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阪神間で暮らす-4

テレビを持たず、ラジオを聞きながら新聞を読んでます

なぜトランプ大統領は「ハーバード大学」を攻撃するのか 「慰安婦論文」ラムザイヤー教授が明かす「ハーバードの不都合な真実」

2025-08-14 | いろいろ



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なぜトランプ大統領は「ハーバード大学」を攻撃するのか 「慰安婦論文」ラムザイヤー教授が明かす「ハーバードの不都合な真実」


  



ハマスによるイスラエル攻撃を称賛

 2020年末に従軍慰安婦に関する論文を発表し、世界的な注目を集めたハーバード大学ロースクールのJ・マーク・ラムザイヤー教授。「慰安婦=性奴隷」説を否定したことで、韓国だけでなくアメリカでも激しく糾弾されたが、自説を曲げることはなかった。そんなラムザイヤー教授が教鞭を執るハーバード大学は、目下、ドナルド・トランプ大統領から目の敵にされている。日本でも「学問の自由」を揺るがす暴挙と報じられるが、その背景にはハーバード大学が抱える“問題”があった。ラムザイヤー教授が明かす真相とは――。

 【取材・構成:吉田賢司/ジャーナリスト】


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 2024年のアメリカ大統領選挙ではさまざまな争点が取りざたされたが、その中心にあったのは、左派と右派の分断であり、エリート層と非エリート層の対立だった。トランプは、オバマ政権下の8年にわたるエリート主導政治に対する庶民の怒りを巧みに利用した。そして当選後に左派色の強い大学への資金援助を打ち切るに至ったが、当然、エリートを象徴する存在として、ハーバード大学ほど格好の標的はなかった。

 もっともハーバード大が他の一流あるいは二流の大学に比べて特に左寄りというわけではない。リベラル色の強さも学部によって大きく異なる。私が教えているロースクールやビジネススクールは、全体として民主党寄りだが、学生の政治的傾向は比較的多様だ。一方で、医学部や理工系の学部は、アメリカ全体の平均に近い傾向を示す。

 最大の問題は人文系の学部である。ここでは民主党支持が圧倒的で、しかも極端(fringe)な主張を持つ学生が少なくない。例えばハマスがイスラエルに対して武力攻撃を行った際、それを「素晴らしいことだ」と称賛し、「すべての責任はイスラエルにある」とする声明を、30を超える学生団体が連名で発表したのは、彼ら人文系急進派の学生たちだった。

 だが彼らは、理系学部のように連邦政府の研究資金に依存しているわけではない。だからドナルド・トランプがハーバードへの資金援助を打ち切ったとき、実際に影響を受けたのは、人文系の過激派ではなく、理系や医学部に所属し、むしろ共和党を支持する人々だった。



アファーマティブ・アクションへの違憲判決

 トランプがハーバードを標的にした理由はいくつもある。

 ハーバードやコロンビアのような大学は、学生を処分することに消極的で、学生たちはデモの中で平然と規則を破る。コロンビア大学では、建物に不法侵入しても処罰されないことすらある。そうした状況を見て、トランプ政権は「行儀の悪い学生たちにはきちんと罰を与えるべきだ」と主張している。

 さらにトランプは、アファーマティブ・アクションのように、人種を理由とした差別が法律によって正当化されるべきではない、と主張している。2年前、連邦最高裁がアファーマティブ・アクションに違憲判決を下した以上、教育機関はその判断に従わなければならないということだ。

 ハーバード大の多くの教授たちは、過去20年間にわたって、自身は人種による差別の存在を否定しながらも、入試制度では大規模な差別を行ってきたと言える。そして判決後も「自分たちは人種差別をしていない」という体裁を保ったまま、従来の入試方針を続けたいと考えているのだ。

 差別問題は学生の入学にとどまらない。教授の採用や昇進の過程でも、意図的な人種的バイアスが存在している。たとえば、終身在職権(テニュア)への昇格や、名誉職への登用などである。

 象徴的な例が、2023年に黒人として初めてハーバード大学の学長となった政治学者のクローディン・ゲイである。彼女は本来、テニュアにふさわしい実績を持たない人物だった。それにもかかわらず、終身在職権を与えられ、さらにその後、明らかな能力不足であるにもかかわらず昇進を果たした。



“共和党支持”の教員

 もっとも人種に関しては、論文の引用数やテストの成績など、客観的で標準化された指標を用いることで、ある程度の評価が可能である。しかし、政治的傾向については事情が異なる。言論の自由に抵触するおそれがあるため、評価や判断がはるかに難しく、野放し状態になっている。

 このために厄介な問題が生じた。

 仮にハーバード大学が、人文学部に共和党支持の教員を採用することにしたとしよう。だがそれは事実上不可能なのである。そのような人材が大学院にほとんどいないからだ。

 考えてみてほしい。人類学の博士課程を修了するということは、大学の教員になるための訓練を受けたということだ。しかし人文系の世界は極めて左傾化しており、どの大学も保守的な候補者を採用しようとはしない。もしあなたが学部生で保守的な価値観を持っていたら、人類学の大学院に進もうとは思わないだろう。その先がないのだから。つまり、構造的に保守的な人材が育たない仕組みになってしまっているのだ。

