先日のクエストで、錬金材料が少しずつ足りなくて手間取ったことを反省して、一週間ほど徹底的に素材集めに専念することを決意したミミ。
保存の効く食糧に着替えその他を袋に詰め込み、果てはカルバドのナムジンから組み立て移動式パオまで借りてきた。
「てゆーかさ~、そこまでしなくても、夜はルーラでリッカの宿屋に帰ってくればいーじゃん」
サンディが呆れて言った。
「今回はね、サバイバル生活の修行も兼ねているの。野営でも快適に過ごせるほどのスキルアップを目指すの」
「付き合ってらんね。お風呂入れないって、信じらんナ~イ!」
「水浴びはできる場所にキャンプ置くよ?」
「寒いわー!」
サンディはほんとについてこない様子だったので、ミミは呟いた。
「いーもん・・・イザヤール様と二人で行くから・・・」
それを聞いたとたんに、膨れっ面だったサンディの表情が、一気にニヤニヤ笑いに変わった。
「はは~ん、そーゆーコト・・・」
「え?何?」
きょとんとするミミ。
「素材集めは口実で、イザヤールさんとしばらく二人きり甘々同棲生活しようって魂胆なのネ」
「同棲?!・・・ち、違・・・」
「いいんじゃナイ、結婚前に二人きりで暮らして相性見るのも」
「野営でも同棲っていうのかなあ・・・」
「細かいコトは気にしない~♪楽しんでくれば☆」
「うん・・・でも、同棲じゃないと思うよ・・・」
とは言うものの、イザヤールと二人きりで素材集めに出かける約束をしたのだと改めて思い出して、ミミの頬はほんのり染まった。そんな顔を見て、ぽつりと呟くサンディ。
「やっぱり、どーせハナからアタシ置いてく気満々じゃん・・・」
そんな訳でいよいよ出かけることになったが、どのような順番で世界中を巡って素材集めをしようかとミミは地図を手に考えた。移動は基本「天の箱舟」と徒歩で行う。
効率よく世界を回って素材を集めたいが、あまり早く移動してもなかなか素材を採取できない。それに、キャンプをするのにいい場所も考えなくては。
しばらく考えて、スタート地点はここセントシュタインなので、まずはエラフィタ地方に行くことにした。
「・・・って、最初は『うしのふん』からかい・・・まずそこ~?」
サンディが呆れていると、イザヤールが眉をひそめて言った。
「おやサンディ、君はついてこないのではなかったか?」
「イザヤールさん・・・教えてあげよーか。ここは天の箱舟の中なんだから、バイトのアタシはミミにくっついていかなくたって居るのが当然なんですケド!」
「わかっている。からかっただけだ」
「からかったー?!」
そんなやりとりの間にエラフィタ地方に着き、そこで「うしのふん」を採取し、その後ミミとイザヤールはほろびの森へ足を伸ばして、「どくどくヘドロ」を手に入れた。
「なるほど、『おかしなくすり』の材料だな」イザヤールが言った。
「おかしなくすり」は、「せいれいせき」の材料になり、「せいれいせき」は、「げんませき」の材料になるのだ。
「また近いうちに、ルディアノ城にも行かなきゃ」ミミが呟く。
その後、南下してウォルロ地方に行き、リッカの宿屋の夏のシーツに欠かせない「まだらくもいと」を手に入れ、更に南下して魔獣の洞窟の側で、げんませきに必要な「あやかしそう」を採取した。
そこから東に向かい、竜の門と東ナザム地方で、「めざめの花」と「ゆめみの花」を摘むと、ドミールの地を海岸線沿いに回るようにして、再び「まだらくもいと」を拾い、「いかずちのたま」と、ロト装備の錬金き必要な「みがきずな」を拾った。そして・・・。
竜のくび地方の温泉で「さとりそう」を採取して、ミミは言った。
「今日は、ここに野営するのは如何ですか、イザヤール様」
ちょうど夕方になっていた。
「悪くないな」
