セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

月花酒のもと

2011年09月09日 23時26分18秒 | クエスト184以降
 知り合いに届け物を頼まれ、とある小さな村を訪れていたミミとサンディ。到着が遅かったので、辺りはいつしか夜になっていた。
 用事を済ませ、ミミが何気なく空を見上げると、月が綺麗に輝いていた。
「今日は月がとっても綺麗」
 ミミが微笑んで言うと、サンディは腰に手を当て、首を傾げて見上げた。
「んー、確かにキレイだけどさ~、アタシの好み的には、もうちょいデコっててほしいトコなのよね~」
 とはいえ、半月より少し満ちた形の月の輝きは、とても美しかった。
 月を眺めながら、慣れない村を散歩していると、やがて村の境界から出て、畑らしいところにやってきた。だが、月明かりの中よくよく見ると、そこに生えてるものは無惨になぎ倒され、もしくは引きちぎられていた。
 そして、その畑の真ん中で、男性が頭を抱えていた。
「うわ~、ほぼ全滅だあっ・・・!いったいどうしたらいいんだあっ!」
 こんな状況に行き合ったら、声をかけるのがほぼ習性化しているミミである。彼女は、畑の傍らで立ち止まって、男性に声をかけた。
「何があったんですか?」
 何かがあったことはわかる。この畑の惨状を見れば。問題は、その原因は何か、ということだ。
「花が・・・全部やられちまったんだよ」男性は溜息をついた。「せっかく明日、収穫しようって時に」
「お花畑だったんですか?」
「まあな」男性は、倒れた作物の一本を引き抜いた。「『まんげつそう』の畑なんだがね」
 ミミが更によくよく見ると、どうやら道具屋で売っている馴染みの部分の、根や茎部分はだいたい無事なようだった。彼女のその視線に気付いた男性は、続けてこう答えた。
「確かに、道具屋に納めるには何ら問題ないけども。花が全部やられちゃってね 」
「花が必要だったんですか?」
「そう。この村ではね、この時期は、まんげつそうの花を酒に浮かべて飲んで、長寿を願う習慣があるのさ」
「そうなんですか・・・。でも、いったい誰がこんなことを」
「『しびれあげは』のしわざだよ。奴らは、何故かこの花が大好物なのさ」
 それから男性は、また大きな溜息をついた。
「ああ、今年は月を眺めながらの、まんげつそう酒宴は無理だなあ・・・。せめて、『つきのめぐみ』があれば、花を浮かべたのと同じ味になるんだけども」
「つきのめぐみでもいいんですか?」
 ミミは微笑んで尋ねた。それなら、何とかなるかも。
「え、あんた、錬金ができる?材料さえあれば、たくさん用意するのも可能だって?そりゃ助かるよ!」
 男性は大喜びでまんげつそうをごっそり引き抜き、それをどっさりミミに渡した。
 こうしてミミは、クエスト「月花酒のもと」を引き受けた!

 さっそくルーラでセントシュタインに戻り、錬金を始めたミミ。「つきのめぐみ」を作るには、まんげつそうが三つ必要だ。そして錬金釜カマエルは、一度に九個アイテムを作り出すことができる。つまり、一度に二十七個のまんげつそうをせっせとカマエルに入れることになる。
「カマエル、大丈夫?」
 ミミはいくらか心配そうに尋ねた。
「お心遣いありがとうございますお嬢様。これくらい何でもございません」
 とはいえ、いっぺんに二十七個のまんげつそうを口に放り込むカマエル、少なくとも見た目はたいへんだった。リッカたちも、何事かと尋ねてきて、そして事情を聞いて交代で手伝い始める。
「ただいま・・・何だ?!」
 そこへ剣術指南から帰ってきたイザヤール、カマエルの前に積み上げられた「まんげつそう」と「つきのめぐみ」の山に、目をぱちくりさせた。事情を聞いて、彼もまた「つきのめぐみ」作成に加わった。
 いい加減飽きてきたサンディが叫ぶ。
「あーもう、あのオヤジ、いったいいくつ『まんげつそう』よこしたのヨー!」

