セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

大好きなあなたに、お守りを(後編)

2014年11月09日 03時24分50秒 | クエスト184以降
遅くなりましてごめんあそばせの追加クエストもどき後編。前回のあらすじ、大好きなお兄さまにエルフのおまもりを作ってあげたい少女の為にきんのロザリオを取りに行くことになったミミたちだったが、思いがけない連れが加わり・・・。結局思っていたよりかわいらしい話になったような、ならなかったような。ゲストキャラの設定を危うくもっといろいろ盛っちゃうとこでしたが、そーいうのはオリジナル小説でやれっていう話ですので止めときました。ちびっこの淡い両片想いってのもいいもんですね。好きな女の子には優しくできないとか(笑)そしてイザヤール様がまたさりげなく天然でキザなセリフを言っちゃったりしております。

 きんのロザリオは、主に地上のダンジョンの青い宝箱の中から手に入ることがある。ミミたちは、まずは一見危険だが実は今は魔物がほとんど出ない、ガナン帝国城から行ってみることにした。この少年は、子供ながら腕が立ちそうではあるけれど、なるべく危険な目に遭わせないのに越したことはない。ただ、あの寒々とした廃虚で、怖い思いをしなければいいけれど、とミミは少し心配になった。
 だがその心配は杞憂だったらしい。ルーラで一瞬で移動し、城の中に入ると、少年は辺りを珍しそうに見回しながらも、不気味な城の調度品や静けさに怯えることもなく、落ち着いてミミとイザヤールの後に着いてきた。
「こういう場所は慣れているのか?」
 イザヤールが尋ねると、少年は頷いて答えた。
「父親が冒険者だったから、母が死んでからは、二人で旅をしたり、ダンジョンに潜ってたりしていましたから」
「ではその剣は、父親から譲り受けた物なのだな」
「ええ」
 少年の剣は、どうやら「ドラゴンスレイヤー」のようだ。少年の父親は、かなり凄腕の冒険者だったのかもしれない。
 ガナン帝国城の一階北の宝物庫にやって来ると、口を開けて空の赤い宝箱が三つと、蓋の閉じた青い宝箱が三つあった。
「ひとくいばこやミミックの可能性もあるから、下がってて」
 ミミは少年に言って、用心深く青い宝箱を開けた。万一に備えてイザヤールは少年をかばうように立っている。一つめの宝箱には、「グビアナぎんか」が入っていた。
「残念、きんのロザリオじゃなかったの。私たちはたくさん持っているから、よかったら、あなたが使って」
 ミミがグビアナぎんかを少年に渡すと、彼は素直に受け取り、頭を下げた。
「ありがとうございます、助かります」
 二つめの中身はちいさなメダル、そして三つめは命の石だったので、残念ながらここではきんのロザリオは見つからなかった。
 そこでミミたちは、今度は比較的移動しやすく敵が手強くない、ダーマの塔に向かうことにした。ダーマ神殿までまたルーラで移動し、そこからしばらく塔に向かって歩く。少年はドラゴンスレイヤーを振るってスライムナイトやアローインプを余裕で蹴散らし、スライムたちが合体してスライムタワーになる前に素早く倒していったので、ミミとイザヤールは感心した。この様子なら、エルシオン学院に入学しても、課題を充分やって行けるだろう。
 ダーマの塔に着いて中に入ると、さっそくくさった死体やマージマタンゴの群れが襲いかかってきた。通常の剣術は、単体への攻撃が多いから、魔物の大群相手はいささか不利だ。しかしイザヤールは剣を使ってギガスラッシュで一掃したので、少年は驚きと感嘆で思わず表情を輝かせた。そんな顔は、彼を年相応に幼く見せた。
「すごい・・・。父さんが使ってた技を、使える人が居るなんて・・・!」
「ほう、君の父親は、やはり相当な剣術使いだったようだな。・・・このミミも、剣術も得意でギガスラッシュが使えるぞ」
 イザヤールの言葉に、少年の態度から頑なささがどことなく和らいだ。どうやら二人にいくらか尊敬と親しみを覚えてくれたらしい。
 階段を上がり魔物と戦いながら進み、二階の青い宝箱がある場所にたどり着いた。ここもやはり三つある。今度こそきんのロザリオが入っていますようにと、祈るような気持ちでミミが宝箱を開けると、幸い一つにきんのロザリオが入っていた。
「よかった、見つかって。さあ、帰りましょう」
 ミミが言うと、少年は僅かに遠慮がちな様子で呟いた。
「申し訳ないですが、もう少しだけお宝集めにご協力頂いてもいいですか。ミミさんたちに必要な物は、全部お渡ししますから」
「それなら」イザヤールが提案した。「私が君に付き合ってもう少しダンジョン巡りをしよう。ミミは、その間に依頼人にきんのロザリオを届けてきてくれないか。きっと待っているだろうから」と、後半はミミに言った。
 ミミは頷き、イザヤールの手をそっと握りしめて、囁いた。
「わかりました。じゃあ後はお願いね、イザヤール様。二人とも、くれぐれも気を付けて」
「ああ、任せておけ。また後で」
 二人は互いを信頼している微笑みを交わし、絡ませるようにもう一度手を握り合ってから、ミミはリレミトで塔の外に出て行った。