なるほど、ここにこの時間に着くよう考えていたか、とイザヤールは微笑み、さっそくパオを組み立て始めた。
しかし恋人たちには嬉しい二人きりとはいえ、油断は禁物のフィールド上に野営である。基本常に片方はモンスターの見張りで、もう片方はその間にせっせと働き、甘い雰囲気も何もない・・・筈。
「ミミ、今夜のメニューは、干し肉とさとりそうのスープでいいか?」
「はい♪さっき拾ったマッドファルコンの卵、温泉卵にしてみたんですが、それも加えていいですか?」
「黄身が固くなりすぎないよう、最後に割り落とすのでどうだ」
「はーい♪」
・・・楽しそうだった。
利用できるものはなんでも利用し、食べられるものは食べるのが冒険者の、殊にレンジャーの心得である。プーディーとバチョーが居たら、褒めてくれそうだ。
さすがのコンビネーションで夕食の仕度をし、辺りに目を配りながらも、仲良く食事を済ませ、すっかり状況を楽しんでしまっている二人。
でも。一緒にできるのはここまでで。
(温泉、一緒に入れないんだ・・・)
魔物は入ってこないとはいえ、丸腰で油断は禁物なので、どちらかは見張りにならなくてはならない。イザヤールの後ろ姿を見ながら、ミミは少し寂しそうに肩まで体を湯に沈めた。
(戦闘用水着着て入れば、魔物が着てもすぐ戦えると思うけれど・・・やっぱり、ダメ、かな)
冒険者にとっての最大の敵は油断、懸命に自分に言い聞かせるミミ。
そして、パオの中で休むのも、もちろん別々、一人は外で魔物だけでなく、火の番の見張りも兼ねる。
おやすみのキスも、垂れ幕の陰で、慌ただしく、一瞬だけ。・・・ちょっぴり・・・寂しい。
「イザヤール様、町ってありがたいですね。実感しました」
ミミは毛布にくるまったまま、パオから這い出してきて、イザヤールの隣に座った。
「こら、ちゃんと今眠っておかないと、後で交代の時に、辛いぞ」
「ここで眠っちゃダメですか・・・?」
「せっかくパオがあるのだから、そこで寝なさい」
イザヤールは苦笑して囁き、そのまま彼女の頬に軽く口付けた。
そんなふうににして、錬金素材集めの旅は続いた。楽しい旅だったが、ゆっくり一緒にくつろぐ時間がないのが続き、それが互いに少し寂しかった。
イザヤールは、それに僅かに切なさも加わっていた。
水浴びの際など、交代で見張りをする。・・・ちょっと振り返るだけで・・・見ることができてしまう・・・。振り返ってみたい、そう思ってしまうことが、少々情けない。これは旅なのだ、そんなことを考えている場合でないと、自らに呆れ、切ない。
水を浴びているミミは、どんなに綺麗だろう。
天使界から出たら、村から出たら決して油断するなと弟子に厳しく言い聞かせてきた自分が。やれやれ。イザヤールは、自嘲の苦笑を浮かべる。
愛しい女と、二人きり。僅かでも気を抜けば、星空の下だろうと、魔物の巣の近くだろうと、・・・いけないことを、してしまいそうだ。その油断でミミを危険にさらすわけには、いかない。
数日間が過ぎたある日、イザヤールは言った。
「ミミ、採取は途中ですまないが・・・一回帰らないか?・・・おまえを存分に抱きしめることができなくて、寂しい」
「イザヤール様・・・」ミミは頬を染めてうつむき、小さな声で呟いた。
「・・・はい。私も・・・寂しいです」
そんなわけで、予定よりちょっぴり早く、まだ集める物も残っていたけれど、二人はセントシュタインに帰ることにした。
後ほど、話を聞いたサンディは。
「別に帰ってこなくたって、近くの町の宿屋に泊まって、存分にイチャイチャすればよかったじゃん!・・・アンタら、バカあ?」〈了〉
保存の効く食糧に着替えその他を袋に詰め込み、果てはカルバドのナムジンから組み立て移動式パオまで借りてきた。