 私の知るあるハーバード大の学生は、文学の必修科目で「父親から虐待をうけるレズビアンが主人公の漫画」を課題として与えられ、それについてタームペーパー(期末レポート)を書くよう求められたという。常識ある学生なら、こうした課題に強い違和感を覚え、学問への信頼さえ揺らぐのではないだろうか。

 これはハーバード大だけの話ではない。各地の人文系学部では、民主党を支持するリベラル派の教授が圧倒的多数を占めている。最新のある研究によれば、カリフォルニア大学バークレー校の歴史学科では、民主党支持者が31人に対し、共和党支持者はわずか1人。スタンフォード大学では22対0。この数字が示すように、完全なイデオロギーの偏りが存在する。

 このような状況下で、保守的な価値観を持つ学生は人文学を敬遠する傾向が強まり、今や米国で歴史学を専攻する学生は全体の1%にも満たないというのが現実なのである。



アメリカにおける人文学の衰退

 アメリカの人文系学部が常に衰えていたわけではない。かつてはみな、ドストエフスキーやジェーン・エアといった文学を読み耽ったものだ。いまや、それらはほとんど読まれていない。少なくとも、そうした古典文学や名著だけを読む学生は、もはや見当たらない。実のところ、ハーバード大学にシェイクスピアの講義がまだ存在するのかどうかもわからない。

 4年前、私が慰安婦問題に関する論文を発表し、激しい攻撃を受けた背景にも、このアメリカにおける人文学の衰退という構造的問題があった。

 わずか8ページの論文が、想像を超える激しい反発を引き起こすとは、私自身予想もしていなかった。欧米大学のいわゆる日本専門家らは、私の論文の撤回を要求し、大学による私への処罰まで主張した。慰安婦問題における「性奴隷説」や「強制連行説」は、彼らのイデオロギーにとって不可欠な要素であるらしい。自らの立場を守るため、異なる視点を封殺しようとする姿勢は、「学問の自由」そのものに対する暴力である。

 とりわけ、日本語の一次資料や膨大な二次研究に目を通せば、慰安婦問題をめぐる歴史の全体像は明確に見えてくる。しかし、それらの多くは英語に訳されておらず、英語圏の研究者にはアクセスできないのが現状だ。その結果、アメリカの日本研究者たちは、この問題について驚くほど無知だ。吉田清治の名前すら知らない者までいる。



日本語で会話をしない日本研究者

 多くの米研究者や学者は大学で日本語を学ぶが、最初の数年間は辞書を片手に新聞記事を読むのが精一杯で、記事の内容を正確に理解できるようになるまでに相当な時間を要する。仮に小学校4年生程度の日本語読解力に到達できたとしても、それに4年はかかる。そして多くの場合、彼らが到達できるのはそのレベル止まりである。

 日本語は、使わなければすぐに衰える言語だ。継続的に日本語に触れていなければ、40歳になる頃には、ほとんど読み書きができなくなる。もちろん彼らはそのことを認めようとはしない。実際、アメリカの日本研究者の間では、互いに恥をかかないよう、日本語で会話をしないという暗黙のルールすら存在しているほどだ。

 これは、海外で慰安婦像が次々と設置されている問題にもつながっている。たとえば、最近の英国帝国戦争博物館における「慰安婦の歴史」に関する展示がその一例だ。おそらく、韓国の慰安婦支援団体や関連する活動家が展示内容に関与したのだろう。
 
 こうした博物館は「調査を行った」と主張するが、実際のところ、それは「英語で読める範囲の文献に目を通した」という程度にすぎない。おそらく、英語で書かれた記事を3つか4つほど読み、「まあ、これで十分だろう」と判断して展示を構成してしまったのだ。

 では、我々はこの現実にどう向き合うべきか。

 まず、私のような立場にある学者は、米国内において積極的に英語での論文・著作を発信していかねばならない。それが責務である。そして何よりも人間として貫くべき姿勢がある。それは、真実しか語らない、真実しか書かないことだ。そしてそれを行っている限り、「いかなる攻撃を受けようとも、絶対に謝らない」ということである。



J・マーク・ラムザイヤー
  ハーバード大学ロースクール教授。
  1954年シカゴ生まれ、日本で育つ。76年、ゴーシェン大卒。ミシガン大で修士(日本学)、ハーバード大ロースクールで法務博士取得。カリフォルニア大ロサンゼルス校、シカゴ大教授を経て現職。専門は日本法。日本語著作に『法と経済学―日本法の経済分析』など。


デイリー新潮編集部
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「日本は戦争を総括していない」“戦後80年が巡ってくるのは天命だったはず”の石破茂首相のメッセージはどうなるのか?

2025-08-13 | いろいろ



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「日本は戦争を総括していない」“戦後80年が巡ってくるのは天命だったはず”の石破茂首相のメッセージはどうなるのか?






