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阪神間で暮らす-4

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韓国で広がる「経済力で日本を追い越した!」というムードと日韓関係改善への希望

2021-08-28 | いろいろ


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韓国で広がる「経済力で日本を追い越した!」というムードと日韓関係改善への希望  


 『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏が、韓国政府の高官と話した際に感じた日韓関係について分析する。

 (この記事は、8月23日発売の『週刊プレイボーイ36・37合併号』に掲載されたものです)

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 8月15日の終戦記念日の数日前、韓国政府のある"知日派"の高官とじっくり話し合う機会を得た。会話はおのずと改善が見られない日韓関係が中心となる。

 彼の話を聞いていて感じたのは「韓国の経済力は日本に追いついた」という前提での話が多いことだ。

 例えば、日本では2019年夏から安全保障上の理由をもとに、半導体やディスプレイに使用される必須素材3品目の韓国への輸出を規制した。

 戦時中に過酷な労働を強いられたとして、元徴用工が韓国内の日本企業を提訴した問題で日韓の政治的対立が深まったこともあり、この措置は今も続くが、高官は「なぜ日本企業の競争力を削(そ)ぐようなバカな政策を採ったのかまったく理解不能だ」と頭をひねる。

 この話の前提にあるのは、半導体分野ではすでに日本よりも先行しているという韓国側の認識である。実際、米調査会社・ICインサイツの調査によれば、20年の半導体市場における国別シェアで韓国はアメリカに次ぐ世界2位の21%を占めており、6%の日本を大きく上回っている。

 技術力でも、台湾のTSMCに次ぐサムスンと競争できる日本メーカーは皆無だ。輸出規制は日本企業にサムスンやSKハイニックスなど、有力な輸出先を失わせるだけでなく、これらの最先端企業との協力関係により有利な立場に立っていた日本の部材メーカーの競争力を落とす最悪の政策になる。

 韓国の経済発展は目覚ましい。日本の停滞を尻目に着々と成長し、ひとり当たりGDPでも日本に迫り、購買力平価基準では日本を超えてしまった。半導体に限らず、液晶、有機EL、さらに今後の自動車産業の命運を左右する車載用電池でも中国と並び、日本メーカーをあっという間に抜き去った。

 製造業だけでなく、コンテンツ産業でも世界を驚かせる成長を遂げている。アイドルグループBTSが米国のアルバムヒットチャートで年間3枚も首位となったのは、外国人アーティストでは、ビートルズ以来の快挙である。

 一方、高官は日本の嫌韓ムードと似た問題が韓国にあると冷静に指摘した。「韓国が経済力で日本を追い越した」というニュースばかりが報道され、「韓国人は実体以上に"韓国はすごい"と信じ込んでいる」という。

 実は、これは大きな問題だ。この国民感情を踏まえれば日本がいくら経済力で圧力を加えても、韓国が妥協するはずがない。次期大統領がリベラルな文在寅(ムン・ジェイン)氏から保守系の人物に変わっても、韓国が日本の経済力を軽視し始めている以上、そう簡単に状況は変わらないだろう。

 ただ、日韓が角を突き合わせているより、協力することで双方の外交や経済パワーを大きくする道を探ったほうが建設的だ。文在寅氏は韓国における終戦記念日である光復節(8月15日)に、対日批判を抑えて「対話の扉は常に開けている」と述べ、関係改善のサインを送った。日本もこれに応える道はある。

 例えば、日韓主導で台湾も巻き込み半導体最強連合をつくる。その上で米中対立の狭間で翻弄(ほんろう)されるASEAN(東南アジア諸国連合)にも協力関係を拡大すれば、強力な経済連合となり、米中に対してより強い立場に立てるだろう。

 日韓関係が正常化してから、56回目の夏。両政府には互いに協力して世界での影響力を高める方途を示してほしい。

 

古賀茂明(こが・しげあき) 
  1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して11年に退官。『日本中枢の狂謀』(講談社)など著書多数。最新刊『日本を壊した霞が関の弱い人たち 新・官僚の責任』(集英社)が発売中。
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アフガン在留邦人は6人と判明 自衛隊輸送機3機派遣は適切だったのか