「てゆーかさ~、そこまでしなくても、夜はルーラでリッカの宿屋に帰ってくればいーじゃん」
サンディが呆れて言った。
「今回はね、サバイバル生活の修行も兼ねているの。野営でも快適に過ごせるほどのスキルアップを目指すの」
「付き合ってらんね。お風呂入れないって、信じらんナ~イ!」
「水浴びはできる場所にキャンプ置くよ?」
「寒いわー!」
サンディはほんとについてこない様子だったので、ミミは呟いた。
「いーもん・・・イザヤール様と二人で行くから・・・」
それを聞いたとたんに、膨れっ面だったサンディの表情が、一気にニヤニヤ笑いに変わった。
「はは~ん、そーゆーコト・・・」
「え?何?」
きょとんとするミミ。
「素材集めは口実で、イザヤールさんとしばらく二人きり甘々同棲生活しようって魂胆なのネ」
「同棲?!・・・ち、違・・・」
「いいんじゃナイ、結婚前に二人きりで暮らして相性見るのも」
「野営でも同棲っていうのかなあ・・・」
「細かいコトは気にしない~♪楽しんでくれば☆」
「うん・・・でも、同棲じゃないと思うよ・・・」
とは言うものの、イザヤールと二人きりで素材集めに出かける約束をしたのだと改めて思い出して、ミミの頬はほんのり染まった。そんな顔を見て、ぽつりと呟くサンディ。
「やっぱり、どーせハナからアタシ置いてく気満々じゃん・・・」
そんな訳でいよいよ出かけることになったが、どのような順番で世界中を巡って素材集めをしようかとミミは地図を手に考えた。移動は基本「天の箱舟」と徒歩で行う。
効率よく世界を回って素材を集めたいが、あまり早く移動してもなかなか素材を採取できない。それに、キャンプをするのにいい場所も考えなくては。
しばらく考えて、スタート地点はここセントシュタインなので、まずはエラフィタ地方に行くことにした。
「・・・って、最初は『うしのふん』からかい・・・まずそこ~?」
サンディが呆れていると、イザヤールが眉をひそめて言った。
「おやサンディ、君はついてこないのではなかったか?」
「イザヤールさん・・・教えてあげよーか。ここは天の箱舟の中なんだから、バイトのアタシはミミにくっついていかなくたって居るのが当然なんですケド!」
「わかっている。からかっただけだ」
「からかったー?!」
そんなやりとりの間にエラフィタ地方に着き、そこで「うしのふん」を採取し、その後ミミとイザヤールはほろびの森へ足を伸ばして、「どくどくヘドロ」を手に入れた。
「なるほど、『おかしなくすり』の材料だな」イザヤールが言った。
「おかしなくすり」は、「せいれいせき」の材料になり、「せいれいせき」は、「げんませき」の材料になるのだ。
「また近いうちに、ルディアノ城にも行かなきゃ」ミミが呟く。
その後、南下してウォルロ地方に行き、リッカの宿屋の夏のシーツに欠かせない「まだらくもいと」を手に入れ、更に南下して魔獣の洞窟の側で、げんませきに必要な「あやかしそう」を採取した。
そこから東に向かい、竜の門と東ナザム地方で、「めざめの花」と「ゆめみの花」を摘むと、ドミールの地を海岸線沿いに回るようにして、再び「まだらくもいと」を拾い、「いかずちのたま」と、ロト装備の錬金き必要な「みがきずな」を拾った。そして・・・。
竜のくび地方の温泉で「さとりそう」を採取して、ミミは言った。
「今日は、ここに野営するのは如何ですか、イザヤール様」
ちょうど夕方になっていた。
「悪くないな」
なるほど、ここにこの時間に着くよう考えていたか、とイザヤールは微笑み、さっそくパオを組み立て始めた。
しかし恋人たちには嬉しい二人きりとはいえ、油断は禁物のフィールド上に野営である。基本常に片方はモンスターの見張りで、もう片方はその間にせっせと働き、甘い雰囲気も何もない・・・筈。
