セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

滑らないお守り

2012年01月13日 23時34分47秒 | クエスト184以降
今週は間に合いました捏造クエストシリーズこと追加クエストもどき。明日からセンター試験だそうですね。まさか受験生の皆様がこんなサイトを閲覧している訳はないですが、応援の意味を込めて試験のお守り話を書かせて頂きました。モザイオ君がちょっとだけ登場。お守りそのものというより、それによる心理的安心感とか、贈ってくれた人の思いが大切なんでしょうね☆

 リッカの宿屋のスタッフの一員であり、宿屋協会凄腕エージェントでもあるロクサーヌは、最近は商売上手の方面でも優秀だともっぱら評判だ。優れた情報収集能力が、商売の秘訣の一つらしい。
 今日も彼女は、何やら情報を仕入れたと見えて、一人微笑んで頷いていた。
「こういう物も需要があるなんて・・・流行って本当にわからないものですわね」
「ロクサーヌさん」そこへ、たまたま通りかかったミミが首を傾げて声をかけた。「何が需要があるの?」
「あらミミ様。いいところにいらしてくださいましたわ」
 元々笑顔だったロクサーヌは、更に輝くように美しい笑みを浮かべた。この顔になったときは何か頼み事があるときだと、学習しつつあるミミである。
「実は最近、『ホワイトランサーの蹄鉄』が、お守りとして大人気ですのよ」
 ロクサーヌは説明を始めた。ホワイトランサーと言えば、アイスバリー海岸などに棲息している半白虎半馬とでも言いたくなる形状のモンスターだ。
「そうか、蹄鉄って、幸運のお守りだものね。・・・でも、なんで特にホワイトランサーなの?」
 ミミの問いに、ロクサーヌは「よくぞ聞いてくれた」と言わんばかりの笑顔になった。
「ホワイトランサーは、あの雪原を全く滑ることなく、ものすごいスピードで移動できますわよね。『全く滑らない』、ということで、試験を受ける方や、お笑い芸人の方に、最近ものすごく人気がありますの」
「なるほどね」
 ミミは感心して頷いたが、この後言われそうなことはものすごく予測できた。
「ですが・・・ミミ様ほどの強い冒険者の方ならともかく、一般の方がホワイトランサーの蹄鉄を手に入れるのは、不可能に近いですわ。めったに落としませんし」
 貴重品ということで、ますますお守りとしての評価が上がっているらしい。
「普通の蹄鉄をホワイトランサーの物と偽って売る輩もいるというウワサがありますけれど、このロクサーヌは、断じてそんな真似は致しませぬわ!」
 ここで、いつも笑顔のロクサーヌの顔が、珍しく少し厳しくなった。一瞬で笑顔に戻ったが。
「・・・ですから、ミミ様、仕入れを手伝ってくださると、たいへん助かりますわ」
 こうしてミミはクエスト「滑らないお守り」を引き受けた!

 ミミと当のロクサーヌの他に、依頼直後たまたまちょうどよく帰ってきてしまったイザヤールと、洗濯物を干す際の物干し竿の扱いをきっかけに、最近棍スキルを究めるのがマイブームのリッカが、今回参加することになった。
「棍スキルの『足ばらい』で根気よく転ばせれば、落とすことがあるそうですわ。予約注文もあって十個は必要ですから、よろしくお願い致しますね」
 ロクサーヌの言葉に、暖かそうな装備に身を包んだパーティ一同、気合いを入れて頷いた。
 エルシオン学院までルーラで行き、そこから徒歩でアイスバリー海岸に向かう。パーティの紅一点の逆、唯一の男性であるイザヤール、女性陣を吹雪から守る為に、本日先頭を歩いている。
「全員が冷たいよりは、効率がいいだろう」
 大丈夫だ、と笑って雪を踏み分けていく彼に、リッカとロクサーヌは「優しい~♪」と感心し、ミミは自分がどちらかと言えば小柄な為に吹雪避けになれないことを嘆いた。
「そんな顔をするな、ミミ」道中小休止の際、イザヤールは彼女にだけ聞こえる声で囁いた。「後であたためてくれ・・・いつものように」
 ミミの憂い顔が、みるみる嬉しいような、困ったような表情になる。そんな様子を眺めて微笑んでから、それにしても、とイザヤールは首を傾げた。
「語呂だけでお守りとしてそこまで欲しがるとはな」
「努力を尽くしたら、後は運ですもの。神様にお祈りするか、お守りを持つことで心の安定を得られるのなら、それでよろしいのではございません?」
「そうか、まあそうだな」
 ロクサーヌの言葉にイザヤールは納得し、気休めも無駄ではない、ということかと内心呟いた。・・・駄洒落でいいのかという気もするが。