 ようやく預かった「まんげつそう」を全て「つきのめぐみ」に錬金し、ミミは依頼人のところに戻ることにした。今度はイザヤールもついてきた。
「まんげつそうの花を浮かべた酒か。今年は飲めなさそうなのが残念だな」
「そうですね。でも、『つきのめぐみ』で同じ味になるそうですから」
 村に戻ると、ミミは依頼人に錬金した物を渡した。
「ありがとう、これで今年も行事ができるよ。お礼と言っちゃなんだが、今夜は月見しながら飲んでってくんな」
 もう夜もだいぶ更けていた。月は、先ほどにも増して、清らかな光を放っている。
 ミミとイザヤールは、グラスと酒を満たした瓶をもらい、酒宴を始めた村人たちの輪から少し離れた切株に並んで座り、月を見上げた。
「サンディは私と半分こしようね」
 そう言ってミミがサンディにグラスを差し出すと、彼女はニヤリと笑った。
「それより、イザヤールさんと半分こすればいーじゃん!間接チュー」
 そう言われてミミは真っ赤になった。
「それもそうだな」
「イザヤール様までっ・・・」
 ますます赤くなるミミ。
すると、いつの間に居たのか、可愛らしい小さな男の子が三人の傍に立っていた。
「楽しんでる?」
 彼はにっこり笑ってそう尋ねてきた。
 ミミとイザヤールが微笑んで頷くと、男の子は更に尋ねてきた。
「そこの妖精さんも?」
 酒の味見をしかけていたサンディは、それを聞いて、ぶっと酒を吹き出しかけた。
「ちょっと、なんでアタシのコト見えてるワケー?!」
 男の子はそれに答えず、えへへと笑うばかりだった。そして、彼は呟いた。
「君たちのおかげで、村のみんなもとっても楽しそうだよ。無事酒宴ができてよかった。ありがとう」
 そして彼は、手をふわりとグラスにかざした。すると、グラスの中に、花が浮いていた。「まんげつそう」の花だった。
「君たちの健康と長寿を願って」男の子は囁いて、ウインクした。「もちろん、妖精さんもね」
 ミミたちがあっけにとられて顔を見合わせている間に、男の子は姿を消していた。
「なんだったのヨ、あの子・・・」
 サンディが呟くと、ミミはグラスの中の花を見つめて、言った。
「もしかして・・・まんげつそうの精霊だったり、して」
「かもな」
「ヤダ~、二人ともロマンチスト~」
「サンディ・・・妖精の君が言うか」

 月が傾いてきた。改めてグラスを見ると、二つあるグラスのうちの片方には、花が二つ浮いていた。
「ほらほらバカップルでしなさいヨ、仲良く半分こ!」
 サンディは言って、花が一つだけ入っている方のグラスをぐっと一気に空けた。
 それを聞いてイザヤールは笑い、残ったグラスの中身半分と、花を一つ、一気にあおってからミミに渡した。
 ミミは少し恥ずかしそうに、だが幸せそうに笑い、ゆっくりと花と酒を口に含み、やがてグラスは空になった。

 ほろ酔いで見上げる月は、いっそう綺麗。

「う~、イッキしたらかえってキモチわるぅ~。そもそも、永遠ピチピチギャルのアタシが長寿祈願ってイミなくね?アタシ、帰る~」
 止める間もなく、箱舟に帰ってしまったサンディ。
 残された二人は、サンディの飛び去った跡を目で追ってから、月に視線を移し、そして・・・やがてまた、互いの顔を見つめ合った。
 村人たちは、酒宴に夢中になっている。そして、今宵は、月明かりが強いせいか、星も見えていない気がする。

 ほろ酔いで見上げる月は、いっそう綺麗。大好きな人と共に見上げるならなおさら。

 けれど。月のことは一瞬忘れて、互いの瞳を夢中で見つめる。

 少しでも長く、一緒に居られますように。

 願いを込めて、花の香りをまだ残した唇が、優しく重なった。〈了〉

コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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勉強になりました♪ (津久井大海)
2011-09-10 07:08:55
ちいはゲーマー様

おはようございま~す☆花言葉って、同じ花でもたくさんの種類があるんですね~☆
色によって違ったり、同じ花でも全く逆の意味があったり、って面白いですね。

重陽も、ニュースで見て思い出したという津久井(笑)
確かに、まだまだ陽の気が強そうな感じです、とか言って意味よくわかってんのか私w
おお、来年重陽の話書いてくださいますかもですか☆長期計画万歳♪v

いえいえ、コメント、全然迷惑かかっていないので、どうぞご安心くださいませ☆
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重陽の節句って (ちいはゲーマー)
2011-09-10 02:05:12
この日は陽の気が強すぎるため不吉とされて、それを祓う行事として
邪気を祓い、長寿を願って菊の花びらを浮かべたお酒を飲んだりするらしいですね



ちなみに菊の花言葉は種類や色によって様々ですが、何個か例を挙げると
[高貴],[女性的な愛情],[破れた恋],[私を信じてください]


そしてこれは私の勝手なイメージですが、個人的にこのお話に合いそうだなと思った花言葉は

[真の愛],[ろうたけなる思い]ですね


来年私も重陽の節句のお話を書こうかな?
( ^∀^)


・・・あっ
昨日のコメント、名前を記入し忘れにより
ご迷惑をおかけしてすみません・・・
_(;_ _)_
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