 8月15日の終戦の日が近づいてきた。ここで戦後80年の首相「談話」と「メッセージ文書」についておさらいしておきたい。混同しやすいからだ。SNSでは今も石破首相に「戦後80年談話を」という声があるが、発出する可能性は無い。それはなぜか? 時系列を追っていく。

 まず「談話」を出すには閣議決定が必要。戦後50年の村山談話、戦後60年の小泉談話、戦後70年の安倍談話のような、閣議決定を経たのが「首相談話」だ。


  



今年は戦後80年。石破首相は談話を出すのか?

 村山富市首相は日本による「植民地支配と侵略」に言及して「痛切な反省」「心からのおわび」を表明した。戦後70年の安倍晋三首相は「繰り返し痛切な反省と心からのおわびの気持ちを表明」してきたとした上で、「私たちの子や孫、その先の世代の子どもたちに謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」と談話を発出。

 今年は戦後80年。石破首相は談話を出すのか? 年明けから注目されはじめた。すると2月19日に産経新聞が『戦後80年談話 自民警戒 首相意欲、謝罪逆戻りも』と一面トップで報じた。

 前日の国会で「80年談話」について自民の稲田朋美氏から問われた林芳正官房長官は「発出するか否かは決定していない」「さまざまな観点から考えてまいりたい」と答弁した。石破政権が「肯定も否定もしなかった」ことから産経新聞は「自民党内に警戒感が広がっている」と書いた。「新たな談話を出せば、10年前の安倍晋三首相(当時)の戦後70年談話で終止符を打った戦後の謝罪外交に逆戻りする懸念があるためだ」とも。一面トップで大々的に書くことで「石破、まさか談話を出すつもりじゃないだろうな」という保守派の産経新聞によるけん制にも読めた。

 石破氏首相は果たして談話を出せるのか? すると3月末に新聞各紙が一斉に報じた。

『戦後80年談話 出さず 首相方針 自民保守派に配慮』(朝日新聞3月28日)

 読売新聞は《国内外で歴史認識を巡る論争を引き起こしかねないことを考慮し、閣議決定による「戦後80年談話」の発出は見送る方向で調整する。》(3月27日)。



石破政権が「談話」の代わりとして考えたのが…

 産経は《党内では「石破おろし」の雰囲気もくすぶる中で、首相は党内の火種を生むことは避ける方向に判断が傾いたとみられる。》(3月28日)

 というわけで、石破首相には終戦の日に「談話」を出してほしい、出すべきだという声を今もSNSで見かけるが、戦後70年の安倍談話の“上書き“になると言われた石破「談話」を出さないことは3月末の時点で確定的だったのだ。「保守派に配慮」は石破政権の10カ月におけるキーワードなのである。

 その石破政権が「談話」の代わりとして考えたのが「有識者会議」での戦争検証だ。読売は4月にも有識者会議を設けて議論に着手し、8月の成果公表を目指すと伝える。これがいわゆる「メッセージ文書」のことだ。閣議決定が必要ない「メッセージ」発出に切り替えたのである。媒体によっては「見解」とも呼ぶ。

 石破首相はせめて首相個人のメッセージ文書は出せるのか? それが最近の焦点だった。すると8月1日に朝日新聞が次の記事を出した。

【独自】石破首相の戦後80年メッセージ文書 終戦の日も9月2日も見送りへ

 メッセージ発出で保守派のさらなる反発を招き、「石破おろし」が加速しかねないと判断したという。またも自分の地位を守るための政局的な判断なのか?

 この記事が出たあとに石破首相に取材したジャーナリスト数人に聞くと「8月15日に関わらず本人は何らかの見解を出すと言っている」という。逆に言えば8月15日にはメッセージ文書は出せないのだ。有識者会議での検証はコメ問題や日米関税交渉、参院選などの対応で間に合わなかったなど物理的な理由もあったという。

 ただ、興味深いのは直近の石破首相は「朝日の記事が出た時点では石破氏は保守派に対して抗うモードに入っていました」(首相取材をしたジャーナリスト)という点だ。



注目したいのは石破首相の気分も徐々に変わるということ

 朝日新聞を読んだ人は誰もが、石破首相は保守派に配慮してずっと沈黙するのだと思う。私もそう読んだ。だが記事が出た時点では首相は石破おろしに憤慨していたため、

「8月15日は間に合わないけども文書を出す方向にしたい、となっていたのです」(同前)


  


 だったら最初からやろうよ石破さん、そういうとこじゃないの? とつい思ってしまう。一方で注目したいのは石破首相の気分も徐々に変わるということだ。報道や世論はやはり重要なのだと感じる。保守派に対していつまでも配慮しないモードにもなっている模様。そのモードになるのは少し遅すぎたのではと思えるが、

「もし8月中に退陣を発表しても実際の任務は9月まである。それまでにメッセージを残したいのでは」(同前)

 という。

 時事通信は8月2日に、

《首相は「80年は一つの区切りだ」として見解取りまとめ自体は諦めておらず、関係者によると、党内情勢を見極めながら、時機を粘り強く探りたい考え。ただ、党内の混乱が続けば、断念に追い込まれる可能性もある》

 と伝えた。いずれにしろ政局にらみなのだ。

 それにしても「日本は戦争を総括していない」と昔から総括にこだわっていたという石破氏にとって首相在任中に戦後80年が巡ってくるのは天命だったはず。しかし終戦の日に正面からやらず、最後っ屁みたいなタイミングでしかできないことに石破キャラを感じてしまう。

 広島と長崎の原爆の日でのスピーチは自分の言葉で話していたことを評価された石破首相。戦後80年メッセージにも自分らしさを出せるのだろうか?


