにリュックを置き、サバイバルナイフ、殺虫スプレーを取り出しました。そして、右手にサバイバルナイフ、左手に殺虫スプレーを1本持ちました」


弁護人「次にしたことは?」


被告「体ごと先頭車両に向き直りました。先頭車両まで乗客を追い込むつもりでした」


《すると、乗客が異変に気付いたという》


被告「向かって左側の男性の大きな怒鳴り声がしました」


弁護人「何と言っていたのですか?」


被告「何と言ったか聞き取れず、今も思い出せません」


弁護人「それがAさんですね」


《Aさんは、被告に胸を刺されて重傷を負った男性だ》


被告「Aさんは座った状態で指を自分に対して向けていました」


弁護人「その後、どうしましたか?」


被告「Aさんに向かって殺虫スプレーをかけました」


弁護人「Aさんはどんな様子でしたか?」


被告「顔をしかめ、(スプレーの)煙を振り払おうと、手を大きく振っていました」


《ここで、弁護人が被告に「Aさんが手を大きく振っていた様子をゆっくりやってみてください」と依頼。被告は証言台の前で立ち上がり、両手を体の前で交差させるように動かした》


《このとき、Aさんの腕と被告の左腕がぶつかり、左手に持っていた殺虫スプレーの持ち手部分が、本体から外れたという》


弁護人「手が当たってどう思いましたか?」


被告「反撃をされたと思いました。Aさんの胴体に向けて、ナイフを突き出しました」


弁護人「何回ですか?」


被告「1回です」


弁護人「Aさんの様子はどうでしたか?」


被告「少し前のめりで手を動かしていたのが、背もたれにもたれかかるようにぐったりしました」


弁護人「その後はどうしましたか?」


被告「乗客を先頭車両まで追い込むことにしました」


《乗車した3号車から、5号車まで移動した被告は、ここで立ち止まった》


弁護人「なぜ立ち止まったのですか?」


被告「5号車と6号車の連結部分に乗客が立ち止まっていたからです」


弁護人「乗客は何人いましたか?」


被告「10人ぐらいだったと思います。なぜ乗客が逃げないのかわからず、乗客を見ていました。そして、その場で放火することにしました」


弁護人「その時の心境は?」


被告「覚えていないです」


《弁護人は、当時、被告が立っていた位置などについて、車両の見取り図に書き込むよう求めた。被告が自分のいた位置に「私」と書き込み、丸で囲んだ》


弁護人「その後はどうしましたか?」


被告「リュックの中からライターオイルの入った2リットルのペットボトルを出しました」


弁護人「右手のナイフは?」


被告「持ったままです」


弁護人「その後はどうしましたか?」


被告「乗客に向けてライターオイルをまきました」


《弁護人の求めで、被告がオイルをまく動作を再現した》


弁護人「どの範囲にオイルをまこうとしたのですか?」


被告「高さとしては(連結部分にいた)乗客の頭上をめがけ、幅としては通路の幅ぐらいです」


弁護人「(ペットボトルは)何回ふりましたか?」


被告「4回ぐらいです。(ペットボトルの中身は)ほぼ空になっていました」


《検察側は、被告がほかに「550ミリリットルのペットボトルに入れたオイルもまいた」と主張しているが、被告はこれについては「記憶にない」と答え、こう続けた》


被告「今回の被害者とされる方々が話(証言)されていることから、僕がそのような行為をした可能性はあります」


「当時は相当緊張してましたし、かなり動揺して記憶が欠落していてもおかしくないのかなとは思います」


《オイルをまいた後、ポケットからライターを取り出して点火したが、予想外の出来事が起きたという》


被告「自分の左手に着けていた手袋全体が燃えていました。驚きました」


弁護人「燃えている手袋を見ていた時間は?」


被告「3秒くらいです。正直、手が燃えると思ってなかったので、驚いて茫然(ぼうぜん)としました」


弁護人「熱くなかったんですか?」


被告「熱は感じませんでした。焦りが出てきて、ジッポーライターを手放さなければと思い、投げました」


弁護人「焦りとは?」


被告「燃え広がってしまうという焦りです」


弁護人「どこに投げたのですか?」


被告「どこに狙いを定めてということでなく、(自分がまいた)オイルがあるであろう場所に投げました」




《被告は放火による殺人未遂罪でも起訴されているが、弁護側は「殺意がなかった」として争う姿勢を示している。
被告は当時の心境を「焦っていたので、冷静な状態ではありませんでした」と振り返った》