2021-08-28 | いろいろ


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アフガン在留邦人は6人と判明 自衛隊輸送機3機派遣は適切だったのか  
 現代イスラム研究センター理事長 宮田律氏


 日本政府は、タリバンのカブール制圧を受けて、自衛隊の輸送機3機をカブールに派遣した。NHKの報道などによれば、「現地に残る日本人や、大使館で働くアフガニスタン人スタッフなどを退避させるため、航空自衛隊の輸送機を現地に派遣し、今週中にも輸送を開始したい」とのこと。

 8月23日の記者会見で加藤官房長官は、「現地における日本の活動に参加・協力していただいた、大使館、JICA事務所の職員の皆さん方、さらには家族ということもあるだろう。そして皆さんの安全確保を図るというのは、国としても対応すべき事柄だと認識をしている」と述べた。

 このニュースに接して、官房長官の発言は大げさすぎないか、また自衛隊機3機の輸送機も本当に必要かという疑問を当初からもたざるを得なかった。日本の外務省は、アフガニスタンを危険な国として、日本国民にレベル4の「退避してください」の勧告を出している。

 筆者の体験でも、パキスタン・イスラマバードで、現地のアフガニスタン大使館でビザを申請したところ、日本大使館のレターが必要だと言われ、日本大使館に赴いてレターの発行を求めても頑として断られた。日本の企業もアフガニスタンに邦人を派遣しているわけがない。


日本大使館職員とJICA職員はすでに退避  

 日本人大使館職員12人は17日にすでに英軍機でドバイに脱出している。また関係筋によれば、JICAの日本人職員たちも全員アフガニスタン国外に退去した。筆者が27日、外務省に問い合わせたところ、27日現在でアフガニスタンに残っている日本人は国際機関に勤務している人などわずかに6人だった。1985年3月、イラン・イラク戦争の際に双方の無差別爆撃の応酬があった時に、215人の邦人がトルコ航空に救出されたことがあったが、当時のイランとは日系企業の関わり方が現在のアフガニスタンとでは大きく異なる。26日のNHKの報道には「活動期間が限られる中、自衛隊は26日中にできるだけ多くの人を輸送したい考えです」とあるが、そもそも「できるだけ多くの」邦人はいない。


C130輸送機の定員は90人  

 2機派遣されたC130輸送機の定員は約90人、座席以外に床を使えばその倍の人数を収容できるという。同様に1機派遣のC2輸送機の定員は110人で、これらの輸送機の定員もさることながら、パキスタンのイスラマバードまでのピストン輸送が必要な日本人がいるわけではない。今回の自衛隊機派遣の法的根拠が自衛隊法84条の4「在外邦人等の輸送」であれば、なおさら3機もの派遣は必要ないように思われる。邦人6人という数ならば、日本大使館員たちのように、他の同盟国の軍用機でも十分依頼できるし、政府専用機でもよかったはずだ。言うまでもなく、今回の輸送機3機にかかる諸費用は税金で賄われる。今後、改めて今回の輸送機派遣が適切だったかどうか検証されるべきだろう。 

 

日本政府の判断や行動は検証されるべき  

 菅首相など政府首脳は、G7の国々が救援機を派遣しているのに日本は何もしなくてよいのかという判断や考えの下に自衛隊機の派遣を決めたのかもしれないが、そもそもアフガニスタン戦争への関わりが日本と他のG7の国々とは大きく異なる。

 英米はタリバン政権崩壊に導いた空爆を最初に行った国だし、他のヨーロッパやカナダもISAF(国際治安支援部隊)に兵員を提供した。日本政府も自衛隊機をカブールにまで飛ばし日本の協調姿勢を見せたかったのかもしれないが、26日にカブール空港近くで大規模テロが起き、自衛隊はいっそう活動しにくくなったに違いない。ベルギーなどヨーロッパ諸国は自爆テロの可能性があるということで、すでに25日に退避作戦を終えた。タイミングを含めて退避作戦が適切だったかどうかという観点からも日本政府の判断や行動は検証されるべきだ。


治安だけでなくコロナ禍も深刻なアフガン情勢  

 冒頭の加藤官房長官の発言の「職員の皆さん方」は邦人ではなく、アフガニスタン人のローカル・スタッフを指すのだろうが、もう少し明確に、具体的に誰を指すのか説明すべきだったろう。外務省は、アフガン人の避難はパキスタン経由とし、事前にパキスタンのビザを取得することを条件とした。この緊急事態にビザの取得は困難で、ビザの不要な国への避難を考えられなかったものか。