 アイスバリー海岸に着くと、そこはいつものように海岸からの強風と相まって、猛吹雪となっていた。海からの水分が山脈にぶつかり、エルマニオン地方を雪原にする。この海岸はその入り口という訳だ。
 そして、ホワイトランサーたちは、今日も寒さの中元気よく?凍った雪も砂浜も物ともせずに、駆け回っていた。人間たちの姿を見るや、槍を構えて襲いかかってくる。
 ミミたちの方はさっそく棍を構え、ホワイトランサーに「足ばらい」をかけた。踏ん張ったものもいれば、派手に転んだものもいた。
「蹄鉄を落とすよう、蹄を狙ってくださいませ」
 まるでバトンのように華麗に棍を振り回しながら、ロクサーヌが言う。
 全員で辛抱強く足ばらいをかけ続けていると、派手にひっくり返ったホワイトランサーの足から何かが落ちた。
「もしかして、ロクサーヌさん、あれが?」
「ええ、そのようですわ!」
 蹄鉄を一つ失って不利になったと悟ったのか、そのホワイトランサーは慌てて逃げていった。
「ああ、どうせなら四つ全部落としてほしかったですわ」
 ロクサーヌが嘆いた。
「まあ、この調子で続ければ集まりそうだよね」
 リッカが元気付けるように言う。
 しかし、すっかり強くなっているミミたちの気配を感じたのか、ホワイトランサーたちは、先ほどまでの勢いはどこへやら、彼らの姿を見ると、逃げ出すようになっていた。
 急いで追いかけては、足ばらいをかけることを繰り返す。だが、猛吹雪の中、雪や砂の上を走ってホワイトランサーを追うのは容易なことではない。顔面には容赦なく雪の粒が当たり、視界を悪くする。暖かさ優先で選んだ装備にくるまれた体も、凍え始めた。
 蹄鉄は、やっと三つ集まった。
「無理はいけませんわ。ミミ様、一旦引き上げませんか」
「そうね。・・・エルシオン学院で、ちょっと休ませてもらおうかな」
 こうして一同は、とりあえず一度エルシオン学院に戻ることにした。

 エルシオン学院に行くと、モザイオはじめ学院の知り合いに次々声をかけられた。
「よお、ミミじゃねえか!今日はどうしたんだよ?」
 モザイオは、ミミたちの目的を聞いて、へえ、と目を丸くした。
「滑らないお守りかあ。今年入試受ける奴も、持ってたりすんのかな」
 食堂でネージュ先生に温かい飲み物をもらい、ようやく人心地ついたミミたち。
 と、そこへ、モザイオが食堂に駆け込んできた。
「ミミ!下級生の中で、お守りもう必要なくなったってヤツらから、いくつか集めてきたぜ!」
 彼の手には、確かにホワイトランサーの蹄鉄がいくつか、握られている。
「モザイオ!ありがとう。・・・でも、ほんとにいいのかな?」
「エルシオン学院に合格したからもういいってさ!未来の後輩たちにラッキーを分けてやりたいなんて、あいつらカッコつけちゃってさ。代わりに、今度ミミとイザヤール先生に勉強教えてもらえればいいんだと」
 それなら喜んで、とミミとイザヤールは答え、ロクサーヌも、モザイオさんと、蹄鉄をくれた生徒さんに、とそれぞれの分の「ごうかなクッキー」を渡した。
「これだけあれば、充分だと思いますわ。皆様、ご協力ありがとうございました!」
 冷えた体を温めてくださいませと、彼女はミミたちには、それぞれ「たいようの石」と、「きつけそう」と「めざめの花」をブレンドしたものをくれた!
「お風呂に入れても、ハーブティーとして飲んでも、効き目がありますのよ☆」
 それからロクサーヌは、モザイオに改めて、極上と表現したいような笑顔でお礼を言った。
「本当にありがとうございました、モザイオ様。改めてお礼申し上げますわ」
「私からもありがとう、モザイオ」ミミも瞳を輝かせて言う。
「私もありがとうモザイオさん!セントシュタインに来るときは、うちに寄ってね、サービスするから」とリッカ。
 女の子たちにお礼を言われ、照れまくるモザイオは、ぽりぽりと頬を掻いた。イザヤールも感謝を述べた。
「私からも礼を言う。ありがとう、モザイオ。お返しに今度、みっちり剣の稽古をつけるというのはどうだ?」
「うへえ、それお礼かよ?!お手柔らかに頼むよ、イザヤール先生!」

