セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

大好きなあなたに、お守りを(前編・訂正版)

2014年11月08日 19時32分41秒 | クエスト184以降
丑三つ時過ぎちゃってしかも前後編で更にすまんの追加クエストもどき。今回の依頼人たちはほんのり逆転師弟を思わせるような関係?な上(お子様たちですが)、津久井は「兄さん」キャラ萌えなので、書いてて楽しいです(笑)イザヤール様も「兄さん」だし(爆)エルシオン学院は入学年齢厳密には決まってなさそうなイメージです。平均十二歳、早くて十歳とか?追記・矛盾箇所を直した訂正版でございます、悪しからず。

 リッカの宿屋は、財布の紐が固い冒険者も、贅沢な寛ぎの時間を楽しみたい富豪も、どちらも満足するという稀有な宿屋である。そんな訳で今日も、冒険者たちはもちろん、普通に観光旅行に来た裕福な家族連れでも賑わっている。
 ようやく少し落ち着いた時間帯になったので、ミミとイザヤールは静かになったカウンターの前に立って、頼まれていた錬金を始めた。ついでに優しくお手入れされて、錬金釜のカマエルもご満悦なようである。するとそこへ、そんな家族連れの一人らしい女の子が、おずおずと近寄って来た。エルシオン学院の新入生かそれより少し年下くらいの年頃に見える。華奢な愛らしさで人見知りらしくもじもじする様が、ちょっとミミを思わせたので、イザヤールは本人を傍にして思わずかすかに微笑んだ。
 ミミは女の子の前にしゃがんで見上げ、優しく尋ねた。
「私たちに、何かご用ですか?」
 女の子はこくりと頷いて、小さな声で答えた。
「あの・・・錬金釜を、貸していただけませんか」
「何か錬金したい物があるのかな?」
 怖がらせないようにとイザヤールも優しい声で尋ねると、女の子はまた頷いて、手にしっかり握りしめた物をミミとイザヤールに見せた。それは、「まよけの聖印」と「エルフののみぐすり」と三つの「緑のコケ」だった。
「これで、『エルフのおまもり』を作りたいんです」
「まあ、エルフのおまもりの作り方を知っているなんて・・・すごいの」
 ミミが感心して褒めると、女の子は赤くなってうつむいた。ますますミミみたいだな、とイザヤールはほのぼのして浮かんでしまう笑いを堪えた。女の子はうつむいてから、首をぷるぷる振って否定した。
「わたしはすごくないんです。お兄さまのお勉強の本に、載ってたの」
「お兄さんいるんだ。そんな難しい本を読めるなんて、すごいお兄さんなのね」
 ミミが言うと、女の子は嬉しそうなはにかんだ笑顔になって、こくこくと頷いた。
「お勉強も武術もできて、顔もすごく綺麗で、かっこいい自慢のお兄さまなんです。今度エルシオン学院に入学も決まっているの」
 夢中になって褒めるので、ちょっと早口になるのがまた可愛らしかった。ミミもまたほのぼのし、にっこり微笑んで女の子に言った。
「きっとお兄さんにとってあなたも、可愛い自慢の妹さんだと思うの」
 すると、それを聞いたとたん女の子は、みるみる笑顔を曇らせて、泣きそうな顔になったので、ミミは、何かいけないことを言ってしまったのかとおろおろした。
「ううん、わたしはどんなにがんばってもお兄さまほどお勉強できないし、運動できないし、怖がりだし、美人じゃないから・・・お兄さまは、わたしのこと、キライなんです・・・」
「そんなこと!お兄さん、そんなこと言ってないでしょ?」
「言ってないけど、でも・・・わたし、迷惑かけてばっかりだから・・・」女の子はますますうつむいてこっそり涙を拭ってから、懸命に笑顔にして顔を上げた。泣き笑い顔みたいになっていたが。「でもわたしは、お兄さまが大好きなんです。だから、入学のお祝いに、すごい効き目のお守りをあげたくて」
「それで、錬金釜を使いたいのね。そういうことなら、喜んで。さあ、どうぞ」
 ミミは言いながらカマエルにいいよね?と小声で尋ねると、カマエルは「もちろんです、お嬢様!なんて健気なお子様なのでしょう、このカマエル、喜んで錬金させて頂きます!」と、はりきっていた。
 ミミに手伝ってもらって女の子が材料を入れようとしていると、そこへ、誰かがつかつかと足早に近寄ってきた。それは、女の子よりいくらか年上らしい、どこか陰のある表情の美少年だった。彼は女の子の腕をつかんで止め、冷たいくらいに厳しい声で言った。
「何をしているのですか?その指輪は、あなたのお母様の、あなたへの大切な形見でしょう?おもちゃ代わりにするような物ではありません」
 女の子はびくっとして固まり、しょんぼりとうつむいて呟いた。
「お兄さま・・・」
 やって来たのは、どうやらその『お兄さま』らしかった。確かにとても美しい知的な顔をしていて、すらりとした体の線にも、まだ子供ながらも並々ならぬ戦闘能力を感じさせる俊敏さと筋力を感じさせた。
「さあ、お部屋に帰りますよ」
 失礼します、と素っ気ない声でミミとイザヤールに告げて、少年は女の子のつかんだ腕をそのまま引きずるようにして、去っていってしまった。だが、一見乱暴に見える様子よりは優しくつかんで引いているのだと、イザヤールは見て取った。
「お母さんの形見の指輪だったのね。錬金しないでよかったけれど、でも、あの子は、大好きなお兄さんに、大切な物を使ってでもお守りを作ってあげたかったみたい・・・」
 どっちがよかったのだろうと、ミミは濃い紫の瞳を潤ませた。
「兄の方はおそらく、妹に母親の大切な形見を使わせたくてわざと乱暴に止めたのだろうな。それにしても・・・」イザヤールは首を傾げた。「兄妹にしては、ずいぶん風変わりな話し方だったな」
「我々みたいにか?」
 カウンターの端に腰かけていたラヴィエルが、にやにやしながら口を挟んだ。イザヤールは彼女の方にちょっと顔をしかめてやってから、ミミの方に向き直ると、そこへ、今までの成り行きを見ていたリッカが二人を手招きした。
「ミミ、イザヤールさん、あのね・・・」リッカは二人をカウンターの中に呼び、声をひそめて囁いた。「あの二人、兄妹じゃないの。あの女の子のお父さんからお話伺ったんだけど、男の子の方はね、死んだ妹さんの忘れ形見なんだって。つまりあの女の子には従兄ってことよね。
お父さんと女の子は、両親を亡くしたあの男の子に家族として接してきたけど、彼の方は、『他人の家に厄介になってる』っていう姿勢を崩さなくて、なかなか心を開いてくれないって、女の子のお父さん、悲しんでいたわ。私も両親を亡くしておじいちゃんに育ててもらったから、どうも他人事な気がしなくて・・・ミミも、イザヤールさんも、ちょっと気にかけてあげてくれると、嬉しいな。しっかりしていそうでも、きっと、心の中では寂しいと思うもの」
 そういうことだったのかと、ミミとイザヤールは頷いた。それであの嫌味なくらい丁寧な口調や、『あなたのお母様の』という奇妙な言い方の説明がつく。
「あの女の子は、エルシオン学院に行ってしまう大好きな従兄のお兄さんに、大切な形見を使ってでも、お守りを作りたかったのね・・・」
 ちょっと切なくなって、ミミは悲しげに呟いた。その思いは、少しでも少年に届いているのだろうか。それとも、彼にとっては、死んだ両親だけが家族で、伯父と従妹は、そこに割り込もうとする許しがたい存在でしかないのだろうか。