《服部被告は京王線特急の3号車で乗客を刺し、5号車でライターオイルをまいた。
このとき、ライターの火が自分の手袋に引火し、「焦って」ライターを投げたという。その後、後方の車両に移動した》


弁護人「後方の車両に移動したのはなぜですか?」


被告「黒い煙がかなりあがっていて息苦しく、危険を感じたからです」


弁護人「何号車まで移動しましたか?」


被告「最終的には2号車まで」


弁護人「(被告がナイフで刺した)Aさんの前を通りましたか?」


被告「はい」


弁護人「Aさんの状態は?」


被告「壁にもたれて脱力していましたが、肩や胸が動いていたので、生きていると認識しました」


弁護人「なぜ生きていると認識したのに、何もしなかったのですか?」


被告「計画が失敗したことに落ち込んでいました。刺した手応えがなく、ナイフで人を傷つけることが簡単ではないと思いました」


《Aさんの前を通り過ぎた後、被告は車両内の座席に座り、着けていたマスクをあごへずらしてたばこを吸った。この様子を撮影した写真は事件発生後、交流サイト(SNS)で拡散された》


弁護人「たばこを吸っているときの表情はどうでしたか?」


被告「基本、無表情でしたが、(特急が停車した国領駅の)ホームからスマートフォンで撮影されているのを見て、笑ってしまいました」


《犯行当日の動きに関する質問がひと段落し、弁護人の質問は服部被告が事件を起こすに至ったいきさつに移った》


弁護人「家族は誰がいますか?」


被告「母と妹です」


《父親は、被告が小学生のころに家を出て両親は離婚。その後は、ほとんど連絡を取っていないという》


弁護人「小学校ではどんなことがありましたか?」


被告「クラスメートとの関係が悪くなりました」


弁護人「それはどうしてですか?」


被告「当時住んでいた家が、ゴキブリが出る古い家だったからです」


弁護人「それが学校に知れたのはどうしてですか?」


被告「(自分の)ランドセルの中から虫が出てきたからです」


《この出来事が原因で主に女子からいじめを受けるようになった》


弁護人「中学校ではどうなりましたか?」


被告「(いじめが)エスカレートしました」


弁護人「具体的には?」


被告「シカト(無視)や、物やごみを投げられ、仲間外れにされました」


弁護人「どんな気持ちでしたか?」


被告「とてもつらく、学校に行きたくありませんでした」


《被告は自殺を図ったという》


被告「学校に行かず、制服姿で家の屋上へ行き、ロープで首をつりましたが、何かの拍子にロープが外れて死ねませんでした」




《被告はその後、中学へ復帰し、2年の途中から陸上部に入部。3年時には大きな出来事があった》


弁護人「3年生の時、どんなことがありましたか?」


被告「後輩の女の子と付き合うことになりました」


弁護人「どんな気持ちでしたか?」


被告「うれしかったです」


弁護人「そういう気持ちになった理由は?」


被告「中1でいじめにあい、女子に対する恐怖やトラウマがありました。自分のことをゴキブリのような汚い存在だと思い、人と接することに臆病になっていた。そんな自分を好きになってくれる人がいて付き合えたからです」


《高校では空手部に入り、3年時には主将を務めた。高校卒業後の平成27年4月には、希望していた介護職に就いた。だが、半年で退職することとなる》


弁護人「熱望していたのに半年で退職した理由は?」


被告「人間関係がうまくいかなかったからです」


弁護人「具体的には?」


服部被告「(同僚が)ほとんど女性で年齢も大きく離れていたので、なじめませんでした。1人からは、自分のことを拒絶するような、かなりきつい反応をされ、ストレスでした」


弁護人「その結果どうなりましたか?」


被告「自殺を図りました」


弁護人「どのように?」


被告「家の屋上でロープで首をつりました。意識を失い、病院のベッドで目を覚ましました」


弁護人「その時は何歳でしたか?」




被告「18歳でした」




《高校卒業後に就いた介護の仕事を辞めた後、短期のアルバイトなどを転々としたという被告。インターネットカフェでのアルバイトでは盗撮が発覚し、
罰金30万円の刑事処分を受けたという。
平成30年4月には、最後の勤務先となる通信企業にアルバイトで入り、
その後、契約社員に登用された。一方で、中学時代から交際していた女性との関係も続いていた》


