カルバドの狩人のパオで、ネルグイという若者に頼まれ、ミミたちはドラゴン・ウーの巨大な牙を取ってくることになった。
ネルグイの想いを寄せる女の子は強くて逞しい男性が好みで、ドラゴン・ウーをあっさり倒せたことを証明できるのが、その牙なのである。
「でも・・・私たちが代わりに取ってきたんじゃ、その女の子を騙すことにならないかな?」
リッカが心配そうに呟く。
「だいたい、誰かに代わりに取ってきてもらうという考えが、軟弱ね」
ルイーダも手厳しい。
「そうよね、ルイーダさん!・・・ね、ミミ、引き受けてよかったの?」
リッカが、更に心配そうな顔でミミを見つめ、そう言った。するとミミは、いつもより更に濃い紫をしている瞳に、切ない色を浮かべて呟いた。
「・・・私も・・・迷ったけど・・・。でもね、彼が本当に必要なのは、ドラゴン・ウーの牙じゃないと思うの」
「え?どういうこと?」
「牙は、想いを告げるきっかけに過ぎないの。・・・彼は、彼女が必ず喜んでくれそうな物を手にすることで、告白する勇気を出そうと必死なのよ・・・」
ミミの言葉と切ない表情に、リッカとルイーダは驚いたような顔で、しばらく彼女を見つめた。
「・・・ミミ、まるで経験者みたいなことを言うのね」
驚きから回復したルイーダが、いたずらっぽい微笑を浮かべて言った。
「あ・・・その・・・もちろん私の勝手な憶測なんだけど・・・」
我に返ったミミはそう言って真っ赤になり、うつむいた。
相手は、自分のことをキライではないけど、友達とか仲間とかしか思っていなくて、想いを打ち明けることで、その友情や親愛すら失ってしまうのが怖い。もしかしたらネルグイさんもそうなのかもしれない。ミミは思った。
だから・・・そんな時に必要な、勇気を後押ししてくれるもの。相手が、喜んでくれるかもしれないもの。それが、ネルグイさんの場合は「巨大な牙」。私には・・・何なのかな・・・。イザヤール様は、どんな女性が好きなの?
・・・何とも思ってなければ、もしくはお兄様みたいに思っているなら、簡単に聞けるのに。「イザヤール様は、どんな女性がタイプですか?」
その当の本人のイザヤールは、ガールズトークに付いていけないからか、少し離れて歩いていた。すると、リッカが近寄っていって、尋ねた。
「イザヤールさんは、どう思われます?誰かに代わりに取ってきてもらうこと」
すると、彼は少し遠い目で答えた。
「私は、あの若者が少し羨ましい。・・・それさえあれば、必ず想いが伝わるという拠り所があるのだから」
牙で想いが叶うくらい簡単なことなら、百本でも千本でも手に入れるが、そういうことではないのだ。
「出たわね、経験者その2!」ルイーダがからかうように言う。
そして、彼女はリッカにだけ聞こえる声で囁いた。お互いこんなに一途で、周囲にはバレバレなのに、何故当人たちだけ気付かないのかしらね。
きっと、お互いにとっても大切すぎて、壊れやすいタカラモノのように大事に大事にしてるせいじゃないですか、とリッカも囁き声で答える。
「世話のやけること」
リッカとルイーダ、そしてついでにサンディは、同時にそう呟いたのだった。
ドラゴン斬りコンボで比較的あっさりと、牙を手に入れてきたミミたちだったが、結論から言えば、ネルグイは結局、自力で彼女の心を手に入れた!