 その他にも日本に避難する場合は日本の身元保証人が必要とか、日本人の配偶者がいるとかの条件がつく。これでは避難を支援できるアフガン人の数は限られてしまい、アフガニスタン人を本当に助ける気があるのかとも思えてしまう。アフガニスタン人のスタッフの安全確保を図っても、彼らを難民として日本に受け入れる気があるのだろうか。そのあたりのことも官房長官の発言からは明らかではない。難民の受け入れは、他の国際社会との協調姿勢を訴える重要な手段ともなる。

 アフガニスタンでは新型コロナウイルスの感染も深刻で、27日現在で15万2000人余りが感染し、7000人余りが死亡している。保健衛生状態の悪いアフガニスタンでは感染者、死亡者とももっと多いに違いない。そのような感染が深刻な国に派遣される自衛隊員も気の毒だが、アフガニスタンに残る邦人の数といい、日本政府はもっとアフガニスタンの実情を見て、適切な判断をしてもらいたい。
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 6人の邦人、そして大使館やJICAなどで働いていたアフガニスタン人、しかしこれらのアフガニスタン人は対タリバンに敵対的に働いたんだろうか、そうでなければタリバンに狙われる事もない、わざわざ他国へ出す必要があるのか、日本が難民として受け入れないのであれば移動させるのは止めた方がいいのでは。他国へ行って正規の働き口があるのならいいが、ただの難民じゃ苦労するだけじゃないか。

 

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【今週はこれを読め! ミステリー編】ノルウェー・ミステリー『ポー殺人事件』を一気読み!

2021-08-27 | いろいろ


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【今週はこれを読め! ミステリー編】ノルウェー・ミステリー『ポー殺人事件』を一気読み!  

 


『ポー殺人事件』とは、うまく邦題をつけたものだ。

 本邦初紹介となるヨルゲン・ブレッケが2011年に発表したデビュー作である本書は、原題をNÅDENS OMKRETS、英訳するとPERIOD OF GRACE、つまり「恵みの時代」だからこれだけだとよくわからない。なので本文中にも出てくる「ポー殺人事件」を採用したのだろう。

 ミステリーの開祖といわれるエドガー・アラン・ポーの人物や、その作品を素材にした小説は枚挙にいとまがない。ミステリー・ファンの間でもっとも有名なのはジョン・ディクスン・カーの某作だろうが、これは題名を挙げるだけでネタばらしになってしまう。ウィリアム・ヒョーツバーグ『ポーをめぐる殺人』(扶桑社ミステリー)や、映像作品で「推理作家ポー 最期の五日間」(ジェームズ・マクティーグ監督)あたりを挙げておこうか。個人的にはコージーに分類される長篇のアリス・キンバリー『幽霊探偵とポーの呪い』(ランダムハウス講談社文庫)がお気に入りだ。ポーの本を巡るビブリオ・ミステリーである。ルイス・フェルナンド・ヴェリッシモ『ボルヘスと不死のオランウータン』(扶桑社ミステリー)という珍品もそういえばあったっけ。

 「推理作家ポー 最期の五日間」が題材にしたように、かの作家の生涯には謎めいた部分がある。今だったら絶対に司法解剖は免れないような状況下で死を迎えたことも含め、作家の想像力を刺激するようなのだ。だから『ポー殺人事件』と聞くと多くのミステリー・ファンは、おお、これはかの作家をモチーフにした連続殺人が描かれる物語か、と邪な胸をときめかすであろう。あまりに期待させるとよくないので書いてしまうと、ちょっと違う。

 不穏な出来事が描かれるプロローグを除けば、小説は四部構成になっている。第一部「エドガー・アラン・ポー・ミュージアム」では、時制と場所が異なる三つの叙述が並行するので、これは何が起きようとしているのか、と期待も高まっていく。順に書いていくと、最初に出てくるのは16世紀に旅をしているらしい修道士の視点だ。彼がノルウェーのベルゲンに到着する場面から物語は始まる。この修道士が何の目的で旅をしているのかはしばらくわからず、気にしたまま読者はページをめくり続けることになる。