「ミミ、今夜のメニューは、干し肉とさとりそうのスープでいいか?」
「はい♪さっき拾ったマッドファルコンの卵、温泉卵にしてみたんですが、それも加えていいですか?」
「黄身が固くなりすぎないよう、最後に割り落とすのでどうだ」
「はーい♪」
・・・楽しそうだった。
利用できるものはなんでも利用し、食べられるものは食べるのが冒険者の、殊にレンジャーの心得である。プーディーとバチョーが居たら、褒めてくれそうだ。
さすがのコンビネーションで夕食の仕度をし、辺りに目を配りながらも、仲良く食事を済ませ、すっかり状況を楽しんでしまっている二人。
でも。一緒にできるのはここまでで。
(温泉、一緒に入れないんだ・・・)
魔物は入ってこないとはいえ、丸腰で油断は禁物なので、どちらかは見張りにならなくてはならない。イザヤールの後ろ姿を見ながら、ミミは少し寂しそうに肩まで体を湯に沈めた。
(戦闘用水着着て入れば、魔物が着てもすぐ戦えると思うけれど・・・やっぱり、ダメ、かな)
冒険者にとっての最大の敵は油断、懸命に自分に言い聞かせるミミ。
そして、パオの中で休むのも、もちろん別々、一人は外で魔物だけでなく、火の番の見張りも兼ねる。
おやすみのキスも、垂れ幕の陰で、慌ただしく、一瞬だけ。・・・ちょっぴり・・・寂しい。
「イザヤール様、町ってありがたいですね。実感しました」
ミミは毛布にくるまったまま、パオから這い出してきて、イザヤールの隣に座った。
「こら、ちゃんと今眠っておかないと、後で交代の時に、辛いぞ」
「ここで眠っちゃダメですか・・・?」
「せっかくパオがあるのだから、そこで寝なさい」
イザヤールは苦笑して囁き、そのまま彼女の頬に軽く口付けた。
そんなふうににして、錬金素材集めの旅は続いた。楽しい旅だったが、ゆっくり一緒にくつろぐ時間がないのが続き、それが互いに少し寂しかった。
イザヤールは、それに僅かに切なさも加わっていた。
水浴びの際など、交代で見張りをする。・・・ちょっと振り返るだけで・・・見ることができてしまう・・・。振り返ってみたい、そう思ってしまうことが、少々情けない。これは旅なのだ、そんなことを考えている場合でないと、自らに呆れ、切ない。
水を浴びているミミは、どんなに綺麗だろう。
天使界から出たら、村から出たら決して油断するなと弟子に厳しく言い聞かせてきた自分が。やれやれ。イザヤールは、自嘲の苦笑を浮かべる。
愛しい女と、二人きり。僅かでも気を抜けば、星空の下だろうと、魔物の巣の近くだろうと、・・・いけないことを、してしまいそうだ。その油断でミミを危険にさらすわけには、いかない。
数日間が過ぎたある日、イザヤールは言った。
「ミミ、採取は途中ですまないが・・・一回帰らないか?・・・おまえを存分に抱きしめることができなくて、寂しい」
「イザヤール様・・・」ミミは頬を染めてうつむき、小さな声で呟いた。
「・・・はい。私も・・・寂しいです」
そんなわけで、予定よりちょっぴり早く、まだ集める物も残っていたけれど、二人はセントシュタインに帰ることにした。
後ほど、話を聞いたサンディは。
「別に帰ってこなくたって、近くの町の宿屋に泊まって、存分にイチャイチャすればよかったじゃん!・・・アンタら、バカあ?」〈了〉
( ー∀ー) ニヤニヤ
にしてもイザヤール師匠、いけないことって何を考えていたんだろう・・・?
続けておはようございます☆いや、禁断症状ってwと読み返して自分にツッコミ!やはりほろ酔い脳ミソではお話書きはムリがあったようです。
愛に飢えてた(笑)ステキ表現☆
イザヤール様、実は禁断症状というよりは、「完全二人きりなのにお預け状態」に限界が来はじめてギブアップしたのだと思われますwいけないこと・・・(爆)