 ミミが行ってしまうと、男同士の気安さからか、少年はかすかに羨望が混ざった声で呟いた。
「イザヤールさんは、ミミさんと本当に仲が良くて信頼し合っているんですね。・・・どうしたら、イザヤールさんみたいに、好きな子に優しくできるんですか」
「好きな女に優しくするのに、努力が要るのか?」
 イザヤールが不思議そうに答えると、少年は寂しげな目で呟いた。
「オレは・・・ダメなんです。優しくしてあげたいのに、叱ったり、きついことばっかり言って・・・」
「それは、心配しているから、そうだろう?」
「それはそうだけど・・・。でも、あの子は、きっとオレのこと、怖がっています。優しいから、オレのことを嫌ったりしないとは思うけど・・・それでもオレがエルシオン学院に入って寮生活になれば、ほっとする筈です」
「それは、どうかな。寂しがるかもしれないぞ」
 少年は「あの子」を誰のことかはっきり言わなかったが、従妹のことを言っているのだろうとイザヤールは察した。幼い淡い想いだろうが、ここにも互いの気持ちに気付かない両片想いが居るとはなと、彼は内心苦笑した。この少年の従妹は、他ならぬ「お兄さま」の為にエルフのおまもりを作りたいのだと知ったら、どれほど驚き、喜ぶだろう。
 そのことは後のお楽しみに黙っておくことにしたイザヤールだったが、これだけは少々気になって尋ねてみた。
「君の従妹から聞いたが、君はエルフが気にかかるらしいな。何か理由でもあるのか?」
「え?」少年は一瞬きょとんとしたが、やがて顔を赤らめた。「どうして、あの子がそんなことを・・・。もちろん本当のエルフになんて会ったことないけど、小さい頃、母からおとぎ話で可愛くて綺麗だってエルフのこと聞いていて、その・・・。初めて従妹に会った時に、そのエルフみたいだって、思って・・・。従妹には、そんなこと喋っていない筈なのに、なんで・・・」
「君の友達から聞いたそうだぞ。何故エルフが気になるかまでは、聞いていないようだがな」
「そうですか、よかった・・・」
 ほっと息を吐いて思わず微笑んだ少年の顔を見て、イザヤールも微笑み言った。
「そう、好きな人の前で、そんな笑顔をすればいい。きっと喜んでくれる筈だ」
 少年は照れくさそうに顔を逸らしたが、表情はずいぶん和らいでいた。
 それから二人は、宝探しなら、宝の地図の洞窟巡りがいいだろうと判断して、イザヤールたちもダーマの塔から出て、適当なレベルのダンジョンに向かうことにした。