 現代の記述は二つの場所から始まる。一つはヴァージニア州リッチモンドで、ここにあるエドガー・アラン・ポー・ミュージアムで事件が起きるのである。館長の死体が、ポー像に磔にされた状態で発見される。しかも頭部はなく、皮膚も剥がされているという無惨な姿で。これと並行する現在の物語がノルウェー・トロンハイムのそれだ。こちらで最初に視点人物を務めるのはグンネルス図書館で警備主任として働くヨン・ヴァッテンである。研究職には就いていないのだが、ポーについて調べていて博士課程に在籍している。どうやら彼には口に出したくない過去があるらしい、と読者が思っていると、ある出来事が起きてノルウェー側も事態が急に緊迫する。なるほど、そういう趣向か、と私は82ページを読んで膝を打った。みなさんにも同じ箇所で膝を打っていただきたいのでこれ以上の情報は書かない。

 以降はアメリカとノルウェーで同時に事件捜査が進行していくことになる。それがどう交わるのか、という関心で読者を引っ張っていくわけだ。ヴァッテンはアルコール耐性が低くて、少量を摂取してもすぐ人事不覚になってしまうという体質である。それと同様の弱点を、視点人物たちがみんな持っているのが小説の特徴になっている。リッチモンドで捜査を進める刑事のフェリシア・ストーンは、高校時代にレイプ未遂を体験したことから薬物依存になってしまった。その過去からまだ脱し切れていないのである。トロンハイムの刑事オッド・シンセーカーは、脳腫瘍を克服して復帰したばかりで、病が自分の人生から奪い去ったものの大きさから立ち直れきれていない。欠落の人生を送る者たちの物語なのだ。

 第二部の題名は「パリンプセスト」。本の話題に詳しい方でないと見当がつかない単語だと思う。羊皮紙は希少な素材なので、古い本の記述を消して新たなものにそれを用いることがあった。そうした重ね書きされた写本がパリンプセストである。この用語から判るように、古い写本が第二部以降は事件の鍵を握る重要な手がかりとして浮上してくることになる。それがポーの蔵書であった、というような説明がされるところを見ると、作者も文豪への紐づけを意識していたものか。だが、心配ご無用で、ポーの話題に魅かれて本を手に取った読者も、この第二部ぐらいからはその話題と無関係にページをめくり始めているはずだ。事件がどうなってしまうのか気になるんだもの。ポーから興味の対象はある歴史上の人物へと変わる。それほど知名度はないが、翻訳ミステリーファンなら聞いたことはあるかもしれない。プロットの勝利というべきで、この後は真相を知るまで一気読みさせられてしまう。

 キャラクター配置がよくできた作品だと思う。ヨン、フェリシア、オッドといった視点人物もさることながら、ミステリー・マニアで犯人当て小説を読むことに執念を燃やすシリ・ホルムという女性が忘れがたい印象を与えてくれる。作者の裏をかいて犯人を当てる技術をとくとくと喋るくだりは楽しいし、家の中が散らかり放題で片付け能力が皆無であるところなど親近感を抱かずにはいられない。こういう脇役の魅力でも読まされる作品なのだ。

 作者のブレッケはこの作品でノーリス・デビュタント賞、マウリッツ・ハンセン新人賞という二つの栄誉に輝いている。ノルウェー作家を代表するジョー・ネスボは、北欧ミステリーというよりはマイクル・コナリーなどのアメリカ犯罪小説作家に近い作風だが、ブレッケにも同じ匂いを感じる。第一部のゆったりとした語り口が溜めを作って、中盤以降の疾走につながるのだ。これは楽しみな才能が出てきたものだ。ノルウェー・ミステリーはまだまだ奥が深そうだぞ。


(杉江松恋)
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総裁選を前に「安倍ガールズ」高市早苗と稲田朋美のバトルが、いまいち盛り上がらないワケ

2021-08-27 | いろいろ


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総裁選を前に「安倍ガールズ」高市早苗と稲田朋美のバトルが、いまいち盛り上がらないワケ  


党内の存在感は薄い  


 「総裁選に出馬します!」高市早苗前総務相が、今月発売の『文藝春秋』でこう宣言をした。高市氏は「日本経済強靭化計画」を提唱し、「基本路線は『ニュー・アベノミクス』」と書いている。