 昼食後、図書室に居たミミは、再び先ほどの女の子に出会った。女の子は、駆け寄って来て、訴えるような瞳でミミを見上げ、尋ねた。
「あの・・・『きんのロザリオ』って、どこに行けば買えますか?」
「『きんのロザリオ』は、売っているお店は無いの。ダンジョンの宝箱に入っていることがあるわ」
 ミミが答えると、女の子はしょんぼりとうなだれ、目にみるみる涙が溜まった。
「どうしよう・・・『せいすい』はおこづかいで何とか買えそうなのに」
「もしかして、『まよけの聖印』を作ろうと思っているの?」
 ミミの問いに女の子は頷いた。
「お母さまの指輪を使わなければ、お兄さまも怒らないかな、って思ったんです。『命の石』は、持っているから、あとは『きんのロザリオ』があれば錬金できるって、お兄さまの本に書いてあったの・・・でも、売ってないなんて・・・」
 ぽろぽろと涙をこぼし始めた女の子の頭をなでて、ミミは言った。
「よかったら、私が『きんのロザリオ』を探してこようか?私は冒険者なの。ダンジョン探険するのも、お仕事だから」
「ほんとに?」女の子は、涙で濡れた目を見開いた。「お願いします、錬金釜のおねえさま」
 まるでカマエルのお姉さんみたいな呼び方だなあと思ってミミは笑って、自分の名前を女の子に教えた。それで女の子も楽しそうに笑って、ぺこりと頭を下げた。
「ありがとうございます、ミミおねえさま」
 ミミはクエスト「大好きなあなたに、お守りを」を引き受けた!
「でも、どうしてそんなに、『エルフのおまもり』をあげたいの?」
 ふとミミが尋ねてみると、女の子はちょっと恥ずかしそうに答えた。
「効果がいろいろあるすごいお守りだし、それに・・・お兄さま、エルフが好きみたいって、お兄さまのお友達から、聞いたことがあるから・・・」
 そうか、お兄さんが好きなエルフに関連するものをあげたいんだとミミはまたほのぼのし、必ずきんのロザリオを手に入れてくることを約束した。