 一方ミミは、セントシュタインに戻って、依頼人の女の子の待つリッカの宿屋のロビーにまっすぐ向かった。女の子は、ミミが帰ってきてぱっと顔を輝かせたが、従兄が一緒でないことに気付いて、みるみる心配そうな顔になった。ミミは、「お兄さま」は、イザヤールと一緒にもう少し宝探しをしてから帰ることを伝えて、今のうちにエルフのおまもりを作ることを提案して安心させた。
「そっか、お兄さま、冒険してるんだ・・・。わたしが強かったら、お手伝いできたかなあ・・・」
 くだものナイフを持つのがやっとの自分の細腕を、女の子は悲しそうに見つめる。自分も見習い天使の時にそんな悩みを持っていたなあとしみじみしながらミミは、あたたかい微笑みを浮かべて言った。
「大丈夫、強くなれるのは、これからよ。それに、腕力が無くても、呪文で助けてあげたりもできるわ。今から諦めたりしないでね」
 女の子は笑顔になって、こくりと大きく頷いた。それから二人は、カマエルの所に行って、きんのロザリオとせいすいと命の石をカマエルの中に入れた。まよけの聖印が一つできた!次に、そのまよけの聖印と、エルフの飲み薬と、緑のコケをカマエルの中に入れた。エルフのおまもりが一つできた!
 ようやく出来上がった大切な人へのお守りを、女の子は大事そうにぎゅっと胸に抱きしめた。それから、嬉しさで頬を紅潮させて、ミミにお礼を言った。
「ミミおねえさま、ありがとう!・・・お母さまの指輪の次に大切なわたしの宝物、お礼にあげるね・・・むかし、もっと小さい頃、お兄さまが見つけてくれた、お星さまの形の石なの」
 女の子は「ほしのカケラ」をくれた!そんなに大切な物を、とミミは初めは断ったが、彼女の気持ちを考えて、受け取ることにした。
 それから二人は、それぞれの大切な人を、そわそわと待った。その間に女の子の父親も来て、娘が彼女の従兄の為にお守りを作ったことを聞いて、嬉しそうに頷き、彼からもミミに礼を告げ、言った。
「私たちの家が、あの子のいつでも帰って来ていい家だと、辛抱強く伝え続けていきたいと思います。今までは、どうしたらそれが伝わるだろうと焦っていましたが・・・押し付けず、あの子が必要とする時に手を差し伸べられるようそっと見守っていればいい、そうですよね」
 そして彼は、部屋で待っているから、お兄さまが帰って来たら一緒に晩ごはんを食べようねと優しく娘に言って、部屋に戻って行った。

 しばらくして、夕食時に近くなって、少年とイザヤールが帰ってきた。少年は、従妹がロビーで待っていることに、驚いたようだった。彼女は、ちょっと緊張した様子でおずおずと従兄に近寄り、エルフのおまもりを差し出した。
「これ、お兄さまにあげる・・・。お母さまの指輪は使わなかったから、安心してね。だ・・・だい・・・好き・・・なお兄さまが、エルシオン学院に行っても、元気でいてくれますように、っていうおまもり・・・」
 語尾の方は、緊張でかすかに震えている。受け取ってもらえるのかそれともと、女の子は目をぎゅっと瞑った。
 少年は、聞いた言葉が信じられなくてしばらく呆然としていたが、やがてゆっくりと手を伸ばして、エルフのおまもりを受け取った。そして、優しい、幸せそうな微笑みを浮かべて、呟いた。
「・・・ありがとう」
 オレも、あなたが・・・大好きだと言う代わりに、少年は、ポケットから、宝の地図の洞窟で見つけてきた真っ白な「天使のはね」を取り出した。
「お土産です。・・・綺麗でしょう?」
 女の子は羽を受け取り、嬉しそうにこくりと頷いた。そのうつむいた頭を、少年がぎこちなくなでる。ぎこちなくも想いのこもった優しいしぐさに、嫌われてなんかいないとようやく知って、彼女もまた、幸せそうな愛らしい微笑みで従兄を見つめた。
 そんな様子を見守って、ミミとイザヤールは顔を見合わせて彼らもまた微笑み、そっとその場を後にした。それが幼い初恋だろうと家族愛だろうと、愛には違いない。愛されていると知れば人は、たとえ不遇に遭っても、優しさや幸せを分け与えて生きていける。
「なんだか、幸せのお裾分けをしてもらった気分なの・・・」
「そうだな」
 ミミの呟きに同意して、イザヤールもまた、彼女の頭を優しくなでる。こちらはぎこちなさは無しに、愛しさを込めて触れるので、ミミの顔も階下の幼い少女に劣らず、幸せな、安らいだ表情になった。

 愛されていると知ることが、何よりのお守りだと。きっと少女も、大好きな人から、天使のはねだけではなく、そんな目に見えないお守りを、もらったことだろう。〈了〉
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