 ところが、自民党内での反応は冷ややかだ。

 「7月ごろから、高市氏が周囲に煽られて総裁選を目指すという噂が流れていました。高市氏を担ぎ出したのは、47名の中堅・若手議員が所属する『保守団結の会』ですが、この勉強会自体が'20年にできたばかりで、党内での存在感も薄いのです」(自民党閣僚経験者)

 


 この『保守団結の会』は'06年設立の『伝統と創造の会』から分かれた新しい組織だ。分裂のきっかけは、会長である稲田朋美前幹事長代行の「路線転換」だった。

 「前回の総裁選で推薦人20人を集められなかった稲田氏は『シングルマザー支援』『LGBT支援』といったリベラル寄りの政策を掲げるようになりました。これに反発する議員たちが、新たな勉強会を組織した」(同)


 当の稲田氏自身は自らを「多様性と寛容を掲げる『保守』」と称し、総裁選にも意欲を示す。とはいえ結局は、どちらの勉強会も安倍晋三前総理が顧問を務めているのは変わらない。火花を散らす「安倍ガールズ」に対し、党内の眼はシビアだ。

 

3


 「本当に女性総理を目指すなら、党内の39人の女性議員が団結すればいい。結局、実力者に気に入られたい目立ちたがりレースでしかない」(同)

 女性総理誕生への道のりは遠そうだ。

 

『週刊現代』2021年8月21・28日号より
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身の毛もよだつ冷酷非情

2021-08-26 | いろいろ


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森永卓郎の戦争と平和講座 第95回:身の毛もよだつ冷酷非情


 8月13日の記者会見で菅総理がこれまでの新型コロナ対策の総括を記者から問われて、「世界でロックダウンをする、外出禁止に罰金かけても、なかなか守ることができなかったじゃないですか。それに対して対応するためにやはりワクチンだということで、人流の抑制と同時に、そうしたことをしっかり全力で取り組んできています」と話した。ワクチン一本槍で行くという宣言だ。私は身の毛がよだつ思いがした。新型コロナで苦しむ国民を見捨てるに等しい発言だったからだ。

 過去最大の規模に達した新型コロナの感染第5波の原因は、デルタ株とされている。デルタ株の感染力は、米国CDC(疾病対策センター)が「水ぼうそう並み」と評価している。従来型の新型コロナと比べると4倍以上の感染力を持っているということだ。

 4倍強いウイルスと対峙するためには、4倍強い対策を講じなくてはならない。そんなことは子どもでも分かる理屈だ。しかし、政府がやっていることは、緊急事態宣言とまん延防止等重点措置の対象自治体を少しずつ拡大していくという従来型の対策だけだ。しかし、それで感染がピークアウトする可能性は、非常に低い。緊急事態宣言自体が日常化して、ほとんど効果を持たなくなっているからだ。

 実際、日本の新型コロナ感染は、急拡大を続けている。8月20日の国内の新規陽性者数は2万5676人に達しており、増勢は衰えていない。高齢者のワクチン接種が進んだことで、抑制されているとされてきた重症者数も1816人と急増を続けている。死亡者こそ36人にとどまっているが、この数もタイムラグを置いて今後急速に増えていくだろう。

 

 感染の爆発的拡大のなかで、政府の方針で、新型コロナに感染しても、軽症者は自宅療養ということになった。厚生労働省の8月20日の発表では、全国の自宅療養者は18日午前0時時点で9万6709人と、10万人に近づいている。検査で陽性となっても、強い症状が出なければ、そのまま自宅待機になる。死に直結する病であるにもかかわらず、とてつもない数の人たちが医療機関を受診できないまま、不安におびえている。すでに首都圏では、発症しても、受け入れ先の病院がなかなか見つからない状態が続いている。東京消防庁管内では8月9日から15日の間に、陽性患者の救急搬送要請が2259件あったが、うち6割以上が保健所の判断により自宅などでの療養継続となり、搬送されなかったという。そうしたなかで、自宅療養中に死亡するケースが次々に明らかになり、8月17日には、千葉県柏市で、新型コロナウイルスに感染した妊婦が、入院先が見つからずに自宅で早産し、新生児が死亡するという悲劇も起きている。

