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再会作戦

2021年06月21日 | 社会
中国の「再会作戦」で1737人発見 後を絶たぬ“人身売買”

人身売買を目的とした子どもの誘拐事件が後を絶たない中国で、公安省が未解決事件を掘り起こし、行方不明者の居場所を突き止めて親元へ帰す「再会作戦」を展開している。1月からの半年弱で、幼少期に誘拐されて行方不明になっていた1737人を捜し出し、人身売買の容疑者236人を逮捕。91件の未解決事件を解決したという。58年ぶりに再会できた事例もある。

公安省や中国メディアによると、誘拐された子どもの容姿が変わってもDNAで特定できるシステムや防犯カメラに加え、行方不明の子どもの情報を公開するインターネット上のプラットフォームを活用。会員制交流サイト(SNS)や地図アプリなど25種のスマートフォンアプリと連携し、特定地域のスマホ利用者に不明児情報を周知して手掛かりを探すという。  物心つく前に誘拐された場合、本当の親の記憶がない被害者も少なくない。このため、行方不明者と家族が血縁関係者を捜すための無料採血場も約3千カ所整備し、スマホで検索できるようにした。  このところ、国営メディアなどが誘拐被害家族の再会を伝えるニュースを相次いで報じており、6月上旬には、山東省の90歳の男性が58年ぶりに息子と再会できたことが話題になった。  中国では、年金や医療保険など社会保障制度の整備の遅れや、2015年まで36年続いた「一人っ子政策」の影響もあり、子どもに恵まれない夫婦や後継ぎのいない農家が、老後の暮らしを支える働き手として男児を買い求めているとされる。売買価格は10万元(約170万円)前後とも言われ、地方で誘拐された子どもが都市部で物乞いをさせられた事例もあるなど、長年の課題となっていた。  中国政府は4月、2030年までの「人身売買防止計画」を打ち出し、社会全体で対策を強化する方針。1月に始まった再会作戦で発見された「行方不明児」の多くは10年以上前に誘拐されていた。児童保護政策の専門家は「誘拐の予防や救出活動に加えて、人身売買の被害者や家族の精神的ケア、社会復帰支援など長期的な仕組みを構築する必要がある」と指摘している。

(西日本新聞 2021年6月21日)




年間20万人の児童が行方不明に! 中国マフィアの「誘拐イノベーション」
旧正月に多発 超監視社会に対抗する“最新犯行手口”

2018年1月末、日本で民放番組に出演した身元不明の男性が、1989年に徳島県で失踪した4歳の男の子である可能性が持ち上がり、DNA鑑定がおこなわれたことが報じられた(結果、男性と徳島の男児両親とのDNAは不一致)。誘拐や行方不明で親子の関係が断絶されることの、当事者の苦しみは想像するに余りある。
 ところで、この分野でも「大国」なのが中国だ。子どもをかどわかして売り飛ばす誘拐犯を指す言葉として、中国語には「人販子」というこなれた単語が存在し、メディアでも日常的に使われている(それだけ身近な概念なのだ)。
 香港紙『文匯報』によると、中国で1年間に立件される子どもや女性の誘拐事件は約2万件で、1日平均50件とのこと。また2015年にNHKは、中国で行方不明(誘拐のみとは限らない)になる児童数は年間20万人に達すると伝えている。

中国大手週刊誌『中国新聞週刊』の記事によれば、誘拐した子どもの「市場価格」は、2017年3月時点で8万~10万元(約140万~170万円)ほど。男の子は女の子よりも高く、男の赤ちゃんが15万元(約260万円)で売買された例もあったという。さらわれた子どもの多くは、社会保障制度の不備から老後の不安を抱える、農村部の子どもがいない夫婦に売られているようだ。
 中国の子どもの誘拐は、帰省ラッシュや買い出しで駅や街が雑然とし、忙しくて保護者の手が回らなくなる旧正月(今年は2月16日)前後に多発する。「人販子」で中華圏のニュースサイトを検索すると、今年も警告を発する記事が数多く引っかかる。