弁護人「女性との関係に進展はありましたか?」


被告「結婚を前提に同棲(どうせい)しました」


弁護人「同棲を始めた時期は?」


被告「令和2年の3月だったと思います」


弁護人「結婚の話はどの程度進んでいましたか?」


被告「両家の顔合わせや結婚指輪の種類、入籍の時期など、おおむね決まっていました」


弁護人「その後、どうなりましたか?」


被告「彼女から婚約破棄を切り出され、解消しました」


弁護人「言われたのはいつですか?」


被告「(令和2年)11月8日でした」


弁護人「その日は何の日でしたか?」


被告「(自分の)誕生日でした」


弁護人「婚約破棄の理由は何でしたか?」


被告「主だった理由は、『金銭的に余裕のある人がいい』と言われました」


弁護人「当時の貯金は?」


被告「30万円くらいでした」


弁護人「借金はありましたか?」


被告「ありませんでした」


弁護人「どんな気持ちになりましたか?」


被告「彼女だけが信用できる大きな存在だったので、ショックが大きかったです」




《婚約を破棄された約半年後、被告は、別れた女性の「変化」に気付き、心を大きく揺さぶられることになる》


弁護人「そのころ、他に変わったことはありましたか?」


被告「(別れた女性の)LINEのプロフィールに変化がありました」


弁護人「どんな変化ですか?」


被告「名字が変わっていて、『結婚しました』と書いてありました」


弁護人「どう思いましたか?」


被告「自分自身にとって、(交際していた)9年間は長い、大きな期間でした。別れてからたった半年で結婚と聞いて、自分の存在価値がわからなくなり、生きていく意味がない、死にたいと思いました」


弁護人「それでどうしましたか?」


被告「自殺も頭をよぎりましたが、過去2回、死ぬことができなかったので、自分は自殺では死ねないと思い、行動には移していません」


《女性の結婚を知ったのと同じころ、被告の人生は仕事の面でも変化が訪れていた。
通信企業で顧客対応に従事していた被告は、対応中の発言が原因でトラブルになり、
3年6月15日に勤務先から正式に部署異動を指示された。
被告は同21日に退職の意向を伝え、その翌日にはインターネットで、犯行に使用したサバイバルナイフを注文した》


弁護人「ナイフは何をするために注文しましたか?」


被告「この時点で、死刑になりたいということが頭にありました。そのために人を殺さないといけないので、犯行を計画しました」


弁護人「そのころ考えていた内容はどんなものですか?」


被告「場所は東京の渋谷で、10月31日のハロウィンの日に、人混みで無差別にナイフで切りつけて殺害するというものでした」


《被告は3年7月30日、当時住んでいた福岡を出発し、8月30日まで神戸に滞在。東京は当時、7~8月に開かれていた東京五輪の影響で警備が厳しく、ホテル代も高かったため、東京での長期滞在は避けたという》


弁護人「その頃から日記を書いていますが、どういう目的で書いたのですか?」


被告「事件に対するモチベーションを保つためです」


弁護人「どういうことですか?」


被告「殺人が悪いことだとわかっているので、(殺意を)抱き続けるのが難しく、残る形で記録して見返すことで、
殺人に興味を持たなければいけない方向に(自分を)持っていこうとしました」


弁護人「どんなことを書いていましたか?」


被告「殺人を犯すことが楽しいと思えるようなことを書いていたと思います」


《神戸滞在中の8月6日には、走行中の小田急線車内で男が乗客を刃物で刺す事件が発生。この事件は、被告の犯行計画に大きな影響を与えたという》


弁護人「小田急線の事件から、どんな影響を受けましたか?」


被告「犯行場所を電車の中にすることと、ガソリンをまいて火をつけるということで影響を受けました」


《米人気コミック「バットマン」の悪役「ジョーカー」の仮装をして犯行に及んだ被告は神戸に滞在中、ジョーカーに関する画像をスクリーンショットで保存していた。
弁護人の質問は、これまで法廷では詳しくは明らかにされてこなかった「被告がジョーカーに扮した理由」に及んだ》