◆◆◆

 文春オンラインで好評連載のプチ鹿島さんの政治コラムが一冊の本になりました。タイトルは『お笑い公文書2025 裏ガネ地獄変 プチ鹿島政治コラム集2』。

   




  1970年生まれ。長野県出身。
  時事ネタと見立てを得意とする芸風で、新聞、雑誌などにコラムを多数寄稿。TBSラジオ『東京ポッド許可局』『荒川強啓 デイ・キャッチ!』出演ほか、『教養としてのプロレス』(双葉文庫)、『芸人式 新聞の読み方』(幻冬舎文庫)などの著書がある。
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高市早苗氏が困惑する「参政党と同一」報道 遠のく女性初首相の座で注目される「8・15靖国参拝」

2025-08-12 | いろいろ



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高市早苗氏が困惑する「参政党と同一」報道 遠のく女性初首相の座で注目される「8・15靖国参拝」


  


高市首相なら野党との協議が難航する恐れ

 次期首相候補として必ず名前が挙がる高市早苗衆院議員(64)が苦戦している。

 永田町は自民党の参院選惨敗を受け“石破おろし”が過熱。本人は当面の続投を強調しているが、辞任のXデーは8月下旬ともいわれている。

 石破茂首相(68)が退陣となれば、次に待ち構えるのは自民党総裁選。高市氏は昨年9月、同じ舞台で石破首相と決選投票までもつれこんだが、悲願には届かなかった。

 次こそは――。そんな高市氏に対し、一部メディアからは“思想の危うさ”を懸念する報道が相次いでいる。なかには参院選で躍進した神谷宗幣代表(47)率いる参政党と結びつけるものもある。

「これに高市氏がとても困惑している。極右政治家のように扱われ、首相になった暁には『参政党と連立を組むのではないか』という憶測まで飛び交っている。高市氏が保守政治家なのは間違いないが、『日本人ファースト』を標榜する参政党は全くの別もの。彼女の周囲は火消しに躍起になっていますよ。参政党はホームページ上では『新日本憲法(構想案)』を公開しているが、そこには『主権は国』と読み取れる部分がある。いくら参院選で台風の目になったとはいえ、参政党とは組めないはずだ」(全国紙政治担当記者)

 それでも局地的に発生した「石破辞めるな」デモの参加者からは「高市首相の誕生」と「参政党との連立」を危惧する声が相次いだ。

 こうした状況は来たるべき総裁選においてマイナスに働くことは間違いない。自民党関係者の話。

「前回の総裁選で高市氏を担いだ麻生太郎最高顧問は、今回『次の衆院選で勝利できる体制を』と条件をつけている。彼女をトップにすれば、他党に流れた保守票のいくらは戻ってくるだろうが、野党との協議が難航する恐れがある。麻生氏が高市氏を担ぐかどうかは未知数。最近は高市氏よりマイルドな小泉進次郎氏や“コバホーク”こと小林鷹之氏を推す声が広がってきている」



「総理になっても靖国に行く」と明言

 また、政治評論家の有馬晴海氏も本サイトの取材に対し、

「高市氏が首相になって少数与党としてうまくいくのかといったら、他の党がついてこない。そうなると法案が通らないですからね。石破首相だから国会で法案の都度、維新や立憲、国民民主が協力して成立した。高市氏はやはり靖国問題が大きい。右翼の政治になんで加担しないといけないのかというのが野党の主張なんです。参政党や保守党、国民民主党の一部には彼女に対し『それでいいんだ』という声もありますが、国会運営を考えたら自民党の総理はリベラルでないと厳しい。そもそも高市氏が首相になったら参政党や保守党などに流れた右派の票が自民党に戻ってくるかといったら、それは難しいでしょうね」

 と話す。

 8月15日には終戦記念日が控えている。今年は太平洋戦争終結から80年のメモリアルイヤーだ。

 高市氏は毎年欠かさず秋の例大祭りや終戦の日に靖国神社を参拝してきた。今年も4月22日の春季例大祭に合わせて、靖国神社に足を運び「衆議院議員 高市早苗」と記帳し、私費で玉串料を納めた。参拝後、高市氏は記者団に対し

「祖国を守り抜くことの困難さに直面している中で、国策に殉じられた方々の御霊に対して、心から深く感謝の誠をささげた」

 と語っている。

「高市氏が8月15日にどうするか。昨年9月の総裁選では『総理になっても靖国に行く』と明言したことが、最後に響いた。総裁選後、高市氏は党の重鎮から『総理になりたいのなら靖国の話はするな』とクギを刺されたそうだ。これからどうバランスを取っていくか見ものだ」(永田町関係者)

