春烙

寒いなあ…

四神伝 一章 一.玄武<16>

2007年04月18日 21時54分52秒 | 四神伝 一章<完>
「なんかあれ、見たことあるなぁ」
「本で見たことあります。たしかあれは」
「四神……北の玄武よ」
 翼乃は玄武の背中を見ていた。
「玄武は、地を司る守護神。前に泳地兄さんが話してくれたんだ」
「あ、そういえば兄貴は?」
 壱鬼がそう言うと周りを見渡した。
「泳地はあそこにいるよ」
 アスカは玄武を指して言った。
「うそ」
「うそじゃないよ」
 会話が続くなか、玄武は怪物を燃えさかる炎の中に入れた。怪物が入ると、炎が激しく燃えさかり、怪物の姿が崩れていった。
「やった!」
「絶対、泳地だよ」
「う~ん」
「声だって聞こえたんだ」
「「(声って……)」」
 その時、玄武の体が光り始め、人の姿へと変わっていった。水奈達は消えた玄武の所に近づいていった。
「兄さん!」
 そこには、倒れている泳地の姿があった。
「本当にアスカの言ったとおりだ」
「信じたくありませんが」
「泳地兄さん」
 翼乃は泳地の体を揺さぶった。
「翼乃、それじゃあ駄目だ」
 壱鬼は言うと、泳地の襟を掴み、思いっきり頬を殴った。
「こうしないと」
「いっ、壱鬼兄さん」
 翼乃は震えながら話した。
「なんだ……」
 壱鬼が振り返ると。
「あ、兄貴!」
「思いっきり殴ったな、壱鬼」
 泳地は壱鬼の手をはらい、襟を整えた。
「すごく効いたぞ」
「そうかい」
「泳地ー」
 アスカは泳地に飛びついた。
「よく分からないが……」
「?」
「アスカの声を聞いたとたん、何か……とてつもない力が体中にあふれ出たんだ。その後のことは、覚えてはいない」
「力……ですか」
「ああ」
 泳地は自分の手を見た。
「……夢」
「夢?」
「夢で見たんだ。玄武になる夢を」
「夢ねえ」
「ねえ」
 アスカは泳地の服を引っ張った。
「もう帰ろうよ」
「それもそうですね」
「ぐっすり寝ようと」
「何も起こらなければいいけど」
「まあ、その時はその時だ」
 五人は燃え続けている研究所を後にし、山を下っていった。と、アスカは後ろを振り向いたが、壱鬼に呼ばれて、後を追いかけていった。




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