弁護人「以前からジョーカーに関心はありましたか?」


被告「関心はなかったけれど、作品は知っていました」


弁護人「スクリーンショットを保存したのはどうしてですか?」


被告「殺人を犯さないといけないという中で、イメージや目標になるキャラクターがいればいいと思いました。映画を見返して、ジョーカーを目標にすればいいと思いました」


《その後、被告は名古屋に移り、9月30日から八王子のホテルに宿泊。
ライターオイル、殺虫スプレー、たばこを購入した。手に入れたライターオイルは水のペットボトル(2リットル1本、550ミリリットル4本)や柔軟剤の容器に移し替え、
たばこにもライターオイルを染み込ませた》


弁護人「ライターオイルを移し替えたのはどうしてですか?」


被告「缶に入っている状態だと、液体が出てきにくいので、より効率よくまくためです」


弁護人「たばこにライターオイルを染み込ませたのはなぜですか?」


被告「火種をより広範囲に広げるためです」


弁護人「ライターオイルを染み込ませたのはいつですか?」


被告「犯行の前日です」


弁護人「もう一度、犯行の計画を教えてください」


被告「調布駅から電車に乗り込み、ナイフと殺虫スプレーで乗客を先頭車両に追い込み、2リットルのペットボトルのオイルをまいて、
さらに遠くの乗客に向けて550ミリリットルのペットボトルを投げてオイルをまき、ライターを投げて火をつけます。
火が付かなければ、たばこを投げて火をつけ、
火がついたらスプレー缶を投げ入れて爆発を起こし、殺傷能力を高めようと考えていました。
最後に柔軟剤の容器に入れたオイルをまいて、さらに炎の範囲を広げるという犯行内容です」


《犯行に使うナイフやオイルの準備を進める一方、被告は犯行に使わないものはホテルの部屋に残していった。
残したものの中には、穴の開いたスーツケースも含まれていた》


弁護人「滞在していたホテルの部屋に残されていたものはどうするつもりでしたか?」


被告「逮捕されるつもりだったので、処分されてもいいと思っていました」


弁護人「ホテルにあったスーツケースには3カ所穴が開いていましたが、何故ですか?」


被告「犯行に使ったナイフで刺したからです」


弁護人「いつですか?」


被告「犯行当日です」


弁護人「なぜ刺したのですか?」


服部被告「ナイフの攻撃力を確かめるためです」




《ここで弁護人からの質問は終了。昼の休廷をはさみ


午後1時10分に再開された。検察官による質問が始まった》


検察官「なぜ、東京で事件を起こそうと考えたのですか?」


被告「大量殺人を企てるうえで、パッと東京のハロウィンの光景が浮かびました」


検察官「地元では知り合いを巻き込む恐れがあると思ってやめたのでは?」


被告「それもあったと思います」


検察官「電車の中で事件を起こそうと思ったのは、小田急の事件を見て?」


被告「はい。逃げるところがなく、確実に多くの人を殺せると思いました」


《「小田急の事件」とは、同年8月6日、走行中の小田急線車内で男が乗客を刃物で刺した事件のことだ》


検察官「なぜ、ライターのオイルを使用しようと思ったのですか?」


被告「ガソリンの入手方法が分からず、日常的にコンビニで買えるライターオイルを思いつきました」


《検察側が質問すると、被告はすぐさま、よどみなく答えていく。やや早口ではあるものの、聞き取りやすい声だ》


《被告は京王線特急の車両内で乗客に向かってペットボトルに入れたライターオイルをまき散らし、点火したライターを投げた。事件前に宿泊していたホテルでは、ある実験を行っていたという》


検察官「ホテルでペットボトルに入れた水をまいたことはありますか?」


被告「バスルームで2リットル入りのペットボトルに水を入れた状態で、どうやったら勢いよく飛び散らせることができるのかを試しました」


検察官「ホテルでもライターオイルを燃やしてみたことがありましたね?」


被告「洗面台にオイルを垂らして、火を付けて燃えるか確認しました。量はごく少量でした」


《事件では、乗客の男性1人が胸を刺されて重傷を負っている。被告は犯行に使ったナイフの「試し切り」も行っていた》


検察官「事件を起こす日に、ナイフでスーツケースを刺していましたね?」


被告「はい。スーツケースを貫通させることができました」


《こうして、被告は3年10月31日、京王線の調布駅から新宿行きの特急に乗り込み、犯行に及んだ。
事件を説明する上で欠くことができないのは、当日の被告の服装だろう。
米人気コミック「バットマン」の悪役「ジョーカー」の姿をまねたことについて、被告の口からその理由が語られた》


