ハロウィンもうすぐ終わりですがギリギリ更新ハロウィン話。ちょっと幻想チック?です。
お馴染みリッカの宿屋のとある一室。鏡の前に、色っぽい姿の小悪魔が、その衣装の悩ましさとは裏腹な困った表情で、少し頬を赤らめて立っていた。
それは、あぶないビスチェにいろいろ手を加えたちょっと大胆な衣装に身を包んだミミだった。頭上のミニハットには、セティアコサージュを留めている大粒の真っ赤なルビーが、星のような輝きを頂いて光っている。
「いいじゃんいいじゃん☆ミミ、これならマジハロウィンクイーンの座狙えるって☆」
この衣装をデザインしたサンディが、満足そうに頷いている。しかしミミは、困ったようにうつむいて、更に頬を染めた。
「でも・・・やっぱりちょっと恥ずかしいの・・・」
「ダイジョブだって!アンタにエロい目した男は、イザヤールさんが速攻でシメてくれるデショ☆」
「でも・・・」
ミミは、そのイザヤールの衣装も心配だった。何せむき出しの上半身に包帯を適当に巻き付けただけのものなのだから。だが、それが却って彼の均整の取れた体を悩ましく引き立てていて、簡単すぎる仮装なのになかなか好評だった。イザヤール様を好きになる人が増えちゃったらどうしよう、と呟いて、ミミはイザヤール本人とついでにラヴィエルに大笑いされたものだ。
「ミミ~、もしかしてイザヤールさんが逆ナンされてる心配もしてるワケ?ダイジョーブだって、イザヤールさんはぐるぐる包帯巻きの上に体すっぽり隠しマントで、オマケにパンプキンヘッドかぶって呼び込み行ってんだから」
サンディはニヤニヤ笑いながら保証してくれてから、いたずらっぽい顔になって囁いた。
「だからさ~、そんなに心配なら、そのちょいエロカワ姿で迎えに行ってあげれば~☆」
「でも・・・」
ミミはまたためらってから結局、自分もポンチョ風なマントにくるまって、更にパンプキンヘッドをかぶって出かけることにした。ただしハット&コサージュはヘッドの中に入らないので、パンプキンヘッドの上にちょこんと留められた。
「なんでわざわざかぶるのよー?ハットまんまでいーじゃん」
呆れるサンディを後目に、悩ましいサキュバス風小悪魔からジャックオランタンと化したミミは、パンプキン頭にそぐわない急ぎ足で出かけた。
ミミが宿屋を出ると、秋の夕暮れは早くも宵に変わり始めていた。
黄昏時は、魔のものが出やすいと言われる。ましてやこれから、魔のものが一年で最も徘徊するというハロウィンの晩になるのだ。でもセントシュタイン城下町の空気は陽気で、魔物が紛れ込んでいても、悪さをするどころか一緒に楽しんでしまいそうだった。
お菓子でいっぱいになった袋を大事そうに抱えて、仮装した子供たちの行列が通り過ぎていく。ミミが微笑んで眺めていると(パンプキンヘッドに隠れて微笑みが見えないが)、そんな子供たちの一人が何故か、キャンディを分けてくれた。
「あ、ありがと・・・」
子供仲間と間違われたのかも、と苦笑しながら再び歩き出そうとすると、かすかな、本当にかすかな声が聞こえた。
『いいな・・・楽しそうで』
ミミが声のする方を見ると、小さな女の子・・・の、なんと幽霊が居て、羨ましそうに楽しそうな人々を見ていた。
「あなたは・・・」
思わずミミが呟くと、女の子の幽霊は、ぱっと振り向いた。
『おねえちゃん、あたしのこと見えるんだ?』
「あ、うん・・・」
『ね、お願い、そのかぼちゃ頭とマント、あたしに貸してくれないかなあ?あたし、このまんまじゃお菓子もらえないから・・・』
そう、確かにパンプキンヘッドとマントを着れば、幽霊でも子供たちの中に紛れることができるだろう。ミミは少しためらったが、女の子の幽霊があまりに寂しげだったので、言われた通りヘッドとマントを脱いで貸してあげた。
『ありがとうおねえちゃん!必ず後で返すからね!』
女の子の幽霊は幽霊にそぐわないほど輝く笑顔を浮かべ、パンプキンヘッドとマントを着けて、お菓子を配っている大人たちの方に走っていった。
その頃イザヤールは、呼び込みも一段落したのでそろそろ帰ろうとしていたところ、近くに小さな男の子の幽霊がいつの間にか立っていることに気が付いた。
『いいなあ・・・。ボク、ずっと病気だったから、ハロウィンで仮装してお菓子もらったことないんだ・・・。死んじゃったから、みんなに見えなくてもっともらえなくなっちゃったし・・・』
その呟きを聞いたイザヤールがポケットに入っていたキャンディを彼に差し出すと、男の子の幽霊は顔を輝かせた。
『ありがとう、かぼちゃさん!・・・あの、もうひとつお願いがあるんだけど・・・』
そんな訳で、ミミがイザヤールの所に着いた時には、イザヤールもパンプキンヘッドとマントを男の子に貸していて、ミイラ男もどきの姿になっていた。
「イザヤール様・・・どうして・・・」
互いに事情を説明して合点が行き、二人は微笑みを交わした。
「ミミ、偉いぞ」
「イザヤール様こそ優しいの」
ミミは幸せそうにイザヤールの腕に自分の腕を絡め、イザヤールはミミの肩をしっかり抱き寄せた。
それから数時間後。パーティたけなわのルイーダの酒場の片隅に、ひっそり返されたパンプキンヘッド二つと、二着のマントの上に、『ありがとう』と書かれた紙切れと、いくつかのお菓子が置いてあったのだった。〈了〉