 高市氏は昨年11月に出演したインターネット番組で、総裁選の敗因に靖国参拝と選択的夫婦別姓に反対したことを挙げ

「そこは自分で反省していないので。また叱られるでしょう」

 と語っている。額面どおりに受け取れば、今年も終戦記念日に参拝するだろう。

「行かなければ、高市氏を支持する保守層を落胆させることになる。行ったら行ったで、中国などを念頭に、国際社会との関係性を危ぶむ議論が起きる」

 とは冒頭の全国紙記者。

 参院選の応援演説で

「私なりに腹をくくった。もう1回、党の背骨を入れ直す。そのために戦う」

 と発言した高市氏。永田町では一番乗りで自民党総裁選に意欲を見せたと受け止められたが、昨年のような追い風は吹きそうもない。憲政史上初の“女性宰相”への道は遠く、険しそうだ――。



PHOTO:鬼怒川 毅
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歴史を知らないと思わせた参政党神谷代表の国会初質問  (抄)

2025-08-11 | いろいろ

ジャーナリスト田中良紹氏のヤフーニュースのコラムより

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歴史を知らないと思わせた参政党神谷代表の国会初質問


  


 参議院選挙で大躍進を遂げた参政党の神谷宗幣代表が国会で初質問を行った。フーテンはメディアが騒ぐほど参政党の主張に突き刺さるものがなく、あまり関心を持たなかったが、国会デビューということでテレビを見た。

 神谷氏の第一問は赤沢亮正経済再生担当大臣に対する「トランプ大統領はなぜ急にこのような関税交渉を仕掛けたのか」だった。赤沢大臣は「(米国にとって)貿易赤字がある国というのは不公平であるいう考えが根底にあり、産業が空洞化して雇用を失った米国内の忘れ去られた人々のために米国の製造業を復活させたいという強い思いがある。

そして製造業の米国回帰を復活するとともに、関税を課すと各国に警告することで製造業の米国回帰を促すとともに、対米関税の引き下げを促し、結果として米国からの輸出が増え貿易赤字が減るとの見通しを持っている」と答弁した。模範的な官僚答弁である。

 すると神谷代表はアルゼンチンを例に挙げながら、「ミレイ大統領はトランプ大統領の政策に同調して世界保険機構(WHO)からの脱退を決めたりして関税交渉を有利に進めているように見える。石破総理はトランプ大統領から政策を一緒にやろうと言われたことはないのか」と石破総理に質した。

 石破総理は当然のことだが「そんなことはございません」と答えた。そこで分かったのは神谷代表がこの関税交渉を一方的で理不尽な不平等条約の押し付けと考えていることである。そしてそれを解決するにはトランプにすり寄って政策で同調するよう促しているのだった。

 フーテンの認識とあまりに違うので驚いた。米国が世界各国に対し不平等条約を一方的に押し付けることなどできるはずがない。各国は「国難だ」と反発しながらも、米国との交渉に応じているのは、それなりの根拠があるからだ。

 どうも参政党は第二次大戦後の世界の歴史と、日米関係の真相を知らないと思った。世界の歴史というのは「ブレトン・ウッズ体制」のことを言う。日米関係の真相というのは吉田茂の「狡猾なる外交術」のことだ。戦後の日本がどれほどずる賢く米国の富を吸い上げ、米国に損害を与えてきたかを知らない世代が国政政党を作り、それが参議院選挙で大躍進を遂げた現実を突きつけられた思いがした。

 まず米国が世界各国に高関税を課すというのは、歴史をさかのぼれば珍しい話ではない。米国は1913年まで恒久的な所得税を国民から取らなかった。財政を関税で賄っていたからだ。マッキンリー大統領の時代は世界各国に対し60%の高関税をかけていた。つまりそもそも米国は高関税の保護貿易国だった。

 米国の南北戦争は工業地帯を持つ北部と農業が主体の南部との戦争だが、欧州に比べて新興工業国だった米国の北部は保護貿易を主張し、一方、奴隷を輸入して農作物を作り、それを欧州に輸出していた南部は自由貿易を主張した。北部が戦争に勝って米国は保護貿易国になる。そして第一次大戦の直前まで米国は国民から所得税を取らなかった。

 それまで米国は「孤立主義」で他国の戦争に関わらなかったが、民主党のウッドロー・ウィルソン大統領が方針転換した。民主主義を広めることを米国の使命と考え、民主主義のために欧州の戦争に参戦し、「世界に関与」することを始めたのである。それは第二次大戦の時代に引き継がれ、第二次大戦末期に日本とドイツと戦っていた連合国は、ニューハンプシャー州のブレトン・ウッズに集まり、戦後の国際秩序を話し合った。

 その結果、保護貿易が戦争の原因になったとの分析から自由貿易を目指すことになる。また金(ゴールド)を一番持っていた米国のドルを基軸通貨にして、金の裏付けのあるドルと各国通貨の交換比率を定めた。ブレトン・ウッズ体制で米国は世界各国にドルを供給する役割を負った。つまり米国は各国からどんどん輸入してドルで支払い、また冷戦の始まりによって西側世界の安全を守る軍事大国になる役割が宿命づけられた。