検察官「東京に来てからジョーカーをイメージして服を買いましたね。ジョーカーという存在をどのように認識していますか?」




被告「(ジョーカーは)人の命を軽く見ている、人を傷つけることに対して何とも思っていない、と思っていました。
自分も(人を殺して死刑になるためには)そのようにならなくてはいけないと思いました。目標というか、ジョーカーになり切ろうと、そう思いました」




検察官「事件当日は、どのような行動を取りましたか」


被告「殺虫スプレーをかければ乗客は先頭車両の方に逃げていくと思いました。人が向かってきたら刺そうと思い、右手にナイフ、左手にスプレーを握りました」


検察官「計画を邪魔する人がいたらナイフで刺そうと思った?」


被告「はい。ただ、オイルで人を焼き殺すことがメインでした」


検察官「それは、死刑になりたかったからですか」


被告「そうです」


《殺虫スプレー、ナイフ、オイルのそれぞれの〝使い道〟を事前に計画していた被告。
犯行当日、被告が京王線の車両内でナイフを取り出すと、近くにいた男性が被告の行動に気付き、大きな声を上げた。
被告にナイフで刺され、重傷を負うことになるAさんだ》


検察官「Aさんから怒鳴られた?」


被告「そうです。(犯行を)妨害されないよう、Aさんの顔をめがけてスプレーを噴射しました」


検察官「そのとき、Aさんとの距離は?」


被告「(互いの)手がぶつかるほど近くだったと思います」


検察官「手がぶつかってすぐに刺そうと思った?」


被告「そうですね。時間的には分かりませんが」


検察官「それでナイフを突き出した。力加減は?」


被告「力いっぱいです」


検察官「刺した感覚は?」


被告「何か硬いものがぶつかったような感覚でした。刺さったという感覚はありませんでした。
『ドン』という感じで、『ブスッ』という柔らかいものの中に入っていくという感覚はなかったです」


《当時の生々しい状況を淡々と明かしていく被告。被告がAさんを刺していたころ、車両内の異変に気付いた乗客は、先頭車両方面に逃げていった。
被告は、Aさんが出血している状況やナイフの状態などを確認しないまま、先頭車両方向に乗客を追い立てていった》


検察官「逃げていく人の様子は?」


被告「僕の方をチラチラと見ながら先頭(車両の方)に逃げていました。おびえていると思って、計画通りだと思いました」


検察官「ナイフを上にして(かざして)、お客さんを追いかけてましたね」


被告「(米人気コミック「バットマン」の悪役の)ジョーカーが映画のなかでやっていたので、模倣しました」


《乗客は、5号車と6号車の連結部分に立ち止まっていた。被告はこの後、オイルを乗客にまきちらし、ライターを投げ入れて火をつけたとされる。
検察側は一連の行為が乗客に対する殺人未遂罪にあたると主張する一方、弁護側は「殺意がなかった」として争う姿勢を示している》


《検察官は、被告がライターに火をつけた際、被告が左手に着けていた手袋に火が燃え移ったことについて尋ねていく》


被告「手に火がついて驚いて呆然(ぼうぜん)としてしまいました。その時点では熱さを感じていませんでした」


検察官「捜査段階では急いで投げたと供述している。『呆然としてしまった』というのでは、検察官に話したこととは違うのではないですか」


被告「異なる部分はあると思います」


《検察官は、捜査段階での供述と公判での被告の話が食い違っている点を指摘。さらに、事件の動機に関する部分について質問を重ねる》


検察官「『死刑になりたい』『殺してもらいたい』という考えが頭にあったか」


被告「会社でのこと(トラブル)や、彼女とのこと(別れ)が頭にあり、『自殺できないのであれば、他の方法を』と考え、(誰かに)殺してもらうしかないと思いました。
でも(誰かに)『殺してください』ということもできない。そう考えた上で死刑になろうと思いました。躊躇(ちゅうちょ)はありました。
できれば、やりたくありませんでしたが、死刑になるには事件を起こすしかないと思いました。葛藤はありました」


