諏訪山岳会公式ブログ

諏訪地域の山好き、クライミング好きが集まって、ウラヤマからヒマラヤまで四季を通じてオールラウンドに活動しています。

広河原正面壁

2017年09月02日 | 八ヶ岳 マイナールート
ルート:広河原沢正面壁
日時:8月27日
メンバー:N原、U山
 
阿弥陀岳頂上直下のマイナールート、広河原沢正面壁に行ってきました。
短く(2P)寝た壁ですが、ブッシュの無い岩はわりとしっかりしていてそこそこ快適。
プロテクションが貧弱なのが玉に瑕ですが、阿弥陀南稜から頂上への寄り道ルートとして悪くないと思います。


<広河原正面壁 中央稜から撮影>

今回の広河原正面壁は7月の中旬から実に4度目の山行でした。
 
初回の7月中旬は、入山の車中で、急遽、前日からの遭対活動に加勢することになり、阿弥陀南稜へ転進して怪我人の搬出をサポート。
2度目の8月初旬は、欲を出して広河原沢正面ルンゼからアプローチしようとしたら沢を一本間違えて3ルンゼを登ってしまい、P3に出たところでモチベーションダウンしてそのまま下山。
お盆明けの前回は天候すっきりせず、ガスで岩場の全貌が見えない中、20数年前の記憶を頼りにロープを伸ばしてみたものの、どこがラインなのか判然とせず、やむなく登攀を中止して下山。
 
そして今回の4回目。
そこまでして登りたいルートなのか?と問われればその真逆なのだが、会の創立50周年の記念登山の一環として、どうしても”片づけて”おきたいルートという事情があり、半分、義務感で登りに行ったというのが正直なところです。


アプローチは前回に引き続き御小屋尾根を登りました。
梅雨明けと同時に梅雨らしくなった今年のうっとおしい天気も変わり目を迎えたようで、久々のからっとした青空の下、気持ちよく歩きました(前回同様、N原さんには大幅に引き離されましたが・・・)

<御小屋尾根から御岳方面 久々に良い天気>

阿弥陀頂上を超え、南稜を下ると右手に広河原沢正面壁が見えますが、ルートがあるフェースは沢を下って壁を廻り込まないと見えません。
 
P4のトラバースを下ったところ(登りの場合はトラバースの入口)から這松帯を少し下り、そのまま、3ルンゼ左俣(?)を下ります。

<下降点>

前回は下り始めて間もないところから見えるフェースにロープを伸ばしましたが、先述したとおり、ラインが判然としなかったので今回はさらに下って岩稜を廻り込んでみたところ、登山大系の概念図に似たフェースが出現。

<広河原正面壁>

ただし、明らかに”これだ”という確信も持てないので、少し登って様子をみることに。
ちなみに、P4からロープを出したところまで10分程度で着きました。
 
1P目 Ⅱ級 25m
大まかな段々の岩稜を登る。様子がわからないので念のためロープつける。切りのいいところがあったのでここらでピッチを切るかとあたりを見回したら目の前のフェースにピトンが1本。よくよくみたら足元にボルトが1本。明らかに、どこかのルートに乗っている模様。

1P目>

2P目 Ⅲ+ ~ Ⅳ 50mめいっぱい(伸ばしすぎ)
5mほどリッジを登るとバンドに出てフェースが広がる。
浅打ちの残置が見える浅い凹角(コーナー)に入るとそれに沿って残置が続きどうやらルートに入った模様。(登山大系では明瞭なクラックがあるような概念図になっているがそれとは随分イメージが違う。)残置は大半が浅打ちで、補強のための打ち足しも半分ぐらいしか入らないので連結してランニングを取る。(今後、登る方は歯が短いピトンを用意するのがいいと思う。)

<2P目 凹角を辿る>

いったんバンドに出ると、ラインから左に外れたところに左ルート(?)の朽ちかけたボルトあり。
バンドを少し右トラバースし凹角の続きっぽいラインを左上するとボルトが2本並んだテラスだが、諸々観察の結果、このテラスでピッチを切る気にはなれず、引き続き登る。テラスの上は凹角で直上しようかと思ったが中間が脆そうでパス。少しでもランニングを増やそうと、いったん左に外れてカムを取り、テラスに戻る途中でホールドがガバッとはずれ危うくバランスを崩しかけた。

<2P目 テラス近辺>

テラスの右手を覗くと残置類は見えないが、岩はしっかりしていそうなのでそちらにロープを伸ばす。ちょっとランナウトしたが岩はしっかりしていて上部でカムも取れて一安心。残り5mのコールがかかるが、その先は傾斜も落ちてどこでもビレイできるだろうとたかをくくって登ったところあまり良いところが無く、結局、ロープが完全にいっぱいになったところでなんとか這松からビレイをとって終了した。ピトンを打つ手間を惜しまずにもう少し下で切ったほうがよかったかも。

<壁を抜けたところ>

念のため、その先もロープをつけて20mほど登ると、頂上の人が見える安全地帯にでて無事終了。ロープを解き、久々の山岳展望を楽しみながらの大休止後、中央稜経由で下山した。

<休憩場所から広河原奥壁を望む>

今回は20数年ぶりということでルートの様子を忘れてしまっていたので念のため一般路からアプローチしたが、わかってみれば、2ピッチと短いルートなので、一般路を辿って、わざわざそれだけを登りに行くまでもないというのが正直なところ。
阿弥陀南稜のすぐそばにあるので、南稜から頂上への寄り道ルートとしてちょうどよいのではないかと思います。
 
N原さんをはじめとして、これまでの山行にお付き合いいただいた方々、どうもありがとうございました。
 
 
(追記)
今回登ったのは、多分、登山大系の正面ルートの可能性が高いが、概念図と見比べると実際とは異なる点が多々あり違う可能性も高い。
 
また、私が20数年前の冬に登ったラインは、
・阿弥陀の南稜から迷うことなくすぐに取り付けた
・明瞭なフィンガーサイズのクラックを右上して這松の生えた小さいテラスに上がった
・その先、アイゼンが滑りそうなスラブを左上した
・最後は被った凹角を抜けた
という記憶があり、今回のラインとは明らかに異なると思う。
 
上記の記憶は、当会で1973年に開拓したルート(下図)の2P目と一致しており、これは、登山大系の掲載ルートとは異なるように思う(両ルートの関係が不明)。
<1973年のルート>

お盆明けに来たときは、上記の記憶を頼りに遠目に見て右上するクラックのように見えるところ(今回のラインよりずっと右)を登ろうとしたのだが、そこはクラックというよりは切れ切れに続く割れ目という感じでおまけに、土が詰まって草が生えていたので登攀は見送った。

今回登ったラインと登山大系に掲載されているルートの関係、さらには20数年前に登ったラインや当会の73年のラインの関係については、不明な点が多々残りすっきりしないので、今後、時間をみて明らかにしていきたいと思います。
(情報を持っている方がいたら教えてください)


最新の画像もっと見る

コメントを投稿