 世界は自由貿易を目指すようになったが、それは米国にとって貿易赤字の増大を意味する。そのためブレトン・ウッズ体制は71年までしか続かなかった。ニクソン大統領は金の保有量が減ってドルと交換できなくなったことを理由に突然金とドルとの交換停止を宣言した。第一次ニクソン・ショックという。

 宣言した日が日本の終戦記念日にあたる8月15日であったことから、米国の対日貿易赤字が巨額になりすぎたからではないかと噂された。それほど日本は米国への輸出を集中的に増やし、高度経済成長を謳歌していた。この時に世界はブレトン・ウッズ体制に代わる仕組みを考え出さなければならなかったが、ドルの基軸通貨を変えないまま変動相場制に移行して、米国が軍事と経済の両面で世界の面倒を見る仕組みは継続された。

 次に日米関係の真相を解き明かす吉田茂の「狡猾なる外交術」について説明しなければならない。吉田茂の口癖は「米国に軍事では負けたが外交で勝つ」だった。つまり米国を打ち負かそうと考えていた。そのため「金のかかることはすべて米国にやらせる」と考えた。それを社会党や共産党など野党を利用する手法で実現した。例えば吉田が総理に就任した時、日本は食糧難時代で餓死者が相次いだ。食料を供給しなければならないが吉田は金のかかることは米国にやらせようと考える。

 吉田の思惑通り共産党と社会党が「食糧メーデー」を企画して皇居前広場に25万人を集めた。これにマッカーサーは驚き、米国が食糧援助を開始した。それと同じことを吉田は憲法9条を巡ってもやった。国際法で自衛の軍隊を持つことは認められている。ところがマッカーサーは憲法草案に日本に軍隊を持たせず、交戦権も否定する9条2項を挿入した。

 「金のかかる軍事はすべて米国にやらせる」と考える吉田はこれを受け入れ、野党に護憲運動をやらせた。そして米国に対し「米国が日本に対する軍事要求を強めれば、政権交代が起きてソ連と近い政権が日本に誕生する」と脅した。しかし憲法改正は3分の1の議席で阻止できる。社会党は3分の1の議席しか目指さない。過半数の議席が必要な政権交代は起きないのである。

 これに米国は騙された。そのために国民も騙された。国民は社会党や共産党を野党と思い込んだが、それよりも日本が金のかかる軍事を米国にやらせ、日本が経済復興に集中する体制を作るための「狡猾なる外交術」だったのである。

 こうして日本では表で与野党が対立しているように見せながら、裏ではしっかり手を握り、戦時中に作られた統制経済体制を国民が一体となって推進した。統制経済体制は岸信介ら「革新官僚」がソ連の5か年計画を下敷きに作ったから共産主義体制に近い。

 株式市場で金を集めて事業を起こすのをやめさせ、銀行から金を借りて起業させ、銀行が企業に役員を送り込む。その銀行を大蔵省が監督する。国の政策は大蔵省を通して銀行に、銀行から企業の隅々に行き渡る。

 ・・・・・。



       この記事は有料記事のため抄録です。
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日本を米国の価値観の奴隷にした「安倍戦後70年談話」を巡る攻防が始まる

2025-08-10 | いろいろ

ジャーナリスト田中良紹氏のヤフーニュースのコラムより

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日本を米国の価値観の奴隷にした「安倍戦後70年談話」を巡る攻防が始まる


  


 全ての衆議院議員が参加して行われる国会の総理指名選挙で選ばれた石破総理を辞めさせるには、本人に「辞める」と言わせる以外に方法はない。しかし石破総理は現在のところ続投に強い意欲を示している。そして反石破勢力の「石破おろし」には迫力がない。国家国民のために自分の身を滅して引きずりおろそうとする者がいない。メディアに連日「石破おろし」を報道させているだけだ。

 昔、「三木おろし」というのがあった。74年に月刊『文芸春秋11月号』が田中角栄総理の「金脈」を暴いた。政治的混乱を回避するため田中が退陣を表明した後、椎名悦三郎副総裁の裁定で直後の12月に弱小派閥の三木武夫が総理に就任した。三木は地元の徳島選挙区で三木派の議員が田中派の新人後藤田正晴に公認を奪われた遺恨から総理に就任するや田中追い落としを始めた。「阿波戦争」という。

 76年2月に米国議会でロッキード事件が発覚する。すると三木はそれを田中追い落としに利用しようとした。これに椎名が怒り、自民党の3分の2の議員が挙党体制確立協議会(挙党協)を結成して「三木おろし」に動いた。三木を支持するのは同じく弱小派閥の中曽根派だけである。

 三木は自民党の大勢に抵抗し、中曽根派の稲葉修が法務大臣であったことから東京地検特捜部に田中を逮捕させる。これで挙党協の「三木おろし」はさらに激しさを増した。法務大臣の逆指揮権発動だと言われた。それでも三木は総理を辞めず、ロッキード事件発覚から10か月後の衆議院議員の任期満了まで総理を続けた。

 衆議院議員の任期満了になれば衆議院選挙をやる必要がある。衆議院選挙をやればその後に国会で総理指名選挙をやらなければならない。それまで三木は続投したのである。

 これからわかることは自民党内の数の力で総理を辞めさせることはできない。総理本人が「辞める」と言わなければ衆議院議員の任期満了まで続投することができる。現在の衆議院議員の任期は3年後の10月まである。理屈の上ではそれまで石破は続投することができる。