検察官「しかし、対象となる人は何も悪くない。そう考えなかったのですか」


被告「そのことを考えないようにするため、思いついたのが、ジョーカーというキャラクターでした」


《ここで検察側の質問が終了。続いて、被害者参加制度で出廷した被害者側の弁護士が、質問を始めた》


被害者側弁護士「重複するが、死刑にしてもらおうと思って事件を起こしたということでいいですか」


被告「はい、そうです」


被害者側弁護士「事件前、あなたは日記に『(事件の)当日を楽しみにしている』『人が死ぬ瞬間を見たい』などと書いています」

被告「自己暗示のためにあえて、日記に残しました」


男性裁判員「死のうと思っていたとのことですが、(別れた)彼女への恨みや、困らせてやろうという思いはありましたか」
被告「一切ありませんでした」
別の男性裁判員「『(被告にナイフで刺され、重傷を負った)Aさんが動いていて、失敗したと思った』と言っていましたが、失敗したら死刑にはならないとは思いませんでしたか」
被告「あくまで想定通りいかず、失敗したと思っただけで、まだ(放火により)燃えた人はいるんじゃないかと思っていました。死刑になる可能性はあると、逮捕されてからしばらくは思っていました」
《裁判員からの質問が終わると、今度は裁判官の質問に移った。裁判官の問いも、被告の動機の解明に費やされていく》
裁判官「死刑になりたいという思いと、死にたいという思いは両方ありましたか」
被告「死刑になりたいとは思っていましたが、死刑以外(で死ぬのは)は嫌で、火にまかれて死のうとは思いませんでした」
裁判官「何人殺そうとしていましたか」
被告「当日は考えていませんでした」
裁判官「漠然とした人数についてもですか」
被告「はい」
《裁判官は、殺害することを想定していた人数について質問を重ねる。事件を起こしたとしても、死刑判決が出るかは別物。裁判官は、被告が死刑になりたいという思いを果たすため、どの程度の被害規模の事件を起こそうとしていたのかを問いただしていく》

裁判官「死刑になるための人数は考えていましたか」
被告「あくまで2人以上殺したら死刑になるという認識はあったので、漠然とそのくらいは殺そうと思っていました」
裁判官「ハロウィンにしたのはどうしてですか」
《被告は当初、犯行場所をハロウィン期間中の渋谷にしようとしていたが、小田急線の刺傷事件に影響され、京王線の車内に変更したとされる。裁判官の質問は、こうした計画の変更を念頭に置いたものだ》
被告「たくさん殺すには密集している方がいいだろうと考え、密集しているものとして、パッと渋谷のハロウィンが思いつきました」
《質問は一転し、被告が18歳のころに自殺未遂を起こした経緯に移る。午前中の被告人質問で被告は、弁護人に対し、勤務先でのストレスから自殺を図ったことを明かしていた。中学時代の後輩の女性と交際していたころだ》
裁判官「自殺未遂をして病院で目が覚めましたが、家族は心配していましたか」
被告「病院には母が駆け付けたが、心配している様子はありませんでした。彼女は付き添ってくれて、心配してくれました」

裁判官「死にたいという思いへの変化はありましたか」
被告「数カ月、精神科のクリニックに行きましたが、あまり変わりませんでした。彼女が来たから劇的に変わるということは、ありませんでした」
《別の裁判官の質問を挟み、裁判長が改めて、被告が火をつけようとした前後の状況について、詳しく聞き始める。被告がオイルをまき、火をつけたライターを投げ込んだ行為が殺人未遂罪にあたるか。今回の公判の争点の判断には、殺意の有無の解明が不可欠だ》
裁判長「(車両の)連結部分で動けなくなっている人が何人以上いたら、火をつけようという考えはありましたか」
被告「なかったです。自分は10人以上いると認識したので、(死刑判決が出るのに必要だと考えていた被害者数が)2人を上回っていたから火をつけました」
裁判長「オイルをまいているときに、手にはかかりましたか」
被告「多少はかかったと思います」
裁判長「(オイルの入っていた)ペットボトルの捨て方は覚えていますか」