お馴染みリッカの宿屋のとある一室。鏡の前に、色っぽい姿の小悪魔が、その衣装の悩ましさとは裏腹な困った表情で、少し頬を赤らめて立っていた。
それは、あぶないビスチェにいろいろ手を加えたちょっと大胆な衣装に身を包んだミミだった。頭上のミニハットには、セティアコサージュを留めている大粒の真っ赤なルビーが、星のような輝きを頂いて光っている。
「いいじゃんいいじゃん☆ミミ、これならマジハロウィンクイーンの座狙えるって☆」
この衣装をデザインしたサンディが、満足そうに頷いている。しかしミミは、困ったようにうつむいて、更に頬を染めた。
「でも・・・やっぱりちょっと恥ずかしいの・・・」
「ダイジョブだって!アンタにエロい目した男は、イザヤールさんが速攻でシメてくれるデショ☆」
「でも・・・」
ミミは、そのイザヤールの衣装も心配だった。何せむき出しの上半身に包帯を適当に巻き付けただけのものなのだから。だが、それが却って彼の均整の取れた体を悩ましく引き立てていて、簡単すぎる仮装なのになかなか好評だった。イザヤール様を好きになる人が増えちゃったらどうしよう、と呟いて、ミミはイザヤール本人とついでにラヴィエルに大笑いされたものだ。
「ミミ~、もしかしてイザヤールさんが逆ナンされてる心配もしてるワケ?ダイジョーブだって、イザヤールさんはぐるぐる包帯巻きの上に体すっぽり隠しマントで、オマケにパンプキンヘッドかぶって呼び込み行ってんだから」
サンディはニヤニヤ笑いながら保証してくれてから、いたずらっぽい顔になって囁いた。
「だからさ~、そんなに心配なら、そのちょいエロカワ姿で迎えに行ってあげれば~☆」
「でも・・・」
ミミはまたためらってから結局、自分もポンチョ風なマントにくるまって、更にパンプキンヘッドをかぶって出かけることにした。ただしハット&コサージュはヘッドの中に入らないので、パンプキンヘッドの上にちょこんと留められた。
「なんでわざわざかぶるのよー?ハットまんまでいーじゃん」
呆れるサンディを後目に、悩ましいサキュバス風小悪魔からジャックオランタンと化したミミは、パンプキン頭にそぐわない急ぎ足で出かけた。
ミミが宿屋を出ると、秋の夕暮れは早くも宵に変わり始めていた。
黄昏時は、魔のものが出やすいと言われる。ましてやこれから、魔のものが一年で最も徘徊するというハロウィンの晩になるのだ。でもセントシュタイン城下町の空気は陽気で、魔物が紛れ込んでいても、悪さをするどころか一緒に楽しんでしまいそうだった。
お菓子でいっぱいになった袋を大事そうに抱えて、仮装した子供たちの行列が通り過ぎていく。ミミが微笑んで眺めていると(パンプキンヘッドに隠れて微笑みが見えないが)、そんな子供たちの一人が何故か、キャンディを分けてくれた。
「あ、ありがと・・・」
子供仲間と間違われたのかも、と苦笑しながら再び歩き出そうとすると、かすかな、本当にかすかな声が聞こえた。
『いいな・・・楽しそうで』
ミミが声のする方を見ると、小さな女の子・・・の、なんと幽霊が居て、羨ましそうに楽しそうな人々を見ていた。
「あなたは・・・」
思わずミミが呟くと、女の子の幽霊は、ぱっと振り向いた。
『おねえちゃん、あたしのこと見えるんだ?』
「あ、うん・・・」
『ね、お願い、そのかぼちゃ頭とマント、あたしに貸してくれないかなあ?あたし、このまんまじゃお菓子もらえないから・・・』
そう、確かにパンプキンヘッドとマントを着れば、幽霊でも子供たちの中に紛れることができるだろう。ミミは少しためらったが、女の子の幽霊があまりに寂しげだったので、言われた通りヘッドとマントを脱いで貸してあげた。
『ありがとうおねえちゃん!必ず後で返すからね!』
女の子の幽霊は幽霊にそぐわないほど輝く笑顔を浮かべ、パンプキンヘッドとマントを着けて、お菓子を配っている大人たちの方に走っていった。
その頃イザヤールは、呼び込みも一段落したのでそろそろ帰ろうとしていたところ、近くに小さな男の子の幽霊がいつの間にか立っていることに気が付いた。
『いいなあ・・・。ボク、ずっと病気だったから、ハロウィンで仮装してお菓子もらったことないんだ・・・。死んじゃったから、みんなに見えなくてもっともらえなくなっちゃったし・・・』
その呟きを聞いたイザヤールがポケットに入っていたキャンディを彼に差し出すと、男の子の幽霊は顔を輝かせた。
『ありがとう、かぼちゃさん!・・・あの、もうひとつお願いがあるんだけど・・・』
そんな訳で、ミミがイザヤールの所に着いた時には、イザヤールもパンプキンヘッドとマントを男の子に貸していて、ミイラ男もどきの姿になっていた。
「イザヤール様・・・どうして・・・」
互いに事情を説明して合点が行き、二人は微笑みを交わした。
「ミミ、偉いぞ」
「イザヤール様こそ優しいの」
ミミは幸せそうにイザヤールの腕に自分の腕を絡め、イザヤールはミミの肩をしっかり抱き寄せた。
それから数時間後。パーティたけなわのルイーダの酒場の片隅に、ひっそり返されたパンプキンヘッド二つと、二着のマントの上に、『ありがとう』と書かれた紙切れと、いくつかのお菓子が置いてあったのだった。〈了〉
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