子どもの誘拐は従来、駅の待合室などの人混みで保護者が目を離した隙に赤ん坊を連れ去ったり、外で遊んでいるところを連れ去るような事例が多かった。ただ、近年は駅への立ち入りに検問や身分証確認がおこなわれたり、高度な顔認証機能を持つ監視カメラがあちこちに設置されたりと中国の監視社会化が進行。また行方不明児童捜索NGOが活発に活動するようになり、誘拐や人身売買は以前ほど簡単ではなくなった。
 とはいえ、ハードルが上がればきっちりそれを越えてくる、謎のチャレンジ精神とイノベーションを発揮するのが中国のマフィアである。以下、『文匯報』の記事をもとに、最新の誘拐手段について紹介していくことにしよう。
例えば誘拐マフィアの一員である女性がターゲットの子どもの祖母に狙いを定め、長期間にわたり人間関係を構築して、自宅にも気軽に遊びに行けるような茶飲み友達になる。1年後、祖母が自宅内で屋上に洗濯物を取りに行く際に「すこし子どもを見ていて」と頼まれたので、まんまと誘拐に成功――。といった例である。
 近年の中国では、両親が共働きで祖父母が子どもの面倒を見る例が多い(ベビーシッターは高額で、また必ずしも愛情を持って子どもに接してくれるかわからないためだ)。このパターンで祖父母が籠絡された場合、防ぐのはかなり厳しいだろう。実は中国での児童誘拐は、顔見知りの犯行によるものも相当多いとされている。

中国で9.8億人のアクティブ・ユーザー数を持つチャットソフト『微信』の「近くにいる人を探す」機能を使って子どもや保護者の個人情報を収拾。このようにして両親の知り合いを装い、学校帰りのターゲットの子どもに声をかけて連れ去る手法が数年前から流行した模様である。
 もっとも最近はこの手口が有名になり、子どもの個人情報をネットに出さない保護者が増加。誘拐マフィア側はかえってアナログな手段に回帰し、放課後の子どもに故意にぶつかって「ケガはない?」「病院に連れて行こう」と持ちかける手口も出ているという。

例えば公園で遊んでいる子どもに、愛想のいい男が近づいて「一人で遊ぶのは危ないから、おじさんが親のところへ連れて行ってあげよう」と声をかける。だが、そこそこ賢い子であれば外で知らない人に付いていかないよう言い聞かされているため、当然これを断る。もっとも実は「本番」はこれからである。
「あなた、なにやってるの? 警察に通報するわよ」
 そこに親切そうなおばさんがあらわれ、子どもを後ろに隠して守るのだ。やがておばさんは「この人は危ないから行きましょう」と言い、子どもの手を引いてその場を離れる――。


 もうおわかりであろう、実は最初の男とおばさんはグルであり、二段構えで子どもを追い込んで誘拐する手口だったのだ。誘拐に対する子どもの警戒心を故意に利用するという高等テクニックである。 

映画『ルパン三世 カリオストロの城』で、銭形警部に変装したルパンが本物の銭形を指して「そいつがルパンだ」とミスリードし、彼を追う衛兵隊長を騙すシーンがある。中国ではこういう行為を「賊喊捉賊(ぞくかんそくぞく)」と呼ぶのだが、これを児童誘拐に応用するパターンが存在する。
 例えば、子連れで外を歩いている母親から、誘拐マフィアの一員である中年女性が子どもをひったくり「何をやってるの! この人さらいめ!」と本物の母親を罵倒。やがて野次馬が集まってくると、マフィアの関係者数人が「このおばさんが子どもの祖母だ」と口々に言いはじめ、本物の母親を「人さらい」として取り押さえる。こうしてニセ祖母は本物の母親からまんまと子どもをさらってしまえるというわけである。