「よかった、やっぱり大切なのは心なのね」とリッカ。
「めでたしめでたしね」これはルイーダ。
「よかった・・・」
ミミは微笑んで、イザヤールを見上げた。
「ああ、よかったな」
イザヤールも、また、優しい微笑を浮かべた。
牙なんかいらなかった。必要なのは、一途な想いと、その想いを告げる勇気、それだけ。たとえうまくいかなかったとしても・・・。
教えてくれて、こちらこそありがとう。ミミは、ネルグイに向かって、心の中で呟いた。〈了〉
ネルグイの想いを寄せる女の子は強くて逞しい男性が好みで、ドラゴン・ウーをあっさり倒せたことを証明できるのが、その牙なのである。
「でも・・・私たちが代わりに取ってきたんじゃ、その女の子を騙すことにならないかな?」
リッカが心配そうに呟く。
「だいたい、誰かに代わりに取ってきてもらうという考えが、軟弱ね」
ルイーダも手厳しい。
「そうよね、ルイーダさん!・・・ね、ミミ、引き受けてよかったの?」
リッカが、更に心配そうな顔でミミを見つめ、そう言った。するとミミは、いつもより更に濃い紫をしている瞳に、切ない色を浮かべて呟いた。
「・・・私も・・・迷ったけど・・・。でもね、彼が本当に必要なのは、ドラゴン・ウーの牙じゃないと思うの」
「え?どういうこと?」
「牙は、想いを告げるきっかけに過ぎないの。・・・彼は、彼女が必ず喜んでくれそうな物を手にすることで、告白する勇気を出そうと必死なのよ・・・」
ミミの言葉と切ない表情に、リッカとルイーダは驚いたような顔で、しばらく彼女を見つめた。
「・・・ミミ、まるで経験者みたいなことを言うのね」
驚きから回復したルイーダが、いたずらっぽい微笑を浮かべて言った。
「あ・・・その・・・もちろん私の勝手な憶測なんだけど・・・」
我に返ったミミはそう言って真っ赤になり、うつむいた。
相手は、自分のことをキライではないけど、友達とか仲間とかしか思っていなくて、想いを打ち明けることで、その友情や親愛すら失ってしまうのが怖い。もしかしたらネルグイさんもそうなのかもしれない。ミミは思った。
だから・・・そんな時に必要な、勇気を後押ししてくれるもの。相手が、喜んでくれるかもしれないもの。それが、ネルグイさんの場合は「巨大な牙」。私には・・・何なのかな・・・。イザヤール様は、どんな女性が好きなの?
・・・何とも思ってなければ、もしくはお兄様みたいに思っているなら、簡単に聞けるのに。「イザヤール様は、どんな女性がタイプですか?」
その当の本人のイザヤールは、ガールズトークに付いていけないからか、少し離れて歩いていた。すると、リッカが近寄っていって、尋ねた。
「イザヤールさんは、どう思われます?誰かに代わりに取ってきてもらうこと」
すると、彼は少し遠い目で答えた。
「私は、あの若者が少し羨ましい。・・・それさえあれば、必ず想いが伝わるという拠り所があるのだから」
牙で想いが叶うくらい簡単なことなら、百本でも千本でも手に入れるが、そういうことではないのだ。
「出たわね、経験者その2!」ルイーダがからかうように言う。
そして、彼女はリッカにだけ聞こえる声で囁いた。お互いこんなに一途で、周囲にはバレバレなのに、何故当人たちだけ気付かないのかしらね。
きっと、お互いにとっても大切すぎて、壊れやすいタカラモノのように大事に大事にしてるせいじゃないですか、とリッカも囁き声で答える。
「世話のやけること」
リッカとルイーダ、そしてついでにサンディは、同時にそう呟いたのだった。
ドラゴン斬りコンボで比較的あっさりと、牙を手に入れてきたミミたちだったが、結論から言えば、ネルグイは結局、自力で彼女の心を手に入れた!
「よかった、やっぱり大切なのは心なのね」とリッカ。
「めでたしめでたしね」これはルイーダ。
「よかった・・・」
ミミは微笑んで、イザヤールを見上げた。
「ああ、よかったな」
イザヤールも、また、優しい微笑を浮かべた。
牙なんかいらなかった。必要なのは、一途な想いと、その想いを告げる勇気、それだけ。たとえうまくいかなかったとしても・・・。
教えてくれて、こちらこそありがとう。ミミは、ネルグイに向かって、心の中で呟いた。〈了〉
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