 軽症者が、入院さえできれば、死亡をほとんど防げるノウハウが医療機関には出来ている。だから、いま必要なことは、野戦病院のような形で、ベッド数を急激に拡大することだ。日本医師会の中川俊男会長も、8月18日に、「臨時の医療施設を整備すべき」との考えを示した。ところが、政府はまったく動かない。

 実は、いま東京オリンピックをあてこんで開業した東京都心部のホテルには、ほとんど宿泊客がいない。だから、ホテル全体を医療施設として活用することは、非常に容易だ。ところが、政府も東京都も、それを借り上げようともしないのだ。

 

 医療のキャパシティ拡大とともに需要なのが、新規感染者数の抑制だ。だが、そのために必要な、人流の抑制はほとんど進んでいない。欧米では、緊急事態宣言が出ると、街から人影がほとんど消える。しかし、日本の場合は、繁華街の人出がほとんど減っていないのだ。実は、日本でも昨年までは、緊急事態宣言は効果を持っていた。しかし、1年以上にわたって自粛を要請され続けたら、いくら従順な国民でも、聞く耳を持たなくなるのは当然だ。だから、私は今こそ、世界標準の感染対策に倣うべきだと私は考えている。

 世界が行っている新型コロナ対策は、三本柱だ。①感染地域を封鎖し、②その地域の住民に大規模検査をかけて、陽性者を隔離する、③ワクチン接種を進める、の3つだ。

 第一の対策のロックダウンは、日本ではまだ一度も行われていない。しかし、ニュージーランドでは、オークランドでたった1人の感染者が確認されただけで、8月17日から3日間のロックダウンを全土で始めた。オーストラリアの首都キャンベラは、感染者1人が1年ぶりに確認されたことを受け、8月12日午後5時から1週間のロックダウンに入った。

 8月20日の全国知事会でも、ロックダウンのような強い人流抑制策を求める声が続出した。新型コロナ対策分科会の尾身会長も、ロックダウンが可能となるような法整備を行うよう要請すると、8月17日に記者団に語っている。

 菅総理の「世界で外出禁止に罰金をかけても、なかなか守ることができなかったじゃないですか」という主張は、やりたくないときにしばしば使われる理屈だ。確かに、ロックダウンを完全に行うことはできない。しかし、1%の人が守らなかったとしても、99%分の効果は出てくる。実際にこれまでのロックダウンが大きな効果を持ったことは、科学的にも立証されているのだ。

 もちろん法的な問題があって、外出者に罰金を科すようなことは、日本ではできない。しかし、ロックダウンに近いことはできる。例えば、東京をロックダウンしようと思ったら、東京発着の列車や飛行機や高速道路を走行する自家用車は、県境を越えて運航してはならないと命令するだけで、すぐさま実施が可能だ。台風のときには実際に止めているし、鉄道や航空は認可事業だから、国には逆らえない。高速道路は、全株式を国が保有しているから、株主の命令には逆らえないのだ。感染症の専門家が「災害級」と口をそろえているのだから、災害のときと同じ対応をするだけでよいのだ。

 私は、8月24日から9月5日のパラリンピック開催期間中に、全国一斉にロックダウンと学校休校を実施するのが望ましいと考えていた。デルタ株は子どもにも感染する。このまま学校を再開すれば、学校でクラスターが発生する可能性がかなり高いのだ。ただ、子どもが夏休みを延長すると、親が面倒をみないといけなくなる。だから、親の仕事も止めて、家族全員で巣ごもりができるようにするのだ。13日間の「ロックダウン」をすれば、爆発的感染拡大は、ほぼ確実に止めることができるだろう。

 ただ、萩生田文部科学大臣は8月20日の会見で「国から全国一律の休校を要請する考えはない」とあっさり一斉休校を否定してしまった。ロックダウンの最後のチャンスが失われてしまったのだ。