被告「ポイっと床に捨てる感じです」
裁判長「火をつけたら、すぐジッポーライターを投げつける予定でしたか」
被告「はい」



《ここで、休憩を挟んで続いていた服部被告に対する被告人質問は終了。続けて、関係者の証人尋問へと移った》

証人として法廷に立ったのは、被告の更生を支援しているNPO法人の女性担当者だ》
《NPOは10~20代の加害者の若者や在日外国人を対象に、生活相談などを受ける支援活動を実施。再犯したとしても打ち切らず、サポートを続けているという。支援状況は被告の更生に関わり、有罪判決が出た場合、量刑にも影響するとみられる。服部被告の弁護人は、担当者に被告との関係について聞いていく》
弁護人「被告の支援をすることになった経緯について教えてください」
NPO担当者「弁護士の先生から『支援があったら使いたい』と連絡をもらい、本人とお会いしてスタートしました」
《担当者は被告の供述調書や精神鑑定書を読み、裁判の傍聴もしたことを明かした上で、被告の分析を披露していった》
弁護人「被告はどのようなところに問題があったと思いますか」
NPO担当者「障害とまではいかないですが、属性に問題があり、一緒にいてくれる人がいれば(事件を起こさなかったのではないか)と思いました」
弁護人「被告と初めて面会したのはいつですか」
NPO担当者「(今年の)5月中旬です」
弁護人「どのような印象でしたか」
NPO担当者「すごく真面目な方という印象でした。表情も暗くなく、穏やかな顔をしていて、普通の青年という印象でした」
《2回目に面会した7月上旬は、裁判が始まっていたこともあり『すごく疲れているんだな』という印象も持ったという。面会以外に被告と文通もしているという担当者。弁護人は、長期の実刑判決が下される可能性が高い被告の今後の支援体制も聞いていった》

弁護人「被告は長期の実刑が見込まれますが、支援体制はどうなっていますか」
NPO担当者「今のスタッフが10年後もいると100%言い切ることは難しいですが、団体として支援していくことを確認しています」
《弁護人の質問が終わり、今度は検察官がNPOの支援状況について聞き始める。NPOの一般的な支援内容を聞き出すと、検察官は、被告とNPO担当者が初めて面会した当時の様子を尋ねた》
検察官「面会したときに印象深いエピソードはありますか」
NPO担当者「『事件に対して申し訳なく思っている』という話が最初にありました。また、(事件前に婚約を解消したとされる)彼女への殺意はなく、迷惑をかけたいという気持ちもなかったと聞きました」
《検察官の質問は被告への具体的な支援方法に移っていった》
検察官「被告の支援計画は立てていますか」
NPO担当者「2回の面会と文通だけなので、まだ確定したものを決めるのは難しいですが、今後(支援計画を)作る予定を立てています」

検察官「収容中の支援は文通や面会を行うということでいいですか」
NPO担当者「はい」
《判決が出ていない現状では、被告の収容先も決まっておらず、NPOが活動拠点とする東京から離れた場所に収容される可能性もある。被告側から連絡を断つ可能性もあり、検察官は支援に切れ目がでないかを確認していく》
検察官「どこに収容されても面会しますか」
NPO担当者「直接会うことは大事だと思っているので、頻度は限られるかもしれませんが、面会には行きます」
検察官「仮に文通が来なくなったり、面会できないことが続いた場合、どうしますか」
NPO担当者「刑務所には連絡して、そういった場合でも、彼がどんな状態か聞けるようにしたいと思います」
検察官「連絡が途切れたら支援ができなくなるのではないですか」
NPO担当者「こちらから追いかけることは、やり続けたいです」
《検察官の質問が終了すると、被害者参加人の代理人弁護士が、被告側から断られた場合の支援の継続方法について引き続き、質問を重ねた》

被害者側弁護士「支援を受ける対象が連絡をやめたり拒否した場合、追いかけるとのことですが、どのようなことをしますか」
NPO担当者「会いに行ったり、連絡を取ったりします。連絡を取れないことが再犯リスクを高めるので、連絡をとりたくない相手にならないことを徹底しています」
被害者側弁護士「支援を終了すると判断することはありますか」
NPO担当者「これまで終了すると決めたことはないです」
《被害者側の弁護士の質問が終わると、いったん休廷。再開後、女性裁判官の質問に続き、裁判長からも最後に質問が飛んだ》
裁判長「あなたたちの支援は、どういう人に効果があるものですか」
NPO担当者「被害者を新たに生まないようにするという意味では、地域や社会のためになっていると思います」
《NPO担当者への質問が終わり、午後3時45分ごろ、この日予定されていた審理が全て終了。閉廷が告げられると、被告は裁判長らの方を向き、姿勢を正して一礼し、法廷を後にした》

《次回の公判は7月20日。被告の精神鑑定を行った医師の証人尋問の後、被告の情状に関して再び被告人質問が行われる予定だ》

























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