 これが日本政治の現状である。ただし「石破おろし」の攻防は最大の山場が8月15日の終戦記念日に訪れるだろうと私は思っている。石破総理が「戦後80年談話」を出して安倍総理の「戦後70年談話」を乗り越えるかどうかが焦点になる。反石破勢力はそれをさせないためメディアに「石破おろし」を過大に見せ、国民の錯覚によって石破総理を追い詰めようとしている。

 私は以前のブログで、昨年の衆議院選挙による与党過半数割れを安倍政権の負の遺産を解消するためだと書いた。安倍政権の負の遺産とは、第一が「一強他弱体制」が生み出した政治の歪みである。

 政権交代を可能にすることを目指したはずの「政治改革」が、小選挙区比例代表並立制の導入で逆に多党化をもたらし、その結果として安倍政権は「一強他弱体制」を作り野党を無視する強権政治と「モリ・カケ・サクラ」に代表される権力の私物化を果たした。それが財務省職員を自殺に追いやり、あってはならない公文書改ざんをもたらす。

 その「一強他弱」を実現するために用いられたのは、旧統一教会というカルト集団に自民党が選挙を依存し、解散・総選挙を頻繁に繰り返す手法だった。それによって旧安倍派は膨張し、最大派閥として日本政治を牛耳る体制が確立された。

 これを転換するには選挙によって自民党を敗北させるだけでは足りない。自民党が敗北しても最大派閥が解消されない限り、いずれ「一強他弱」は復活する。そのため安倍晋三と最も距離のある石破茂が総裁選で逆転勝利するシナリオが書かれた。

 さらに与党が過半数割れを起こし、「少数与党体制」になることで野党が協力しない限り政権運営できない仕組みが作られた。こうして石破は安倍とは真逆の政治リーダーの役割を負わされたのである。従って石破がやらなければならないことは野党の主張を取り入れて与野党が協力する政治、日本政治が未だ経験したことのない政治文化を作ることである。

 安倍政権の負の遺産の第二は、アベノミクスが生み出した現在の物価高である。野党は物価高の原因を確かめもせずに減税を要求するが、物価高の要因は輸入物価の高騰にある。輸入物価の高騰は円安だからだ。アベノミクスはデフレから脱却するため意図的に円安を目指し、それによって輸出産業を儲けさせ、その富がしたたり落ちる構造を実現しようとした。

 そのため日本経済はマイナス金利という世界に例のない異常な世界に突入する。そしてそれでもデフレは解消しない。なぜならデフレは米国によってもたらされ、米国に追随した小泉純一郎政権によって深化させられたからである。

 日本の高度経済成長は銀行を経済の中核に据え、政権交代のない政治と大蔵省と通産省という強力な官僚機構が一体となって米国から富を吸い上げることで実現した。その結果、85年に日本は世界一の債権国、米国は世界一の債務国になり、89年の世界の時価総額ランキングでは日本の銀行がベスト10に7行も入った。

 軍事を米国に委ねた日本は持てる力を経済に集中して米国の製造業を駆逐し、ラスト・ベルト(さび付いた工業地帯)を作って大量の労働者を失業させた。これに対する米国の怒りは尋常ではない。しかし米国が日本に逆襲するのは難しくなかった。憲法9条2項で軍事を米国に委ねているため日本の生殺与奪の権は米国に握られている。

 米国は85年に円高を要求して日本の輸出産業に壊滅的打撃を加え、86年には世界シェアの半分を占めていた半導体産業をやめさせ、87年に日銀に低金利を要求して日本経済をバブルに導いた。バブルが弾けると日本経済の中核にあった銀行は軒並み不良債権を抱えて没落した。さらに追い打ちをかけるように米国は国際決済銀行を通じ、銀行の自己資本比率を高めないと国際業務ができないようにルールを変えた。

 それまでの銀行は企業と利益を共有していたが、このルール変更で銀行は企業から貸し剥がしをせざるを得なくなる。これによって銀行の融資で事業を起こした日本企業はバタバタと倒産することになる。これが橋本龍太郎政権下で起きたデフレの始まりである。

 そして小泉純一郎政権は米国の言いなりになりさらにデフレを深化させた。米国の命令で銀行に不良債権処理を急がせ、日本の銀行を米国のハゲタカファンドの餌食にした。その一方で「労働力の流動化を図れ」という米国の命令に従い非正規労働者を増大させた。企業は正規労働者を減らし低賃金政策を採ることで生き延びようとし、低賃金政策がデフレの負のスパイラルを生んだ。

 つまり9条2項を廃し対米自立を図らなければ日本は「失われた時代」から脱却することができない。しかし安倍政権はまるで逆に動いた。米国の価値観に迎合し、骨の髄まで米国に従属する方向に動いたのである。それを象徴するのが15年8月に発表された「戦後70年談話」だ。