 ミミは自室に戻って、クエストを引き受けたことをイザヤールに告げた。彼は、別にまよけの聖印を作ってエルフのおまもりを作ろうという女の子の発想に感心した。
「しかもあの歳で錬金術の本を理解できるとは、あの少女もなかなかの才能だな」
 二人はさっそく、装備を整えて、出かける準備をした。うまく行けばすぐに見つかるだろうが、運が悪ければいくつかのダンジョンなどを回らなければならない。早いに越したことはないだろう。ロビーに降りていったところで二人は、ルイーダに呼び止められた。
「こちらの方が、あなたたちと一緒に出かけたいって」
 見ると、レザーマントに身を包んだ、依頼人の従兄のあの少年が立っていた。簡素なレザーマントに不釣り合いなくらい見事な剣を携えている。
「ダンジョンに行くなら、オレも連れて行って頂けませんか。足手まといにはなりませんから」
 思いがけない成り行きに、ミミとイザヤールは顔を見合わせ、イザヤールが少年に尋ねた。
「我々と同行したい理由を教えてくれ」
「従妹が、あなた方に『きんのロザリオ』を取ってくるよう、頼んだそうですね。そこまでして『エルフのおまもり』が欲しいなんて、いったい何を考えているのやら。頼めば伯父も買ってくれるだろうに、買ったのはダメで作りたいと言い張るんです。普段はそんなワガママをあまり言わない子なのに。オレの従妹の我儘で迷惑をおかけしますから、お手伝いさせてください。それに、オレもお金を稼ぎたいし。両親の遺産だけだと、エルシオン学院の学費が少し足りないんです」
「下世話な話で失礼だが、学費は君の伯父上が出してくれるのではないのか」
「ええ。でも、できるだけ自力で捻出したいんです。伯父は、おまえは私の息子同然なんだから水くさいことを言うなって叱るんで、内緒にしてくれませんか」
「それなら、連れて行くわけにはいかない」イザヤールはきっぱりと告げた。「保護者の許可なく冒険に連れ出して、万一にでも危険に遭わせたら取り返しがつかない。足手まといにならないと言ったが、自惚れるな。どうしても行きたいなら、伯父上の許可を取ることだ」
 わざと厳しい言葉をぶつけたイザヤールに、少年は唇を噛んだが、素直に引き下がった。
「わかりました、目的だけは内緒にして、伯父に許可をもらってきます。それなら、いいですよね」
 それならとミミとイザヤールは頷き、どう言ったのか、少年は許可をもらって戻ってきた。彼の伯父も出てきて、二人にお手数だが甥のことを頼みますと挨拶した。陽気そうだが慈愛に満ちた思慮深げな容貌で、顔立ちの美しさはやはりどこか少年と似ていた。ミミの依頼人の女の子は別のタイプの美しさだから、母親似らしい。彼女は父親の後ろで、出かけるという従兄を心配そうに見つめ、ミミにお兄さまをお願い、と目で訴えた。
 こうして思いがけず三人パーティでの出発となり、ミミたちはリッカの宿屋を後にした。〈続く〉
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