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世界記憶遺産に登録!山本作兵衛の原画を間近で…

2011年06月13日 | 日記
 筑豊の炭鉱を記録した炭鉱画家・山本作兵衛(1892~1984年)の絵や日記がユネスコの世界記憶遺産に登録されたことを記念し、北九州市八幡東区の市立自然史・歴史博物館(いのちのたび博物館)で今月4日から、所蔵する7点の特別展示が始まりました。作兵衛の原画が多数展示している田川市(福岡県)まで足を運ぶのは遠いなぁ…・と思っていた私は、在住する市内で作兵衛の絵が見られることを知り、週末にさっそく足を運びました。

 世界記録遺産は、ユネスコ(国連教育科学文化機関)が1972年から始めた事業で、フランスの手書き版「人権宣言」やベートーベンの交響曲第九番直筆楽譜、「アンネの日記」など193件が登録されています。世界遺産とは違って、自治体や個人でも推薦ができ、国内では福岡県田川市が昨年、山本作兵衛の記録画や日記など計697点を初めて推薦しました。

 すぐに目を引くのは、旧市立歴史博物館からの依頼で1975年に制作した2枚の大作。ともに縦93センチ、横148センチで、数ある山本の作品の中でも最大級です。「炭鉱風俗絵(坑外)」は、坑内でカンテラの明かりを頼りに石炭を掘るふんどし姿の男と、上半身を露にした腰巻き姿で石炭を木箱に入れる女を描いた絵。左端に「1975年 88才」と完成日の年と自身の年齢が記されていました。その横に並ぶ「炭鉱風俗絵(坑外)」は、石炭を積んだ貨車を引く馬や坑の支柱に使う丸太を運ぶ坑外の様子が鮮やかな色で克明に描かれていますが、実際には坑内はうす暗く、山本の記憶と想像によるものです。

 ほかの5枚は、坑内の炭層にのみを当ててハンマーでたたく男や、独身炭鉱員が共同生活する大納屋などを描いた墨絵の原画。明治中期の筑豊の炭鉱を色鮮やかに表現した作品は、日本の近代化を支えた労働の実態を伝えています。

 山本作兵衛は現在の福岡県飯塚市生まれ。7歳頃から父について炭鉱で働き始め、採炭夫や鍛冶工として、筑豊地域の中小の炭鉱で働きました。63歳で炭鉱の警備員として働き始めた頃、孫らに当時の生活を伝えようと炭鉱の絵を描き始めるようになりました。92歳で亡くなるまで描いた絵は2千枚近いといわれています。

 いのちのたび博物館での展示は9月5日(月)まで。田川市の石炭・歴史博物館など、他施設でも作兵衛の絵を見ることができます。