 米国でトランプ大統領が誕生した直後に保守の論客である佐伯啓思・京都大学名誉

教授は「米歴史観と戦後70年談話」と題する文章を新聞紙上に発表した。佐伯は「70年談話」を次のようにまとめている。

 「19世紀に西洋列強による植民地支配の圧力に抗して独立を保った日本は、急速な近代化に成功した。しかし、第一次大戦後、平和主義へと向かう世界の動向を読み違えて、軍事力による海外進出に突き進み、国際秩序への挑戦者となった。そこで、この過ちを痛切に反省した戦後日本は、自由や民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値と平和主義に立ち。国際秩序の形成への積極的貢献を国是とした」。

 佐伯はこの談話を「良く練られている」と評価する一方、「この談話はあくまでも米国の歴史観に従ったものだ」と鋭く指摘した。そして米国は第一次大戦後、「孤立主義」から「世界への関与」と方向転換を行い、その理由を「自由や民主主義を守り、国際秩序を形成するため」と解説する。

 米国はこの方針を第二次大戦後も、冷戦時代も維持し、人類普遍の価値観を世界化することで世界の平和を達成し、その使命を負っているのは米国だと考えてきた。安倍元総理の「70年談話」はこの米国の歴史観を前提に積極的な国際協調を図るという日本の立ち位置を示すものだ。

 ところがこの10年で世界も米国も大きく変貌した。それを決定的にしたのがウクライナ戦争の勃発とトランプ大統領の登場である。ウクライナ戦争をもたらしたのは民主主義による世界統一を目指した米国の価値観だ。ロシアの専制主義を打倒しなければ世界は平和にならないとする米国の価値観がウクライナのゼレンスキー大統領を操ってロシアのプーチン大統領を挑発しウクライナ戦争は起きた。

 ところが世界ではウクライナ戦争で欧米を支持する国は少ない。新興国のほとんどは欧米から距離を取ろうとしている。そして米国民も第一次大戦以来の米国のリベラルな価値観より、自国第一主義を訴えるトランプに共鳴し、自由や民主主義、人権、法の支配に対する強い不信感を表明したのが昨年の大統領選挙だ。

 米国自身が米国の価値観を裏切りつつあるときに、米国の歴史認識に立ち、米国の価値観で日本人を染め上げようとした「安倍戦後70年談話」をそのままにして良いのだろうか。しかし現在「石破おろし」を仕掛けている側は明らかに石破に「80年談話」を出させなくする目的で石破を辞任に追い込もうとしている。

 それは安倍の岩盤支持層と言われる「日本会議」が、村山富市総理の「戦後50年談話」を打ち消すため「70年談話」を出させた経緯があるからだと『日本会議の研究』(扶桑社)の著者である菅野完が「月刊日本8月号」に書いている。

 村山談話は終戦から50年後の95年に自さ社連立政権の村山総理が発表した。この談話で村山は日本の植民地支配と侵略行為がアジア諸国の人々に多大な損害と苦痛を与えたことを反省し、謝罪している。以来、05年には小泉総理が60年談話で、その後の歴代政権もこの談話を踏襲してきたが、15年の70年談話では安倍が侵略を明言せず、村山談話とは異なる表現も見られた。

 菅野によれば、そこに村山談話を打ち消したい「日本会議」の影響がみられるという。そのため菅野は石破が80年談話を出すことで村山談話の歴史認識に立ち返り、総理としての有終の美を飾るよう主張している。

 しかし「村山談話」は連立政権だからこそできた。内容には自民党も責任を負っている。自民党の橋本龍太郎や加藤紘一、野中広務などが作成のため奔走した。同時に社会党も自衛隊の存在や日米安保体制を容認した。表の建前とは異なり自民党は右翼的でなく、社会党も左翼的でないことが証明された。

 民主主義を至上の価値としてきた米国は政権交代するたびに国内の分断が激しくなり、ついには第一次大戦以来のリベラル・デモクラシーに不信感を抱く国民が多くなった。そして第二次大戦以降のブレトン・ウッズ体制、つまりドルを基軸通貨として米国が世界の軍事と経済の面倒を見ることにも限界を感じている。

 トランプが求めているのは対米自立である。それなら石破は米国の価値観によらない談話を書くべきだ。私は10年ばかりワシントンに事務所を置いて仕事をしたが、米国の民主主義には違和感を抱いてきた。人間を自然より上位に置くためだ。彼らは自然は人間に征服されるべきだと考えている。

 砂漠で生まれた宗教がそうさせているのだろう。しかし我々は四季を持ち、豊かな自然にはぐくまれて人生観を養ってきた。樹木にも岩にも小石にも神の心が宿ると思い、決して神にすがって生きようとは思わない。神を敬うが神から命令されたり断罪されたりはしない。

 米国の民主主義は先住民族を皆殺しにした。差別もなくなることはない。それを人類普遍の価値だと思うことはもうやめた方が良い。米国が大きく変貌しつつあるとき、政権交代を金科玉条の目標にする政治も考え直してみるべきだ。「選挙で勝てない総理を代えろ」と叫ぶのも良いが、選挙に勝たなくとも与野党が協力する政治のどこが悪いのかと思う。

 日本の戦争責任が注目される8月、「石破おろし」は最大の山場を迎えると思う。(文中敬称略)
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