 そして、感染抑制の第二の柱である検査と隔離に関しては、日本の異常さが際立っている。例えば、中国は昨年、感染が拡大した武漢や青島で市民全員の検査を実施した。そして今月、武漢市は、わずか7人の陽性者が発覚すると、再び市民全員の検査を開始した。これに対して、日本が医療として検査をするのは、発症者など医師が検査の必要性を認めた人や濃厚接触者に限られる。一般市民の検査は、国立感染症研究所の積極的疫学調査の一環として行われるだけだ。検査に大きなコストはかからない。PCR検査の原価は1000円程度だから、国民全員のPCR検査をしても、1千億円あまりのコストで実施可能だ。しかし、医療界はそれに反対する。検査で大量の陽性者が出てくれば、医療がますますひっ迫するし、大規模検査は民間の検査会社を動員しないとできないから、PCR検査が医療の独占ではなくなってしまうからだ。政府も、大量の陽性者の存在を明らかにしたくない。コロナ対策の失敗が鮮明になってしまうからだ。

 そもそもすべての疾病対策は、まず検査をして、疾病がみつかったら治療をするというのが基本中の基本だ。ところが、新型コロナに関しては、検査をせずに実態から目を背け続けてきた。新型コロナ対策分科会の委員を務める谷口清州三重病院院長は、実際の感染者数は、明らかになっている新規陽性者数の4倍程度いるだろうと主張している。それだけ新規感染者を取りこぼし、そうした人が動き回れば、感染が拡大して当然なのだ。

 

 政府が病床の確保をせず、ワクチン以外の感染抑制策にも後ろ向きである最大の理由は、財政問題だろう。菅総理は、安倍政権を支えていた経済産業省出身の官僚を官邸から更迭した。そのため、財務省出身官僚の力が一気に強くなった。そのことは、財政動向をみれば明らかだ。財務省は8月10日に、国債や借入金などの残高を合計した「国の借金」が、6月末で1220兆6368億円と過去最高を更新したと発表した。残高合計は3月末と比べて4兆1735億円の増加だ。しかし、昨年度は1年間で102兆円も国の借金は増えている。3か月あたり255兆円だ。それがいま4兆円に激減しているのだ。菅政権になって、とてつもない財政緊縮が進行しているのだ。

 安倍政権時代のコロナ対策には大きな批判があるのは承知しているが、それでも1人当たり10万円の特別定額給付金や中小企業向けの最大200万円の持続化給付金など、国民生活を支えるための財政出動は行った。ところが、感染状況や経済状況は、いまの方がはるかに深刻なのに、今年は特別定額給付金や持続化給付金の話さえ出てこないのだ。

 緊縮財政が貫かれるという視点からみると、菅政権のコロナ対策の本質が見えてくる。大規模な病床確保のためには、大きな財政資金が必要になる。ロックダウンをすれば、当然、補償の問題がつきまとう。

 財政出動を避け、コロナを収束させるためにはどうしたらよいのか。菅総理の描くシナリオは次のようなものなのではないだろか。

 8月6日から13日までの一週間で、一日当たりのワクチン接種は122万回だった。このペースでワクチン接種が進み、そのうち半分が2回目の接種に回るとすると、ワクチン接種完了者の割合は、1日当たり0.48%上昇する。衆議院議員が任期満了となるのは10月21日だから、そこまで待てば、ワクチン完了者の比率は、76.3%まで高まる。さすがにそこまで接種率が高まれば、感染拡大は止まるだろう。さらに投開票日は最大11月28日まで引き延ばせる。接種完了率はさらに高まるだろう。

 実は、世界では接種完了率が6割前後のところで、接種が頭打ちになっている。接種を望まない人がかなり存在するからだ。しかし、日本はその壁を打ち破り、7割を超える接種完了率になると私は考えている。

 医療崩壊が進むなかで、自分の命を守る手段がワクチン接種しかないことに国民が気付き始めているからだ。実際、私の周囲の若者のなかでも、ワクチン接種に否定的だった人が次々に接種派に転向している。

 世界最高レベルの接種率を達成し、新型コロナが落ち着いてきた段階で選挙をすれば、与党が勝利できる。もちろん、このシナリオの下では、医療が崩壊し、大量の重症者と死亡者が発生する。しかし、そんなことは関係ない。菅総理にとって必要なことは、財政負担を減らし、選挙に勝ち、総理の座を守ることだからだ。

 こうした国民軽視の政策を是認するのかどうか。私は、次期衆議院選挙は、戦後の歴史のなかで、最も重要な選挙になると考えている。



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