<大宮立てこもり>「死にたい」「甘いもの欲しい」…逮捕の無職男、事件の店以外の複数の店も利用していた
埼玉県さいたま市大宮区のインターネットカフェで女性従業員を人質にして男が立てこもった事件で、監禁容疑で逮捕された住所不定、無職の男(40)が女性従業員に「物が壊れた」と声を掛けて個室ブースに呼んでいたことが20日、県警への取材で分かった。現場からはカッターナイフが押収された。県警は20日、容疑を逮捕監禁致傷に切り替えてさいたま地検に送検した。
県警によると、男は16日午後8時ごろに、さいたま市大宮区桜木町のインターネットカフェ「マンボ―プラス大宮西口店」を訪れた。17日午前8時ごろに一度退店した後、約2時間後に再び来店した。 17日午後2時すぎ、7階フロアを歩いていた女性従業員に「物が壊れたんだけど見てくれないか」と声を掛け、女性が部屋に入って物が壊れていないことから出ようとした際、後ろから首に手を回して引き倒して監禁した。女性は首などに2週間のけがを負った。 立てこもっている間、説得を続ける県警の捜査員に、男は「甘いものが欲しい」と要求。ドアのアクリル板を開けて渡すよう指示した。 県警は工具でドア中央に約10センチの穴を開けて、18日昼前に菓子パンやペットボトルの茶を差し入れた。男と女性がそれぞれ受け取り、女性の安否が確認できた。穴は男がふさいだ。 男は立てこもっている間、「死にたい」「近づいたら殺す」「近づいたら一緒に死ぬ」などと言っていた。逮捕後は県警の調べに受け答えはしているが、言いたくないところは答えていないという。
現場からはカッターナイフなど凶器となり得る道具類が押収された。ネットカフェの会員証は9日に都内の系列店で作っていた。事件の店以外の複数の店も利用したことが確認されている。 県警は20日午前、容疑を逮捕監禁致傷に切り替えてさいたま地検に送検した。大勢の報道陣が駆け付けた大宮署で、男は白いシャツ姿で車に乗り、頭を伏せていたため顔は見えなかった。
(埼玉新聞 2021年6月21日)
立てこもり容疑の男、前日も来店 身柄確保時、左手に傷
さいたま市大宮区のインターネットカフェで男が20代の従業員の女性を人質にして32時間余り立てこもった事件で、埼玉県警は20日午前、住居不定、無職林一貴容疑者(40)を逮捕監禁致傷容疑で送検した。
県警は林容疑者を監禁容疑で18日夜に現行犯逮捕したが、女性がけがをしていることが確認されたため、容疑を切り替えた。
県警によると、林容疑者は17日午後2時25分ごろ、雑居ビル7階のネットカフェ店内で、女性に「個室内のものが壊れたので来てほしい」などと声をかけた。その後、個室ブース内に女性を招き入れて首をつかんで引き倒すなどし、18日午後10時35分ごろまで監禁。首などに全治2週間のけがを負わせた疑いがある。
林容疑者は事件前日にもこの店を訪れていたことが県警への取材で新たにわかった。林容疑者は16日午後8時ごろに店に入り、17日午前8時に一度精算して退店したという。その2時間後の午前10時に再び来店したという。
立てこもりの最中に県警が林容疑者らに食料を届けた際の状況もわかってきた。
18日昼前に林容疑者から「甘いものがほしい」との要求があり、県警は2人分のパンとペットボトルのお茶を届けた。この際、林容疑者は個室の扉を開けることは拒否し、扉の中央付近の不透明のアクリル板のような部分に穴を開けるよう求めた。県警はここに約10センチ四方の穴を開けて、林容疑者と女性にそれぞれ渡したという。
個室内にはカッターナイフなど複数の凶器があったことも判明した。県警は女性を脅すために使ったとみている。林容疑者は身柄を確保された際、左手の指に刃物でできたとみられる傷があったといい、県警は林容疑者が自ら傷つけたとみている。
また、横浜市南区のラブホテルで今月13日朝、風俗店従業員の女性(22)が男に現金約32万円を奪われる強盗事件があり、この現場に残されていた指紋が林容疑者のものと一致したことが捜査関係者への取材でわかった。
(朝日新聞 2021年6月20日 )
「大宮ネットカフェ立てこもり男」 許されざる32時間の暴挙
さいたま市大宮区のインターネットカフェで、20代の従業員の女性を人質にして32時間余り立てこもった事件で、林一貴容疑者(40)が逮捕監禁致傷容疑で送検された。広さ約3平方メートルの個室での32時間に何があったのか?