 セントシュタインに戻ってくると、ロクサーヌはさっそく、手に入れた蹄鉄を商品リストに書き始め、予約客に入荷の通知の手紙も書き始めた。
「ロクサーヌさん、すごい・・・」
「彼女が疲れているところを、あまり見たことないな」
 と、ミミとイザヤールがリッカを振り返ると。
「私も、明日の献立の相談をシェフとしてこなきゃ。ミミ、イザヤールさん、また後でね~」
 そう言って、リッカも元気に走って行ってしまった。
「なんで、みんなあんなに元気なの・・・」
 ミミが呟くと、イザヤールは笑った。
「ミミ、おまえもひと仕事残っているぞ」
「え?」
「後であたためてくれると、約束してくれたろう」
「・・・あ」
 頬を染め、小さく頷くミミ。イザヤールの膝に座って、優しく抱きしめるのを、仕事と呼んでいいのやら甚だ怪しいけれど。
 だが、幸せそうに二人が部屋に戻ると。
「あ、ミミ、イザヤールさん、おかえり~。遅かったじゃん」
 ソファーに寝転がり、菓子を食べながらロマンス小説らしいものを読んでいるサンディが居た!
「サンディ!?今日は出張ネイルサロンに行ったんじゃ?」
「客がカレシとデートとかでドタキャンされてさー。超ムカツク!」
 イザヤールは苦笑してから、ミミに向き直り囁いた。
「ではミミ、部屋は美少女妖精殿に進呈して、我々は温泉にでも行くか」
「・・・はいv」
「え、温泉?!ちょっと~、意地悪しないで連れてってよー!冒険の記録サボってたの謝るからさー!」
 仕方ない、連れていってやるか、と笑うイザヤールにミミも笑って頷き、バルコニーに出てアギロホイッスルを吹いた。〈了〉

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 新種スライムにあらず | トップ | まだ引きずる鏡餅スライムベス »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
試験は嫌いだー(泣) (オディール)
2012-01-15 23:09:26

私の家から5分も車でかからないところに大学があるのですがそこも昨日、センター試験やってました。

私も10回のうち6回はエルシオン学院で休んでます…(そのうち4回はもちろんセントシュタインの宿屋ですw)
やっぱり無料だし…

ロクサーヌさんすごいなぁ…旅から帰ってきて休まず仕事とは…
リッカも元気…
案外二人のラブラブぶりをみて元気でてたり?(笑)

返信する
試験というヤツは (津久井大海)
2012-01-16 01:40:58
オディール様

こんばんは☆ほんと学生の皆様お疲れさまです。不思議なもんで、大人になって勉強と縁が薄くなると懐かしい気がしたりするのですが。
あ、本当は大人になっても日々勉強しなきゃです!w

エルシオン学院、無料は嬉しいんですが、四人パーティではぎゅうぎゅうではないかしらとちょっと気になります(笑)どう見ても一人部屋ですよね~。

リッカの宿屋メンバーは働いている方が調子がよさそうなイメージです☆長期休暇とか落ち着かなさそうw
ラブラブバカップル見ていて元気出ます・・・かしら・・・?
返信する

コメントを投稿