鮎の友釣りよろしく、誘拐マフィア側が子どもを利用してターゲットの子どもをさらうという手法だ。以下、『文匯報』が報じた、中国のネット掲示板『天涯社区』の書き込みをそのまま翻訳しよう。
「昨日の午後、子どもを連れてマンションの中庭で遊んでいたんです。そうしたら、小さなかわいい女の子が来て息子と遊びはじめました。楽しそうに遊んでいたので、私はなにも気にしなかったんです。女の子の後ろには父親だという中年の男性がいました。私は彼とすこし会話したところ、マンションの第4号棟15階に住んでいるとのことでした。
 しばらくして、男性は車にトランスフォーマーのおもちゃがあるので取ってくると言ってその場を離れました。それから女の子は『いっしょに取りに行こう』と言ったのです。息子がいま遊んでいて楽しいから行きたくないと言うと、女の子は息子を引っ張って中庭から外に出て行こうとしました。息子はまだ小さいので、何度か引っ張られてついに泣き出してしまいました。
 女の子はそれを見て、ゆっくりその場を離れていきました。私はこのときは何とも思わなかったのですが、後で帰宅してから考えれば考えるほどヘンだと思いはじめたのです。そこで翌日、マンションのガードマンに尋ねてみたところ、例の父娘には見覚えがないとのことでした。私がマンションの第4号棟15階に行ってみると、同階に住んでいる4家族にはいずれも先日の父娘に該当する人がいなかったのです」
事実とすれば、ほとんどホラー映画に近い話であろう。通常の常識からすれば、そこそこ身なりのいい子連れの相手を誘拐犯として疑うことは不可能に近い。いざ狙われたら、被害を免れ得るかどうかは運次第と考えるしかない。

中国で児童誘拐が多発するのはいくつかの理由がある。例えば検挙された誘拐犯の刑罰は5年以上10年以下の懲役と罰金であり、死刑や財産没収のリスクはない。いっぽう、前述のように子どもは高値で売れるうえ需要も根強いため、数をこなせば相当な売り上げが見込めるのだが、貴金属や高級車ほどには「盗難」を防ぐセキュリティは厳重ではない。マフィア側の論理に照らせば、比較的ローコストでハイリターンを見込めるビジネスというわけだ。

また、近年の中国は監視社会化が進んだとはいえ、その主要な目的は逃亡中の凶悪犯の摘発や、共産党体制を脅かす少数民族の民族運動や反体制主義者への弾圧と見られる。子どもの行方不明事件に対して警察がどこまで本気で対処してくれるかは怪しく、また地方都市であれば誘拐マフィアと警察の末端が結託している可能性すらある。これらもマフィア側からすれば「ローコスト」の犯罪を補完する要素になっている。
 中国は基本的に、自分と家族の安全は自分自身で守らざるを得ない社会であり、誘拐対策はむしろ各家庭の用心に任される部分も大きい。たとえば下記に紹介するのは、中国人民公安大学の王大偉教授が提唱したという、誘拐発生後に保護者が取るべき捜索作戦「十人四方向追跡法」だ。

こちらによれば、いざ誘拐が発生したときは、その後の24時間以内の行動が勝負だという。まず母親は現場から動かずに警察に連絡、父親は協力者を集め、誘拐地点から2キロ範囲内の東西南北に捜索者を派遣し、さらに付近の駅やバスターミナルを押さえさせる。連れ去り後の犯人はすぐに遠方に離れていくため、公共交通機関を押さえておくのが重要であるそうだ。
 ……とはいえ、わが子を誘拐された直後に落ち着いてこうした手を打てる両親が多いとは思えない。そもそも、気の置けない大人10人以上をいきなり捜索に動員できるような人は、人間関係が浅くなりがちな都市部では決して多くないだろう(しかも捜索者は子どもの顔を知っていないとムリである)。提唱した王教授には申し訳ないが、上記の追跡法は机上の空論に近いと言うしかない。
 中国社会の負の一面である児童誘拐。今年もまた、人さらい多発期間である旧正月の季節がやってこようとしている。

(文春オンライン 2018年2月16日)





















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