林容疑者が雑居ビル7階のネットカフェ店内で犯行に及んだのは17日だが、前日の16日午後8時ごろにもこのネットカフェを訪れ、17日午前8時に一旦支払いを済ませ退店。その2時間後に再び入店している。入店の際に会員証を示しているが、このネットカフェの都内にある別の店舗で会員登録をしており、この店舗を利用するのは今回が初めてだったという。前日からの宿泊は下見だった可能性がある。 林容疑者は入店から4時間半ほどが経過した17日の午後2時25分ごろ、従業員女性に「部屋の中の備品が壊れたので見に来てもらいたい」と呼び出し、個室内に女性を引き入れた。 社会部デスクによると、 「2時間経っても女性が戻ってこなかったのを不審に思った他の従業員が様子を見に行ったが、応答がないので部屋を合鍵で開けようとしたところ開かなかった。林容疑者が鍵穴に細工をしていたようですが、そこで初めて警察へ通報したということでした」 捜査員が店舗へ到着し、説得が始まったのだった。
垂れ流し状態
「捜査員は部屋のインターホンを通じ、林容疑者とやり取りを続けていました。“ナイフを持っている。怪しい動きをしたら女と一緒に死ぬ”と話していました。個室ブースは女性が宿泊するケースも少なくないので、プライバシーに配慮した防音構造になっており、室内の様子がわかるようなカメラも窓もなく、まさに密室。林容疑者は部屋の中で事件関連のニュースを閲覧していて、“捕まりたくない”とも話していたと言います」 その時点で、すでに複数のメディアがウェブ上で第一報を報じていたが、埼玉県警から被害者保護の観点から報道自粛の要請があり、それらの記事はしばらく後に取り消される一幕もあった。 「一時、誘拐事件の際の報道規制のような状況になっていました。林は個室ブースから一切外に出ないので、部屋から異臭が漂いはじめ、それがどんどんキツくなっていったようです」 林容疑者は飲食物に関して、差し入れを18日昼前まで要求しなかった。そのころに林容疑者から「甘いものがほしい」との求めがあったので、捜査員は2人分のパンとペットボトルのお茶を届けたという。 「林容疑者は突入されるのを避けるべく、個室の扉を開けての差し入れを拒み、代わりに扉に穴を開けるように要求しました。扉の中央付近には不透明のプラスチック素材でできた部分があり、そこに10センチ四方くらいの穴を開け、2人にそれぞれ渡しました。その後すぐに穴は塞がれたようです」 捜査員による突入は18日午後10時35分ごろで、その際、林容疑者は寝ていたという。
「突入の2時間前くらいに容疑者から“寝る”という連絡があり、実際に応答がなくなったので、ドアのカギを壊して突入したという流れです。思い出したのは世間を震撼させた1979年の三菱銀行人質事件でした。あの時も、新聞を読みながらうたた寝をしていた犯人の梅川昭美の様子が外部へ伝えられたことによって、警察は内部へ踏み込み、梅川を射殺するに至っています。監禁事件において容疑者の“睡眠時”というのは、突入と救出の絶好のチャンスであることは間違いないですね」 救出後、女性はすぐに病院へ向かった。 「少しケガをしていたこともありますし、あまりに異常な体験をしたため精神面でのケアも踏まえ、身体全体についての診断を受けたようです。このまま逮捕監禁致傷容疑に留まるのか、それ以外の容疑に発展するのか、あるいは余罪が出てくるのかが捜査の焦点になっていくものと見られています。それにしても捜査や公判の過程で、監禁時の様子なども事情を聴き、明らかにしていかざるをえないのですが、それは被害者にとっては思い出すだけでも辛いことでしょう。その意味でも本当に許しがたい犯罪です」
( デイリー新潮 2021年6月21日 )
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます